申告、納付及び還付等

欠損金の繰戻しによる還付

  1. 欠損金の繰戻しによる還付(9件)

合併法人の欠損金を被合併法人の所得に対する法人税額に繰り戻して還付することはできないとした事例

裁決事例集 No.11 - 34頁

 被合併法人時代の所得の計算は、合併の日をもって打ち切ることを建前としており、最終事業年度の末日である合併の日にすべて遮断されるのであるから、合併法人の欠損金額の繰戻し還付の請求が合併前の被合併法人の所得金額に及ぶと解することはできない。

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清算第1期を還付所得事業年度とし、清算第2期を欠損事業年度とする欠損金の繰戻しによる還付請求は不適法であるとした事例

裁決事例集 No.14 - 36頁

 清算中の法人が継続した場合において、清算第1期を還付所得事業年度とし、清算第2期を欠損事業年度とする欠損金の繰戻しによる還付請求は法人税法第119条“継続等の場合の法人税額の特例”第1号の規定により請求人の納付した清算第1期の清算事業年度予納申告書に係る法人税の額に相当する金額をもって清算第1期に係る各事業年度の所得に対する法人税額とされることとなるにしても、このことによって請求人が、清算期間の各事業年度について同法第81条“欠損金の繰戻しによる還付”に規定する青色申告書である確定申告書を提出したことにはならない。したがって、法人税法上、明文の規定がない限り、欠損金の繰戻しによる還付請求は認められないとした原処分は相当である。

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欠損金の繰戻しによる法人税の還付請求を認容すべき「営業の全部の相当期間の休止」の事実はないとした事例

裁決事例集 No.33 - 124頁

 請求人は法人税法施行令第156条の「営業の全部の相当期間の休止」に当たる事実があるから、欠損金の繰戻しによる法人税還付請求を認めるべきであると主張するが、「営業の全部の相当期間の休止」とは事業閉鎖等に類する事態によって残財の販売等の行為以外の商行為の全部を一定期間休止する場合をいうものと解されるところ、欠損事業年度中請求人の製造プラントは、操業度の低下は認められるものの1か月程度の休止にとどまり、かつ、主取引先の取引量の急激な減少があっても製品の販売及び原材料の仕入れは絶えることなく継続している事実が認められるから、請求人の主張を採用することはできない。

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請求人の行った営業の譲渡は、法人税法第81条第4項所定の「営業の全部の譲渡その他これに準ずる事実」に該当するとして、原処分を取り消した事例

裁決事例集 No.36 - 158頁

 原処分庁は、営業譲渡後も実質的に営業が継続していると認められる場合には法人税法第81条第4項の規定の適用はない旨主張するが、営業の譲渡の相手方が譲渡者の完全に支配する会社であるからといって、その営業譲渡の効力が当然に無効であると解する根拠はなく、請求人と営業の譲受者とは、別個の法人格を有し、法律上はこの営業の継続性はないと認められるのみならず、請求人の営業活動の実態からみて、本件営業譲渡が営業の重要な部分の譲渡に当たることが明らかであり、かつ、請求人の状態は、欠損金の繰越控除の規定の適用を受けることが困難となると認められるものでるから、本件欠損金繰戻しによる還付請求には、租税特別措置法(昭和63年法律第4号による改正前のもの)第66条の16ただし書の規定により、法人税法第81条第4項の規定の適用があり、同条第1項の規定の準用があるというべきであって、これに反する原処分は違法である。

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内国法人につき解散等の事実が生じた場合における欠損金の繰戻しによる還付請求は、欠損事業年度の確定申告書を提出期限までに提出することはその要件とされていないとした事例

裁決事例集 No.41 - 240頁

 法人税法第81条第4項の規定によれば、内国法人につき解散等の事実が生じた場合における欠損金の繰戻しによる還付請求は、還付所得事業年度から欠損事業年度までの各事業年度について連続して青色申告書である確定申告書を提出し、かつ、解散等の事実が生じた日以後1年以内に還付請求書を提出することは適用要件とされているが、欠損事業年度の確定申告書を提出期限までに提出することはその要件とされていない。

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期限後に提出された欠損金の繰戻しによる還付請求は、当該事業年度の減額更正、前事業年度の増額更正という処分があった後にされたものだからといって、法人税法第81条の規定する要件を満たすものではないとした事例

裁決事例集 No.47 - 329頁

 原処分庁は、平成4年6月30日付で、平成2年1月期につき増額の更正処分をするとともに、平成3年1月期について、減額更正処分(欠損金額を認定)をしたこと、請求人は、平成4年8月7日に、平成3年1月期の欠損金の額の全額を平成2年1月期に繰り戻しての還付請求書を提出したことが認められる。
 請求人は、欠損金の繰戻しによる還付請求書の提出が期限後になったのは、原処分庁の平成2年1月期に係る更正処分の遅れに起因するものであって、これは真にやむを得ない事情に当たるものであるから、欠損金の繰戻しによる還付請求は認められるべきであると主張する。しかし、欠損事業年度となった平成3年1月期につき提出された確定申告書は欠損金額の記載のないものであり、かつ、本件還付請求書もその提出期限を徒過して提出されているから、本件還付請求は、法人税法第81条第1項及び第3項“欠損金の繰戻しによる還付”に規定する要件を満たすものではない。
 また、更正処分は、国税通則法第70条に定める期間内であれば、これをなし得るのであって、翌事業年度の確定申告期限までにこれをしなければならないとする規定も存しないから、請求人の主張は相当でない。

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被合併法人の解散事業年度が、更正処分により欠損事業年度になった場合における法人税の欠損金の繰戻しによる還付請求書についても、合併による解散の事実が生じた日以後1年以内に提出しなければならないとされた事例

裁決事例集 No.56 - 274頁

 請求人は、法人税の欠損金の繰戻しによる還付請求書(法人税法第81条)が合併による解散の事実が生じた日以後1年以内に提出できなかったのは、更正処分が当該期限を既に徒過していたのが原因であること、また、請求人は当該更正処分により本件事業年度が欠損事業年度になったため本件還付請求を提出したのであるから、更正処分の時期によって欠損金の繰戻しによる還付請求ができないのは不公平な取扱いであり法の趣旨に反する旨主張する。
 しかしながら、内国法人につき合併による解散の事実が生じた場合における欠損金の繰戻しによる還付請求書は、合併による解散の事実が生じた日以後1年以内であればいつでも提出できることであって更正処分がなければできないものではないこと、一件記録を精査してみても請求人がその責に帰すべからざる事由を見いだすことはできないこと、欠損金の還付請求が期限を徒過した場合のゆうじょ規定も存しないこと及び更正処分は国税通則法第70条“国税の更正、決定等の期間制限の特例”に規定する期限内であればこれをなし得るものであり、合併による解散の事実が生じた日から1年以内にこれをしなければならないとする規定も存しないことから、請求人の主張には理由がない。

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合併存続法人に生じた欠損金額を被合併法人の所得金額を対象として欠損金の繰戻請求を認めるべきであるとの請求人の主張に対して、合併存続人と被合併法人では法人格が異なることから還付請求は認められないとして、これを排斥した事例

裁決事例集 No.59 - 191頁

 商法第103条[合併の効果]は、吸収合併の場合、合併存続法人が被合併法人の権利義務を承継する旨規定しているところ、この合併により合併存続法人が承継する権利義務は、被合併法人の私法上の実質的な積極的、消極的財産であって、計算上の数額である資本や各準備金、あるいは単なる経理計算関係などはこれに該当するものではなく、また、被合併法人の公法上の権利義務が合併存続法人に承継されるかどうかは、当該公法上の権利義務の性質によって個別に検討されるべきものである。
 そして、法人税法第81条第1項の規定は、法人税は各事業年度ごとに所得金額を算定し、これによって課税する原則の例外として青色申告法人に限り欠損金の繰戻しの制度を認めているものであるが、前述のとおり計算関係にすぎない合併存続法人の欠損金が合併の効果として合併前の被合併法人に当然に及ぶと解することはできず、その繰戻しが認められるためには法人税法上、別段の根拠が必要であると解される。しかしながら、同条の欠損金の繰戻し制度について、合併後の合併存続法人の欠損金につき、合併前の被合併法人の所得についてまで及ぶことを認めた規定はない。
 また、この制度は各事業年度ごとの所得によって課税する原則を貫くと各事業年度を通じて所得計算をする場合に比して、税負担が加重となる場合が生ずるので、これを緩和して当該法人の企業活動の健全を期待保障しようとするものであるから、この趣旨からして欠損金の繰戻しが許されるには当該法人が人格の同一性を保っていることを前提とするものと解されるところ、合併存続法人と被合併法人は人格の同一性を保っているということはできないことから、請求人の主張を認めることはできない。

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法人税法第81条第4項に規定する「営業の全部の譲渡が生じた日は、営業譲渡について、中小企業等協同組合法の規定に基づき所管行政庁の認可を受けた日後の日であるとされた事例

裁決事例集 No.60 - 453頁

 請求人は、欠損金の繰戻しによる法人税額の還付請求において、法人税法第81条第4項に規定する「営業の全部の譲渡が生じた日」は、譲受人との間で営業譲渡に合意した仮契約書を取り交わした日である旨主張するが、請求人の事業を規制する中小企業等協同組合法の規定において、営業譲渡については所管行政庁の認可を受けてはじめてその効力が生ずるものとされていることから、請求人の営業の全部の譲渡が生じた日は、所管行政庁の認可を受けた日後、店舗、預金及び固定資産の引渡し並びに従業員の解雇及び再雇用等が行われた日であると認めるのが相当であり、当該日をもって欠損金の繰戻し請求に理由がないとした原処分は相当である

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