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有価証券
時価より著しく低い価額で現物出資があった場合に利益を受けたか否かは、現物出資の前後における出資の価額の差額によって判断すべきであるとした事例
裁決事例集 No.42 - 174頁
請求人は、本件現物出資により出資の価額は現物出資前より増加しているものの、その価額は実際の取得価額に満たないから、本件現物出資により利益を受けていない旨主張するが、時価より著しく低い価額で現物出資があった場合に利益を受けたか否かは、現物出資後における出資の価額とその前の価額との差額によって判断すべきである。
平成3年10月18日裁決
相続税対策スキームの一環として行った出資の売買は、課税庁からその売買価額が著しく低額と認定され買主に対し贈与税の課税処分がされたことから、相続税対策として意味をなさないものとなるので錯誤により無効となるとの請求人の主張を排斥した事例
請求人は、本件決定処分の基となった出資の売買契約は、税理士等の勧める相続税対策スキームの一環として行われたものであるところ、買主に対して贈与税の課税処分がなされたことにより、本件スキームは相続税対策としては意味をなさないものとなるから、本件スキームに基づいて行われたすべての行為は錯誤により無効となるので本件贈与税の課税処分を取り消すべきである旨主張する。
しかしながら、請求人は、[1]本件出資を取得する目的で売買契約に係る売買代金を銀行から借り入れたこと、[2]その借入金を基に売買代金を支払って本件出資を取得したこと、[3]原処分庁に対して本件出資の売買等の認識がある旨申述していることからすると、本件売買契約によって生じた経済的成果を享受していることは明らかであるから、本件売買契約に基づいて課税することは当然である。また、仮に、本件売買契約が厳密な法令適用の面からは無効とみられるような場合であっても、本件決定処分がなされた時点において本件売買契約に基づく経済的成果が発生し、かつ、存続している以上、本件売買契約を基因としてされた本件決定処分を違法ということはできない。
そうすると、本件売買契約の無効を理由に本件決定処分の取消しを求める請求人の主張には理由がない。
平成10年9月28日裁決