所得金額の計算

損害賠償金

  1. 収益の帰属事業年度
    1. 通常の商品販売
    2. 委託販売
    3. 請負収入
    4. 仲介手数料収入
    5. 役務提供による収入
    6. 土地建物等の譲渡収入
    7. その他の譲渡収入
    8. 賃貸料収入
    9. 利息収入
    10. 債務免除益
    11. 契約金収入
    12. 名義書換料収入
    13. 過年度損益修正
    14. 帳簿締切日との関係
    15. 違約金収入
    16. 損害賠償金(2件)
    17. 権利変換に伴う収入
  2. 益金の額の範囲及び計算
  3. 損失の帰属事業年度
  4. 損金の額の範囲及び計算
  5. 圧縮記帳
  6. 引当金
  7. 繰越欠損金
  8. 借地権の設定等に伴う所得の計算
  9. 特殊な損益の計算
  10. 適格合併

従業員及び常務取締役が行った売上除外に係る法人税の更正処分等について、横領損失と損害賠償請求権に係る収益は同一事業年度に計上すべきであるとした事例

平成23年2月8日裁決

《ポイント》
 この事例は、いわゆる横領損失に係る損害賠償請求権に係る収益計上時期、重加算税の適用に係る「隠ぺい・仮装」の行為者及び更正の期間制限における「偽りその他不正の行為」該当性が主要な争点となったものであり、この事例では、経営に参画する常務取締役も横領行為者と認められること等から、これらの争点については原処分庁の主張を認めている。
 なお、更正の期間制限により消費税の更正処分がされなかったことにより、清算されずに残った仮受消費税等の法人税における収益計上時期も争点となったが、この事例では、消費税を納付しなくてよくなったこと(債務免除益)が確定した事業年度に益金の額に算入すべきとの判断から、原処分庁が仮受消費税等の計上事業年度にこれを益金の額(雑収入)に算入して行った原処分を取り消している。

《要旨》
 請求人は、会計帳簿の記載の基礎となる売上伝票の一部を抜き取るなどして行った売上除外(本件不正行為)は従業員R及びJ常務の個人的な不正行為であるから、まる1これに係る損害賠償請求権に係る収益は、権利確定主義により請求人が本件不正行為を把握した事業年度に計上すべきである旨、まる2本件不正行為を請求人の行為と同視して重加算税を課することはできない旨、まる3請求人に税額を免れる意図はないから偽りその他不正の行為はない旨主張する。
 しかしながら、まる1不法行為による損失の発生と損害賠償請求権の発生、確定は、原則として、これを同時に損金と益金とに計上すべきであるところ、請求人の経営に参画する常務取締役が本件不正行為の事実を把握していたのであり、通常人を基準とすると、請求人において、本件損害賠償請求権の存在、内容等を把握し得ず、権利行使を期待できないといえるような客観的状況にあったということはできず、権利の行使を期待することができないような場合にも当たらないから、本件損害賠償請求権の額は、本件不正行為による損失の発生した日の属する各事業年度の益金の額に算入され、まる2J常務の行為は請求人の行為と同視できるから、請求人に重加算税を課することができ、まる3本件不正行為は「偽りその他不正の行為」に当たるというべきである。

《参照条文等》
 法人税法第22条
 国税通則法第68条第1項、第70条第5項

《参考判決・裁決》
 東京高裁平成21年2月18日判決(訟月56巻5号1644頁)
 東京高裁平成18年1月18日判決(税資256号10265)

元従業員が請求人の仕入れた商品を窃取したことによる当該元従業員に対する損害賠償請求権を益金の額に算入すべきとした事例

令和元年5月16日裁決

《ポイント》
 本件は、従業員等による横領があった場合の損害賠償請求権について先例が示した判断と基本的に同様の判断をしたものであるが、請求人の隠蔽行為があったと認められないこと等から、更正処分の全部又は一部、重加算税の賦課決定処分の全部又は一部及び青色申告の承認取消処分が取り消されたものである。

《要旨》
 請求人は、請求人の従業員であった者(本件元従業員)が請求人の仕入れた商品を窃取してインターネットオークションで販売した取引(本件取引)による本件元従業員に対する損害賠償請求権(本件損害賠償請求権)の額は、本件取引の日を含む事業年度(本件事業年度)の終了時に確定できる状況になかった旨主張する。
 しかしながら、本件損害賠償請求権の額は、請求人が本件事業年度の当時において仕入れに係る資料と売上げ及び棚卸しに係る資料とを照合し、窃取された商品を特定した上、その商品に係る価額等に係る資料を保全することで計算することのできた金額を上回らないものと認められるから、通常人を基準とすれば、本件事業年度においてその金額を把握し得ないとはいえず、また、本件損害賠償請求権につき権利行使を期待できない客観的状況があったとはいえない。したがって、本件損害賠償請求権の確定による収益の額を本件事業年度の益金の額に算入すべきである。
 なお、本件元従業員の地位から、その行為が請求人の行為と同視されるとは認められず、請求人が法人税等及び消費税等の課税標準等及び税額等の計算の基礎となるべき事実を隠蔽したとは認められないこと等から、法人税の青色申告の承認取消処分を取り消すほか、法定申告期限から5年経過後の事業年度等の法人税等及び消費税等の更正処分及び重加算税の賦課決定処分の全部、法定申告期限から5年以内の事業年度等の法人税等の更正処分及び重加算税の賦課決定処分の一部並びに消費税等の更正処分及び重加算税の賦課決定処分の全部を取り消した。

《参照条文等》
 国税通則法第68条第1項、第70条第4項第1号
 法人税法第22条第2項、第4項、第127条第1項第3号
 法人税基本通達2-1-43

《参考判決・裁決》
 東京高裁平成21年2月18日判決(訟月56巻5号1644頁)

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