申告、納付、還付、更正の請求の特例

純損失の繰戻しによる還付

  1. 源泉分離課税に係る所得の申告
  2. 年の途中で出国した場合の確定申告
  3. 純損失の繰戻しによる還付(3件)
  4. 更正の請求の特例
  5. その他

純損失の繰戻しによる還付請求書が確定申告書と同時に提出されなかったことについて、「やむ得ない事情」があったとは認められないとした事例

裁決事例集 No.48 - 112頁

 所得税法第140条第1項は、青色申告書を提出する居住者は、その年において生じた純損失の金額がある場合には、当該申告書の提出と同時に、所得税の還付を請求することができる旨規定し、この規定に関し、基本通達140・141−3では、還付請求書が青色申告書と同時に提出されなかった場合でも、同時に提出されなかったことについて税務署長においてやむを得ない事情があると認めるときは、これを同時に提出されたものとして所得税法第140条第1項の規定を適用して差し支えない旨定めている。
 この通達にいう「やむ得ない事情」とは、納税者の責めに帰すことのできないような特別な事情により、青色申告書の提出と同時に還付請求をなし得なかったと合理的に認められるような例外的な場合をいうのであって、いわゆる法の不知を含まないものと解するのが相当である。
 ところで、請求人は、[1]純損失の繰戻しによる還付請求が可能な期間を5年間であると考えていたことを及び[2]平成3年12月26日から平成4年4月上旬までA国に滞在していたため、平成3年分の確定申告期間中は日本国内にいなかったことから、還付請求書を同時に提出できなかったのであり、基本通達にいう「やむ得ない事情」に該当すると主張する。
 しかしながら、還付請求が可能な期間を5年間であると考えていたという請求人の法の不知は、上記のとおり「やむ得ない事情」に当たらず、また、上記の期間A国に滞在していたため、平成3年分の確定申告期間中は日本国内にいなかったという事情についても、請求人は、長男Cから純損失の繰戻しによる還付の制度があること、また、その制度の適用を受けるためには確定申告と同時に還付請求書を提出しなければならない旨の連絡を受けていながら、何らの確認や問い合せもしなかったことが認められるから、請求人の責めに帰すことのできないような特別な事情とは認められない。

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青色申告の対象となる業務を行っていない年分の譲渡損失は、純損失の繰戻しによる還付請求は認められないとした事例

裁決事例集 No.51 - 198頁

 請求人は、青色申告の承認を受けているのに平成5年中に青色申告の対象となる所得を生ずべき業務を行っていなかったことのみをもって、純損失の繰戻しによる還付請求を認めないのは不合理であり、還付すべきである旨主張する。
 しかし、請求人の平成5年分以後の所得税については、平成5年中に賃貸用不動産を譲渡した後は不動産所得を生ずべき業務を行っていた事実はなく、また、同年末日までに事業所得等に係る業務を開始した事実も認められないことから、請求人の青色申告の承認は平成5年分以後その効力は失われており、同年分の純損失につき繰戻しによる還付請求をすることは認められない。

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前年分の確定申告書に記載されていない退職所得に係る所得税の額を、純損失の繰戻しによる還付金の額の計算の対象とすることはできないとした事例(平成25年分の純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求の一部に理由がない旨の通知処分・棄却・平成27年12月18日裁決)

平成27年12月18日裁決

《要旨》
 請求人は、所得税法第140条《純損失の繰戻しによる還付の請求》は、純損失の繰戻しによる還付金の額の計算の対象となる所得税の額について、純損失が生じた前年分の確定申告書に記載した所得に係るものであることを要件とはしていないことから、前年分の確定申告書に記載されていない退職所得に係る所得税の額も対象となる旨主張する。
 しかしながら、純損失が生じた前年分の確定申告について青色申告書の提出が要件とされていることからすると、当該青色申告書に記載されていない退職所得に係る所得税の額を純損失の繰戻しによる還付金の額の計算の対象とすることはできない。

《参照条文等》
 所得税法第140条

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