贈与税の課税財産の範囲

その他

  1. 贈与財産の範囲
    1. 資産の低額譲受け
    2. その他(6件)
  2. 贈与事実の認定
  3. 課税財産

請求人は、資力を喪失していないので、相続税法第8条ただし書の適用ができないとした事例

裁決事例集 No.53 - 356頁

 請求人は、相続税法第8条(贈与又は遺贈により取得したものとみなす場合−債務免除等)ただし書に規定する資力喪失か否かの判定(所有財産の時価算定)に当たり、[1]株式は平成5年11月25日から30日までの終値の平均値、[2]本件宅地は平成6年分の路線価、[3]本件家屋は固定資産税評価額及び[4]母Kからの相続財産は遺留分によって計算すべきである旨主張する。
 ところで、相続税法第8条ただし書は、第1号に規定する債務者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合においてその全部又は一部の免除を受けたときには、その債務を弁済することが困難である部分の金額を限度として、贈与税の課税対象から除外する旨規定しており、債務者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合とは、その者の債務額が積極財産の額を超えるときのように社会通念上支払不能と認められる場合をいうものと解されている。
 そうすると、債務免除があった場合に、当該債務の免除が贈与に該当するか否かの判断は、債務者が債務免除を受けた時点において債務超過であったか否かによることが相当であると認められ、この場合、債務者の財産の価額又は債務額は、債務免除があった時の時価によるのが相当であると解される。
 本件の場合、[1]請求人所有の株式の価額は、平成5年11月25日の終値(1億6,459万円)によるのが相当であり、また、買建ての信用取引の含み損失額は、買建ての約定金額から同日の終値と金利相当額を控除した金額(1億2,492万円)によるのが相当であること、[2]本件宅地の価額は、接面道路、面積及び用途地域が同一である公示地の平成5年及び平成6年の公示価格から比凖し、更に時点修正した価格が相当であり、これに地積と持分(3/4)を乗じた1億4,892万円となること、[3]昭和62年11月に新築した本件家屋の価額は、取得価格1億4,392万円から減価償却費相当額を控除した1億3,096万円が相当であること、[4]請求人が母Kから相続した財産は1億2,682万円、債務等は225万円、税額は1,966万円であることから、請求人が被相続人からa株式会社ほか2銘柄の本件株式の返還義務の免除を受けた平成5年11月25日における請求人の積極財産の額は6億2,905万円、債務等の額は4億5,343万円であり、差引1億7,562万円の超過となり、3,149万円の債務超過という請求人の主張は採用できない。
 したがって、本件株式の返還義務免除7,848万円は、相続税法第8条ただし書に該当しないので、贈与により取得したとみなされるのが相当であり、同法第19条(相続開始前三年以内に贈与があった場合の相続税額)の規定により相続税の課税価格に加算されることとなり、請求人らの相続税の課税価格及び納付すべき税額は、いずれも異議決定を経た後の更正処分の金額と同額であるから、更正処分は適法である。

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離婚成立前に登記原因を贈与とする所有権移転登記をした上で行った贈与税の申告について、その後裁判上の離婚をしたことを理由とする国税通則法第23条第2項による更正の請求を認めなかった事例

裁決事例集 No.61 - 550頁

 請求人は、離婚を条件として前夫から取得することとなっていた土地について、離婚前に登記原因を贈与とする贈与税の申告をしたが、その後の裁判により離婚が確定したことをもって、当該土地は財産分与であるとして、国税通則法第23条第2項を適用して、更正の請求が認められる旨主張する。
 しかしながら、請求人が当該土地の所有権移転登記をしたのは、裁判離婚を提訴する前で、婚姻状態が継続していたこと、また、提訴の内容は離婚を求めるものであり、財産分与の額を決定したものではないことから、当該土地の取扱いは、財産分与とは認められず、相続税法第9条の規定により、贈与として取り扱うのが相当であるから、更正の請求は認められない。

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当初の遺産分割協議の錯誤無効を理由に行った再度の遺産分割協議に基づき取得した新たな財産は、当初の遺産分割協議に要素の錯誤があったとは認めることができないから贈与により取得したものと認められるとした事例

裁決事例集 No.70 - 259頁

 請求人は、養親である祖父亡Gの後妻亡Hと養親子関係がないことを知らないで行った本件遺産分割は、法律行為の要素に錯誤があり、養親子関係がないことを知っていれば亡Hに亡Gの遺産を相続させる本件遺産分割を行うはずはなかったとして、本件遺産分割協議が錯誤により無効である旨主張する。
 しかしながら、請求人と亡Hとの間に養親子関係があったとしても、請求人が主張するように、請求人が本件土地建物を亡Hから相続により取得することになるとは限らず、また、請求人が亡Hとの間に養親子関係がないことを知っていたとしても、請求人が主張するような遺産分割協議が成立するという必然性も認められない。そうすると、請求人の主張する「錯誤」は、遺産分割協議の動機に関するものであり、この動機が遺産分割協議の際に表示されていたとしても、本件遺産分割の内容と異なる内容の遺産分割協議がされたということにもならないから、民法第95条に規定する法律行為の要素の錯誤ということはできず、結局、請求人の思い違いないし勘違いにすぎないというほかはない。
 したがって、本件遺産分割に要素の錯誤があったとは認めることはできないから、本件土地建物は、請求人が亡Hの相続人から贈与により取得したものと認めるのが相当である。

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資金の移動が、相続税法第9条に規定する対価を支払わないで利益を受けた場合に該当するとした事例

裁決事例集 No.79

 請求人は、1関係する法人に対する請求人の妻名義の貸付金の弁済金の一部を請求人の預金口座へ入金したこと、2請求人の妻名義の預金口座からの出金を、請求人名義の預金口座へ入金したこと及び請求人から関係会社の代表者への貸付けに充てたことについては、これらの請求人の妻名義の貸付金及び預金は、請求人の妻が請求人の預金を使い込んだという事実関係の下、請求人が請求人の妻の退職金により弁済を受けた金員が原資となっており、もともと請求人に帰属するものであるから、12のいずれの資金の移動についても、相続税法第9条に規定する対価を支払わないで利益を受けた場合には該当せず、贈与により取得したとみなされることはない旨主張する。
 しかしながら、請求人の妻が請求人の預金を使い込んだというのは請求人の憶測にすぎず、具体的な証拠書類も見当たらないことから、請求人の主張は採用することができない。
 したがって、12の資金移動は、相続税法第9条に規定する対価を支払わないで利益を受けた場合に該当し、贈与により取得したものとみなされる。

《参照条文等》
民法第549条、第643条、第703条
相続税法第7条、第9条

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請求人らの母親の預金口座から出金された金員が請求人らの債務の返済に充てられているが、両当事者はその事実を知らなかったのであるから、請求人らが対価を支払わないで経済的利益を受けたとは認められないとした事例

平成24年11月7日裁決

《要旨》
 原処分庁は、請求人らの借入金の返済(本件返済)について、請求人らの兄が原処分庁にした申述に基づき、請求人らの資金援助の求めに応じて同兄が母親の預金口座から出金(本件出金)し、本件出金による金員により上記返済がされたとの事実を認定し、当該事実に基づいて、請求人らが本件返済により母親から相続税法第9条に規定する「対価を支払わないで・・・利益を受けた」と認められる旨主張する。
 しかしながら、本件返済の経緯についての請求人らの兄の供述(原処分庁にした申述及び当審判所にした答述)は、曖昧であり、供述内容自体が客観的事実と矛盾し、あるいは客観的事実に基づいて通常人がとると考えられる行動に反する不合理なものであるから、これを信用することはできない。そして、本件においては、本件返済がされた当時、請求人らの母親が軽度の認知症の状態にあったと認められる上、当審判所の調査の結果によっても、他に請求人らが本件返済を認識し、事前事後に本件出金を承諾していたと認めるに足りる証拠も見当たらないから、結局、請求人らが本件返済により母親から実質的に贈与と同様の経済的利益を受けた事実を認めることはできない。したがって、本件においては、請求人らが本件返済により母親から「対価を支払わないで・・・利益を受けた」とは認められない。

《参照条文等》
 相続税法第9条

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有料老人ホームの入居契約に基づき返還金受取人が取得した入居一時金に係る返還金請求権に相当する金額の経済的利益は、相続税法第9条でいう「みなし贈与」により取得したものとした事例

平成25年2月12日裁決

《ポイント》
 本事例は、第三者(請求人の弟)のためにする契約を含む有料老人ホームの入居契約により、請求人の弟は、入居者(被相続人)死亡時に、当該入居者に対価を支払うことなく、同人から入居一時金に係る返還金の返還を受ける権利に相当する金額の経済的利益を享受したことから、当該経済的利益についてみなし贈与課税の適用があると初めて判断したものである。

《要旨》
 請求人は、被相続人の死亡に伴い請求人の弟に支払われた被相続人が入居していた老人ホームの入居一時金に係る返還金は相続税の課税対象とはならない旨主張する。
 しかしながら、請求人の弟は、被相続人が死亡時の老人ホームの入居一時金に係る返還金受取人であり、その入居契約により、受益者として、入居者である被相続人の死亡を停止条件として当該ホーム設置会社に対して直接、入居一時金に係る返還金の返還を請求する権利を取得したものであるところ、この取得原因についてみると、本件における入居契約の内容のみをもって、被相続人と請求人の弟との間に入居一時金に係る返還金の返還を請求する権利を贈与する旨の死因贈与契約が成立していたと認めることはできないし、その他当審判所の調査の結果によっても、相続開始時より前に、当該当事者間でその旨の死因贈与契約が成立していた事実や、被相続人がその旨の遺言をしていた事実を認めることはできないものの、入居一時金の原資は被相続人の定期預金の一部であると認められることからすれば、実質的にみて、請求人の弟は、第三者(請求人の弟)のためにする契約を含む入居契約により、相続開始時に、被相続人に対価を支払うことなく、同人から入居一時金に係る返還金の返還を請求する権利に相当する金額の経済的利益を享受したというべきである。したがって、請求人の弟は、当該経済的利益を受けた時、すなわち、相続開始時における当該利益の価額に相当する金額を被相続人から贈与により取得したものとみなす(相続税法第9条)のが相当である。そして、請求人の弟は、被相続人から相続により他の財産を取得していることから、被相続人から贈与により取得したものとみなされる当該利益の価額は、相続税法第19条《相続開始前3年以内に贈与があった場合の相続税額》第1項の規定により、当該他の財産に加算され、相続税の課税対象となる。

《参照条文等》
 相続税法第9条

《参考判決・裁決》
 東京高裁平成9年6月30日判決(判時1610号75頁)

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