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総則

公益法人等の収益事業の範囲

  1. 納付義務者
    1. 公益法人等の収益事業の範囲(10件)
    2. 人格のない社団等
    3. その他
  2. 所得の帰属

宗教法人である請求人の営む不動産貸付業及び駐車場業は、法人税施行令第5条第2項の要件に該当しないから、非収益事業には当たらないとした事例

裁決事例集 No.38 - 135頁

 法人税法施行令第5条第2項第1号に規定する「その事業がこれらの者の生活の保護に寄与しているもの」とは、その事業が営利を目的とせず、従事する身体障害者等の生活の保護に寄与することを主目的として行われていると認められる場合がこれに該当すると解すべきであり、具体的には当該事業に係る収入金額又は収益金額の相当部分を身体障害者等に給与等として支給しているか否かによって判断すべきものと解される。
 しかるに、本件事業において従事する者の全員に支給した給与の額の収入金額又は利益金額に占める割合は、身体障害者等の生活の保護に寄与している事業と認めるには余りにも低率であるから、本件事業は、これらの者の生活の保護に寄与しているものとは認められず、したがって、法人税法第7条“内国公益法人等の非収益事業所得等の非課税”の規定は適用されない。

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宗教法人の斎場貸収入等が、法人税法施行令第5条第1項第14号に規定する席貸業に係る収入金額であるとした事例

裁決事例集 No.39 - 145頁

 宗教法人が檀家以外の者に対して、当該法人に所属する僧侶が出仕しないで、告別式等の行事のため本堂等を利用に供し金員を収受していることは、宗教法人が他の者に単に本堂等を利用させる行為にすぎないから、収益事業である席貸業に該当する。

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学校法人が他の学校法人の行う講習会等のために施設を貸し付けることは、収益事業たる席貸業に当たるとした事例

裁決事例集 No.40 - 81頁

 収益事業から除外されるべきものとして法人税法施行令第5条第1項第14号ロ(3)に規定する「学校法人等がその主たる目的とする事業に関連して行う席貸業」とは、専ら学生、生徒や教職員が自ら行う教育、研究、研修等、あるいは、地域住民等が自ら行う社会教育、スポーツ、文化活動等に使用される場合のように、本来の公益的活動を支援し、推進するための席貸業をいうものと解すべきであって、学校法人等がその所有する講堂、体育館等の施設をその所有目的に沿って使用するために行う席貸業であっても、その施設を使用して営利事業その他の事業活動を行うためのものは、ここにいう収益事業たる席貸業から除かれるものには該当しないものと解すべきである。
 請求人は、他の学校法人が行う講習会等のためにその所有する施設を貸し付けて対価を得ているところ、当該他の学校法人が行う講習会等の業務は収益事業を含む事業活動として行われるものであるから、その貸付けは、収益事業たる席貸業から除外されるものには該当しない。

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寺院が受け取る墓石業者、弁当業者及び仏壇業者からの謝礼金は周旋業(収益事業)に係る収益とすべきであるとした事例

裁決事例集 No.42 - 63頁

 墓石業者等は、それぞれ相当以前から請求人との間で取引を行っており、それぞれの業界における寺院との取引に確立した商慣習に従って本件謝礼金を支払っているものと認められ、しかも請求人が請求人の檀家からの要請があれば墓石業者等へ取り次ぐこととしていることからして、周旋業を営んでいるとするのが相当である。

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宗教法人の墨跡収入は、法人税法施行令第5条第1項第10号に規定する請負業に係る収入であるとした事例

裁決事例集 No.43 - 175頁

 宗教法人である請求人の墨跡収入は、請求人と卸売業者である取引先との間で合意した墨跡の揮ごうに関する請負契約に基づいて得られたものと認められるから、法人税法施行令第5条第1項第10号に規定する請負業に係る収入である。

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新借地権者の本件土地の使用目的が限定されていなかったこと等から、本件土地の貸付けは「主として住宅の用に供される土地の貸付け」には該当せず、旧借地権者及び新借地権者から収受した本件名義書換料等及び新借地権者から収受した本件地代収入は収益事業に係る収入であるとした事例

裁決事例集 No.46 - 87頁

 「主として住宅の用に供される土地の貸付け」として非収益事業に係る収入であるか否かについては、本件賃貸借契約において、土地の使用が主として住宅の用に供されていたか否か、新借地権者の土地の使用状況等を総合的に判断すべきである。
 請求人は、新借地権者に堅牢建物の建設を承認したことが認められ、借地権譲渡承諾書では賃貸用ビル建設とあるが、その時点では具体的な建設計画もなく、請求人から住宅に供される旨の証拠の提出もなかったこと及び新借地権者は旧借地権者が本件建物から退去した後は入居者の募集もせず、生活の拠点としての住宅として使用したこともないこと等から、本件土地の名義書換料等及び新借地権者からの地代収入は収益事業に係る収入と認めるのが相当である。

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展示会場の出展小間を使用させる事業は、収益事業である席貸業に該当するとした事例

裁決事例集 No.52 - 79頁

  1.  請求人は、展示会場を賃借し、その賃借した展示会場を小間割りした小間を展示会に出展を希望する企業に使用させ対価を収入する事業について、収益事業である席貸業に該当しないと主張するが、本件事業は、出展小間代を受領して出展小間を展示会の開催期間の前後を通じて利用させるために賃貸するものであるから、席料ないし利用料を受領して座席、集会場等一定の場所を随時、時間や期間を区切って利用させるために賃貸する事業である席貸業に該当する。この場合の席貸業は、不動産の所有者が直接席貸しをしたものに限らない。
  2.  請求人は、展示会事業とは別の事業である席貸業を行っているわけではなく、本件事業は展示会事業に該当する旨主張するが、公益法人等の営む事業が収益事業に該当するかどうかは、その事業の内容、方法等の実質に応じて判定すべきであるから、仮に本件事業が請求人の主張するような意味での展示会事業であっても、税法の観点からみて本件事業が席貸業に該当すれば、収益事業となるのである。

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請求人がした霊園用土地の買取り及び販売は、土地を買収してこれを造成し譲渡するものであるから、収益事業(不動産販売業)に該当するとした事例

裁決事例集 No.78 - 309頁

 請求人は、墓地の販売権すなわち永代使用権を譲渡したにすぎないから請求人の行為は収益事業に当たらない旨主張する。
 しかしながら、請求人は、霊園売買契約書に基づき、県から開発行為の許可を取得し、多数の地権者から本件土地を購入し、当該土地を墓地に造成した上でこれを譲渡している。これらの請求人の行為は、住宅団地を造成し譲渡する行為や工業団地を造成し譲渡する行為などと同様に、土地を買収してこれを造成し譲渡するものであるから、一般私企業との間で競合関係を有する不動産販売業に当たり、さらに、継続して事業場を設けて営まれていたと認められるから、収益事業に当たるというべきである。

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墓地管理者が墓地使用権者から収受した管理料収入は、収益事業たる請負業に係る収入に該当すると認定した事例(平24.4.1〜平25.3.31の事業年度の法人税及び平24.4.1〜平25.3.31の課税事業年度の復興特別法人税の各更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の各通知処分・棄却・平成26年12月8日裁決)

平成26年12月8日裁決

《要旨》
 請求人は、墓地管理者として、墓地使用権者から永代使用料とは別個に管理料を収受しているところ、当該管理料は、墓地埋葬法等によって義務付けられた墓地全体の保全管理を行うための費用として収受しているのであるから、請負業に係る収入には該当しない旨主張する。
 しかしながら、請求人が定めた霊園使用規程等をみると、墳墓地の貸付けと共用部分の管理運営等を行う管理行為とは、業務形態として別個独立のものであるし、それぞれの事業についての対価も別個に定められている。さらに、請求人と墓地使用権者との間で、請求人が共用部分の管理行為に係る役務を提供すべきことを約し、墓地使用権者がその対価として当該管理料を支払う旨を約したのであって、請求人が提供する当該管理行為という役務の対価として当該管理料が支払われている関係にあるとみるのが相当である。したがって、当該管理行為は、収益事業たる請負業として行われたものであり、当該行為によって収受した当該管理料は、請負業に係る収入と認められる。

《参照条文等》
 法人税法第2条第13号
 法人税法施行令第5条第1項第10号

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公益法人等である請求人が行う事業が、その事業に従事する65歳以上の者(特定従事者)の生活の保護に寄与しているものに該当しないとした事例(平成29年3月期及び平成30年3月期の法人税の各更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の各通知処分、平成29年3月課税事業年度及び平成30年3月課税事業年度の地方法人税の各更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の各通知処分・棄却・令和2年3月5日裁決)

令和2年3月5日裁決

《ポイント》
 本事例は、法人税法施行令第5条第2項第2号に規定する「生活の保護に寄与しているもの」とは、事業に係る剰余金等の処分可能な金額の相当部分を特定従事者に給与等として支給していると認められる場合の当該事業をいい、剰余金等の処分可能な金額は、当該事業に係る利益の額に特定従事者への給与等支給額を含む人件費支給総額を加算した金額とすることが相当としたものである。

《要旨》
 請求人は、請求人が行う公の施設の管理受託の事業等(本件事業)の一部の業務については、法人税法施行令第5条《収益事業の範囲》第1項に規定する収益事業に該当しない旨主張する。また、本件事業のうち請負業として収益事業に該当するものについては、当該事業に従事する者の総数の半数以上が65歳以上の高齢者(特定従事者)であり、同条第2項第2号に規定する「生活の保護に寄与しているもの」か否かは、税引前当期正味財産増減額に特定従事者への給与等支給額のみを加算した金額に占める特定従事者への給与等支給額の割合により、緩やかに判断するのが相当であるから、当該事業は収益事業から除かれる旨主張する。
 しかしながら、請求人が収益事業に該当しないと主張する一部の業務は本件事業の付随行為であり、本件事業はその付随行為も含め全体として一つの請負業と認められる。また、「生活の保護に寄与しているもの」か否かについては、事業に係る剰余金等の処分可能な金額の相当部分を特定従事者に給与等として支給しているかどうかにより判定することになるが、剰余金等の処分可能な金額は、本件事業に係る利益の額(税引前当期正味財産増減額)に特定従事者への給与等支給額を含む人件費支給総額を加算した金額とすることが相当である。そして、これにより剰余金等の処分可能な金額に占める特定従事者への給与等支給額の割合を計算すると過半にも満たないから、本件事業は「生活の保護に寄与しているもの」に該当しない。

《参照条文等》
 法人税法第2条第13号、第4条第1、第7条
 法人税法施行令第5条第1項、第2項第2号
 法人税基本通達15−1−6
 特定非営利活動促進法第70条第1項

《参考判決・裁決》
 神戸地裁平成17年5月25日判決(税資255号順号10039)
 平成元年8月28日裁決(裁決事例集No.38)

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