課税範囲

役務の提供の範囲

  1. 課税取引
    1. 「事業として」の意義
    2. 「対価を得て行われる」の意義
    3. 資産の貸し付けの範囲
    4. 役務の提供の範囲(5件)
    5. みなし譲渡
  2. 非課税取引
  3. 免税取引

公的機構から受領する処理料は、役務の提供を行うことの反対給付として受けるものであるから、課税資産の譲渡等に該当するとした事例

裁決事例集 No.51 - 673頁

  1.  請求人は、本件収入金額に係る廃プラスチックの処理料は県及び市町村の補助対象事業であり、当該処理料は県交付要領等に基づき交付される補助金及び助成分担金たる給付金であるから、課税資産の譲渡等の対価に該当せず、不課税である旨及び当該補助金等は、請求人が県及び市町村から廃プラスチック協議会を通じて受ける間接交付の形態を採っているとしても、補助金等の性格に影響を及ぼすものでない旨主張する。
  2.  しかしながら、補助金等は、反対給付を受けることなく交付されるものであるが、請求人は補助金の交付申請を行っていないところ、廃プラスチック処理料は、県廃プラスチック協議会が各市町村廃プラスチック協議会に請求をし、納入を受けていることから、廃プラスチック処理の実施主体は県廃プラスチック協議会と認められ、同協議会から請求人に対し廃プラスチックの処理料が支払われており、両者の間には廃プラスチックの処理委託契約が存在すると認めるのが相当である。なお、廃プラスチック協議会を通じたからといって、補助金等の性格に影響を及ぼすものでないとの主張は相当でない。
  3.  したがって、県が各市町村に、また、各市町村が各市町村廃プラスチック協議会に交付するものは特定の行政目的のものであり、いずれも補助金に該当すると認められるが、請求人が県廃プラスチック協議会から受領する廃プラスチック処理料は、廃プラスチック処理という役務の提供を行うことの反対給付として受けるものであるから、補助金等又は間接補助金等に当たらず、課税資産の譲渡等に該当することとなる。

トップに戻る

宗教法人が合宿研修を行うに際し参加者から徴収した宿泊費収入は、資産の譲渡等の対価に該当し、消費税の課税対象となるとした事例

裁決事例集 No.67 - 747頁

 請求人は、[1]本件合宿研修は、請求人の本来の目的を達成するために組織的活動の一環として行われているものであるから、本件合宿研修に参加した会員から宿泊代、食事代及び交通費等を賄うために徴収した本件宿泊費には、明白な対価性はなく、消費税の課税対象とはならないこと、[2]本件宿泊費は、合宿研修の計画の初期の段階において参加費を決定しなければならないなどの状況から、ある程度の余裕を持って参加費用を決定することは通常行われていることであり、合宿研修の結果、多少の利益が出たとしても、これをもって対価性があるとは即断できないこと、[3]本件合宿研修は、本来であれば、請求人の本部会館で無料で行うものであるが、会場の関係でやむを得ずホテルの集会場を賃借して行っているものであり、その実費相当額を参加会員に負担してもらっているに過ぎず、収入を得る目的で行うセミナーや研修会とはその性質を異にするものであって、課税資産の譲渡等の対価には該当せず、消費税の課税対象とはならないことから、原処分は違法であり、その一部を取り消すべきである旨主張する。
 しかしながら、本件合宿研修は、[1]請求人は法人であるから、その行った役務の提供は、事業として行われたものに該当すること、[2]請求人は、本件合宿研修を企画立案し、その実施を決定した後に、機関紙においてその実施を周知し参加者を募集していると認められること、及び旅行代理店に本件合宿研修に係る往復の交通手段や宿泊先の手配などを請け負わせるとともに、本件宿泊費の額を決定していると認められことから、本件合宿研修を会員に対して提供したのは請求人自身と認められ、このことは請求人の会員に対する役務の提供に該当すること、[3]本件合宿研修は、会員全員を対象に無料で実施するものではなく、参加資格を有する会員といえども本件宿泊費を支払わなければ参加できないことが認められ、また、請求人は参加者以外の会員からは、本件宿泊費を受領していないことが認められるから、本件合宿研修と本件宿泊費との間には明白な対価関係があるから、請求人が、事業として対価を得て行った役務の提供に該当し、消費税の課税対象になると解するのが相当である。

トップに戻る

家庭配置薬の販売業者が製造業者から受け取る手数料は、新規顧客獲得戸数に応じて支払われる出来高払としての報酬の性質を有することから、新規顧客獲得という役務提供の対価であると認めるのが相当であり、仕入れに係る対価の返還等としての販売奨励金等には該当しないとした事例

裁決事例集 No.69 - 394頁

 請求人は、本件受入手数料は、新規に獲得した顧客宅には薬を配置する必要があり、A社から大量に仕入れが必要となることから、販売促進の目的で販売数量及び販売高等に応じて受け取る販売奨励金等に該当し、また、新規顧客の獲得は請求人自身の顧客獲得であり、A社に対する役務の提供ではなく課税資産の譲渡等の対価には当たらない旨主張する。
 しかしながら、請求人が新付けにより獲得した得意先はすべて請求人の得意先となる一方、A社の売上金額の増加にも資することが認められ、また売上増加を期待するA社が支払う本件受入手数料は、新規顧客獲得数に応じて支払う出来高払いとしての報酬の性質を有するもので、新規顧客獲得という役務の提供の対価であると認めるのが相当である。また、請求人が受け取る一戸当たりの本件受取手数料は、請求人が新規顧客宅に配置する薬品の仕入原価の3倍を超えていること、本件受取手数料は課税資産である薬品の仕入れに係る取引の対価の額とは必ずしも対応しない新規顧客獲得戸数を計算基準として算出されて支払われていることからすると、本件受取手数料とA社からの薬品仕入れの対価との間に対応関係は認められない。
 そうすると、本件受入手数料は、販売奨励金等には該当せず、むしろ役務の提供の対価として課税資産の譲渡等の対価の額に当たるというべきである。

トップに戻る

請求人が職員を社会福祉法人が行う通所介護業務に従事させて社会福祉法人から得た金員は、出向契約に基づく給与負担金ではなく業務委託契約に基づく対価と認められることから、課税資産の譲渡等の対価に該当するとした事例

裁決事例集 No.77 - 482頁

 請求人は、請求人の職員を社会福祉法人Eが行う通所介護業務に従事させて社会福祉法人Eから得た金員は、社会福祉法人Eに出向させた職員(以下「本件職員」という。)の給与を収受したものであり、消費税法基本通達5−5−10に定める給与負担金に該当するから課税資産の譲渡等の対価には該当しない旨主張する。
 ところで、出向とは、出向者が出向元との労働契約を維持して雇用関係が存続する一方、出向先の指揮命令に服して就労することから、出向先とも雇用関係に基づいて勤務する形態であると解されるところ、本件職員との雇用関係は請求人との間にのみ存在することからすれば、請求人が本件職員を社会福祉法人Eに出向させていたとみることはできず、社会福祉法人Eから収受した金員は、出向に基づく給与負担金とは認められない。
 また、請求人は、社会福祉法人Eとの間において上述した通所介護業務に係る業務委託契約書を作成しているところ、当該契約書に実用性はなく本件金員は上記通達にいう給与負担金であるとも主張するが、実際に当該契約書の契約内容に基づいて職員を社会福祉法人Eの通所介護業務に従事させて役務を提供し、その対価として本件金員を収受しているのであるから、本件金員は、課税資産の譲渡等に係る対価に該当する。

トップに戻る

賃貸借契約終了時に原状回復費用に充当することが合意された敷金と追加金の合計額は、「原状回復義務」を消滅させることを「役務の提供」とする対価であり、課税資産の譲渡等の対価に該当するとした事例

裁決事例集 No.77 - 495頁

 請求人は、本件賃借人は建物の賃貸借契約の終了に伴う原状回復費用に充当するために本件合意金を請求人に預託したもので、原状回復工事をしなくてよいという「便益」は享受していないし、仮にそれを便益の享受とみても、本件合意金の大部分は原状回復工事業者に支払われるべき性質のものでその対価ではなく、本件合意金は預り金である旨主張する。
 しかしながら、消費税は、消費行為そのものに担税力を見いだすものであり、「対価を得て行われる」消費行為が課税の対象となり得るものであり、「役務の提供」の範囲は、「対価を得て行われる」と認められる「便益」の提供等、消費の対象となる「サービスの提供」を広く包含すると解されるところ、請求人は、建物賃貸借契約の終了に係る本件合意により、本来であれば本件賃借人において負担すべきであった「原状回復義務」を消滅させることを「便益」の提供として消費税法上の「役務の提供」を行ったことになり、また、そのために原状回復費用に充当されることとなる本件合意金が、本件賃借人の「原状回復義務を消滅させる」という「便益」を提供するための反対給付、すなわち「対価」に該当することから、本件合意金は、消費税の課税資産の譲渡等の対価に該当する。
 また、本件合意金の支払により、本件賃借人、請求人間にその余の債務関係が存在しないことが確認されており、実際に原状回復工事を行っても、その費用を本件賃借人との間で清算することは予定されていないのであるから、本件賃借人は、本件合意により原状回復義務の消滅という「便益」を受けているというべきであり、本件合意金の大部分が原状回復工事業者に支払われるとしても、それは、当該支払に対する消費税が課税仕入れとして仕入税額控除の対象になり得るものであることを意味するに過ぎない。
 したがって、本件合意金を預り金とする請求人の上記主張には理由がない。

トップに戻る