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その他の費用
- 収益の帰属事業年度
- 益金の額の範囲及び計算
- 損失の帰属事業年度
- 損金の額の範囲及び計算
- 圧縮記帳
- 引当金
- 繰越欠損金
- 借地権の設定等に伴う所得の計算
- 特殊な損益の計算
- 適格合併
預託金制ゴルフクラブの会員権につき、預託金の据置期間直前に、ゴルフクラブ経営会社との合意に基づいて、会員権が2口に分割され、預託金の一部が返還されたとしても退会したとみることができない以上、資産に計上している入会登録料を損金の額に算入することは認められないとした事例
請求人は、保有する預託金制ゴルフクラブの会員権につき、預託金の据置期間(10年間)経過直前において、当該経営会社から[1]預託金の一部は返還する旨、[2]2口の会員権に分割する旨、[3]残余の預託金はさらに10年間据え置く旨の申出を受け、その申出に合意したのであるが、請求人は、資産計上している返還されない入会登録料について、当該合意により当該ゴルフクラブを退会し、新たに入会契約を締結して2口の会員権を取得したのであるから、当該事業年度において入会登録料の損金算入を認めるべきである旨主張する。
しかし、請求人は、会員(法人正会員)としての地位を有したまま経営会社の申出に応じ、その結果、預託金の一部の返還を受けるとともに、会員としてプレーできるものが1名増加したというのが実態であって、既存の会員権の権利関係が変更されたにすぎず、退会を理由として本件入会契約が解除されたとみるのは相当ではなく、本件変更合意後においても依然として効力を有しているものと認めるのが相当であるから、入会登録料を本件事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入することは認められないとした本件更正処分は適法である。
平成13年2月27日裁決
代表者へのゴルフ会員権の譲渡は、名義変更停止期間中であったとはいえ、実体を伴った取引であるので、その譲渡に係る損失の計上は相当であるとした事例
請求人が、その所有していたゴルフ会員権を請求人の代表者に名義変更手続の停止中に譲渡し、その後、倶楽部側の都合により行われた預託金の償還期限の延長及び会員権の分割の手続きに請求人が同意をし、請求人名で手続きが行われているが、これをもって本件ゴルフ会員権の譲渡はなかったものというのは相当でなく、当倶楽部との関係においては名義人である請求人は将来名義変更が可能となった時点で、名義変更承認願い手続きに協力する義務を負っていたことから、代表者に代わって当該手続きを行ったにすぎないと解すべきである。
また、本件ゴルフ会員権の譲渡は、単に税額を軽減させるために行った不自然かつ不合理な譲渡であるとは認められず、正常な経済行為と認められることから、本件譲渡に係る固定資産売却損の金額は、本件事業年度の所得金額の計算上損金の額に算入するのが相当である。
平成14年10月2日裁決
旧養老保険契約から新養老保険契約への転換がその後取り消されても、転換に伴って発生した収益を転換時に遡って修正するのではなく、取り消されたときの事業年度の損金として処理するとした事例
請求人は、税務上の課税関係が発生しないとの認識で、旧養老保険契約から新養老保険契約への転換を行ったものであり、税務上の課税関係が発生することが判明した後、本件契約転換を取り消したことにより、旧養老保険契約が復元されて新養老保険契約は本件転換時に遡って取り消され、本件転換時には収益及び費用は発生していないと主張する。
しかしながら、法人の各事業年度の収益の額及び費用、損失の額は、法人税法第22条第4項において一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されると規定されており、この場合の各事業年度の収益又は費用、損失については、その発生原因が何であるかを問わず、当該事業年度中に生じたものはすべて当該事業年度に属する損益として認識することになる。
したがって、既往の事業年度において収益に計上された取引が当該事業年度において契約解除等により取り消されたとしても、収益に計上された事業年度に遡ってその収益を取り消すという修正処理をするのではなく、当該事業年度の損失として処理するというのが一般的な会計処理であり、これを本件についてみると、本件契約転換は本件事業年度において行われ、本件事業年度末までに取り消された事実はないことから、本件契約転換によって発生した収益及び費用、損失の額は本件事業年度の益金及び損金の額に算入されることになる。
平成14年12月19日裁決
信用保証料は、一定の契約に従い継続して役務の提供を受けるために支出した費用に当たるというべきであり、事業年度末において未経過の保証期間に対応する額は、前払費用とすることが相当であるとした事例
本件各信用保証は、請求人が本件銀行から融資を受けるに際し、信用保証協会に信用保証を委託し、同協会が本件銀行に信用保証書を交付することにより成立したものであり、保証債務の履行は保証期間が満了するまでの間は有効に成立している。そして、本件各信用保証料の額は、それぞれ、保証金額、保証期間(日数)、保証料率及び分割返済回数別係数を基に算定されている。
これらの事実を総合考慮すれば、本件各信用保証料が、本件各信用保証の保証期間の始期から満了時までの費用であることは明らかであるから、本件各信用保証料は、一定の契約に従い継続して役務の提供を受けるために支出した費用に当たるというべきである。
また、信用保証協会による本件各信用保証は、融資実行時に本件銀行に対して保証承諾をすることのみではその役務の提供は終了しておらず、本件銀行からの融資が実行された後も、その融資が継続している全期間にわたって信用保証を行うという役務を提供しているのであるから、「本件各信用保証料は、保証の承諾をしたことに対する対価で一時に損金の額に算入すべきである」とする請求人の主張は採用できない。
以上のとおり、本件各信用保証料は一定の契約に従い継続して役務の提供を受けるために支出した費用に当たるところ、本件各信用保証料には、本件各事業年度末において未経過の保証期間に係るものがあるので、未経過期間に対応する額は、前払費用として経理処理することが相当である。
なお、原処分庁は、前期に繰上完済した場合に返済を受ける信用保証料の額と当期に繰上完済した場合に返済を受ける信用保証料の額との差額を当期の損金の額に算入すべき費用の額と算定しているが、その算定方法は合理的であると認められる。
そうすると、本件各事業年度の所得金額及び納付すべき税額は、いずれも原処分の額と同額となる。
平成19年2月27日裁決
破産会社が関係会社の負債の弁済義務を負うとした判決に基づき支払われた弁済額は、もはや関係会社に対して求償権を行使できない状況にあるから、支払った事業年度の損金の額に算入することができるとした事例
原処分庁は、本件判決の確定により、破産会社が本件遅延損害金の支払義務を負うことが確定したとしても、仮に破産会社がA社に本件遅延損害金を弁済すると、破産会社は関係会社に対して求償債権を取得するから、最終的な破産会社の負担額は確定していない。また、仮に関係会社に対する求償債権が事実上貸倒れにあり、回収することができない状態にあったとしても、貸倒損失を損金の額に算入するためには損金経理をしておく必要があるが、破産会社は、本件遅延損害金につき損金経理をしていないから、貸倒損失を計上することができない旨主張する。
この点について、本件判決が確定しただけでは、破産会社が本件遅延損害金の全額を負担することが確定したということはできないから、本件判決の確定のみをもって、本件遅延損害金を、法人税法第22条第3項第2号の費用として、本件事業年度の損金の額に算入することはできない。
しかしながら、A社は、本件事業年度内において、地裁等から強制管理に係る本件配当金を受領してこれを全額貸金債権の元本に充当しているところ、その時点で破産会社は関係会社に対する当該配当金相当額の求償債権を有することになるが、破産会社が上記貸金債権の弁済責任を負うに至った経過や関係会社の財産状況等から、破産会社が当該配当金相当額の最終的な負担者となることは明らかであったと認められるから、そのような求償債権を、形式上、資産として計上しなければならないとすることは相当ではなく、破産会社は、当該配当金相当額を、法人税法第22条第3項第3号の損失として、本件事業年度の損金の額に算入することが許されるというべきである。
平成19年11月20日裁決
請求人が有する売掛債権は、その債権が消滅した事業年度の貸倒損失となるとした事例
請求人は、破産法人の破産について疑念を持ち、最後配当がされた後も売掛債権の回収を図ろうとし、最終的に当事業年度において回収不能と判断したことから、当事業年度の貸倒損失である旨主張する。
しかしながら、破産法人に係る破産手続はすべて適法に行われ、破産手続の終結決定があった日に法人格が消滅したものと認められることから、請求人が有する破産法人に対する売掛債権は当該終結決定の日に消滅したと認められる。そうすると、本件売掛債権は、当該終結決定の日を含む事業年度における貸倒損失であり、当事業年度の貸倒損失とすることはできない。
平成20年6月26日裁決
死亡保険金から支払義務を負う遺族補償金の最低限度である死亡保険金の50%相当額は、死亡保険金を受け取った事業年度において損金の額に算入されるとした事例
原処分庁は、本件傷害保険契約締結に関する本件同意書には従業員の死亡により受け取った保険金の50%以上を遺族補償に充てる旨記載されているが、本件同意書には具体的な金額は記載されておらず、また、遺族に対して具体的な支払金額を提示していないから、遺族補償金を受け取った事業年度の損金の額に算入することはできない旨主張する。
しかしながら、本件同意書は、従業員に対する災害補償規定を兼ねており、雇用者である請求人は従業員に対して保険死亡事故が生じた場合に死亡保険金の50%以上の金額を遺族補償として支払う旨を保証したものと認められ、(保険事故の発生に伴い)遺族補償金を支払う債務が成立していること、本件傷害保険契約の被保険者である従業員Mは、平成17年7月に交通事故により死亡しており、本件傷害保険契約に基づき遺族に対して具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること、死亡保険金の請求に際し傷害保険金請求書兼同意書の「受給者(法定相続人)」欄に、死亡したMの法定相続人の親権者の署名押印があることから、被保険者の遺族は少なくとも本件同意書に基づき死亡保険金の50%以上を請求する権利を有していると推認され、具体的に死亡保険金の50%相当額は算定できることから、死亡保険金を受け取る事業年度において当該保険金の50%相当額は損金の額に算入されるべきである。
平成20年5月30日裁決