所得金額の計算

売上原価

  1. 収益の帰属事業年度
  2. 益金の額の範囲及び計算
  3. 損失の帰属事業年度
  4. 損金の額の範囲及び計算
    1. 売上原価(8件)
    2. 山林ぶ育費
    3. 有価証券の評価
    4. 固定資産の取得価額
    5. 減価償却資産の償却等
    6. 繰延資産の償却等
    7. 役員報酬、賞与及び退職給与
    8. 使用人給与、賞与及び退職給与
    9. 寄付金
    10. 外注費
    11. 海外渡航費
    12. 賃貸料、使用料
    13. 売上割戻し
    14. 弔慰金
    15. 支払利息
    16. 為替差損益
    17. 貸倒損失及び債権償却特別勘定
    18. 横領損失
    19. 損害賠償金
    20. 不動産取引に係る手数料等
    21. 福利厚生費
    22. 資産の評価損
    23. 燃料費、消耗品費
    24. 雑損失
    25. 使途不明金
    26. その他の費用
  5. 圧縮記帳
  6. 引当金
  7. 繰越欠損金
  8. 借地権の設定等に伴う所得の計算
  9. 特殊な損益の計算
  10. 適格合併

仕入価格は、行政庁の認可価格によらず適正な見積価格によるべきであるとした事例

裁決事例集 No.40 - 136頁

 副生ガスの仕入れに当たって、卸供給業者が受けたガス事業法上の認可価格は、必ずしも法人税法に規定する所得金額の計算上損金の額に算入すべき確定した仕入価格であるとはいえず、精算によって価格は確定すると認められるところ、本件については事業年度末において仕入価額が未確定となっていたことから、請求人は事業年度末に未確定の仕入価額に代えて適正なガスの仕入価額を見積り計上するのが相当である。

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原処分庁が架空仕入れと認定した棚卸資産については、運送会社の送り状、請求人の商品棚卸表等周辺資料から、架空仕入れとする証拠に欠けるとした事例

裁決事例集 No.46 - 148頁

 原処分等は、請求人の代表者が、取引先に対して正規の取引とは別に架空の取引の納品書等を発行するよう依頼し、仕入代金を取引先の預金口座に振り込んだ後、架空取引に相当する金額を現地において現金で受領した事実を確認したとして、仕入商品の一部は架空取引であると認定した。
 しかし、1運送会社からの送り状及び請求書によれば、取引先から請求人へ納品されていることが認められていること、2請求人の期末商品棚卸表では、架空仕入れとした商品が在庫商品となっていること、3商品及びその品質表示票の商品番号を撮影した写真と、架空仕入れとした商品の商品番号とが一致すること、4請求人の代表者が取引先の現地に出張し現金を受領したとする日の前後の日に出張した事績がない日があること、5取引先の答述及びそれを裏付ける資料があいまいで信ぴょう性があるとは言いがたく、かつ、当該答述以外に架空仕入れがあることを裏付ける明らかな証拠資料もないことから、原処分庁が架空仕入れと認定した判断は、証拠に欠けるものといわなければならないので、更正処分の全部を取り消すのが相当である。

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請求人は、請負工事に係る工事現場から排出される残土等を所有地に搬入して、土石等を選別採取する一方、コンクリート廃材等を廃棄物処理施設に搬出しているが、後者の割合は極めて少量であるから、搬入時点で処理はいったん完了したものと認められ、当該処理費用を請負工事に係る工事原価として見積計上することはできないとした事例

裁決事例集 No.47 - 239頁

 請求人は、その請負工事に係る各工事現場から排出された残土等をその所有する本件土地に搬入しているが、本件事業年度に搬入した残土等につき、処理施設に搬入して処理するために要する費用を見積もって、これを完成工事原価の額として損金の額に算入すべきであるとして、更正の請求をした。
 しかし、[1]本件土地は、残土等を分別して、土砂及び石等を取得するとともにコンクリート廃材等を処理施設に搬送するための場所として判断されるものの、[2]処理施設に搬送されたコンクリート廃材等は、残土等の搬入量に比較して極めて少量なことから、本件土地は残土等を分別して処理施設に搬送するまでの仮置場ではなく、主として残土等請求人の事業に利用できるものを取得するための場所として使用されていると判断される。
 そうすると、請求人の請負工事に伴い発生する残土等の処理は、本件土地に搬入されたことにより、いったん完了したものと認められる。
 したがって、その後発生した費用は、本件事業年度の収益に対応する原価とは認められないから、その見積額を本件事業年度の損金の額に算入することはできない。

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請求人が保存する仕入れの証ひょうの名義は架空であるが、仕入金額が過大であるとした原処分は違法であるとした事例

裁決事例集 No.63 - 276頁

 原処分庁は、請求人が本件家具はブローカーを通じて仕入れたものであり正当であると主張しているのに対して、保存する仕入れの証憑の仕入先はK社であり、帳簿に記載した仕入先はM社であることから請求人の計上した仕入れは架空であると認定し、正しい本件家具の仕入金額は、輸入代行業者が税関に提出した輸入申告書に添付したインボイスの金額に諸費用を加算した金額であると主張する。
 しかしながら、同インボイスの金額が請求人の正しい商品純仕入高であるというためには、少なくとも請求人が同輸入代行業者に輸入代行を委託していることが前提であるが、この点を証明し得る証拠はない。一方、同入代行業者は、ブローカーと推認される業者から輸入代行手数料を収入していることが認められ、さらに、請求人が計上した家具の仕入金額は、同業他社の家具の仕入価格の水準と同程度であるところ、請求人の主張には、一定の信ぴょう性があるので、原処分は相当でない。

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出版業者が書店等から返品された雑誌等は棚卸資産であり、陳腐化の事実が生じ、かつ、損金経理によりその帳簿価額を減額した場合でない限り期末評価損は認められないとした事例

平成23年3月25日裁決

《要旨》
 請求人(月刊誌等の出版業)は、棚卸資産のうち、書店等から返品された雑誌等については、古紙としての価値があるにすぎないから、評価損の計上が認められるべきである旨主張する。
 しかしながら、棚卸資産について評価損が認められるのは、陳腐化等の事実が生じ、かつ、損金経理によりその帳簿価額を減額した場合であるところ、請求人の棚卸資産については評価損の計上が認められる状態にあったと認めるに足る証拠はなく、損金経理により棚卸資産の帳簿価額を減額した事実も認められないから、請求人は、当該雑誌等について、その評価損を損金の額に算入することはできない。
 一方、原処分庁は、平成20年12月期の請求人の棚卸資産の期首計上額が過少であると認めるに足る証拠の提出がされなかったことを理由に、売上原価が過少となっているとの請求人の主張は認められない旨主張する。
 しかしながら、請求人から提出された証拠資料によれば、棚卸資産の期首計上額が過少であると認められ、これにより過少となった売上原価の額を損金に算入して請求人の所得金額を再計算すると、更正処分の金額を下回ることから、更正処分はその一部を取り消すべきである。

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請求人から提出されたノート等に記載された取引の一部については、取引の事実及び金額が特定できるとした事例(1平16.9.1〜平18.8.31、平20.9.1〜平21.8.31の事業年度の法人税の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分、2平18.9.1〜平20.8.31、平21.9.1〜平23.8.31の事業年度の法人税の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分・1棄却、2一部取消し・平成26年12月8日裁決)

平成26年12月8日裁決

《要旨》
 原処分庁は、請求人の主張する原処分庁が更正処分により益金の額に算入した特定の取引先への売上げ(本件売上げ)に係る売上原価(本件売上原価)の額について、請求人の帳簿には、本件売上げに係る仕入れ(本件仕入れ)について継続的な記録がされていないことから、本件売上原価の支払いの事実も不明であり、確定申告書に添付された貸借対照表、損益計算書に記載された仕入金額及び棚卸金額について不相当と認められる事実はないなどとして、損金の額に算入済みであると推認される旨主張する。
 しかしながら、帳簿書類による以上に客観的信頼性のある資料及び計算方法に基づき、本件仕入れの事実及び金額を特定し、本件仕入れの金額が当初申告の仕入れ金額に含まれていないこと及び請求人の各事業年度の売上金額と対応することを具体的に主張立証できれば、当該主張が排斥されるものではなく、請求人から提出されたノート等に記載された取引の一部については、取引先、取引年月日、取引金額及び取引内容等により取引の事実及び金額が特定でき、当該取引金額が該当する事業年度の当初申告の仕入金額に含まれていないことが認められる。また、請求人の期首期末の棚卸金額については、不相当とする理由は認められないことから、当該取引金額は、当該事業年度の本件売上金額と対応関係を有するということができ、当該事業年度の損金の額に算入することが相当と認められる。

《参照条文等》
 法人税法第22条第3項、第4項

《参考判決・裁決》
 大阪地裁平成19年6月28日判決(税資257号順号10738)

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損金の額に算入した仕入額が過大であったとは認められず、請求人に隠蔽又は仮装の行為があったとは認められないとして重加算税の賦課決定処分を取り消した事例(1平成27年2月1日から平成28年1月31日までの事業年度以後の法人税の青色申告の承認の取消処分、2平成26年2月1日から平成27年1月31日まで、平成27年2月1日から平成28年1月31日まで及び平成28年2月1日から平成29年1月31日までの各事業年度の法人税の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分、平成26年2月1日から平成27年1月31日までの課税事業年度の復興特別法人税の3更正処分及び4重加算税の賦課決定処分、5平成27年2月1日から平成28年1月31日まで及び平成28年2月1日から平成29年1月31日までの各課税事業年度の地方法人税の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分・1245全部取消し、3一部取消し・令和2年2月5日裁決)

令和2年2月5日裁決

《ポイント》
 本事例は、請求人が海外の関係会社から輸入取引により仕入れた商品に係る仕入額(本件仕入額)について、請求人の代表者の申述からは、請求人がした輸入申告の価格が正しい価格であり、それが正しい仕入額であるという具体的理由が明らかではなく、また、本件代表者の申述のほかに原処分庁の主張を裏付ける証拠もないことから、請求人の本件輸入取引に係る仕入額が本件輸入申告額であるとはいえず、損金の額に算入された仕入額が過大であったとは認められないとしたものである。

《要旨》
 原処分庁は、請求人が海外の関係会社から輸入取引(本件輸入取引)により仕入れた商品に係る仕入額(本件仕入額)について、請求人は、本件仕入額を当該関係会社が発行した請求書(本件請求書)に記載された金額としているが、本件仕入額は、輸入申告における申告価格に基づき原処分庁が算出した額(本件輸入申告額)であるから、そうすると、請求人は本件仕入額を過大に計上しており、また、本件輸入取引において虚偽の請求書を作成し、本件請求書に基づき請求人が総勘定元帳に過大に仕入額を計上したことは、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する隠蔽又は仮装に該当する旨主張する。
 しかしながら、原処分庁がその主張を裏付ける証拠として指摘した、税関調査時における請求人の代表者(本件代表者)の申述からは、請求人がした輸入申告の価格が正しい価格であり、それが正しい仕入額であるという具体的理由が明らかではなく、また、本件代表者の申述のほかに原処分庁の主張を裏付ける証拠もないことから、請求人の本件輸入取引に係る仕入額が本件輸入申告額であるとはいえず、損金の額に算入された仕入額が過大であったとも認められない。また、本件輸入取引に係る仕入額につき、損金の額に算入された仕入額が過大であったとは認められないことから、請求人に隠蔽又は仮装の行為があったとは認められない。

《参照条文等》
 法人税法第22条第3項
 国税通則法第68条第2項

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請求人が購入した電子マネーの購入対価について、その一部は売上原価として損金の額に算入されるとした事例(1平成27年1月1日から平成27年12月31日まで、平成28年1月1日から平成28年12月31日まで、平成29年1月1日から平成29年12月31日まで、平成30年1月1日から平成30年12月31日まで及び平成31年1月1日から平成31年2月28日までの各事業年度の法人税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分、2平成27年1月1日から平成27年12月31日まで、平成28年1月1日から平成28年12月31日まで、平成29年1月1日から平成29年12月31日まで及び平成30年1月1日から平成30年12月31日までの各課税事業年度の地方法人税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分、3平成31年1月1日から平成31年2月28日までの課税事業年度の地方法人税の更正処分、4平成27年1月1日から平成27年12月31日まで、平成28年1月1日から平成28年12月31日まで、平成29年1月1日から平成29年12月31日まで、平成30年1月1日から平成30年12月31日まで及び平成31年1月1日から平成31年2月28日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・12全部取消し、一部取消し、3全部取消し、4棄却)

令和4年8月4日裁決

《ポイント》
 本事例は、電子マネーの購入対価が請求人の損金の額に算入されるか否かについて、関連会社における当該電子マネーの管理状況や請求人への入金の状況等から、当該電子マネーの一部は当該関連会社に譲渡したと認められ、その購入対価は請求人の売上原価に該当すると判断した事例である。

《要旨》
 原処分庁は、請求人が購入した電子マネーについて、請求人の業務との関連性を有する用途に使用された事実が確認できないことから、当該電子マネーの購入対価は損金の額に算入されない旨主張する。
 しかしながら、請求人が提出した証拠資料から、当該電子マネーの一部は関係法人に譲渡した事実が認められることから、その取得価額は売上原価として損金の額に算入される。他方、その他の電子マネーについては、その費途が確認できず、請求人の業務との関連性の有無が明らかでないことから、その取得価額を損金の額に算入することはできない。

《参照条文等》
 法人税法第22条

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