所得金額の計算

受贈益

  1. 収益の帰属事業年度
  2. 益金の額の範囲及び計算
    1. 土地等の譲渡収入
    2. 賃貸料収入
    3. 資産の評価益
    4. 有価証券の評価
    5. 有価証券の譲渡収入
    6. 立退料
    7. 受贈益(7件)
    8. 債権免除益
    9. 雑収入
    10. 貸付金利息
    11. 受取配当等
    12. その他の収益
    13. その他の資産の譲渡収益
  3. 損失の帰属事業年度
  4. 損金の額の範囲及び計算
  5. 圧縮記帳
  6. 引当金
  7. 繰越欠損金
  8. 借地権の設定等に伴う所得の計算
  9. 特殊な損益の計算
  10. 適格合併

売買価額が国庫補助金相当額を圧縮記帳した簿価相当額であっても低額譲受けに当たらないとした事例

裁決事例集 No.12 - 21頁

 中古建物の売買取引においては、公正な市場価額の認定が困難であるところから、減価償却後の簿価による方法も慣行として一般的に肯定されているが、中古建物の譲受けが国庫補助金相当額を圧縮記帳後の取得価額を基礎として減価償却した後の帳簿価額によってなされた場合においても、当該価額が実際取得価額(圧縮記帳前の価額)を基礎として減価償却の計算をしたところによる原処分庁の認定額及び鑑定価額と比し著しい開差がないこと並びに請求人が資産を取得した経緯等を併せ考慮すると、当該譲受価額は取得した時の時価として不相当であるということはできない。

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化粧品の特約店等の店舗内に化粧品メーカー等が設置した広告宣伝用資産は無償貸与されたものではなく受贈益に該当するとした事例

裁決事例集 No.21 - 81頁

 請求人と化粧品メーカー等との間で締結されたコーナー設置契約に、契約が終了したときは各化粧品メーカー等に本件広告宣伝用資産を返還する旨の定めがあるとしても、当該契約は化粧品メーカー等が当該資産を請求人に贈与し、中途解約又は倒産等の一定の解除条件が成就した場合には当該資産を請求人から各化粧品メーカー等に返還するという内容を含んだ解除条件付贈与契約とみるのが相当であると認められることから、当該資産は請求人に無償で貸与されているものではなく、請求人が当該資産を贈与により取得したものとしてその経済的利益の額を益金の額に算入すべきであるとした原処分は適法である。

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二輪車販売店のメーカーから無償で供与された資産は専らメーカーの広告宣伝を目的としたものではないとして受贈益を認定した事例

裁決事例集 No.28 - 163頁

 二輪車のメーカーが、その販売代理業を営む請求人の店舗に施工した内装設備等について、当該資産は、メーカーが一方的に設計施工したものであり、専らメーカーの広告宣伝用のものであって請求人に経済的利益の額はないと請求人は主張するが、当該資産は請求人がメーカーに要望して無償で取得したものであり、その使用状況等からみて請求人は便益を受けていると認められるので、当該資産のうちブラインドについてはメーカーの製品名等の表示があることからメーカー側の広告宣伝の目的も併せ有していると認められるので、その取得価額の3分の2に相当する額を、それ以外の資産については、その取得価額に相当する額を、それぞれ受贈益として益金の額に算入すべきである。

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請求人が前代表者から購入した土地の譲受価額は、その土地の時価に比し低廉であることから、時価と譲受価額との差額は受贈益として益金の額に算入されるとした事例

裁決事例集 No.37 - 153頁

 法人が資産を時価より低額で譲り受けた場合には、時価と譲受価額との差額について無償による財産の取得があったものとし、その譲受価額が時価より著しく低いか否かを問わず、益金の額に算入すべきものと解されるところ、本件土地の時価について、請求人の主張するホフマン式計算方法により算定することは、土地の評価方法として適当でなく、また、原処分庁の評価も、売買実例価額、精通者意見価格、公示評価を基に算定しているが、一部適当でない取引事例が含まれているなど適切でなく、審判所において算定したところ、70,982,700円と認められるから、この額と譲受価額30,000,000円との差額40,982,700円は請求人が実質的に贈与を受けたものとして益金の額に算入されるというべきである。

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譲受株式の時価と譲受価額との差額は益金の額に算入すべきであるとした事例

裁決事例集 No.63 - 269頁

 請求人は、相続税法第7条及び所得税基本通達40−2の取扱いを引用し、本件株式の時価と譲受価額との差額は「著しく低い」に該当しないから、受贈益が発生しない旨主張する。
 しかしながら、法人がある資産を時価より低額で譲受けた場合、時価と譲受価額との差額については無償による財産の取得があったものと考えられ、これを放置することは租税負担の公平を失することになるから、その差額について、法人税法第22条第2項により各事業年度の所得の計算上益金の額に算入すべきであり、この点において、法人税法と相続税法等との間に考え方の差異があるとしても、各々の租税の性質、目的等が異なる以上、やむを得ないものである。
 したがって、本件株式の時価と譲受価額との差額を益金の額に算入した原処分は、相当である。

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法人税法施行令第136条の4第1項の規定は、新たに設立された医療法人がその設立について贈与を受けた場合の課税関係について定めた規定であり、定款変更の方法により組織変更した場合には適用されないとした事例

平成23年5月30日裁決

《ポイント》
 この事例は、定款変更の方法により、社団である医療法人で出資持分の定めのあるものから定めのないものへ組織変更したことが、法人税法施行令第136条の4第1項に規定する「設立」に当たるか否かが争われたものである。

《要旨》
 請求人は、定款を変更して組織変更し、社団である医療法人で持分の定めのあるものから持分の定めのないものになったことは、事実上、持分の定めのある医療法人が清算され、持分の定めのない医療法人として請求人が設立されたものといえることから、定款変更による組織変更の際に贈与を受けた土地(本件各土地)の価額は、法人税法施行令第136条の4第1項に規定する「医療法人がその設立について贈与を受けた資産の価額」に該当し、当該贈与があった事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入されない旨主張する。
 しかしながら、法人税法施行令第136条の4第1項の規定は、社団である医療法人については、新たに設立された医療法人がその設立について贈与を受けた場合の課税関係について定めた規定であると解されるところ、請求人は、医療法施行規則第30条の39《持分の定めのある医療法人から持分の定めのない医療法人への移行》第1項の規定に基づき、定款変更の方法により持分の定めのない医療法人へ組織変更したものであり、従前の医療法人の解散、清算に係る各手続を経た上で新たに設立されたものではないから、本件各土地の価額は、法人税法施行令第136条の4第1項に規定する「医療法人がその設立について贈与を受けた資産の価額」には該当しない。

《参照条文等》
 法人税法施行令第136条の4第1項
 医療法施行規則第30条の39第1項

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請求人が負担すべき給与を関連会社が負担したとは認められないことから、請求人に受贈益が生じていないとした事例

平成23年8月2日裁決

《要旨》
 原処分庁は、請求人の関連会社(H社)が請求人の取締役に対して「褒賞金」の名目で支払った金員(第一金員)は、賞与として経理処理されているものの、当該取締役には当該関連会社の従業員等としての勤務実態はなく、当該取締役が当該関連会社に対し何らかの役務提供等を行ったという事実も認められないことから、請求人が支払うべき取締役に対する給与を当該関連会社が負担したものである旨主張する。
 しかしながら、当該取締役が当該関連会社に対して何らかの役務提供をしていないことは推認できるものの、請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によって認定できる一切の事実をもってしても、第一金員が当該関連会社の取締役の地位にあることを理由に支払われたとまでいうことはできない。したがって、請求人が負担すべき給与を当該関連会社が負担したとは認められないから、請求人に受贈益が生じたとする原処分庁の主張は採用できない。
 一方、請求人は、請求人の各関連会社(L社及びK社)が請求人の各取締役に対して「永年勤続賞金」又は「褒賞金」の名目で支払った各金員(第二金員、第三金員及び第四金員)は、当該各関連会社と当該各取締役との間で交わした合意書(本件各合意書)に基づき、営業指導や情報提供を行ったことに対する対価として支払ったものであり、請求人が支払うべき給与を当該各関連会社が負担したものではない旨主張する。
 しかしながら、まる1本件各合意書は調査時に提出されておらず、調査時におけるその存在又は成立に疑義があり、信用できないこと、まる2当該各取締役が提供した役務は、請求人の業務の一環としてなされたものであって当該各取締役が個人として提供したものとは認められないこと及びまる3当該各金員の支払が当該各取締役の請求人における永年勤続表彰に関して支払われていることなどを総合すると、当該各関連会社において当該各金員を支払う特段の理由はなく、請求人が支払うべき給与を当該各関連会社が支払ったものと認めるのが相当である。したがって、請求人には受贈益が生じたものと認められる。

《参照条文等》
 法人税法第22条

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