源泉徴収

みなし配当

  1. 給与等
  2. 退職給与
  3. 配当所得
  4. 報酬、料金等
  5. みなし配当(3件)
  6. 著作権の使用料
  7. 匿名組合契約等の利益の分配
  8. その他

所得税法第212条《源泉徴収義務》第3項の「支払」の意義については、これを実質的に解し、現実に金銭を交付する行為のみならず、その支払債務が消滅すると認められる一切の行為を含むものと解するのが相当であるとして、形式的意味における清算人会の決議に基づく必要があるとする請求人の主張を排斥した事例

裁決事例集 No.50 - 215頁

  1.  所得税法第25条第1項第3号の規定は、形式的には、法人の利益配当ではないが残余財産の分配等の方法で、実質的に利益配当に相当する法人利益の株主等への帰属が認められる行為が行われたときに、これを配当とみなして株主等に課税する趣旨である。
     したがって、法人の当該行為が残余財産の分配に当たるか否かについては、商法等の定める手続きを経ているか否かだけでなく、当該行為のもつ経済的効果をも勘案して実質的見地から判断すべきである。
  2.  上記の趣旨からすれば、所得税法第212条《源泉徴収義務》第3項の「支払」についても実質的に解し、現実に金銭を交付する行為のみならず、その支払債務が消滅すると認められる一切の行為を含むものと解するのが相当である。
  3.  協同組合における残余財産の分配は、清算人会が決定することとされている[中小企業等協同組合法第36条の2(理事会)]が、みなし配当として源泉徴収義務が発生する残余財産の分配(支払)のために、常に清算人会の決議が必要と解すると仮に法人の利益が何かの機会に組合員に移転した場合でも、形式的には決議がなければ課税されないことになるが、これは所得税法の解釈として妥当でない。上記中小企業等協同組合法の規定は、組合員や債権者保護のための手続規定であり、決議以前に法人の利益が組合員に移転したような例外的場合における所得税法の解釈にまで影響を及ぼすものではないと解するのが相当である。
  4. 本件残余財産の分配の時期
    1. 平成3年12月の分配
       11組合員に対する貸付金を仮払金と振替処理した平成3年12月10日に当該組合員に対して残余財産の一部442,895千円が分配され、その限度において請求人の残余財産の支払債務が消滅したものと認められる。
    2. 平成4年1月の分配
       平成4年1月13日付の「組合清算金一部仮払いにつきお願いの件」と題する書面を交付した上、同日にG社に対し33,570,000円、同月21日にF社に対し23,535,000円支払っているのは、残余財産の一部の分配であり、各支払時点で請求人の支払債務が一部消滅したものと認められる。
    3. 平成4年8月及び9月の分配
       請求人が、平成4年8月4日、同月20日及び同年9月21日に本件組合員に支払った金員は、同年7月17日の清算人会の承認に基づき本件念書記載のとおり、残余財産の一部を分配したものと認められる。

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事業協同組合の組合員の死亡脱退により生じた持分払戻金に含まれるみなし配当相当額について源泉徴収義務があるとした事例

裁決事例集 No.72 - 265頁

 請求人は、事業協同組合の組合員の死亡脱退により、死亡した組合員の相続人が支払を受ける持分払戻金は、死亡退職金と同様、所得税を課税せずに相続税のみを課税する相続財産として取り扱われるべきであるから、原処分庁が、当該持分払戻金のうち、出資金額を超える部分についてみなし配当であるとして行った源泉所得税の納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分を取り消すべきである旨主張する。
 しかしながら、本件の脱退組合員持分払戻金(以下「本件払戻金」という。)は、組合員D及びE(以下、DとEを併せて「本件各組合員」という。)が死亡によって請求人を脱退し、出資持分の払戻金として支払われたものと認められるが、死亡による脱退であっても社内に蓄積された利益積立金が払戻しにより社外に流出するという点では他の脱退の場合と同じであり、本件払戻金のうち本件各組合員の出資金の額を超える部分の金額(以下「本件金額」という。)は、「みなし配当」に当たると認めるのが相当である。
 また、請求人の定款には、組合員が脱退したときには、組合の財産についてその出資口数に応じて算定した金額を限度として払い戻すものとする旨を定めていることから、本件各組合員の死亡時において、本件各組合員は組合を脱退し、出資持分に係る払戻しを受けることが確定するため、その時点において本件払戻金の払戻請求権(以下「本件払戻請求権」という。)が発生したと解するのが相当であるから、本件払戻金は出資者である本件各組合員に帰属すると認めるのが相当である。
 なお、本件金額は、本来は「みなし配当」として本件各組合員に支払われるべきものであるが、本件各組合員の死亡によって本件払戻請求権が一旦本件各組合員に帰属し、その後遺産として本件各組合員の相続人に承継されたことにより、当該相続人に支払われたものであり、相続人の相続税と本件各組合員の所得税が二重課税になるというものではない。また、本件払戻金は、相続税法第3条第1項各号に規定する相続又は遺贈により取得したものとみなす財産のいずれにも該当しないから、相続税法上のみなす財産とされる死亡退職金等と同列の財産ということもできない。

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自己株式の購入価額は適正な価額であるから、資本等の金額のうち取得株式に対応する部分を超える部分については、みなし配当が生じるとした事例

裁決事例集 No.77 - 194頁

 請求人は、請求人が取得した自己株式の取得価額について、税法上の適正価額(時価)に比して高額であり、当該高額な部分は本件株式の取得の対価ではなく、請求人にとっては売主に対する寄附金であり、売主にとっては法人からの贈与であるから一時所得になり、みなし配当部分はないから、原処分庁の行った納税告知処分等は違法であると主張する。
 しかしながら、その自己株式の取得価額は、1第三者間における合意に基づく売買として成立したものであること、2平成16年当時の請求人の株式の純資産価額は、取得価額より若干低い程度であったこと及び3その自己株式の購入の約1か月前に関連会社から自己株式をおおむね同額で購入していることから、正常な取引に基づく時価、すなわち適正価額と認められ、当該高額な部分はなく請求人の主張は採用できない。

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