税額控除等

帳簿等の不存在

  1. 仕入税額控除
    1. 課税仕入れ等の範囲
    2. 課税仕入れ等の時期
    3. 課税仕入れ等の税額の算出
    4. 仕入税額控除の不適用
      1. 帳簿等の不存在・不提示(4件)
      2. 帳簿等の記載不備
    5. 簡易課税制度
  2. 貸倒れの場合の税額控除

原処分調査中に請求人が提示した資料は、消費税法第30条第7項の要件を充たさないので、他の証拠資料によって課税仕入れに係る支払対価の額を合理的に推認できる場合であっても、仕入税額控除は認められないとした事例

裁決事例集 No.65 - 937頁

 請求人は、仕入税額控除に係る帳簿及び請求書等の保存がない場合であっても、請求人が提出した資料によって、原処分庁は仕入税額を把握できたのであるから、仕入税額控除をすべきである旨主張する。
 しかしながら、消費税法第30条第7項の規定は、仕入税額の証明手段を法定の帳簿及び請求書等に限定していると解され、他の証拠資料によって課税仕入れに係る支払対価を合理的に推認できる場合であっても認められないこと、また、帳簿及び請求書等の保存は、法所定の保存期間の始期から全期間にわたって所持・保管を継続することを意味し、帳簿及び請求書等を保存の始期の後に取得しても、その保存の要件を欠き、仕入税額控除が認められないところ、請求人が提出した資料は、その大半が調査の開始後に取引先から取り寄せた元帳のコピーであるなど、いずれも同項に規定する帳簿及び請求書等に該当しないから、仕入税額控除の適用はできない。

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従業員に業績の不振の状況を示す目的で関係書類を処分し、帳簿書類等を調査担当者に対して提示できなかったことは、請求人自身の責めに帰するものであり、消費税法第30条第7項に規定する「やむを得ない事情」とは認めることはできないとした事例

裁決事例集 No.68 - 246頁

 請求人は、帳簿書類等を保存していなかったのは、廃業状況に追い込まれており、従業員の要請に基づき事業を継続するためには人員の削減が不可欠であることから、「廃業状況にある」ことを示す目的で一部書類を処分したためであり、それほどまでに追い詰められていた経営状況であったという事実以上に、消費税法第30条第7項に規定する「やむを得ない事情」はあり得えない旨主張する。
 しかしながら、請求人が業績の不振から会社を閉鎖するために、従業員にその状況を示す目的で関係書類を処分し、本件調査に際し、本件各課税期間に係る帳簿書類等を調査担当者に対して提示できなかったことは、請求人自身の責めに帰するものといわざるを得ず、消費税法第30条第7項に規定する「やむを得ない事情」とは認めることができない。

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税務調査において消費税法第30条第7項に規定する課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等の提示がされなかったとして仕入税額控除の適用が認められないとした事例

裁決事例集 No.74 - 450頁

 請求人は、帳簿を保存していたのに、調査担当者が第三者の立会い排除要求に請求人が応じないことを理由に帳簿を確認せず仕入税額控除を否認したのは違法である旨主張する。
 しかしながら、消費税法第58条は事業者に課税仕入れ等に関する帳簿等の保存を義務付け、同法第62条は税務職員にこれらの帳簿等を検査することを認めている。このように課税仕入れ等に係る帳簿等が税務職員による検査の対象となることを前提に、同法第30条第7項は、事業者が課税仕入れ額に係る帳簿等の保存をしている場合において、税務職員がこれらの帳簿等を検査することができるときに限り、同条第1項の仕入税額控除を適用できる旨明らかにしたものである。
 この趣旨からすれば、事業者が仕入税額控除の適用を受けるには、法が定める帳簿等を整理し、これらを所定の期間及び場所において、税務職員による検査に当たり適時に提示することが可能なように態勢を整えて保存することを要し、事業者がこれを行っていなかった場合には、仕入税額控除は適用されないというべきである。
 これを本件についてみると、調査担当者は再三にわたって、帳簿等の提示がない場合には仕入税額控除の適用が認められない旨の説明をした上で、第三者を退席させた上で帳簿等を提示することを求めていたところ、これらの提示要求に違法な点は認められない。そして、請求人が専ら立会いなしでは調査に応じられないという理由で帳簿等の提示を拒んでいたことに照らすと、請求人は、帳簿等の提示要求に応じ難いとする格別な理由がなかったにもかかわらず提示しなかったというべきである。
 これらから判断すると、本件は同法第30条第7項に規定する「事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿又は請求書等を保存しない場合」に当たり、原処分庁が同条第1項の規定を適用せず仕入税額控除を否認した更正処分は適法である。

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帳簿及び請求書等の保存要件を充足するとして消費税の仕入税額控除の適用を認めた事例(1平成26年分以後の所得税の青色申告の承認の取消処分、2平成26年分から平成29年分及び令和元年分の所得税及び復興特別所得税の各更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分、3平成30年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分並びに重加算税の賦課決定処分、4平成26年分及び令和元年分の所得税及び復興特別所得税の各再更正処分、5平成29年分及び平成30年分の所得税及び復興特別所得税の各再更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分、6平成27年分及び平成28年分の所得税及び復興特別所得税の各再更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各変更決定処分、7平成26年1月1日から平成28年12月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分、8平成29年1月1日から平成30年12月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分並びに重加算税の各賦課決定処分、9平成26年1月から令和元年6月までの各期間の源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税の各納税告知処分並びに重加算税の各賦課決定処分・138棄却、2一部取消し、棄却、却下、457一部取消し、棄却、6却下、9一部取消し)

令和4年11月9日裁決

《ポイント》
 本事例は、原処分庁が調査を行った日において消費税の請求書等の保存を要する期間を経過していた課税期間について、当該課税期間の帳簿は保存されていたことから帳簿及び請求書等の保存要件を充足しているとして、当該課税期間に係る支払対価の額が3万円以上の取引についても仕入税額控除が適用されるとしたものである。

《要旨》
 請求人は、平成26年1月1日から同年12月31日まで(平成26年課税期間)、平成27年1月1日から同年12月31日まで(平成27年課税期間)及び平成28年1月1日から同年12月31日まで(平成28年課税期間)の各課税期間(本件3課税期間)の消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第7項の規定に係る帳簿(法定帳簿)及び請求書等(法定請求書等)は、消費税等の実地の調査の初日に保存があり、調査担当職員に対し法定帳簿を提示し、また法定請求書等についても提示しようとしていたことなどから、本件3課税期間においては課税仕入れに係る支払対価の額の合計額が3万円以上の取引についても仕入税額控除が適用されるべきである旨主張する。
 しかしながら、法定請求書等を実際に保存している場合において、税務職員が法定請求書等を検査することができるときに限り、仕入税額控除の適用が認められるところ、平成27年課税期間及び平成28年課税期間については、請求人は調査担当職員に対して法定請求書等を、その保存を要する期間内に適時に提示しなかったのであるから、課税仕入れに係る支払対価の額の合計額が3万円以上の取引については仕入税額控除が認められない。一方で、原処分庁は、本件3課税期間の法定請求書等の保存はない旨主張するが、平成26年課税期間の処分の適法性に関し具体的に主張しておらず、同課税期間については、調査初日において法定請求書等の保存を要する期間を経過しており、よって、平成26年課税期間の消費税等については、課税仕入れに係る支払対価の額の合計額が3万円以上の取引についても仕入税額控除が適用される。

《参照条文等》
 消費税法第30条第1項、第7項
 消費税法施行令第50条第1項
 消費税法施行規則第15条の3

《参考判決・裁決》
 平成15年6月26日裁決(裁決事例集No.65)

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