税額控除等

簡易課税制度の選択

  1. 仕入税額控除
    1. 課税仕入れ等の範囲
    2. 課税仕入れ等の時期
    3. 課税仕入れ等の税額の算出
    4. 仕入税額控除の不適用
    5. 簡易課税制度
      1. 簡易課税制度の選択(13件)
      2. みなし仕入率
  2. 貸倒れの場合の税額控除

簡易課税選択後2年間は、本則課税の適用はできないとした事例

裁決事例集 No.43 - 383頁

 請求人は、課税事業者が簡易課税制度を選択している場合であっても、本則課税により申告したときは本則課税による申告を認めるべきであると主張するが、いったん簡易課税制度を選択した場合は2年間はこれを継続しなければならないこととされており、請求人は、簡易課税制度選択後2年目であり、基準期間の課税売上高が5億円以下であるから、簡易課税制度を適用して確定申告をすべきである。

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簡易課税制度選択届出書の提出は錯誤によるものであるとして、本則課税を適用し、仕入税額控除をすべきとしてされた更正の請求につき、同届出書の提出は無効でなく、請求は認められないとした事例

裁決事例集 No.48 - 405頁

 請求人は、消費税法に基づき簡易課税制度選択届出書を提出した上で、当期につき簡易課税に基づいて算出した消費税の確定申告書を提出した。
 その後、請求人は、簡易課税制度選択届出書の提出は錯誤によるものであり、本則課税により仕入税額控除を適用すべきとして更正の請求をした。
 請求人は、簡易課税制度選択届出書の提出は錯誤に基づくもので無効であると主張するが、同届出書の提出による簡易課税の選択が錯誤により無効となるのは、請求人の錯誤が客観的に明白かつ重大なものである場合に限られると解すべきである。請求人が提出した簡易課税制度選択届出書は、法令の規定に従い記載し提出されており、その記載には明らかな誤りは認められず、仮に請求人に錯誤があったとしても、同届出書上錯誤が表れているとはいえないから、客観的に明白かつ重大な錯誤が存在したと認定することはできない。
 したがって、簡易課税制度選択届出書の提出による簡易課税の選択が無効であるという請求人の主張は採用することができず、更正の請求に理由がないとした原処分は相当である。

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「消費税簡易課税制度選択届出書」の効力は、「消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書」の提出によっては失効しないとした事例

裁決事例集 No.51 - 731頁

 消費税法第57条(小規模事業者の納税義務の免除が適用されなくなった場合等の届出)第2項の規定に基づく「消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書」は、事業者が基準期間の課税売上高が3,000万円以下となった場合に当該基準期間に対応する課税期間において消費税の納税義務がなくなった旨を届けるもので、簡易課税の特例の適用を受けることをやめようとするとき又は事業を廃止したときは、その旨を記載した届出書を提出しなければならない旨規定されていることからすると、消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書が提出されたとしても、簡易課税制度選択届出書の効力は失効しないものと解するのが相当である。

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消費税につき提出した「簡易課税制度選択届出書」の効力は、課税期間の基準期間における課税売上高が3,000万円以下となった場合に提出することとされている「納税義務者でなくなった旨の届出書」の提出によっては、失効しないとされた事例

裁決事例集 No.58 - 292頁

 請求人は、消費税法第57条第1項第2号に規定する「納税義務者でなくなった旨の届出書」を提出することにより、それまでに提出していた「簡易課税制度選択届出書」の効力も同時に失効するので、その後に提出される消費税の確定申告については、簡易課税が適用される余地はなく、本則課税方式による仕入税額控除が適用されるべきである旨主張する。
 しかしながら、「簡易課税制度選択届出書」の効力は「簡易課税制度選択不適用届出書」を提出しなければ失効せず、「納税義務者でなくなった旨の届出書」は、基準期間の課税売上高が3,000万円以下となったことによりその基準期間に係る課税期間について消費税の納税義務者でなくなった旨を税務署長に届出するもので「簡易課税制度選択不適用届出書」とはその目的を異にし、また、「納税義務者でなくなった旨の届出書」の提出により当然に「簡易課税制度選択届出書」の効力が失効することを定めた法令の規定も存しないことから、請求人の主張には理由がない。

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簡易課税制度適用課税期間に仕入れた建物に係る仮払消費税は、その後の本則課税適用課税期間における仕入税額控除の対象にはできないとした事例

裁決事例集 No.61 - 671頁

 請求人は、簡易課税制度適用課税期間に取得した建物を、本則課税適用課税期間に売却したため、本件更正処分は、結果的に仕入税額が控除されていない不当な課税であると主張するが、請求人の場合、本件課税期間に係る基準期間の課税売上高が2億円を超えていることから、消費税法第37条第1項かっこ書の規定により簡易課税による仕入税額控除の計算を行うことはできず、同法第30条に定める本則課税の方法によらざるを得ないこととなる。
 そうすると、仕入税額控除の額の計算の基礎とすべきと主張する本件建物は、本件課税期間前に仕入れられたものであるから、本件課税期間において仕入税額控除の対象とすることはできないことは明らかであり、また、簡易課税によった場合に比べて税負担が大きくなることをもって本件更正処分が不当な課税であるということもできない。

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簡易課税制度選択届出書の提出があり、その後簡易課税制度不適用届出書の提出がないので、本件課税期間については簡易課税制度を適用した更正処分等は適法であるとした事例

裁決事例集 No.62 - 435頁

 請求人は、設備投資に係る消費税等の還付を受ける目的で、本則課税を適用して申告したものであるが、消費税等の還付が受けられないのであれば本件申告書の取り下げを認めるべきであり、簡易課税制度を適用して行った更正処分等は違法、不当であると主張するが、本件申告書は、法令の規定に従った適法なものであり、自ら自由に取り消し、撤回をすることは許されず、また、請求人は簡易課税制度選択届出書を提出しているが、その後簡易課税制度不適用届出書の提出がないので、簡易課税制度を適用して行った更正処分等は適法である。

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簡易課税制度選択事業者が、消費税の経理処理につき税抜経理方式をとっているからといって、本則課税による仕入れ税額控除が認められることにはならないとした事例

裁決事例集 No.62 - 444頁

 新設法人で、かつ、簡易課税制度選択届出書を提出している請求人は、消費税等の経理処理について税抜経理方式をとっているから本則課税を認めるべきであると主張するが、当該届出書は本件課税期間を適用開始課税期間として適法にその効力を有しており、かつ、本件課税期間から事業を開始しているから、基準期間のない本件課税期間においては簡易課税制度を適用しなければならず、本則課税を適用する余地はない。

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簡易課税制度選択届出書の提出は錯誤によるものであり無効であるとの主張を認めなかった事例

裁決事例集 No.62 - 451頁

 請求人は、簡易課税制度選択届出書の提出に当たって、原処分庁から簡易課税に関する説明が一切なかったことから、簡易課税とは単に消費税を算出する計算過程が簡単になるという認識しかなく、その提出は錯誤によるものであり無効であるから、本件課税期間について本則課税を認めるべきであると主張する。
 しかしながら、簡易課税制度選択届出書が錯誤により無効となるのは、請求人の錯誤が、客観的に明白かつ重大なものである場合に限られると解すべきところ、本件簡易課税制度選択届出書は、本件課税期間から適法にその効力を有しているものと認められ、また、請求人はグループの営業担当者から消費税等の届出書の提出について指導を受けていることから、簡易課税制度の内容については十分知りえたものと認められる。
 したがって、本件簡易課税制度選択届出書の提出は、請求人自身の判断に基づいてなされたものであり、提出に当たって請求人に本件簡易課税制度選択届出書の提出が無効となるような客観的に明白かつ重大な錯誤があったとは認められないから、請求人の主張には理由がない。

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請求人が自らの判断で簡易課税制度選択の届出をした限りは、任意に本則課税によって申告することはできないとした事例

裁決事例集 No.65 - 952頁

 請求人は、送付されてきた消費税の届出書に関する案内チラシは簡易課税の選択を誘導する内容のものであったので、消費税簡易課税制度の仕組みをよくわからないまま消費税簡易課税制度選択届出書を提出したのであり、また、同届出書の「事業内容等」欄の「事業区分」の記載漏れは重要事項であるのに、原処分庁はその連絡をせず同届出書を撤回する機会を失ったのであるから、本則課税によって課税仕入れに係る消費税額を計算し、納付すべき消費税額を算出した申告は認められるべきであると主張する。
 しかしながら、本件案内チラシは、簡易課税の選択を誘導するような内容ではなく、また、撤回するかどうかは、事業者本人の判断と責任においてなされるべきであり、記載漏れがあったことについて原処分庁からの連絡があったかどうかによって左右されるものでないことは明らかである。
 また、いったん消費税簡易課税制度選択届出書を提出し、簡易課税を選択した以上、簡易課税の適用をやめようとする旨の届出書を提出しない限り本則課税が適用されることはないので、請求人の主張には理由がない。

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簡易課税制度を選択していた課税事業者が、免税事業者に該当する課税期間について課税事業者選択届出書を提出したとしても、当該課税期間において本則課税を適用して消費税の仕入れに係る消費税額を算出することは認められないとした事例

裁決事例集 No.66 - 341頁

 請求人は、課税事業者に該当することから簡易課税制度を選択したものであり、免税事業者であれば簡易課税制度を選択することもないし、消費税法第37条は法的効力も有しないところ、請求人の本件課税期間に係る基準期間の課税売上高は3000万円以下であり、免税事業者であるにもかかわらず、本件課税期間について課税事業者選択届出書を提出することにより、消費税法第9条第1項本文の特例規定の適用を放棄して課税事業者となったのであるから、本件課税期間の仕入れに係る消費税額の計算においては、消費税法第37条の規定の適用はなく、原則計算である同法第30条の規定により行うこととなる旨主張する。
 しかしながら、[1]請求人は平成7年3月23日に簡易課税選択届出書を提出した後、平成14年12月24日に簡易課税制度選択不適用届出書を提出しているが、それ以前に簡易課税制度選択不適用届出書を提出した事実は認めらないこと、[2]平成14年6月24日に適用開始日を本件課税期間の開始日とする課税期間特例選択届出書を提出した上で、本件課税期間について課税事業者選択届出書を提出していること及び[3]本件課税期間に係る基準期間における課税売上高は2億円以下であることから、期間において簡易課税制度の適用を受ける事業者であることは明らかである。
 消費税法第9条第4項に規定する課税事業者選択届出書を提出した事業者は、同条第1項本文の規定の適用はないのであるから同法第37条第1項のかっこ書きにある「同法第9条第1項本文の規定により消費税を納める義務を免除される事業者を除く」の規定により同法第37条の規定が適用されないと解する余地はないといわざるを得ず、請求人の主張は独自の見解に基づくものであるから、採用することはできない。
 以上のとおり、原処分庁が、請求人の本件課税期間の消費税等について簡易課税制度を適用して仕入れに係る消費税額を算出したことは相当と認められる。

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消費税の確定申告書を法定申告期限までに提出できなかったこと及び簡易課税制度選択届出書を提出できなかったことは、原処分庁の説明及び周知努力の不足のためであるから、簡易課税制度を適用して消費税等の納付すべき税額を計算すべきであり、無申告加算税の賦課決定処分も違法であるとの請求人の主張を、確定申告書の提出及び簡易課税制度の選択は請求人自身の責任と判断においてなされるべきであり、税法の単なる不知により不利益を受けたとしても、納税者自身が甘受せざるを得ないとして排斥した事例

裁決事例集 No.68 - 276頁

  1.  請求人は、簡易課税制度選択届出書を提出できなかったのは、[1]会社設立時の届出をした際に、原処分庁から簡易課税制度について説明が一切なかったこと、[2]会社設立時の届出書類一式の中に簡易課税制度選択届出書の用紙がなかったこと、[3]簡易課税制度について原処分庁が十分な周知を行わなかったことが原因であるから、原処分庁は、簡易課税制度を適用して消費税等の納付すべき税額を計算すべきである旨主張する。
     しかしながら、税務署長が納税者に対して、簡易課税制度について周知しなければならないとする法令上の規定はなく、また、申告納税制度の下における消費税等の確定申告、申請及び届出等の手続は納税者自身の責任と判断においてなされるべきであり、税法の単なる不知により納税者自身不利益を受けたとしても、それは納税者自身において甘受せざるを得ないと解されるから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
  2.  請求人は、消費税等の確定申告書を法定申告期限までに提出できなかったのは、原処分庁が、[1]申告書用紙を送付してこなかったこと、[2]当該申告が必要であることを事前に通知しなかったことが原因であるから、これらをしないで行った本件各賦課決定処分は違法である旨主張する。
     しかしながら、消費税は、税務署長からの通知、案内等の有無にかかわりなく、法定の期限内に確定申告書を提出することを義務付けられているのであり、原処分庁による申告書用紙の送付は、国民の納税義務の適正かつ円滑な履行を確保するため、行政上任意的に行われる納税者に対するサービスの一環にすぎず、消費税法その他の関係法令の規定に基づくものではないから、申告書用紙の送付がなかったからといって、それが法定申告期限内に提出ができなかったことの正当な理由にはならない。

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事業を廃止した場合において、簡易課税制度選択の届出の効力が失われるのは事業廃止届出書の提出があった日の属する課税期間の末日の翌日であり、事業を廃止した日の属する課税期間の末日の翌日と解することはできないとした事例

裁決事例集 No.69 - 402頁

 請求人は、事業廃止届出書の提出がなかったとしても、事業の廃止という事実が否定されるものではないから、消費税法第37条第2項に規定する事業廃止届出書提出の有無にかかわらず、事業を廃止した日の属する課税期間の末日の翌日に、簡易課税制度選択届出書の効力は喪失すると解すべきである旨主張する。
 しかしながら、消費税法第37条第2項及び同条第4項には、簡易課税制度を選択した事業者が事業を廃止した場合は、事業廃止届出書を提出しなければならず、当該届出書が提出された日の属する課税期間の末日の翌日以後、簡易課税制度選択届出書の効力が失われると規定されているのであるから、簡易課税制度選択届出書の効力が喪失するのは、事業廃止届出書の提出があった日の属する課税期間の末日の翌日と解するほかないというべきであり、消費税法第37条第2項に規定する事業廃止届出書を提出しない限り、事業を廃止した日の属する課税期間の翌課税期間以後も、簡易課税制度を適用しなければならないこととなる。
 請求人は、いずれも消費税法第37条第2項に規定する事業廃止届出書等と認められる「簡易課税税制度選択不適用届出書」及び「事業廃止届出書」を平成14年8月30日に提出しており、これらの届出書はいずれも、本件各課税期間の開始の日の前日までに提出されていないことから、本件各課税期間については、本件簡易課税制度選択届出書の効力は存続しているものといわざるを得ない。
 したがって、請求人の主張は、消費税法第37条第2項及び同条第4項の解釈上、採用することはできない。

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消費税法第12条第1項から第4項までに規定する「分割等」として、同条第7項第3号に規定するのは、一の法人により行われる事後設立であると解するのが相当とした事例

平成24年2月22日裁決

《要旨》
 請求人は、請求人の被合併法人であるD社は、消費税の控除対象仕入税額の算定において、消費税法第37条《中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例》第1項に規定するいわゆる簡易課税方式を適用しているところ、D社の設立形態は、同法第12条《分割等があった場合の納税義務の免除の特例》第7項第3号に規定する分割等に該当するから、D社の本件課税期間の基準期間における課税売上高は、消費税法施行令第55条《仕入れに係る消費税額の控除の特例の適用がない分割等に係る課税期間》第1項第3号の規定に基づき、D社及び同社の親法人であるGホールディングスの課税売上高の合計額によるべきであり、そうすると、当該合計額は5,000万円を超え、かつ、同号に規定する特定要件も満たすから、本件課税期間は、同法第37条第1項に規定する分割等に係る課税期間に該当し、同法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第1項に規定するいわゆる本則課税方式を適用すべきである旨主張する。
 しかしながら、消費税法第12条第7項第3号に規定する分割等は、金銭を出資する法人と資産を譲渡する法人が同一であること、金銭を出資する法人の設立時の持分割合が100%であることを要件としているから、一の法人により行われる事後設立であると解するのが相当であるところ、D社の設立形態は、金銭を出資したのはGホールディングスである一方、D社に資産を譲渡したのはGホールディングスの子会社である合併前の請求人であり、同一の法人によるものではないから、同号に規定する分割等には該当しない。

《参照条文等》
 消費税法第12条第7項第3号、第37条第1項
 消費税法施行令第23条第9項、第55条

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