必要経費

保険料等の金額

  1. 配当所得
  2. 不動産所得
  3. 事業所得
  4. 給与所得
  5. 山林所得
  6. 譲渡所得
  7. 一時所得
    1. 弁護士費用、訴訟費用
    2. 解約違約金
    3. 保険料等の金額(3件)
    4. 借入金利子
  8. 雑所得

一時払いの生命保険契約上の権利を退職金の一部として受領し、その後当該生命保険契約を解約したことにより解約返戻金を受領した場合の一時所得の金額の計算上控除する金額は、一時払いした保険料に限られず、退職所得として課税された退職時における当該生命保険契約の解約返戻金相当額であるとした事例

裁決事例集 No.62 - 161頁

 原処分庁は、請求人が法人役員を退任した際に生命保険契約上の権利を退職金の一部として一時払いの生命保険契約の契約者及び受取人の名義を請求人に変更することにより受領し、その後当該生命保険契約を解約したことにより解約返戻金を受領した場合、所得税法第34条第2項に規定する一時所得の金額の計算上控除する金額は、所得税法施行令第183条第2項に規定するとおり法人が一時払いした保険料に限られ、請求人が退職所得として課税された退職時における当該生命保険契約の解約返戻金相当額ではない旨主張する。
 しかしながら、所得税法施行令第183条第2項は、生命保険契約等に基づく一時金に係る一時所得の金額の計算方法を完結的・網羅的に規定したものではなく、同項第2号は、生命保険契約等に基づく一時金に係る一時所得の金額の計算上、保険料総額のみしか控除できない旨を規定した特例規定ではないものと解され、当該一時金に係る一時所得の金額の計算に当たっては、保険料総額以外に所得税法第34条第2項に規定する収入を得るために支出した金額がある場合には、その支出した金額を一時所得に係る総収入金額から控除できるものと解される。
 一時所得の金額の計算上控除する金額については、一般には保険料の額と解するのが相当であるとしても、本件においては、本件退職時解約返戻金相当額が保険料総額を上回っており、その上回った金額を含めて退職所得課税の対象となっていることから、その上回った金額は、所得税法第34条第2項に規定する一時所得の金額の計算上収入を得るために支出した金額に含まれると解するのが相当である。

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満期生命保険金に係る一時所得の計算上、受取人以外の法人が負担した保険料は、受取人が実質的に負担したものではないから、収入を得るために支出した金額には含まれないとした事例

裁決事例集 No.71 - 299頁

 請求人は、契約者及び死亡保険金の受取人を法人とし、満期保険金の受取人を請求人とする養老保険契約の満期保険金に係る一時所得の計算において、所得税法第34条《一時所得》第2項、同法施行令第183条《生命保険契約等に基づく年金に係る雑所得の金額の計算上控除する保険料等》第2項第2号及び所得税基本通達34−4《生命保険契約等に基づく一時金又は損害保険契約等に基づく満期返戻金等に係る所得金額の計算上控除する保険料等》の規定等の文理から解釈して、所得税法第34条第2項に規定する「収入を得るために支出した金額」とは、所得者である請求人自らが負担した金額であるか否かは問わず、支払保険料の総額であるから、保険契約者である法人が支払い費用処理した保険料(以下「本件費用処理保険料」という。)を当該「収入を得るために支出した金額」に算入すべきである旨主張する。
 しかしながら、[1]所得税法第34条第2項が「収入を得るために支出した金額」を「その収入を生じた行為をするため、又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る」としているのは、一時所得に係る収入に関連して、あるいは収入があったことに起因して所得者が負担したようなものは収入を得るために支出した金額とするものであると解され、このことは、個人を納税義務者とし、当該個人の収入から支出を差し引いた純所得に課税するという所得税の本旨からすれば、条理上当然であると認められること、[2]所得税法施行令第183条第4項においては、所得者自らが負担したと認められる保険料等に限って「収入を得るために支出した金額」に算入することとしていること、及び[3]所得税基本通達34−4は、一時金の支払を受ける者(所得者)以外の者が保険契約者として保険料等を負担した場合も、当該所得者である使用人が実質的にその保険料相当額を負担しているときには、当該保険料等は当該所得者の収入を得るために支出した金額と認めるという趣旨で定められたものと解されることからすると、本件費用処理保険料を所得税法第34条第2項の「収入を得るために支出した金額」に算入できるか否かについては、本件費用処理保険料を請求人自らが負担したかどうかにより判断することが相当である。
 本件費用処理保険料は、保険契約者である法人の「保険料」として費用処理され、当該金額を請求人に対する経済的利益として(給与)課税した事実もないことから、請求人自らが負担したものとは認められず、所得税法第34条第2項に規定する「収入を得るために支出した金額」に算入することはできない。

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法人の代表取締役である請求人が、当該法人から契約上の地位を譲り受けた生命保険契約を解約したことにより受領した解約払戻金に係る一時所得の金額の計算上、当該法人が支払った保険料を一時所得の金額の計算上控除することはできないとした事例(平成22年分の所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・棄却・平成27年4月21日裁決)

平成27年4月21日裁決

《要旨》
 法人の代表取締役である請求人は、同人が当該法人から契約上の地位を譲り受けた生命保険契約を解約したことにより受領した解約払戻金に係る一時所得の金額の計算上、当該法人が支払った保険料を含む当該生命保険契約に係る保険料の総額を控除すべきである旨主張する。
 しかしながら、一時所得に係る支出が所得税法第34条《一時所得》第2項にいう「その収入を得るために支出した金額」に該当するためには、それが当該収入を得た個人において自ら負担して支出したものといえる場合でなければならないと解するのが相当である。なお、所得税法施行令(平成23年6月改正前のもの)第183条《生命保険契約等に基づく年金に係る雑所得の金額の計算上控除する保険料等》第2項第2号についても、以上の理解と整合的に解釈されるべきものであり、同号が一時所得の金額の計算において支出した金額に算入すると定める「保険料…の総額」とは、保険金の支払を受けた者が自ら負担して支出したものといえる金額をいうと解すべきであって、同号が、このようにいえない保険料まで上記金額に算入し得る旨を定めたものということはできない。したがって、当該解約払戻金に係る一時所得の金額の計算上、当該法人がその名義により支払った保険料は、これを控除することはできない。

《参照条文等》
 所得税法第34条第2項
 所得税法施行令第183条第2項第2号(平成23年6月政令第195号による改正前のもの)
 所得税基本通達34−4(平成24年2月10日付課個2−11・課審4−8による改正前のもの)

《参考判決・裁決》
 最高裁平成24年1月13日第二小法廷判決(民集66巻1号1頁)

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