財産取得の時期

公正証書等による贈与

  1. 財産取得の時期
    1. 公正証書等による贈与(6件)
    2. 土地、建物等の贈与
    3. 死後認知による財産の取得

公正証書による贈与契約は相続税回避のための仮装行為であるとした事例

裁決事例集 No.3 - 30頁

 請求人は、本件贈与契約公正証書に記載された財産は相続開始前であるその作成日付の日にその被相続人から贈与を受けた財産であるから、相続財産から除外されるべきであると主張するが、本件各証拠資料により認められる各事実を総合すると、本件贈与契約は、公正証書による贈与契約の形は存在するけれども、当事者の客観的真意とは別になされた仮装の行為とみるのが自然かつ合理的であって、これをこのまま承認することは、租税負担の公平の見地からも採り難いところというほかない。
 したがって、本件公正証書に記載された財産は、相続時において請求人のものではなく、被相続人の相続財産であるとした原処分は相当である。

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不動産贈与の効力は、贈与契約公正証書の作成の時ではなく、被相続人の死亡の時に生じたものと認定した事例

裁決事例集 No.17 - 57頁

 被相続人と請求人らは、公正証書によりいったん土地を贈与する旨の合意をしたが、更にその翌日、被相続人はその合意を踏まえた上、遺言書を作成して、被相続人が死亡した時を期限として当該土地を請求人らに贈与する旨の意思を表示し、また、被相続人は公正証書を作成してから死亡するまでの間に、当該土地を名実ともに自己が使用、収益、処分し、請求人らはこれを黙認してきたものであるから、公正証書による合意の真の内容は、被相続人が将来において、所有権を請求人らに移転することを予定したものにすぎないと認められ、当該土地についての贈与の効力は、被相続人の死亡により確定的に生ずることとなったものといわざるを得ない。

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公正証書を作成して被相続人の生前に贈与を受けたものであるとする不動産について、生前贈与ではなく死因贈与により取得したものと認定した事例

裁決事例集 No.25 - 89頁

 被相続人と請求人らは、公正証書を作成し、不動産を贈与する旨の合意をしたが、被相続人は公正証書を作成してから死亡するまでの約6年間不動産を従前どおり自己の所有物として管理し、使用収益していたこと、被相続人には公正証書作成当時同人の死亡後、同人の財産の分割等が支障なく行われるであろうという思惑が存在したことが十分うかがわれることなどから、公正証書による合意の真の内容は公正証書記載の贈与を即時に行うというものではなく、むしろ、死因贈与契約をしたものと認めるのが相当であり、贈与の効力は被相続人の死亡により生ずることとなったものといわざるを得ない。

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贈与により取得した財産の取得時期は贈与証書による贈与契約の時ではなく贈与登記の時であると認定した事例

裁決事例集 No.29 - 141頁

 請求人は、公証人の確定日付のある本件贈与証書によって財産を取得したと主張するが、本件贈与証書は将来における租税回避を意図して作成された実態の伴わない形式的文書にすぎず、本件贈与証書によって贈与契約が成立したとは認めることはできないこと及び贈与者が贈与登記に至るまでの間、贈与財産の管理処分をしていることなどから、本件贈与財産の取得の時期は、本件贈与登記の時であると認めるのが相当である。

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公正証書による財産の贈与時期は、公正証書が作成された日ではなく、本件不動産に係る所有権の移転登記がされた日であるとした事例

裁決事例集 No.53 - 381頁

 請求人は、公正証書による財産の贈与時期は、本件不動産に係る所有権の移転登記がされた日ではなく、公正証書が作成された日である旨主張する。
 しかしながら、[1]贈与税課税の除斥期間が経過するまで所有権の移転登記がされていないこと、[2]公正証書の作成目的が租税回避以外の必要性がないこと及び[3]公正証書の記載内容と異なる行為が行われていることから、当該公正証書は実態を伴わない形式的な文書と認めるのが相当であり、これにより贈与が成立したとは認められない。
 したがって、本件不動産の贈与の成立した日は、第三者に対抗するための法律要件が成就した日(所有権移転登記が行われた日)と認めるのが相当であるから、本件決定処分は適法である。

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1. 書面による贈与契約であってもその契約の効果が真実生じているか否かを実質的に判断するべきであるとした事例2. 複数の連帯保証人と物上保証人がある場合の負担割合は平等であるとした事例

裁決事例集 No.65 - 533頁

  1.  請求人は、本件不動産について、本件相続開始前に本件公正証書に基づいて請求人の子らが被相続人から生前贈与を受けたものであり、本件相続財産ではない旨主張する。
     しかしながら、本件不動産の所有権移転登記手続および使用収益の状況などに照らすと、被相続人は、本件公正証書に基づいて、孫らに対し本件不動産を真に贈与する意思を有していたとは認め難く、孫らも、本件不動産を取得したとする認識があったとは認められない。
     また、公正証書を作成した目的が、請求人が主張するように、孫らに対する相続税の節税のための生前贈与にあるとするならば、孫らの親権者である請求人を含めた当事者は、本件不動産についての贈与税の申告が必要であるとの認識を有していたとみるのが自然であるところ、本件不動産に係る贈与税の申告はされていない。
     そうすると、本件公正証書は将来の相続税の負担を回避するなど、何らかの意図を持って作成された、実体を伴わない形式的な文書であるとみるのが自然かつ合理的であり、本件公正証書によって被相続人と孫らの間に贈与の合意が成立していたものとは到底認められず、請求人の主張には理由がない。
  2.  請求人は、本件連帯保証債務について、銀行取引約定書における連帯保証人としての署名・押印は請求人の承諾なく被相続人が無断で行ったものであり、請求人の保証人としての責任はもとより発生しておらず、本件借入金に係る保証人は被相続人一人であるから本件連帯保証債務の全額を債務控除すべきである旨主張する。
     しかしながら、銀行取引約定書には請求人の実印が押印されていること、主たる債務者である関係法人の当時の代表者が請求人自身であること、また、請求人は銀行から請求人あてに発せられた催告書に対して異議を述べた形跡がないことなどからみて、請求人は保証人であることを十分に認識していたと認めるのが相当であり、請求人の主張は採用できない。
     また、本件借入金については、連帯保証人以外に物上保証人がいることから保証人は3名となり、その負担額は均等であると認められることから、本件相続について債務控除すべき被相続人の保証債務の額は、本件連帯保証債務の額の3分の1とするのが相当である。

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