税額の計算

変動、臨時所得の平均課税

  1. 変動、臨時所得の平均課税(8件)
  2. 外国税額控除
  3. 算出所得税額から控除する源泉徴収税額

収用等によって得た営業補償金は3年以上の営業補償としてなされたものではないから臨時所得に該当しないとした事例

裁決事例集 No.9 - 17頁

 起業者が請求人に支払った補償金は、公共事業に伴う地上物件移転期間の一時的な営業休止の損失を補償するための営業補償金として支払われたものであり、永久的な事業縮小に対する補償ではなく、また、この補償金の額は請求人の提出に係る営業決算調書記載の数額を基礎として計算された数か月分の営業休止に見合う損失補償金であり、3年以上の事業所得の補償とは認められないから、所得税法施行令第8条第3号の臨時所得には当たらない。

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中途解約に伴い賃借人に対し返還不要となった敷金及び建設協力金は、不動産所得の収入金額に当たるとするとともに、当初申告で平均課税の適用をしていないことに「やむを得ない事情」があると認められないとした事例

裁決事例集 No.67 - 135頁

 請求人は、中途解約に伴い返還不要となった敷金及び建設協力金のうち不動産所得の収入金額とされるのは、賃料の減収による損失及び解約に伴う諸費用の実費弁償等としての補償額等に限定され、その余は一時所得に該当する旨、また、仮に不動産所得の収入金額となるのであれば、臨時所得に該当し平均課税の規定が適用される旨主張する。
 しかしながら、中途解約の合意内容等によると、返還不要の敷金及び建設協力金は、賃料の減収によって生ずる損失等、その後の不動産貸付業務に係る収益の減収に対する補償として取得したものと認められ、不動産賃貸業務の遂行によって生ずる収入金額に代わる性質を有するものであることから、その全額が不動産所得に係る収入金額であると認められる。
 また、当初の確定申告で、臨時所得に該当する金額がなかったのは、請求人が、税法の解釈を誤って、返還不要の敷金及び建設協力金を一時所得として申告したためであり、これは、客観的にみて納税者の責めに帰すことのできない事情とはいえず、「やむを得ない事情」があると認められないことから、平均課税の規定の適用を受けることはできない。

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賃貸借契約の中途解約に伴い賃借人に対し返還不要となった敷金及び建設協力金に係る所得は、3年以上の期間の不動産所得の補償に当たらないから臨時所得に該当せず、平均課税は適用されないとした事例

裁決事例集 No.73 - 265頁

 請求人は、解約合意書に補償対象期間の具体的な記載はないものの、賃貸借契約書には契約期間が明記されていることから賃貸借契約の終期までの残存期間である9年9か月を本件返還不要敷金等が補償の対象としているとみるべきである旨主張する。
 しかしながら、臨時所得の範囲として、所得税法施行令第8条第3号は、不動産貸付業務に係る「3年以上の期間の不動産所得の補償として受ける補償金に係る所得」と規定しているところ、所得の補償とは、中途解約に伴い生じた逸失利益、すなわち不動産貸付業務を継続すれば得られたであろう所得の額を補償するものであり、その所得を得るために継続して生ずる費用、例えば、減価償却費、租税公課等の費用の額を併せて補償することが必要であると解するのが相当であるから、所得の額と費用の額の合計額、すなわち収入金額に相当する金額を補償して初めて所得の補償といえる。
 これを本件についてみると、本件返還不要敷金等は、違約金名目ではあるが、その実質は、1解約後の収益補償として支払われるもの及び2解約に伴う諸費用の実費弁償として支払われるものから成っていると考えられるから、本件返還不要敷金等に係る所得が、臨時所得となる3年以上の期間の補償に該当するか否かを判断するためには、本件返還不要敷金等の金額のうち、上記1に係る金額について、1年当たりの収入金額に相当する金額で除して補償対象期間を算定するのが合理的であると認められる。
 そこで、本件返還不要敷金等の金額の全額を上記1に係る金額と仮定して、本件返還不要敷金等の金額(18,111,800円)を1年当たりの収入金額に相当する金額(9,864,792円(中途解約時の月額賃貸料822,066円×12月))で除して補償対象期間を計算すると、約1年10か月となり、3年以上の期間の不動産所得の補償には当たらない。
したがって、本件返還不要敷金等に係る所得は臨時所得に該当しないことになるため、平均課税の方法により所得税の額を計算することはできない。

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所得税法第90条に規定する平均課税を適用せずに確定申告が行われた後、平均課税の適用を求めてなされた国税通則法第23条第1項に基づく更正の請求が認められないとした事例

裁決事例集 No.74 - 88頁

 請求人は、国税通則法第23条に規定する更正の請求は確定申告書の誤りを申告後に変更するための制度であり、確定申告書自体を訂正する意味を持つため、本件規定を適用せずに本件確定申告書を提出しても、本件更正の請求により本件規定の適用が認められるべきである旨主張する。
 しかしながら、本件規定の適用を受けるには、所得税法第90条第4項において確定申告書に本件規定の適用を受ける旨及び平均課税の計算明細を記載することが要件とされているところ、本件確定申告書にはこれらの記載はなく、請求人は本件規定を適用せずに税額計算を行ったということとなる。そうすると、本件確定申告書において本件規定を適用せずに税額計算を行ったことは、そのこと自体法律の規定に反するものではなく、また、その計算に誤りはないと認められることから、本件確定申告書には、国税通則法第23条第1項に規定する課税標準等若しくは税額等の計算が国税の法律に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったとは認められないため、請求人の主張には理由がない。

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賃借人が預託していた保証金で返還不要とされた金員は臨時所得に該当しないとした事例

裁決事例集 No.75 - 260頁

 請求人は、賃借人が請求人に預託していた保証金で返還不要とされた本件返還不要保証金は臨時所得に該当するから、平均課税の適用が認められるべきである旨主張する。
  しかしながら、本件返還不要保証金は、3年以上の期間の不動産所得の補償に当たるとは認められないことから、臨時所得に該当しない。また、本件申告書には平均課税の適用を受ける旨の記載等がなく、当該記載等がないことについて、やむを得ない事情は認められない。
  したがって、請求人の場合、平均課税の適用を受けるために必要な要件を欠いているから、更正の請求の要件である「申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったことにより、同申告書の提出により納付すべき税額が過大である場合」には当たらないことになる。

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転貸の目的となった建物の賃貸借契約の終了に伴い生じた債務免除益について3年以上の期間の不動産所得の補償であるか否かを判断するに当たり、その転貸に係る賃貸人の地位を承継する場合は、その賃貸借契約終了前後の1年当たりの賃貸料の額と新たに負担することとなる修繕費の額を基礎として判断するのが相当とした事例

平成23年2月2日裁決

《ポイント》
 臨時所得となる3年以上の期間の補償に該当するか否かについて、補償の期間が契約等で示されていない場合などは、補償に至った各種事情等を総合的にみて、補償に係る金額の算定の基礎とされるべき内容及びその金額に基づき判定するのが相当と解される。
 この事例は、建物の賃貸借契約の終了後も一定の賃料収入が保証された上で生じた債務免除益が3年以上の期間の補償に該当するか否かにつき、判断の基礎となる1年当たりの減収額を、当該賃貸借契約終了前の1年当たりの賃貸料の額(収入していた金額の全部)とすべきか、同契約終了前後の1年当たりの賃貸料の額の差額に、新たに負担することとなる修繕費の額を加味した額(収入していた金額の一部)とすべきかが争われたものである。

《要旨》
 原処分庁は、債務免除により補償されたのは請求人らがF支社から受領する年間賃貸料であり、そうすると債務免除益は3年以上の期間の不動産所得の補償には当たらない旨主張する。
 しかしながら、補償に係る契約等において、補償に係る金額が3年以上の期間の補償に該当するか否かの判定について、賃借人が賃借物件を転貸しており、賃貸人との賃貸借契約期間の満了後は、賃貸人が、転借人との間で新たに賃貸借契約を結び、転貸人の地位を承継することに伴い補償されたような場合で、その内容が不動産貸付業務の形態の転換に伴い減少することとなる収入の額又は新たに負担することとなる費用の額を考慮した補償と認められる場合であれば、補償に係る金額が、減少することとなる収入の額又は新たに負担することとなる費用の額の3年以上の期間に相当する金額であるか否かで、臨時所得の要件である3年以上の期間の補償に該当するのかを判定するのが相当である。
 したがって、賃貸借契約の終了に伴い、賃貸住宅に係る賃貸人たる地位を承継し、賃貸借契約終了前の賃借人(転貸人)に代わって賃貸住宅の入居者から賃貸料収入を得ることができた請求人らに係る1年当たりの減収額は、請求人らの所有する住宅の賃借料の額と転貸人が入居者から受領していた賃貸料の額から転貸人が負担していた修繕費の額を控除した額との差額とするのが相当であり、そうすると、F支社が請求人らに対して行った債務免除に係る補償の期間は3年以上の期間の不動産所得の補償に該当する。

《参照条文等》
 所得税法第2条第1項第24号、第90条
 所得税法施行令第8条第3号

《参考判決・裁決》
 昭和59年1月24日裁決(裁決事例集No.27・63頁)、平成19年3月12日裁決(裁決事例集No.73・265頁)、平成20年4月15日裁決(裁決事例集No.75・260頁)

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県民住宅経営安定化促進助成制度に基づいて一括交付を受けた金員は、所得税法施行令第8条第2号に掲げる所得に類する所得に当たらず、臨時所得には該当しないとした事例

平成25年4月25日裁決

《要旨》
 請求人は、県民住宅経営安定化促進助成制度に基づいて一括交付を受けた金員(本件金員)は、不動産所得の必要経費(支払利息)を補填するために県優良民間賃貸住宅等利子補給制度に基づき交付を受けていた利子補給金の17年間分を一括で受けたものであるから、本件金員に係る所得は、所得税法施行令第8条《臨時所得の範囲》第2号に掲げる所得に類する所得に当たり、所得税法第2条《定義》第1項第24号に規定する臨時所得に該当する旨主張する。
 しかしながら、本件金員は、賃借人である県住宅供給公社又は転借人である入居者に請求人の所有不動産を使用させることを約することにより受ける対価ではないところ、所得税法施行令第8条第2号に規定する資産を使用させることを約することにより受ける「対価」そのものではなく、また、当該「対価」としての性質を有するものでもないから、本件金員に係る所得は、同号に掲げる所得に類する所得に当たらない。したがって、本件金員に係る所得は、所得税法第2条第1項第24号に規定する臨時所得には該当しない。

《参照条文等》
 所得税法第2条第1項第24号
 所得税法施行令第8条

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サンゴ漁に係る所得が平均課税の対象となる変動所得に当たるとした事例

令和元年5月28日裁決

《ポイント》
 本事例は、請求人の営むサンゴ漁に係る所得は「漁獲から生ずる所得」として変動所得に該当するとしたものである。

《要旨》
 原処分庁は、請求人が営むサンゴ漁について、1宝石サンゴは自ら移動せず水産植物と同様の生態であることや採取された宝石サンゴのほとんどは死滅した枯れ木であることなどから、所得税基本通達2−30《漁獲の意義》に定める「水産動物を捕獲すること」に当たらず、また、2宝石サンゴは他の水産動物とは異なり、天候等の自然現象によって漁獲高が変動しないことを理由に、所得税法第2条《定義》第1項第23号に規定する「漁獲」には該当せず、請求人が営むサンゴ漁に係る所得は変動所得に該当しない旨主張する。
 しかしながら、平均課税制度の趣旨や変動所得に係る規定の改正経緯に照らすと、同号に規定する「漁獲」とは、水産物の捕獲又は採取を意味し海草等の水産植物の採取や養殖(水産養殖)はこれに含まれないと解されるところ、宝石サンゴは海中から採れる水産物(生物学上は動物に分類される。)であり、サンゴ漁は水産動物の捕獲又は採取にほかならないから同号に規定する「漁獲」に該当する。したがって、請求人の営むサンゴ漁に係る所得は、「漁獲から生ずる所得」として変動所得に該当するというべきである。

《参照条文等》
 所得税法第2条第1項第23号、第90条
 所得税法施行令第7条の2
 所得税基本通達2−30

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