税額の計算

所得税額の控除

  1. 同族会社の留保金課税
  2. 税額控除
    1. 所得税額の控除(5件)
    2. 仮装経理に基づく更正に伴う法人税額の控除
    3. 外国税額控除

法人税法第68条第4項に規定する所得税に係る税額控除のゆうじょ規定は当然に適用されるものではないとした事例

裁決事例集 No.22 - 152頁

 本件著作権収入に係る所得税額を損金の額に算入した更正の理由の付記がないことについては、請求人の提出した確定申告書に本件所得税額につき控除を受けるべき金額の計算に関する明細の記載が全くなく、当該所得税額の控除を受ける意思表示がないので、当然に損金の額に算入したにすぎず、このことまでも付記をする必要はないとするのが相当である。
 なお、法人税法第68条第4項に規定するゆうじょ規定は、確定申告書に控除を受けるべき金額及びその計算に関する明細の記載がなかったことについて、やむを得ない事情があった場合に適用されるものであって、本件所得税額が法人税の前払いの性格を有することをもって当然に適用されるものではなく、また、外国法人に内国民待遇を付与するために適用されるものでもない。

トップに戻る

外国人女性をキャバレー等に派遣したことにより収受した対価は、所得税法第174条第4号に規定する報酬又は料金に該当せず、当該対価に対して課される所得税の額はないとした事例

裁決事例集 No.28 - 264頁

 外国から女性を招致して国内のキャバレー等に派遣し、その役務を提供することを業とする請求人は、その派遣先から収受した対価が所得税法第174条第4号及び同法施行令第298条第4項に規定する楽士、舞踏家、歌手の役務に関する報酬又は料金に該当するとして当該対価につき源泉徴収されるべき所得税相当額は法人税額から控除し、控除しきれなかった所得税は還付すべきであると主張するが、当該派遣先における外国人女性の実際の役務提供の内容は、主として客を接待し、遊興飲食させるホステス業務に従事していたと認められるので、当該対価は同号に規定する報酬又は料金に該当せず、当該対価に対し課される所得税の額はないから請求人の主張には理由がない。

トップに戻る

法人税法第141条第1号に掲げる外国法人が同条第4号に掲げる外国法人であった期間に係る匿名組合の収益分配金(源泉分離課税制度の適用対象所得)の支払を受けた際に源泉徴収された所得税の額は、収益分配金を実際に受領した日の属する事業年度の法人税の申告においても所得税額控除の適用はできないとした事例

裁決事例集 No.69 - 200頁

 法人税法第141条第1号に掲げる外国法人である審査請求人(以下「請求人」という。)が、同条第4号に掲げる外国法人に該当していた期間に係る匿名組合の収益分配金(源泉分離課税制度の適用対象所得)の支払を受けた際に源泉徴収された所得税の額(以下「本件所得税額」という。)を同法第144条の規定に基づき法人税の額から控除する所得税の額として申告したことについて、同法第9条、第68条、第141条及び第144条の趣旨に照らすと、外国法人に係るこれらの規定に基づく各事業年度の法人税の額から控除する所得税の額は、確定申告を要することとされている法人税の課税標準とされる所得に対するものに限られていると解するの相当であり、本件所得税額は、請求人の法人税の額から控除する所得税の額とは認められない。

トップに戻る

法人税の額から控除を受けるべき「みなし配当に係る所得税」について、別表六(一)における記載すべき箇所を見出せなかったために確定申告書及びそれに添付した別表六(一)に当該所得税の額を記載しなかったとしても、それは法人税法第68条第4項に規定する「やむを得ない事情」には当たらないとした事例

裁決事例集 No.71 - 448頁

 請求人は、法人税法第68条第1項の規定により法人税の額から控除を受けるべき所得税の額を確定申告書に記載しなかったことについて、確定申告書に添付する別表六(一)の様式の記載の表記に惑わされ、控除を受けるべき所得税額を記載する箇所を見出せなかったため、このことは「やむを得ない事情」に当たる旨主張する。
 しかしながら、「やむを得ない事情」とは、当該申告がされなかったことが、客観的にみて当該法人の責めに帰すべき事情に基づくものではない場合をいうと解するのが相当である。
 本件についてみるに、別表六(一)の記載要領は、法人税法施行規則(別表六(一))の記載要領に明示されているのであるから、請求人が、法人税の額から控除を受けるべき所得税について、同別表に記載する箇所を見出せなかったため、確定申告書及びそれに添付する別表六(一)に記載をしなかったとしても、それは、請求人の法の不知又は誤解に基づくものであって、請求人の責めに帰すべき事情に基づくものではないとはいえず、当該「やむを得ない事情」には当たらない。

トップに戻る

法人税額から控除される所得税の額の計算において、配当の計算期間のうちにその元本を所有していた期間の占める割合を判断した事例(1平成24年12月1日から平成25年11月30日までの事業年度の法人税の更正処分、1平成25年12月1日から平成26年11月30日までの事業年度の法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・1棄却、1一部取消し・平成29年1月26日裁決)

平成29年1月26日裁決

《ポイント》
 本事例は、法人税法施行令第140条の2第2項に規定する判定対象配当等がその支払に係る基準日の1年前の日以前に設立された法人からその設立の日以後最初に支払われる剰余金配当等である場合において、法人税の額から控除される所得税の額について判断した事例である。

《要旨》
 請求人が所有する関連会社の株式(本件株式)に対する配当(本件配当)について、本件配当の計算の基礎となった期間(配当計算期間)の月数のうちに請求人がその元本を所有していた期間(元本所有期間)の月数の占める割合(所有期間割合)の算定に当たり、原処分庁は、配当計算期間の月数は、平成25年6月1日から平成26年5月31日までの12か月であり、請求人の元本所有期間の月数は、本件株式を取得した日である同年3月18日から同年5月31日までの3か月であるから、法人税法施行令(平成25年政令第166号による改正前のもの)第140条の2《法人税額から控除する所得税額の計算》第2項の規定により所有期間割合(3か月/12か月)は0.250となる旨主張する一方、請求人は、配当計算期間の月数は、平成26年6月1日から当該関連会社の臨時株主総会における配当決議の日である同年9月18日までの4か月であり、請求人の元本所有期間の月数は、同年6月1日から同年9月18日までの4か月であるから、同項の規定により所有期間割合(4か月/4か月)は1.000となる旨主張する。
 しかしながら、本件配当は、同項に規定する判定対象配当等がその1年前の日以前に設立された法人からその設立の日以後最初に支払われる剰余金配当等である場合に該当すると認められるから、配当計算期間の初日は、本件配当の支払に係る基準日である平成26年9月18日の1年前の日の翌日である平成25年9月19日となり、配当計算期間の月数は、同日から本件配当の基準日である平成26年9月18日までの12か月となる。そして、請求人の元本所有期間の月数は、本件株式を取得した日である同年3月18日から同年9月18日までの7か月と認められるから、同項の規定により所有期間割合(7か月/12か月)は0.584となる。したがって、これを前提に法人税額から控除される所得税等の額を計算すると、原処分の一部を取り消すべきである。

《参照条文等》
 法人税法第68条
 法人税法施行令(平成25年政令第166号による改正前のもの)第140条の2

トップに戻る