相続税の課税価格の計算

借入金

  1. 分割財産に係る課税価格
  2. 非課税財産
  3. 債務控除
    1. 借入金(5件)
    2. 敷金、保証金等
    3. 判決、訴訟上の和解による債務
    4. 物上保証、連帯債務等
    5. 使用人に対する退職金債務
    6. 保証債務
    7. その他
  4. 相続開始前3年以内の贈与
  5. その他

被相続人名義で取得した不動産及び当該不動産の取得資金に充てられた借入金につき、相続財産及び被相続人の債務とは認められないとした事例

裁決事例集 No.34 - 105頁

 請求人は、本件不動産の取得及び銀行借入れ等は被相続人の委任により行ったものであると主張するが、委任の事実を立証する具体的証拠はなく、また、本件不動産の取得は、不動産の実勢価額と相続税評価額とに開差があることに着目し、被相続人が生前に取得したという事実を形式的に作り上げ、請求人らが被相続人の名義を利用して、不当に相続財産の圧縮を図ることを目的としたものであると認められるのが相当であるから、本件不動産及び本件借入金債務等は被相続人の相続財産・債務とは認められない。

トップに戻る

本件借入金については、その借入れに係る借用証書に債権者の住所、氏名等の主要事項が記載されていない等多くの疑問点及び不自然な点があることから、債務は存在しなかったと認定した事例

裁決事例集 No.49 - 393頁

 請求人らは、本件借入金1億2千万円は借用証書の筆跡等から被相続人の債務であり、相続財産から控除すべきであると主張する。
 しかしながら、[1]本件債務の主張は更正の請求により行われているところ、更正の請求後、本件借入金及び利息を弁済し、借用証書を返却されながら、大切な証拠となるべきその借用証書を自ら破棄していること、[2]遺産分割協議書作成の2か月前に借入金の存在を知らされながら遺産分割協議書に本件借入金の記載がないこと及び[3]借用証書には債権者の住所、氏名等主要事項の記載がないことから、被相続人に帰属する債務として本件借入金が存在したとは認められない。
 また、次のことからも被相続人に債務が存在したとは認められない。

  1.  本件借入金の入金事跡がなく、費消された事跡も判明しないこと。
  2.  被相続人は本件借入れをしたとされる1か月後に土地譲渡代金339,840,000円を受領しながら、本件借入金の弁済に充てず、その大半の3億1千万円を定期預金として残していること。
  3.  請求人等の主張する借入年月日と貸主の答述とは異なること。
  4.  借入利息22,000,000円の算定根拠が不明であること。
  5.  金融業者の多額の貸付けにもかかわらず、何らの債権保全措置もされていなかったこと。

トップに戻る

相続人らから本件被相続人への本件各金員の支出は、本件被相続人が相続税対策のために相続人らに贈与を行っていたことなどからすると、相続人らから本件被相続人への贈与であったとみることは困難であるから、本件各金員は、相続人らから本件被相続人に貸し付けられたものと認められるとした事例

平成25年3月4日裁決

《要旨》
 原処分庁は、請求人らが主張する、本件被相続人が負っていた請求人らを含む相続人らからの借入金債務(本件各借入金債務)は、相続開始日において存在していない旨主張する。
 しかしながら、本件各借入金債務の原資(本件各金員)は、相続人らが支出したものと認められることに加え、当該支出について、相続人らは、本件被相続人が同人の営む病院(本件病院)の建物建築資金等に係る銀行借入を返済するために本件被相続人へ貸し付けたものである旨答述するところ、本件病院は本件被相続人から建物を賃借して営業を行っていたこと、相続人らは本件病院の経営に関わるとともに、本件病院からの報酬で生計を維持していたこと、本件病院の収入は年々減収しており、当該建物の賃借料や当該報酬も引き下げていること、本件被相続人の法定相続人は同人の配偶者又は子である相続人らのみであり、相続人らが本件被相続人の財産及び債務を相続することが予定されていたこと並びに過去において、本件被相続人から相続人ら及び孫らに対し定期的に贈与がされていたことからすると、上記の銀行借入の返済が滞る事態が生じれば、本件病院の維持継続が困難となり、相続人らの生活に直接大きな影響を与えることとなることが容易に想定されることなどから、当該答述内容は相続人らが本件被相続人に対して本件各金員を支出するに至った経緯として自然なものということができる。なお、本件各金員は孫らの進学資金などとして積み立てていたものであること並びに上記の本件被相続人から相続人ら及び孫らに対する定期的な贈与は相続税対策のためのものと推認されることからすると、本件各金員の支出が相続人らから本件被相続人への贈与であったとみるのは困難である。したがって、本件各金員は、相続人らから本件被相続人に貸し付けられたものと認めるのが相当である。

《参照条文等》
 相続税法第13条第1項第1号、第14条第1項
 民法第545条、第587条

トップに戻る

建物売買に伴い被相続人に生じた債務のうち、当該建物の経済的価値を超える部分については、相続税の債務控除の対象となる「確実と認められるもの」には該当しないとした事例

令和3年6月17日裁決

《ポイント》
 本事例は、請求人が被相続人と生前締結した建物売買契約(売主:請求人、買主:被相続人)に伴い被相続人に生じた売買代金相当額の債務について、当該債務のうち、当該建物の経済的価値(評価通達に基づき算出された評価額)を超える部分は、いずれ混同により消滅させるべき債務を、いわば名目的に成立させたにすぎず、相続開始日現在における消極的財産価値を示すものとはいえないため、相続税の債務控除の対象となる「確実と認められるもの」には該当しないとしたものである。

《要旨》
 請求人が、被相続人と生前に締結した売主を請求人、買主を被相続人とする建物売買契約に伴い被相続人に生じた売買代金相当額の債務(本件債務)は、真正に成立した処分証書が存在し、法的に履行が強制されることから、その全額が相続税法第14条第1項に規定する「確実と認められるもの」に該当する旨主張するのに対し、原処分庁は、本件債務は履行を予定していないことから、その全額が「確実と認められるもの」には該当しない旨主張する。
 しかしながら、本件債務の発生原因となった建物売買契約は、建物の売買金額と相続税評価額との間に生じる差額により相続税の軽減効果が期待できるとの提案があった上で締結されたことからすると、本件債務のうち、売買対象となった建物(本件建物)の経済的価値(評価通達に基づき算出された評価額)に相当する部分については、相続開始日時点における債務としての消極的経済価値を示しているものの、本件建物の経済的価値を超える部分については、いずれ混同により消滅させるべき債務を、いわば名目的に成立させたにすぎないのであるから、相続開始日時点における債務としての消極的経済価値を示すものとはいえない。したがって、本件債務のうち、本件建物の経済的価値に相当する部分については、相続税法第14条第1項に規定する「確実と認められるもの」に該当するものの、本件建物の経済的価値を超える部分については、「確実と認められるもの」には該当しない。

《参照条文等》
 相続税法第14条第1項、同法第22条

《参考判決・裁決》
 最高裁昭和49年9月20日第三小法廷判決(民集28巻6号1178頁)

トップに戻る

建物売買に伴い被相続人に生じた債務のうち、当該建物の経済的価値を超える部分については、相続税の債務控除の対象となる「確実と認められるもの」には該当しないとした事例

令和3年6月17日裁決

《ポイント》
 本事例は、請求人が被相続人と生前締結した建物売買契約(売主:請求人、買主:被相続人)に伴い被相続人に生じた売買代金相当額の債務について、当該債務のうち、当該建物の経済的価値(評価通達に基づき算出された評価額)を超える部分は、いずれ混同により消滅させるべき債務を、いわば名目的に成立させたにすぎず、相続開始日現在における消極的財産価値を示すものとはいえないため、相続税の債務控除の対象となる「確実と認められるもの」には該当しないとしたものである。

《要旨》
 請求人が、被相続人と生前に締結した売主を請求人、買主を被相続人とする建物売買契約に伴い被相続人に生じた売買代金相当額の債務(本件債務)は、真正に成立した処分証書が存在し、法的に履行が強制されることから、その全額が相続税法第14条第1項に規定する「確実と認められるもの」に該当する旨主張するのに対し、原処分庁は、本件債務は履行を予定していないことから、その全額が「確実と認められるもの」には該当しない旨主張する。
 しかしながら、本件債務の発生原因となった建物売買契約は、建物の売買金額と相続税評価額との間に生じる差額により相続税の軽減効果が期待できるとの提案があった上で締結されたことからすると、本件債務のうち、売買対象となった建物(本件建物)の経済的価値(評価通達に基づき算出された評価額)に相当する部分については、相続開始日時点における債務としての消極的経済価値を示しているものの、本件建物の経済的価値を超える部分については、いずれ混同により消滅させるべき債務を、いわば名目的に成立させたにすぎないのであるから、相続開始日時点における債務としての消極的経済価値を示すものとはいえない。したがって、本件債務のうち、本件建物の経済的価値に相当する部分については、相続税法第14条第1項に規定する「確実と認められるもの」に該当するものの、本件建物の経済的価値を超える部分については、「確実と認められるもの」には該当しない。

《参照条文等》
 相続税法第14条第1項、同法第22条

《参考判決・裁決》
 最高裁昭和49年9月20日第三小法廷判決(民集28巻6号1178頁)

トップに戻る