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その他
年の中途で死亡した被相続人に係る納付すべき所得税の額のうち、請求人が承継する納付すべき税額は、遺留分減殺請求により修正された相続分によりあん分して計算した額であるとした事例
《ポイント》
この事例は、本件遺言(相続させる旨の遺言)は、遺言書に請求人の相続分に関する記載がないものの、請求人の相続分を零と定めたものと解するのが相当であり、また、本件遺言により指定された請求人の相続分は、遺留分減殺請求により修正されたと解されるから、請求人が承継する納付すべき税額は、被相続人に係る納付すべき所得税の額のうち、当該修正された相続分によりあん分して計算した額であると判断したものである。
《要旨》
請求人は、本件遺言により遺産の割当てから完全に排除されているから、当該遺言は、請求人の相続分を零とする指定もされたものと解すべきであるとし、被相続人に係る納付すべき所得税の額のうち請求人が承継する納付すべき税額は零円であり、原処分はその全部が取り消されるべきである旨主張する。
また、原処分庁は、本件遺言は、特定の財産を請求人以外の他の各相続人に対して相続させる趣旨のものであるから、相続分の指定をしたものではなく、被相続人に係る納付すべき所得税の額のうち請求人が承継する納付すべき税額は、請求人の法定相続分(10分の1)によりあん分して計算した額であり、原処分は適法である旨主張する。
しかしながら、本件遺言は、被相続人が自己の所有する財産全部について、請求人を除く他の各相続人のいずれかの者に確定的に帰属させるという遺産の分割の方法を定めるとともに、当該他の各相続人に対し、法定相続分とは異なる相続分を定めたものと解するのが合理的であり、遺言書に請求人の相続分に関する記載はないものの、被相続人が、請求人の相続分を零と定めたものと解するのが相当である。そして、請求人は、自らの遺留分が侵害されたとして、他の各相続人に対し遺留分減殺請求をしたのであるから、当該減殺請求により、自らの侵害された遺留分の限度(20分の1)で被相続人の残した財産に関する持分を取得し、その結果、本件遺言により指定された請求人の相続分は20分の1に修正されたと解される。
したがって、被相続人に係る納付すべき所得税の額のうち、請求人が承継する納付すべき税額は、本件遺言により指定された相続分(20分の1)によりあん分して計算した額であるから、原処分は、その一部を取り消すべきである。
《参照条文等》
所得税法第125条
所得税法施行令第263条
所得税法施行規則第49条
国税通則法第5条第1項、第2項、第25条
民法第900条〜第902条、第908条、第1028条
《参考判決・裁決》
最高裁昭和41年7月14日第一小法廷判決(民集20巻6号1183頁)
最高裁昭和51年8月30日第二小法廷判決(民集30巻7号768頁)
最高裁昭和58年3月18日第二小法廷判決(最高裁判所裁判集民事138号277頁)
最高裁平成3年4月19日第二小法廷判決(民集45巻4号477頁)