税額控除等

みなし仕入率

  1. 仕入税額控除
    1. 課税仕入れ等の範囲
    2. 課税仕入れ等の時期
    3. 課税仕入れ等の税額の算出
    4. 仕入税額控除の不適用
    5. 簡易課税制度
      1. 簡易課税制度の選択
      2. みなし仕入率(13件)
  2. 貸倒れの場合の税額控除

塗料を材料として家具の塗装を行う行為は、いわゆる家具の塗装業であり、卸売業に該当しないとした事例

裁決事例集 No.48 - 479頁

 請求人は、その事業は、他の事業者から購入した塗料を、性質及び形状を変更せずに、特定の事業者に販売するものであるから、卸売業に該当する旨主張するが、請求人の事業は、塗料を材料として得意先から預かった家具に塗装する家具の塗装業であり、塗料それ自体を商品として販売する事業とはいえないから、卸売業には該当しない。

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請求人の行っている業務は、会計処理業務であり、帳票類を販売する業務ではないとして、簡易課税制度の適用上、卸売業に該当しないとした事例

裁決事例集 No.49 - 505頁

 請求人は、J社から帳票類を仕入れ、一切手を加えず、得意先に販売しているのみであり、また、得意先は特定の事業者であって一般の消費者ではないから、請求人の業務は、消費税法施行令第57条第2項に規定する卸売業に該当すると主張し、仕入先であるJ社と情報サ−ビス提供の契約をしているのは請求人ではなく、請求人の代表者である税理士であり、また、得意先との関係においても、請求人の業務と代表者たる税理士の業務は明確に区分されていると主張する。
 しかし、請求人が行っているのは、得意先が起票した伝票等の資料をJ社の情報処理システムにより整理分析して帳簿等を作成する会計処理業務であり、請求人の主張する帳票類の販売とは、会計処理業務の成果品として作成される帳簿等を引き渡すことである。
 したがって、請求人の業務は、消費税の簡易課税制度の適用上、卸売業には該当しない。

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悉皆業(白生地卸売業及び染色加工に係る事業)は、「加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供事業」に該当し、第四種事業に当たるとした事例

裁決事例集 No.49 - 515頁

 請求人は、その事業は、染色加工業であって日本標準産業分類によれば、製造業の中分類(繊維工業)の小分類染色整理業に該当し、請求人自らの名と責任においてすべての加工を外注先に依存する製造業であり、第三種事業に当たる旨主張するが、請求人の事業は、白生地を受注先の小売店から提供されて、それに染色等の加工をしているのであるから、「加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供事業」に該当し、第四種事業に当たる。

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原材料等の有償支給を受けて行う自動車部品の加工は製造業に当たるとした事例

裁決事例集 No.49 - 525頁

 請求人は、受注先であるM社等に納品した製品の対価には、同社から支給された原材料の部品代金を含めた金額(製品の対価に係る消費税額を含む)を受領し、他方、M社等から製品の加工を受注するに際しては、原材料の部品の対価(製品の対価に係る消費税額を含む)をM社等に支払っていることから、消費税の課税標準額は、M社等から有償支給された原材料部品の金額を加算した金額により計算することが相当である。

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紳士服等の製造販売に係るフランチャイズチェーンに加盟して行う販売事業は、製造業(第三種事業)に該当するとした事例

裁決事例集 No.51 - 709頁

 請求人は、フランチャイズチェーン本部に紳士服等の縫製加工を委託しているとはいえず、本部から購入した商品をその性質や形状を変更しないで販売しており、小売業(第二種事業)に当たる旨主張するが、請求人の事業形態は、紳士服等の縫製を現実に行うのは本部であっても、顧客との間においては、当該紳士服等の縫製は請求人の行為として行われているものであって、本部が縫製した紳士服等の製品を請求人が購入して顧客に販売しているとみることはできないことから、請求人の事業内容は、製造業(第三種事業)に該当すると認めることが相当である。

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顧客から印刷物の注文を受けて、これを外注先に印刷させ、その印刷物を顧客に納品する事業は、製造業(第三種事業)に該当するとした事例

裁決事例集 No.51 - 719頁

 請求人は、請求人自らは印刷そのものを行っておらず、単に他の者から購入した商品をその性質及び形状を変更しないで顧客に販売しているだけであるから、卸売業に当たる旨主張するが、請求人の事業形態は、顧客の注文に応じて自己の計算と危険において外注先に印刷加工を行わせることにより、印刷物の性質及び形状を変更して付加価値を高め、完成された印刷物を顧客に納品することにより対価を受領していることから、請求人の事業内容は、印刷業(製造業)に該当すると認めるのが相当である。

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請求人の行っている事業は、第三種事業に該当するものではなく、加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業であり、第四種事業に該当するとした事例

裁決事例集 No.53 - 491頁

 請求人は、消費税の簡易課税制度の適用についての事業区分において、得意先から表生地の無償支給を受け、自己調達した裏生地及び芯地材並びにその他の副資材を用いてプレタポルテを製造するものであるが、裏生地及び芯地材もプレタポルテの主要な原材料であるから、本件事業は、第三種事業に該当すると主張する。
 しかしながら、裏生地及び芯地材は、あくまでも表生地に付属するものであって、プレタポルテの主要な原材料である表生地の持っている特性を増補あるいは補完することにより衣服としての価値観、機能性を高めるものであるにすぎないから、プレタポルテの主要な原材料であるとは認められないので、本件事業は、加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行なう事業に該当し、第四種事業とするのが相当である。

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歯科技工を営む者が自ら原材料等を購入して、歯科補てつ物を製作し受注先に納入している場合の消費税の簡易課税制度における事業区分は、第四種事業(サ−ビス業)に該当するとした事例

裁決事例集 No.54 - 493頁

 請求人は、請求人の歯科技工所の事業形態は、原材料、中間材料、機械設備などをすべて自ら調達し、原材料等に物理的、科学的、機械的変化を施した歯科補てつ物を患者固有の口腔内に適合、機能できるように製作して受注先へ納入していることから第三種事業(製造業)に該当する旨主張する。
 しかしながら、請求人の事業をみると、もっぱら歯科医師等の受注先から補てつ物等を作成するうえでの具体的指示事項が記載されている技巧伝票及び石こうの歯形の提供を受けて歯科補てつ物等を作成して納入しているのであり、同物を何の制約等を受けることなく自由に作成できるものではない。請求人は、歯科医師が指示する形状、サイズ、材質等に従って歯科補てつ物を作成しなければならないのであり、歯科医師の指示によらず作成する歯科材料製造業等とは全く異なっている。
 また、請求人の事業は誰でも自由に行い得るものではなく、歯科医師ないし歯科技工士としての国家資格が認められた者でなければ行い得ないものであって、歯科医師は歯科医師及び歯科技工士以外の誰にも事業としての歯科補てつ物等の作成を依頼することができないことから、本件事業は歯科医師の指示に基づいて歯科医療に係る知識若しくは技能、技術を提供するものであり、歯科補てつ物等の作成も歯科医療行為の一環として行っているものと解するのが相当である。
 そうすると、本件事業は、歯科補てつ物等を製作する製造業としてよりも、歯科補てつ物等の製造、納入による歯科医療行為に付随するサービス提供事業である点にその本質があるものと解されることから、第四種事業(サービス業)に該当する。

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簡易課税におけるみなし仕入率の適用に際し、歯科技工所は製造業ではなくサービス業に該当するとした事例

裁決事例集 No.61 - 662頁

 請求人は、請求人の営む歯科技工所は、社会通念上、製造業というべきである旨主張する。
 しかしながら、歯科技工は、免許を受けた歯科技工士でなければ業として行うことができないとされ、また、設計、作成の方法、使用材料等が記載された指示書によらなければならないとされるのは、これを行うには相当高度な専門知識、技能・技術が必要とされるためだけでなく、歯科技工士は歯科医師の補助者として歯科医療行為の一環としてこれを行うものであるから、たとえ請求人において材料を購入し、その技術を駆使して義歯を作成しているとしても、本件事業の本質は、歯科医師が患者に対してする医療行為と同様、専門的な知識、技能等を提供することにあるということができ、以上からすると、本件事業は、社会通念上もサービス業に該当すると解するのが相当である。

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請求人の営む事業は、消費税法施行令第57条第5項第4号に規定する第五種事業に該当するとした事例

裁決事例集 No.64 - 548頁

 請求人は、自己が営む事業につき、顧客先との間で取り交わした契約書の表題は「請負契約書」であり、その「業務の内容」の項において具体的な作業内容が明記されるとともに、請負金額は生産状況により調整する旨記載されており、この契約に基づいて役務を提供して対価を受け取っていたものであるから、製造業のうち役務の提供を行う事業に該当することとなり、消費税の簡易課税制度における事業区分上、第四種事業に該当する旨主張する。
 しかしながら、消費税の簡易課税制度を公平に適用するためには、日本標準産業分類を基礎として判定することが有用であるところ、請求人が顧客先に派遣する社員は、顧客先の社員の指揮命令を受けて作業に従事していること、請求人は、顧客先との間で、別途「覚書」を交わしており、それによれば、顧客先へ請求する役務の対価の額は派遣した社員の勤務時間や時間給を基礎として算定するとされ、実際にもこれによっていること等からすれば、当該役務の対価の額は、民法第632条が規定する請負契約において予定されている仕事の結果に対する報酬でなく、派遣した社員の労働の対価と認められることから、当該取引は、形式上、請負契約の体裁をとるものの、実質的には請負といえず、日本標準産業分類の大分類「サービス業」の中分類「その他の事業サービス業」の細分類の「労働者派遣業」(派遣するために雇用した労働者を、派遣先事業所からその業務の遂行等に関する指揮命令を受けてその事業所のための労働に従事させること)に該当し、事業区分について、より合理的な他の基準がないことから、請求人の営む事業は第五種事業に区分されるサービス業に当たると認められる。

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既製服プレス加工業は、日本標準産業分類五十音索引表の「プレス仕上げ業(既製服などの仕上げ工程として行うもの)」(大分類L−サービス業)と同一の事業を意味するものと認められることからサービス業に該当し、簡易課税制度における事業区分は第五種事業であるとした事例

裁決事例集 No.67 - 758頁

 請求人は、本件事業は、既製服製造業者より依頼を受け、既製服製造工程の一部であるプレス加工を営むものであり、加工賃等を対価とする役務の提供を行う事業に該当するから、第四種事業となる旨主張する。
 課税事業者が簡易課税制度選択届出書を届け出た場合には、実際の仕入れに係る消費税額を計算することなく、その事業者の営む事業の種類の区分に応じたみなし仕入率を乗じて計算した金額を仕入れに係る消費税額とみなして控除することができることとされているが、消費税法及び施行令には、具体的にどの業種が何業に該当することになるかについては、格別規定がないため、社会通念に照らして判定することになる。
 日本標準産業分類は、統計調査の結果を産業別に表章する場合に用いる分類として定められたものであり、日本の産業に関する統計の正確性と客観性を保持し、産業統計の信頼性を高めるために広く定着しているものであるといえ、事業の範囲を判定するのに当たり日本標準産業分類の大分類に掲げる分類を基礎とする旨の消費税法基本通達13−2−4は、当審判所においても相当と認められる。
 一般に既製服は、[1]裁断、[2]縫製、[3]ボタン付け、[4]マトメ、[5]検針、[6]プレス(アイロンかけ)[7]値札等の取付けの各工程を経て、商品が製造されるが、本件事業の主たる作業は、商品価値を高めるために請負元から受け取った製品のしわを取り除き、膨らみを持たせるために行う[6]プレス(アイロンかけ)による仕上げであると認められるところ、日本標準産業分類五十音索引表の「プレス仕上げ業(既製服などの仕上げ工程として行うもの)」(大分類L−サービス業)と同一の事業を意味するものと認められるから、本件事業はサービス業に該当し、簡易課税制度における事業区分は第五種事業であると認められる。

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請求人の営む事業は、加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業であるから第四種事業に該当するとした事例

平成22年9月2日裁決

 請求人は、自ら営む事業は、時間的観点からいえば、セキュリティ工事のうち配線工事が主であり、また、施工に必要とされるコードケーブル等の資材は自ら全部調達して配線工事を行っているから、第四種事業には該当しない旨主張する。
 しかしながら、当該事業は、発注者からセキュリティ機器の提供を受け、当該機器の設置、配線、調整等を行い、セキュリティシステムを正常に稼動させるまでの工事を行うものであり、また、当該事業は、電気工事士2種以上、電話工事担任者及び消防設備士甲4類の各資格保持者の技術を提供するものであること、かつ、請求人が受領する工事代金が配線工事、機器設置工事、機器調整等の作業に対する対価であると認められることからすれば、請求人が受領する工事代金は、人的役務の提供に対する対価であると認めるのが相当である。したがって、当該事業は、他の者の原材料等に加工等を施して、当該加工等の対価を受領する役務の提供又はこれに類する役務の提供に当たり、消費税法施行令第57条《中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例》第5項第3号かっこ書の「加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業」に該当する事業というべきであるから、同項第5号に規定する第四種事業に該当するものと認められる。

《参照条文等》
 消費税法第37条第1項
 消費税法施行令第57条
 消費税法基本通達13−2−7

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請求人が第一種事業として主張する廃油回収販売業は、第一種事業、第四種事業及び第五種事業から成る事業に該当するとした事例

平成23年6月30日裁決

《ポイント》
 簡易課税制度において、2種類以上の事業を営む事業者が控除対象仕入税額を計算する場合は、課税売上高をそれぞれの事業ごとに区分する必要がある。
 この事例は、請求人の売上げに係る取引の形態に応じ、日本標準産業分類の分類を基礎として事業の範囲を判定し、その事業区分に応じたみなし仕入率の適用を判断したものである。

《要旨》
 請求人は、廃油の回収形態(有償、無償及び処分料を受領の別)にとらわれず、物(廃油)の流れを重要視して事業区分を判断すべきであり、回収した廃油をそのままの状態で販売していることから、当該廃油を事業者に販売する本件事業は卸売業に該当する旨主張する。
 しかしながら、請求人の売上げに係る取引の形態に応じて事業区分を判断すると、本件事業のうち、処分料を徴して廃油を収集する取引及び廃油の収集・運搬業務の委託取引は、消費税法施行令第57条《中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例》第5項に規定する第五種事業に、無償又は処分料を徴して収集した廃油を販売する取引は、同項に規定する第四種事業に該当する。

《参照条文等》
 消費税法第37条第1項
 消費税法施行令第57条第4項、第5項

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