相続税の課税財産の範囲

土地等

  1. 土地等(8件)
  2. 売買契約に係る土地
  3. 事業用財産
  4. 有価証券等
  5. 預貯金等
  6. 保険金
  7. 会員権
  8. 貸付金債権
  9. 弔慰金
  10. 死亡退職金
  11. 在外財産
  12. 貴金属等

税務署長に対し底地の取得者と借地権者との連署による借地権者の地位に変更がない旨の申出書を提出している場合において、底地の取得者である相続人が借地権者である被相続人の建物を取り壊して建物を新築しても被相続人の借地権者の地位に変更はないというべきであり、借地権は相続開始まで被相続人に留保されたものと認められるとした事例

裁決事例集 No.39 - 369頁

 借地権の目的となっている土地(底地)を借地権者以外の者が取得し、地代の授受が行われないこととなった場合において、地代の授受が行われなくなった理由が使用貸借に基づくものでないとして、土地(底地)取得者と借地権者との連署による借地権者の地位に変更がない旨の申出書の提出があったときは、借地権は従来どおり存在するものとし、その借地権者が死亡したときにその相続財産を構成するものとする取扱いは、その申出に即したものであり、当事者の意思を尊重した合理的な取扱いと認められる。
 この申出書の提出がされ、その12日後に借地権者たる被相続人の建物が取り壊され、翌年に土地(底地)取得者たる相続人の建物がその土地に新築された場合は、申出書の提出時点で既に建物の取壊しと新築が予定されていたものと認められるから、当事者間では、取壊し後も引続き被相続人の借地権者としての地位に変更はない旨の了解があったと認められる。被相続人は、取壊し後も借地権を留保することを前提として、相続人がその土地に建物を新築することを認めたものとみるのが相当であり、借地権は、相続開始まで被相続人に留保されたものと認められるから、本件借地権が相続財産を構成するものであるとした原処分は相当である。

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特定遺贈を受けた財産を遺産分割協議書に記載したことが遺贈の放棄に当たるとした事例

裁決事例集 No.44 - 261頁

 請求人らは、被相続人(母)名義の宅地について、請求人A男が遺贈によって父から相続したものであり、居宅改築資金ねん出のために一時的に被相続人名義としたものであるから、請求人A男固有の財産であると主張するが、父の相続に関する遺産分割協議書作成前には遺贈の放棄権の放棄を行ったと認めるに足る証拠がないから、当該遺産分割協議書自体が無効でない限り、被相続人(母)の財産とするのが相当である。

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本件土地は、請求人が第一次相続で相続したものではなく、当該相続で被相続人が相続したものであり、本件更正登記は請求人が仮装したものであるとした事例

裁決事例集 No.53 - 317頁

 請求人は、本件土地は昭和58年に死亡した父に係る第一次相続において請求人が相続したものの、誤って平成6年3月に死亡した被相続人である母が相続する旨の遺産分割協議及び相続登記をしたため、所有権更正登記をした旨主張するが、[1]第一次相続に係る遺産分割協議は、相続人の合意の下に行われていること、[2]当該相続に係る相続税の申告においては、被相続人は配偶者に対する相続税の軽減の規定を適用しており、また、当該申告は、上記遺産分割協議に基づいて行われていることなどからすると、当該遺産分割協議の内容に錯誤はないものと認められ、所有権更正登記は、請求人が、本件土地を本件相続に係る相続財産ではないかのように仮装するために行ったものと認めるのが相当である。

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土地及び建物に対する被相続人の共有持分は単なる名義上のものにすぎないとする請求人の主張を排斥した事例

裁決事例集 No.59 - 203頁

  1.  登記については判例において公信力を認めないと解されているところ、登記は、制度上その手続において、真正な、すなわち有効に存立する実質的な関係に基づくものであることが保障され、かつ、公の機関によって管理されており、登記がなされているとこれに対応する実質的関係の存在が推定されることから、登記上の所有名義人は反証がない限り当該不動産の所有者と推定することが相当である。
  2.  本件土地の帰属について上記1を踏まえて検討すれば、本件土地については、Hの相続において、E以外の相続人が家庭裁判所に相続を放棄する旨の申述を行ったとする証拠の提出がないこと、当該相続において遺産分割協議を行ったことを直接証明する証拠書類の提出がないため、E以外の相続人が本件土地の相続権を放棄した事実を確認することができないこと、登記に要する時間の長短を理由として真実の所有者でない者の名義とすることは不合理であり、Eの単独登記としなかった理由としては、相当ではないこと、本件土地についての所有権移転登記は、昭和35年から平成10年に至るまでに、数回にわたって行われているのであり、この間において請求人らが主張する実体に合致した登記をする機会が十分にあったと思われるのに、それがされていないこと等から、Hの共同相続人が登記簿の記載どおり法定相続分に従い共有持分権を取得したとの事実を覆すに足りる資料はなく、この点に関する請求人の主張を採用することはできないから、Gは、Hの相続によって登記簿の記載どおりの共有持分権を取得したものと認められる。
  3.  本件建物の帰属について、建築資金を負担していない者が新築された建物の所有者となることができないという法律上の規定はなく、当該資金を負担していない者に贈与税の課税問題が生じることはあっても、それのみで当該登記は無効なものとなるものではない。

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本件被相続人の被相続人である母の相続に係る遺産分割協議書は真正に成立したものと推定されるから、請求人は、この遺産分割協議書に基づき本件被相続人が相続した本件土地を、本件被相続人に係る遺産分割協議書に基づき相続したものと認めるのが相当であるとした事例

裁決事例集 No.61 - 473頁

 請求人は、本件被相続人の被相続人である母親の相続に係る遺産分割協議書は、分割の対象となる相続財産の記載に誤りがあるほか、共同相続人の一人であった本件被相続人が詐術により共同相続人に白紙に署名押印させた上これに分割内容を記載して作成したものである等の理由により無効であるから、この遺産分割協議書により本件被相続人が取得したとされる本件土地を遺産に含めた本件被相続人に係る遺産分割協議書も無効であり、本件被相続人から請求人は本件土地を相続により取得していない旨主張する。
 しかしながら、本件被相続人の被相続人である母親の相続に係る遺産分割協議書は、本件被相続人を含めその共同相続人全員が署名押印しており、特段の反証のない限り真正に成立したものと推定され、この推定を動揺させる事実は認められないから、この遺産分割協議は真正に成立したものと認められる。
 そうすると、この遺産分割協議書に基づき本件被相続人は本件土地を取得したのであり、請求人は、本件被相続人に係る遺産分割協議書に基づき本件被相続人から本件土地を相続により取得したものと認めるのが相当であるから、請求人の主張には理由がない。

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本件土地は現時点においてその所在を確定できないから相続財産に含まれないとした事例

裁決事例集 No.61 - 482頁

 公図は一般に土地の面積、形状を必ずしも正確に表現しているとはいえないが、公図上の本件土地と、現実に存在する「A土地」との位置関係を道路との関係において比較すると、明らかに一致しておらず、かつ、その不一致は無視できないほど顕著であるといわざるを得ない。
 さらに、被相続人作成の遺言公正証書等の記載から、被相続人らは、「A土地」が地番「727番1」の土地の一部であり、本件土地は所在不明である旨の認識を有していたことがうかがわれ、そうした認識は、P市が本件土地の評価を留保していること等に照らすと、客観的な根拠のないものと断じることはできない。
 また、直ちに「A土地」が、地番「727番1」の土地の一部でないと断ずることもできない。
 以上のことから、「A土地」が本件土地であるとする事実を認めることはできず、むしろ「A土地」は地番「727番1」の土地の一部と認めるのが相当であり、本件土地は、現時点においてその存在を確定できないから、相続財産には含まれないと解するのが相当である。

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借地権者の地位に変更がない旨の申出書を提出後その土地の所有権者が建物を建て替えた場合その借地権は所有権者に無償で返還され消滅している旨の請求人の主張を排斥した事例

裁決事例集 No.72 - 517頁

 請求人らは、被相続人の借地権が存する土地の所有権を請求人Fが取得したことに伴い、借地権者の地位に変更がない旨の申出書(以下「本件申出書」という。)を提出した土地(以下「分筆前土地」という。)について、被相続人がその土地上に所有していた建物A及びBを老朽化のため取り壊した後の土地は、請求人Fが自由に使用収益してよいとする合意の下で、当該建物が取り壊されたことに伴い、本件借地権が被相続人から請求人Fに無償で返還されたものであるから、本件借地権は存在しない旨等主張する。
 しかしながら、本件借地権が返還されたとする請求人らの主張は、請求人Fが被相続人から建物取壊し後の土地を自由に使用するよう言われたことに基づくもののみであって、具体的に明らかでなく、上記発言の内容からは、被相続人が本件土地の使用権利者(借地権者)であることを前提として、請求人Fに本件借地権を自由に利用してよいとも解されるから、被相続人は請求人Fに本件借地権を使用貸借により転貸する趣旨で発言したとも認めることができる。
 また、本件申出書を提出していることから、その当時、被相続人及び請求人Fは、分筆前土地に係る借地権を移転する意思はなかったものと認められる上、建物が朽廃していない本件において、借地上の建物を親族間で所有名義を変えて建て替えた場合には、従前の借地権を維持するならばこの借地権を使用貸借により転貸したとみるのが一般的であるし、転貸が使用貸借である場合には、使用貸借通達2によって贈与税の課税も生じないのであるから、このように被相続人が請求人Fに本件借地権を使用貸借により転貸する行為は、親族である貸借当事者間での合理的な行為といえる。さらに、被相続人及び請求人Fは、分筆前土地上の建物Dを平成12年に取壊した後の土地の一部を譲渡したことによる譲渡所得の申告において、被相続人に借地権が存在していたとしている。
 そうすると、被相続人が、請求人Fに対して本件借地権を返還するという意思があったとは認められず、また、本件借地権が返還されずに存在していたことを推認させる事実はあるが、本件借地権を返還したとみるべき事実は見当たらない。
 そして、被相続人及び請求人Fは、連署で本件申出書を提出しているから、貸借当事者間で借地権が土地所有者に返還されたなどその借地権が存在しないとの主張が認められるのは、贈与税の申告又は借地権の消滅の対価を土地所有者が借地権者に支払った事実が存するなど、当該借地権が存在しないことを外形上明確に示す特段の行為の存在が立証されることが必要であると解すべきであるところ、請求人Fは建物A及びBの取壊し又は建物Cの建築を理由とした贈与税の申告をしておらず、その他本件借地権が存在しないことを外形上明確に示す特段の行為の存在を認定できる証拠もない。
 以上のことからすると、本件相続開始日において、被相続人に係る相続財産として本件借地権が存在していたと認めるのが相当である。

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河川法第24条の規定に基づく河川区域内の土地の許可占用権は相続税の課税財産に該当し、その価額は財産評価基本通達87−5により評価するのが相当であるとした事例

裁決事例集 No.72 - 534頁

 河川法第24条の規定に基づく河川区域内の土地の占用許可は、特定人に対し、当該土地の本来の用法を超えて特別の継続的な使用権を設定するものであり、当該権利は、河川管理者との関係では公法上の債権の性格を持ち、また、その権利の実質からみると当該許可を受けた者の私的な経済的利益を満たすものであり、河川管理者の承認があれば移転性も認められるから、私法上の財産権としての性質を持ち、相続税法上の財産に該当すると認められる。
 本件占用権は、河川法第24条に基づくものであり、また、許可する占用目的は造船施設等で工作物の設置を目的とするものであるから、財産評価基本通達9の(10)に定める占用権に該当し、占用権の評価方法を定める財産評価基本通達87−5の定めは相当であるところ、河川法第24条の河川区域内の土地とは、同法第6条《河川区域》第1項所定の河川区域内の土地であり、河川の流水が継続して存する土地、すなわち、河状を呈している土地を含むと考えるのが相当と認められるから、占用権の評価の基礎となる占用権の目的となっている土地等は、土地(河川敷)占用権及び流水面占用権の目的となっている土地全体が該当し、これを一画地として評価した上で、財産評価基本通達87−5(2)及び(3)を適用して占用権の価額を評価すべきものである。

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