更正及び決定

更正の理由附記

  1. 更正の理由附記(4件)
  2. 推計による更正又は決定
  3. 同族会社の行為又は計算の否認
  4. 更正の要件

更正の理由の「加算」欄に記載された文言からは、なぜ寄付金に当たると判断したのか具体的な理由の記載が認められず、その理由を知ることができないので、本件更正処分に係る理由附記は法人税法第130条第2項に規定する要件を満たさない不適法なものであるとされた事例

裁決事例集 No.57 - 371頁

 法人税法第130条第2項において、青色申告に係る法人税につき更正をする場合に更正の理由を附記すべき旨規定している趣旨は、処分庁の判断の慎重及び合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由をその相手方である納税者に知らせて不服申立てに便宜を与えることにあると解されている。
 この趣旨からすると、処分の理由は、他の事情から納税者がこれを了知していたか否かに関わりなく、更正の通知書に附記された更正の理由の文面から明らかであることが必要であり、記載すべき理由附記の程度は、事実に対する法的評価の相違による更正処分の場合には帳簿書類以上に信ぴょう力のある資料を摘示する必要はないにしても、なぜそのような判断に至ったかという原処分庁の判断過程については、これを省略することなく、具体的に記載する必要があると解するのが相当である。
 これを本件理由附記についてみると、更正の理由の「加算」欄に記載された文言からは、原処分庁が当初修正申告書に係る寄付金の損金算入額の計算が正当であるとの結論に至った判断過程、すなわち、なぜ本件支給金額が寄付金に当たると判断したのか具体的な理由の記載が認められず、その理由を知ることができないので、本件理由附記は、法人税法第130条第2項に規定する要件を満たさない不適法なものといわざるを得ない。

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当初申告において補償金が非課税であると誤認して収入にも計上せず修正申告において特別控除を適用してきたが、経理担当者の入院による収入不計上及び収用の特別控除の手続きの不知はやむを得ない事情に当たらず、ゆうじょ規定は適用できないとした事例

裁決事例集 No.61 - 427頁

 請求人は、租税特別措置法第65条の2(収用換地等の場合の特別控除)第5項のいわゆるゆうじょ規定の適用を修正申告において求めてきたものであるが、同規定における「やむを得ない事情」とは、客観的にみて本人の責めに帰すことのできない事情をいうものと解される。
 しかし請求人の主張する、[1]経理担当者が入院したことから本件補償金に係る収入が会計帳簿に計上されなかったこと、[2]市役所から非課税であると聞いたため関与税理士に連絡せず申告もれになったこと及び[3]収用等の特別控除に手続きが必要であることはを知らなかったことは、いずれも請求人の主観的判断、個人的事情に過ぎず、ゆうじょ規定の適用におけるやむを得ない事情があったということはできず、かえって請求人の代表者は請求人の名義で本件補償金に係る契約を締結し、本件補償金が請求人名義の預金口座に振り込まれたことを知っていたのであるから、本件補償金が請求人の収入であることを容易に認識し得たと認められ、これを収入に計上せず、確定申告に収用換地等の場合の特別控除の記載又は明細書の添付をしなかったことは、請求人自身の責めに帰すべき事情により生じたものというべきものである。
 また、請求人は、修正申告書において租税特別措置法第65条の2(収用換地等の場合の特別控除)第5項のいわゆるゆうじょ規定の適用を求めたのであるから、当該修正申告書を更正する場合にはゆうじょ規定を適用しない理由を更正理由書に附記すべきである旨主張するが、更正通知書には租税特別措置法第65条の2は確定申告書等において適用されるものであるところ、修正申告書は確定申告書等には該当しないから収用等の特別控除額を損金の額に算入できない旨記載されており、この記載内容は更正の理由附記の趣旨を満たしたものであることが認められる。

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更正の理由書に簿外収入の年月日の記載が欠けていても、それだけでは理由附記に不備があるとはいえず、また、請求人の経理担当者が行った仮装行為は請求人の行為と同一視でき重加算税の賦課は適法であるとした事例

裁決事例集 No.64 - 367頁

 請求人が、コンビニエンスストアの開店に際し、受け取った開店祝い金及び支出した開店祝賀会費用を簿外としていたとしてなされた本件更正に係る更正通知書の理由付記につき、請求人は、更正の根拠となった大学ノートに記載された入金年月日が摘示されておらず、理由附記に不備があるため、更正処分は違法である旨主張する。
 しかしながら、法人税法第130条第2項において、更正通知書に更正の理由を附記しなければならない旨が規定されているのは、青色申告制度の趣旨にかんがみ、原処分庁の判断の慎重、合理性を担保して、その恣意性を抑制するとともに、更正の理由を相手方に知らせて不服申立ての便宜を与える趣旨によるところ、本件通知書には、更正の原因となる事実を示す資料として大学ノートが、また、別紙において入金先及び入金額が摘示されおり、この趣旨を充足していると認められるため、入金年月日が摘示されていないことをもって、理由附記に不備があるということはできない。
 請求人は、活魚運搬車の水槽載替え(以下「本件取引」という。)に係る費用につき、本件取引の発注先(以下「本件取引先」という。)から収受した平成13年6月30日付の請求書(以下「本件請求書」という。)に基づいて平成13年6月期の修繕費としたものであって、請求人の経理担当者Lが、費用を繰上計上するため、本件取引先に依頼して本件請求書を発行してもらったとの事実はないから、重加算税を賦課した原処分は違法である旨主張する。
 しかしながら、本件取引先に対する調査によれば、Lが、活魚運搬車の引渡しを受けていないにもかかわらず、本件取引先に対して前倒しでの本件請求書の作成を依頼していた事実が認められ、そして、納税者の申告行為に重要な関係を有する部門(経理部門等)に所属し、相当な権限を有する地位にある者の隠ぺい又は仮装の行為は、特段の事情がない限り、納税者本人の行為と同視すべきところ、Lは請求人の経理担当責任者であり、請求人の確定申告書には経理担当者として同人の記名押印がされており、Lは請求人の申告行為に重要な関係を有する部門に所属し、相当な地位に就いていると認められるから、同人が行った行為は請求人の行為と同視すべきである。したがって、重加算税の賦課決定処分は適法である。

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更正通知書に付記した理由に不備があるとした事例

平成24年4月9日裁決

《要旨》
 原処分庁は、更正通知書に付記した理由については、架空の資産(建物附属設備)に係る減価償却費は損金の額に算入されないという法的評価を行ったものであるから、更正の理由付記に求められる要件を満たしている旨主張する。
 しかしながら、本件更正処分の態様は、請求人の固定資産台帳の記載を認めず、建物附属設備を架空の資産であると判断したものであるから、帳簿の記載自体を認めないで更正処分を行う場合に該当するところ、当該更正通知書に付記された理由は、どのような根拠で架空の資産と判断したのかについて資料の摘示がなく、その判断過程も記載されていないことから、法人税法第130条《青色申告書等に係る更正》第2項に規定する要件を満たさない違法なものである。

《参照条文等》
 法人税法第130条第2項

《参考判決・裁決》
 最高裁昭和60年4月23日第三小法廷判決(民集39巻3号850頁)

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