青色申告の承認、承認の取消し

青色申告の承認の取消し

  1. 青色申告の承認
  2. 青色申告の承認の取消し(9件)

帳簿書類の一部のみを提示し、事後一切提示の求めに応じない者について青色申告の承認を取り消した事例

裁決事例集 No.12 - 13頁

 原処分庁が、青色申告者である請求人の昭和47年所得税について調査する必要があると認められたので調査を行ったところ、請求人は第1回の調査に際して金銭出納帳1冊を提示したが、その後の7回に及ぶ調査に際しては、原処分庁職員の帳簿書類の提示の求めに応ぜず、帳簿書類を提示しないことについては正当な理由が認められない。したがって、その提示しない時において請求人には帳簿書類の備付け、記録又は保存がないといえるから、その事実は所得税法第150条第1項第1号に掲げる青色申告の承認の取消し事由に該当するものである。

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帳簿書類の提示要求に対しこれを拒否したことは所得税法第150条第1項第1号所定の青色申告の承認の取消事由に該当するとした事例

裁決事例集 No.26 - 102頁

 青色申告者の帳簿書類の備付け等とは、単に帳簿書類が物理的に存在するというだけでなく、担当職員の求めに応じてそれを提示することを当然の前提としており、担当職員から帳簿書類の提示を求められたにもかかわらず正当な理由がなくしてこれを提示しない場合には、帳簿書類の備付け等がないものとみるべきであると解されているところ、原処分庁の担当職員が請求人の所得税の調査のため必要であるとして請求人に帳簿書類の提示を求めたことに対し、請求人が具体的な調査理由が開示されてないとの理由でその提示を拒否しているが、これは帳簿書類の不提示の正当な理由にはならないから、帳簿書類の備付け等がないものとして、所得税法第150条第1項第1号を適用して青色申告の承認の取消しをおこなったことは相当である。

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青色申告者の帳簿書類の保存等の義務を免責させる特段の事由はないとした事例

裁決事例集 No.32 - 106頁

 請求人の関係する会社が刑事訴迫を受けるおそれがあったため、請求人が帳簿書類を破棄したことは、青色申告者たる請求人が負っている帳簿書類の備付け、記録又は保存を免責させるような特段の事由には該当しない。

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青色申告に係る年分の所得金額を更正する場合の理由付記の程度について適法とした事例

裁決事例集 No.38 - 93頁

 青色申告に係る年分の所得金額の更正を行う場合における、更正の理由付記の程度としては、納税者の申告のいかなる点にどのような誤りがあり、また、更正された数値がどのようにして算定されたものであるかが理解できる程度であれば足り、それ以上に事実関係の細部にわたり法的評価及び判断の根拠となった事実関係までも記載することは要しないものと解されるところ、本件においては、原処分庁は、請求人が同族会社に支払った本件建物の賃料の額及び医薬品の仕入れ金額の支払事実を否認して更正したものでなく、その支払金額が極めて高額であり、これらの行為又は計算に基づいて事業所得の金額を計算することは、請求人の所得税の負担を不当に減少させるものであると認定した上、所得税法第157条の規定を適用してその一部請求人のを事業所得の金額の計算上必要経費の額に算入することができないとしたものである旨を付記しており、処分の内容は特定され、その金額及びその金額の計算根拠も明示されているのであるから、請求人は、処分の理由を具体的に知ることができるものであって、本件更正通知書の理由付記の程度は、更正の理由付記として十分なものと認められる。

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青色申告の承認の取消し及び更正手続の違法を理由として、更正及び重加算税等の賦課決定を全部取り消した事例

裁決事例集 No.45 - 147頁

 請求人は、昭和57年には事業所得を生ずべき業務を廃止していると認められるから、昭和58年以後は、所得税法第151条第2項の規定により、青色申告の承認の効力は失われていることになるから、原処分庁が行った昭和60年分以後の青色申告の承認の取消しは、事実を誤認したものである。
 また、請求人は、昭和61年分の確定申告書とともに青色申告承認申請書を提出したものと推認され、昭和62年分以後は青色申告者であると認められる。したがって、原処分庁が行った昭和62年分から平成元年分までの更正通知書には、更正の理由が付記されていないので、各年分の更正は違法な処分である。

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1. 請求人が架空の必要経費を計上し、多額の所得金額を脱漏したばかりか、調査担当職員に帳簿書類の保存がない等の虚偽の答弁をしたことは、国税通則法第68条第1項に規定する「隠ぺい又は仮装」に当たるとされた事例2. 更正処分により賦課される事業税の額を見込額で必要経費に算入すべきとの請求人の主張が排斥された事例3. 請求人が会計データを保存していたフロッピーディスクに不具合が生じ、出力不可能となったこと等を理由に帳簿書類等を提示しなかったことは、青色申告承認取消事由に当たるとされた事例

裁決事例集 No.58 - 107頁

 請求人は、税理士でありながら、総勘定元帳・決算書に虚偽の記載をして架空の必要経費を計上し、多額の所得金額を脱漏したばかりか、その能力を有しながら帳簿書類の備付け等をせず、また、原処分庁の調査担当職員に対し帳簿書類の保存はない等の虚偽の答弁をし、さらに、異議審理庁による調査の際にも虚偽の資料を提出するなどしている事実が認められる。これらの事実に照らすと、請求人は、課税標準又は税額等の計算の基礎となる事実を仮装し確定申告書を提出したというべきであり、また、少なくとも申告当初から、真実の所得金額を隠ぺいしようという確定的な意図の下に、必要に応じ事後的に隠ぺいすることをも予定しつつ、多額の所得金額を脱漏し、所得金額をことさら過少に記載した内容虚偽の確定申告書を提出したというべきであって、本件確定申告書の提出は、単なる過少申告行為にとどまるものではなく、国税の課税標準等の計算の基礎となる事実について、隠ぺいしたところに基づき確定申告書を提出した場合に該当するから、原処分庁が国税通則法第68条第1項に基づいてした重加算税の賦課決定処分は適法である。

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請求人の帳簿書類の備付け及び記録の不備の程度は甚だ軽微であり、申告納税に対する信頼性が損なわれているとまではいえないことから、所得税法第150条第1項に基づく青色申告の承認の取消処分は、違法とはいえないものの不当な処分と評価せざるを得ないとした事例

平成22年12月1日裁決

 原処分庁は、請求人は、原処分庁所属の調査担当職員に、不動産所得に係る帳簿は作成していないとして現金出納帳を提示しなかったことから、現金出納帳を備え付けていないものと認められ、この事実は、請求人の不動産所得に係る帳簿書類の備付けが所得税法第148条《青色申告者の帳簿書類》第1項に規定する財務省令で定めるところに従って行われていない場合に該当するとともに、不動産所得に係る取引を記載した伝票を提示しなかっただけでなく、その存在を明らかにしなかったことから、当該伝票について確認することができず、帳簿書類の備付け、記録及び保存が正しく行われているか否かを判断することができなかったのであるから、同法第150条《青色申告の承認の取消し》第1項第1号に規定する青色申告の承認の取消事由に該当する事実がある旨主張する。
 しかしながら、青色申告の承認取消処分を行うか否かの判断に当たっては、所得税法第150条第1項第1号に該当する事実が形式的に存在するか否かだけでなく、請求人の業種業態、事業規模に応じた帳簿書類の備付け及び記録の状況、帳簿書類の提示の状況等の個々の事情をも総合的に勘案し、真に青色申告を維持するにふさわしくない場合に、取消処分を行うべきであるところ、請求人の帳簿書類の備付け、記録及び保存には、同号の青色申告の承認の取消し事由に該当する事実があるとは認められるものの、請求人の帳簿書類の備付け及び記録の不備の程度は、甚だ軽微なものと認められ、また、請求人が伝票のほか、通帳及び領収書等を集計して計算した各年分の所得金額は、十分正確性が担保されていると認められるから、帳簿書類の備付け及び記録の不備により請求人の申告納税に対する信頼性が損なわれているとまではいえない。
 また、請求人が自発的に伝票の存在を主張しなかった、又は提示しなかったからといって、直ちに原処分庁が請求人の記帳状況を確認できない状態であったとも認められないことから、これらの事情を総合勘案すると、本件取消処分は、違法とはいえないものの、真に青色申告を維持するにふさわしくない場合とまでは認められないから、不当な処分と評価せざるを得ず、これに反する原処分庁の主張には理由がない。

《参照条文等》
 所得税法第148条第1項、第150条第1項
 所得税法施行規則第56条

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レコーダーを作動させることに固執し帳簿書類を提示しなかったことは青色申告の承認の取消事由に該当するとした事例

平成24年6月1日裁決

《要旨》
 請求人は、調査担当職員の求めに応じて帳簿書類を提示したのであるから、青色申告の承認の取消処分は違法である旨主張する。
 しかしながら、請求人が主張する帳簿書類の提示は代理人である税理士がレコーダーを作動又は作動させる準備がされた状況下でのことであるところ、本件調査においてレコーダーによる会話の録音が必要であったとは認められず、調査担当職員が当該録音され得る状態での帳簿書類の検査を実施しなかった措置は相当である。そして、調査担当職員が、当該税理士に対してレコーダーによる会話の録音がない状態で帳簿書類を提示するよう求めたにも関わらず、当該税理士は、レコーダーを作動させることに固執し帳簿書類を提示せず、また、請求人も、当該税理士に任せているとして帳簿書類を提示しなかったのであるから、請求人は、正当な理由がないまま帳簿書類を提示しなかったことになるのであり、このことは、所得税法第150条《青色申告の承認の取消し》第1項第1号に規定する青色申告の承認の取消事由に該当する。

《参照条文等》
 所得税法第148条第1項、第150条第1項第1号

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青色申告に係る帳簿書類の提示を求めたというためには、総勘定元帳の保存がない場合には簡易帳簿の提示を求めるべきであったとした事例(まる1平成18年分以後の所得税の青色申告の承認の取消処分、まる2平成18年分〜平成23年分の所得税の各更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分、まる3平18.1.1〜平23.12.31の各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分・まる1まる2全部取消し、まる3全部取消し、一部取消し、棄却・平成25年11月1日裁決)

平成25年11月1日裁決

《要旨》
 原処分庁は、調査担当職員が請求人に対して青色申告に係る帳簿書類の提示を求めたにもかかわらず、請求人が当該帳簿書類を提出しなかったことから、所得税法第150条《青色申告の承認の取消し》第1項第1号に規定する青色申告の承認の取消事由に当たり、青色申告承認取消処分は適法である旨主張する。
 しかしながら、青色申告に係る帳簿書類の提示を求めたというためには、総勘定元帳の提示を求めるのみならず、当該総勘定元帳の保存がないこと等が確認された場合には、簡易帳簿(所得税法施行規則第56条《青色申告者の備え付けるべき帳簿書類》第1項ただし書の規定を受けた昭和42年大蔵省告示第112号が定める帳簿書類)の提示を求めるべきであったところ、調査担当職員は、請求人からの簡易帳簿の要件を満たす本件各出納帳の提示の申出を拒否するなど、青色申告に係る帳簿書類の備付け状況等の確認を行うために社会通念上当然に要求される程度の努力をしたとは認められないから、請求人に係る帳簿書類の備付け等は所得税法第150条第1項第1号に規定する青色申告の承認の取消事由に当たらず、青色申告承認取消処分は違法である。

《参照条文等》
 所得税法第148条、第150条
 所得税法施行規則第56条

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