相続税の課税財産の範囲

売買契約に係る土地

  1. 土地等
  2. 売買契約に係る土地(8件)
  3. 事業用財産
  4. 有価証券等
  5. 預貯金等
  6. 保険金
  7. 会員権
  8. 貸付金債権
  9. 弔慰金
  10. 死亡退職金
  11. 在外財産
  12. 貴金属等

売買契約をした農地の転用許可前に売主に相続が開始した場合、その農地は相続財産であるとした事例

裁決事例集 No.6 - 60頁

 被相続人が売主となって生前に取り交わした売買契約書には「売買不動産の所有権は、農地転用許可申請が許可になると同時に売主より買主に移転する」旨定められており、農地の所有権移転については、農地の転用許可が先決要件となっている。
 農地の転用許可書が申請人に到達したのは相続開始後であり、当該農地は相続人がすでに相続したものであるから、被相続人の譲渡資産ではなく、相続財産として相続税課税価格を算定したことは相当である。

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売買契約をした農地の移転許可前に買主に相続が開始した場合、相続財産は農地ではなく前渡金であるとした事例

裁決事例集 No.12 - 41頁

 請求人が被相続人から相続により取得したと主張する農地については、昭和47年6月20日付の売買契約がなされ、同年8月31日までに代金の全額が支払われている事実が認められるが、農地法上の権利移転についての許可は相続開始の日である昭和47年9月4日より後の昭和48年6月11日付でなされているから、相続開始の日において被相続人が当該農地の所有権を取得していないことは明らかである。
 この場合において、被相続人は既に支払済みの本件農地の代金の額及び仲介手数料の額に相当する債権を有していたことになるから、相続財産は農地ではなくて本件農地に係る前渡金であるとするのが相当である。

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宅地の売買契約が成立して特約による所有権移転時期前に買主に相続が開始した場合、相続財産は所有権移転請求権であるとした事例

裁決事例集 No.31 - 173頁

 本件において、売買契約書上所有権移転の時期を売買代金完済の時と定めており、残代金の支払及び所有権移転登記申請手続は、被相続人の死亡の時にはまだ行われていなかったのであるから、買主である被相続人は、その死亡の時までに本件土地の所有権を取得していたということはできず、本件売買契約により本件土地の所有権移転請求権を取得していたにすぎない。
 したがって、請求人は、本件相続により本件土地の所有権を取得したのではなく、本件売買契約に基づいて本件土地の所有権移転請求権を取得したとするのが相当である。

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親族間で賃貸借契約書及び売買契約書が作成されていた土地について、契約成立の事実は認められず、その所有者は被相続人であるとした事例

裁決事例集 No.46 - 197頁

 請求人は、本件土地については、被相続人と請求人の二男((被相続人の孫)(売買については二男夫婦))との間で、昭和54年に賃貸借契約が、昭和61年に売買契約が成立しているから、相続財産ではないと主張する。
 しかし、本件賃貸借契約書が作成された事実は外形的に認められるものの、[1]それに記載された約定は遵守されていず、[2]当該契約は祖母と孫という特殊な親族関係を基にして何ら第三者の目に触れることなく存在したものであり、その効果の発生が確認できないから、本件土地に係る賃貸借が成立していたとは認められない。
 また、本件売買契約書が作成された事実は外形的に認められるものの、[1]当事者間に本件土地が孫夫婦のものとする認識も認められず、[2]その契約書に記載された条項も約定どおり履行されていないから、契約の効力の発生を確認することもできず、[3]被相続人の死亡後その事実が他の相続人に露見するなど、当該契約は、祖母と孫という特殊な親族関係を基にして何ら第三者の目に触れることなく存在したものであると認められる。
 したがって、本件土地の所有者は名義人である被相続人と認められ、孫は本件土地を使用貸借により使用していたと認めるのが相当である。

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借地権等の売買契約中に売主である被相続人に相続が開始した場合における相続財産は、当該借地権等ではなく、当該売買契約に係る残代金請求権であり、また、既に受領した手付金及び中間金は相続税の計算上債務には当たらないとした事例

裁決事例集 No.53 - 334頁

 請求人らは、本件売買契約において売買代金の全額を受領した時点において買主に引き渡す旨の約定があり、また、本件建物には当該建物の買主への所有権移転登記後も被相続人等が居住及び米穀販売業の会社に賃貸しており、さらに、相続開始後も相続人等が買主に地代を支払いながら居住していたのであるから、相続開始時点においては、本件借地権等は買主に引渡しを了していなかったので、売買契約締結後に売主である被相続人に相続が開始した場合の相続財産は、本件借地権等であると主張する。
 しかしながら、[1]本件建物の買主に対する所有権移転登記が本件相続開始前に行われていること、[2]その時点において、売主である被相続人は、本件売買契約代金の約7割を受領していること等の事実から判断すれば、本件相続開始時において、本件借地権等は既に買主に引き渡されたものと認めるのが相当であり、また、相続人らは当該売買契約に係る譲渡所得が被相続人に帰属するとして同人の所得税の修正申告を行い、かつ、当該譲渡所得に係る所得税相当額を本件相続税の計算上の債務として計上すべきとする更正の請求をしていることを総合するならば、請求人らが本件相続により取得した財産は、当該売買契約に係る残代金請求権であると認めるのが相当である。
 なお、請求人らが本件借地権等を明け渡すまでの間に買主に支払った金員は、借地権が買主に移転した以後は家賃に実質的に変化したものと認めるのが相当であるから、この点に関する請求人の主張には理由がない。

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農地の売主死亡に係る相続税の課税財産につき、同売買に係る売買残代金請求権(債権)ではなく、農地と認めるのが相当であるとした事例

裁決事例集 No.65 - 566頁

 原処分庁は、土地の売買契約締結後、同契約完了までの間に売主に相続が発生した場合、その相続税の課税財産は売買残代金請求権であり、その価額は債権として評価すべきである旨主張する。確かに、当該売買契約に係る、売主及び買主双方の義務が、各々誠実に履行され、同債権が確定的に被相続人に帰属していることを肯定できる場合であれば、そのように解釈すべきである。
 しかしながら、本件の場合、本件農地に係る不動産売買契約については、売主である被相続人側の責めに帰すべき理由が何等ないにもかかわらず、もっぱら買主側の事情により履行が遅延し、契約締結後2年8か月経過した相続発生の日においても遅延状態にあり、最終的にも、契約締結後約4年4か月、予定された契約履行の日から約3年4か月、相続開始から約1年7か月経過後に解除されたことからすれば、本件相続開始時点において、同契約に係る売買残代金請求権が確定的に被相続人に帰属していたことを肯定できないため、その課税財産は本件農地と認めるのが相当である。

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土地等の売買契約中に売主に相続が開始した場合における相続税の課税財産は、相続開始後に相続人が当該売買契約を解除した場合であっても、売買残代金請求権とするのが相当であるとした事例

裁決事例集 No.78 - 419頁

 相続税の納税義務は、相続による財産を取得した時、すなわち、相続開始の時に成立するものと解される。そして、相続により取得した財産の価額の合計額をもって相続税の課税価格とすることとされており、相続により取得した財産の価額は、原則として、当該財産の取得の時における時価によることとされていることから、相続開始後の当該財産に生じた事情は、制度の上の措置がなされている場合など、これを考慮すべき特段の事情と認められない限り考慮されないこととなる。また、相続開始時に売買契約が締結されている土地等について、相続税の課税対象となる財産を判定するに当たっては、相続開始の時において、売買残代金請求権が確定的に被相続人に帰属していると認められるか否かの観点から判定するのが相当と解される。そうすると、このようにして判定した相続税の課税対象となる財産について、相続開始後に何らかの事情が生じたとしても、相続開始の時において売買残代金請求権が確定的に被相続人に帰属していると認めることが不相当であるというべき特段の事情でない限り、その事情は考慮されるものではないと解される。
 本件売買契約の各当事者は、本件売買契約の実現に向け、本件売買契約書に定められた各条項を誠実に履行し、本件相続の開始時において、本件各土地建物の引渡予定日及び売買残代金の決済予定日の決定していたことが認められる。このように、本件相続の開始時において、本件売買契約が履行されることが確実であると認められるような状況下にあっては、本件各土地建物の所有権が本件被相続人に残っているとしても、もはやその実質は本件売買契約に係る売買残代金請求権を確保するための機能を有するにすぎないものといえ、請求人らが相続した本件各土地建物は、独立して相続税の課税財産を構成しないというべきである。そして、請求人らが本件相続の開始後に行った本件売買契約の解除は、本件被相続人から本件売買契約に係る契約上の地位を承継した請求人らの意思によるものであり、当該解除をもって、相続開始時において売買残代金請求権が確定的に被相続人に帰属していると認めることが不相当であるというべき特段の事情ということはできないから、本件相続の開始時において、売買残代金請求権は確定的に本件被相続人に帰属していると認めるのが相当である。
 そうすると、本件相続に係る相続税の課税財産とすべき財産は、本件売買契約に係る売買残代金請求権である。

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被相続人は、生前、不動産を売却していないから、当該売却に係る代金債権は発生していないと判断した事例(平成23年3月相続開始に係る相続税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・全部取消し・平成28年6月28日裁決)

平成28年6月28日裁決

《ポイント》
 本事例は、不動産に係る親子間の売買契約書は存在するが、当該売買契約書は、実体を伴わない架空の内容を記載した契約書であると認めるのが相当であり、当該売買に係る代金債権は発生していないと判断したものである。

《要旨》
 原処分庁は、被相続人は、生前、子に対して、不動産(本件不動産)を売却しているところ、相続開始時点において、本件不動産の売買に関する契約書(本件売買契約書)記載の代金が支払われていなかったことから、被相続人は、上記代金に相当する債権(本件代金債権)を有していた旨主張する。
 しかしながら、本件売買契約書は存在するものの、本件売買契約書の作成に、買主とされる子が関与していないこと、本件売買契約書において、所有権移転登記手続は、売買代金全額の支払と引替えに行うとされているが、現在に至るまで売買代金は全く支払われておらず、そうであるのに、所有権移転登記が完了しているのは不自然であること、子が請求人との間で作成した金銭消費貸借契約書記載の金員を受け取っておらず、当該金員の返済もしていないこと、請求人及び子の間では、本件不動産の子の所有名義は便宜上のものであり、真実は請求人が所有者であることを確認する旨の合意書が作成されていること、子が本件不動産の所有者としてこれを管理、支配している形跡がうかがわれないことの事情に照らせば、本件売買契約書は、実体を伴わない架空の内容を記載した契約書であるものと認めるのが相当であり、したがって、本件代金債権は発生していないというべきである。

《参照条文等》
 相続税法第2条
 民法第555条

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