所得計算の特例

認めた事例

  1. 交換の特例
  2. 低額譲渡
  3. 譲渡代金の回収不能
  4. 保証債務の履行
    1. 保証債務の存否
    2. 保証債務の履行のための譲渡
      1. 認めた事例(5件)
      2. 認めなかった事例
    3. 求償権の行使不能
    4. 対象資産の範囲
    5. 所得金額の計算
    6. 申告手続
  5. 事業廃止の場合の必要経費

譲渡代金の一部を保証債務の履行に充てたとした事例

裁決事例集 No.1 - 21頁

 本件は、第三者の借入金について、担保として提供した土地を譲渡し、当該借入金の返済に充てたにもかかわらず、当該第三者が所在不明で無財産のため求債権を行使することができなかったものであるが、これは、保証債務を履行し求債権を行使できなかったものとして、その行使することができなかった金額を譲渡所得の金額の計算上なかったものとすることが相当である。

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請求人の経営する会社への建物及び土地の無償譲渡について、所得税法第64条第2項の規定の適用を認めた事例

裁決事例集 No.18 - 56頁

 請求人の経営する会社への本件建物及び土地の提供は、当該会社について営業の不振を理由として債務者から和議の申立てがあり、裁判所の認可に係る和議条件において債権者に対する一定金額の債務の弁済につき請求人が保証債務を負うものとされ、その債務の弁済を担保するために行われたものであるから、本件建物及び土地の譲渡は、保証債務を履行するための資産の譲渡で、かつ、求償権の行使ができなかったものに当たることが明らかである。

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甲土地及び乙土地のそれぞれの譲渡代金の比によって保証債務が履行されたとする原処分庁の主張を退けた事例

裁決事例集 No.23 - 84頁

 原処分庁は、甲土地及び乙土地のそれぞれの譲渡代金の比によって保証債務が履行されたと主張するが、乙土地とともに甲土地を一つの契約により同一人に対して一括譲渡したのは、譲受人の都合により、乙土地のみでは売却できなかったという特殊事情によるものであること、また、主たる債務者に係る和議条件によれば、乙土地の譲渡代金で本件保証債務を弁済するものとされていることから、本件保証債務は、乙土地の譲渡代金より履行されたものとみるのが相当である。

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主たる債務者が会社であるか、会社の代表者であるかが借用書上定かでない借入れについて、債権者が弟達で、借入れに事情があることや会社の経理等の念査から、本件借入れの債務者は会社で、会社の代表者がこれを保証したものと認定し、所得税法第64条第2項の適用を認めた事例

裁決事例集 No.45 - 110頁

 借入れは会社の資金の確保のためであること、仮領収書は会社から債権者である弟達に発行されていること、借入金に係る利息も会社から債権者に支払われていること、同一債務に係る借用書が4通あるがいずれが事実のものか、あるいはいずれも虚偽のものか判断し難いことからすると、借用書が会社の代表者である被相続人の名義で発行されていることを根拠に主たる債務者は被相続人であるとする原処分庁の主張は採用できず、そうすると、主たる債務者は実質的に会社とみるのが相当である。
 債務の保証について、債権者から、債権者と被相続人との間で「U町の土地」を担保とする保証契約をした旨の答述があり、これは、4通の借用証のうちの2通にU町の土地を担保にする旨の記載があることと符合し、当事者の真意が認められる。このことから、債権者と被相続人の間には本件債務に関して被相続人が保証する旨の合意が成立していたと認めるのが相当である。

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資産の譲渡代金の一部が保証債務の履行に充てられていなかったとしても、所得税法第64条第2項に規定する保証債務の特例が適用されるとした事例

平成25年4月4日裁決

《ポイント》
 本事例は、所得税法第64条第2項に規定する保証債務の特例の適用要件の一つである譲渡者の保証債務の履行のための資産の譲渡とは、資産の譲渡による収入が保証債務の履行に充てられていたというけん連関係を要求するものであるから、その収入の一部が他の用途に充てられたといった事情が存したとしても直ちに当該要件を欠くことにはならないことなどを明らかにしたものである。

《要旨》
 原処分庁は、請求人の亡父(本件被相続人)による不動産(物件1)の譲渡は、本件被相続人の亡母の相続税の納税資金を捻出するための譲渡であり、その他の不動産(物件2)の譲渡は、その譲渡の時点において、本件被相続人が連帯保証債務を返還するのに十分な資金を既に保有していたので、両不動産(物件1及び物件2)の譲渡はいずれも保証債務の履行のために譲渡したものではないから、所得税法第64条《資産の譲渡代金が回収不能となった場合等の所得計算の特例》第2項に規定する特例(保証債務の特例)は適用されない旨主張する。
 しかしながら、保証債務の特例を適用するためには、まる1債権者に対して債務者の債務を保証したこと、まる2上記まる1の保証債務の履行のための資産の譲渡であること、まる3上記まる1の保証債務を履行したこと、及びまる4上記まる3の履行に伴う求償権の全部又は一部を行使することができなくなったことの4つの実体的要件が必要であるところ、上記実体的要件のまる2は、資産の譲渡による収入が保証債務の履行に充てられたというけん連関係を要求するものと解され、資産の譲渡による収入の一部が保証債務の履行に充てられていないことをもって、直ちに上記まる2の実体的要件を欠くことになるものではない。また、譲渡者の資産の保有状況は、保証債務の特例の適用要件であるとは解されない。

《参照条文等》
 所得税法第64条第2項

《参考判決・裁決》
 さいたま地裁平成16年4月14日判決(税資254号順号9625)

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