国税と他の債権との調整

譲渡担保

  1. 譲渡担保(19件)
  2. 法定納期限等以前に設定された質権の優先

譲渡担保権者に対する納税告知は債権者による譲渡担保財産の処分時前にされたものであるから適法であるとした事例

裁決事例集 No.27 - 237頁

 譲渡担保の実行方法として債権者(請求人)が譲渡担保物件を第三者に売却し、その換価代金をもって清算する旨の特約に基づき債権者が第三者との間に本件財産の売買契約を成立させた後に、税務署長による債権者に対する国税徴収法第24条第2項の規定による告知処分がなされ、さらに、その後に債権者は第三者から代金の支払を受けて、同人への所有権の移転登記を了した場合において、本件財産は売買契約締結後であっても代金完済、所有権移転の時期までは譲渡担保財産である性質を失うものではないと解すべきであるので本件財産に係る告知処分は適法である。

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譲渡担保契約は処分清算型と認められるから債権者による譲渡担保財産の換価前にされた差押処分は適法であるとした事例

裁決事例集 No.36 - 173頁

 請求人は、譲渡担保契約は、処分清算型から流質型に変更されたから、譲渡担保財産は請求人に帰属していると主張するが、変更に関する合意書の内容、その後の担保財産の管理方法からみて、引き続き処分清算型であると認められ、また、担保財産の評価額が合意書作成日現在における被担保債権残額を上回らないとはいえず、本件担保財産の所有権が確定的に請求人に帰属したとは認められないから、請求人が担保財産を換価する前に行った差押処分は正当である。

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代物弁済を原因とする不動産の所有権移転登記について、その実質は譲渡担保契約に基づくものであるとみるのが相当であり、清算手続がとられていない以上、被担保債権が消滅したものとみることはできないとして、国税徴収法第24条の譲渡担保権者の物的納税責任に関する告知処分が適法であるとした事例

裁決事例集 No.49 - 575頁

 代物弁済を原因とする本件財産の所有権移転登記は、本件貸付元本等を担保するためのものであり、このことは当事者双方共に了解の上であることが認められ、本件財産の所有権移転登記は正に譲渡担保契約に基づくものであるとみるのが相当である。
 請求人は、たとえ買戻特約付の契約であっても、本件財産の所有権は代物弁済を原因として、請求人に移転しているのであるから、既に被担保債権は消滅しており、被担保債権のない譲渡担保契約はありえない旨主張するが、本件財産の所有権移転登記は、請求人の債権確保を確実にするために債権担保の目的で行ったものと認められるから、その実質は譲渡担保契約に基づくものであるとみるのが相当であり、清算手続がとられていない以上、本件貸付元本等の被担保債権が消滅したものとみることはできない。

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「一括支払システムに関する契約書(代金債権担保契約書)」第3条の2(国税徴収法第24条の規定に基づく譲渡担保権者に対する告知が発せられたときは、当座貸越債権は何らの手続を要せず弁済期が到来するものとし、同時に担保のため譲渡した代金債権は当座貸越債権の代物弁済に充当されるとするもの)の効力について、かかる変動を認めることは国税徴収法第24条による物的納税義務の規定が機能しなくなることを意味するのであるから、国税徴収法第24条の規定が、このような擬制による権利変動を保護しているとは解されないとした事例

裁決事例集 No.49 - 585頁

 本件条項の下においては、告知が発せられた時に担保権が実行されたことになるが、告知が発せられたかどうか、いつ発せられたかは、告知書を受領して初めて知ることができるのである。そうすると、譲渡担保財産は、譲渡担保権者と同設定者が認識しない間に、正確にはいつの時点か不明であるが、ともかく告知書が到達する前に、担保権の実行により代物弁済に充てられて、その確定的権利が変動したことになる。
 このような変動は、もっぱら国税債権者に対し譲渡担保権の消滅を主張するために当事者間で存在したこととされたものであり、かかる変動を認めることは国税徴収法第24条による物的納税義務の規定が機能しなくなることを意味するのであるから、国税徴収法第24条の規定が、このような擬制による権利変動を保護しているとは解されず、同条の規定の適用上、担保権の実行は同条第2項による告知の告知書が到達した後に行われたものとして取り扱われるべきである。

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一括支払システム契約における代物弁済条項の国税債権者に対する効力が否定され、譲渡担保権者である銀行が国税徴収法第24条の物的納税責任を負うとされた事例

裁決事例集 No.55 - 719頁

 請求人は、本件代金債権が一括支払システムに基づく譲渡担保財産であることを知りながら滞納者の財産として差し押さえた本件差押えは違法・無効であり、したがって本件告知処分も無効である旨主張するが、本件代金債権は請求人等から提示を受けた書類等から滞納者の財産と認定して差し押さえたものであり、譲渡担保財産と知りながら差し押さえたものとは認められないことから、本件差押処分は適法である。
 また、請求人は、[1]原処分庁が国税徴収法第55条に基づく通知をした日現在、滞納会社に本件代金債権を担保として同額の貸付金を有していたところ、本件通知が発せられた時に請求人の滞納会社に対する貸金債権は何らの手続を要せずに弁済期が到来し、同時に担保のため譲渡した代金債権は貸金債権に充当される旨の一括支払システム契約の特約の効力により、本件代金債権は貸金債権の弁済に充当されたこと及び[2]仮にそうでないとしても、本件告知がされた時に本件特約の効力により本件代金債権は消滅している旨主張する。
 しかしながら、本件特約によると、請求人に告知等が到達した時には常にその譲渡担保権の実行が完了していることになり、常に告知等の要件である譲渡担保財産の存在が欠けることになるから、譲渡担保が国税の法定納期限等の後に設定され、国税に劣後している場合であっても、徴収職員が国税徴収法第24条に基づき、当該譲渡担保財産から国税を徴収する機会を事実上全く奪ってしまうことになる。このことは、法の規定にかかわらず、私人間の合意により、滞納処分の対象とならない譲渡担保財産を作り出すことにほかならず、国税徴収法第24条第5項及び第6項の規定の趣旨を完全に没却するものであるから、本件特約について、当事者間においてその効力を認めることはともかくとして、原処分庁に対しては、請求人は本件代金債権が譲渡担保財産でなくなったことを理由に、同条に基づく物的納税責任の追及を免れることはできないと解するのが相当である。

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債権譲渡の通知がされた債権を差し押さえた後、譲渡担保財産であるとして譲渡担保権者に対してした告知処分が適法とされた事例

裁決事例集 No.55 - 742頁

 請求人と滞納会社の間で締結された運賃等売掛債権の譲渡契約に基づく債権譲渡の通知は、これを第三債務者に通知することによって、担保のため譲渡された債権が特定され、対抗要件が具備されることになるものの、これをもって譲渡担保権の実行が完了したということにはならず、差押処分の時点において本件債権は譲渡担保財産として存在していたと認められる。
 そこで、滞納国税の法定納期限等と本件契約による譲渡担保設定の時期について、その先後を検討すると、譲渡担保設定の日はいずれも滞納国税の法定納期限等の日に後れており、本件差押処分の時点において本件債権が譲渡担保財産として存在する限り、国税が優先することとなる。
 国税徴収法第24条第1項に規定する「国税に不足するとき」とは、同条第2項の通知を発するときの現況において納税者に帰属する財産で滞納処分により徴収できるものの価額が納税者の国税の総額に満たないと認められることをいい、その判定は、滞納処分を現実に執行した結果に基づいてする必要はないと解するのを相当とする。
 滞納会社が、平成8年11月11日に2回目の手形不渡事故を起こして事実上倒産したことは当事者双方に争いのないところであり、その事実からすれば、国税徴収法第24条第1項に規定する要件を満たすから、本件差押処分は同条第5項に規定する「前項の規定の適用を受ける差押」に該当する。

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国税徴収法第24条の規定に基づく譲渡担保権者に対する告知処分が適法と認められた事例

裁決事例集 No.58 - 301頁

 本件譲渡担保は、帰属清算型であるとの判断の下に、[1]告知処分がされた時点においては、未だ利息の返済期限が到来しておらず履行遅滞となっていないこと、[2]請求人から提出された各種書面及び関係者からの答述によっても、譲渡担保権の実行がされたとは認められないこと、更には、[3]代物弁済の合意があったとも認められないことから、告知処分時には譲渡担保財産は確定的に請求人に移転していたとする請求人の主張には理由がなく、本件告知処分は国税徴収法第24条第1項、第2項及び第6項の規定に基づいて適法に行われている。

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滞納処分により差し押さえた預託金会員制ゴルフ会員権の換価(取立て)等のため必要があるとして、譲渡担保契約に基づき同会員権に関する入会保証金証書を占有する請求人に対してされた同証書の引渡命令は適法であるとした事例

裁決事例集 No.61 - 735頁

 請求人は、本件ゴルフ会員権は請求人が滞納者から譲り受けた財産であるから、請求人は滞納者の財産を占有する第三者には当たらないこと、また、債権証書の取上げができる場合は差押えのため必要があるときであるところ、引渡命令が出された当時既に本件差押処分がされていたから、必要があったとはいえないことから、同会員権に関する入会保証金証書についての本件引渡命令処分は違法である旨、さらには、そもそも本件ゴルフ会員権は、請求人が滞納者から譲り受けた譲渡担保財産であるので、請求人に対して国税徴収法第24条“譲渡担保権者の物的納税責任”第4項に規定する告知がされなければならないにもかかわらず、これを欠いていることから本件差押処分は違法であり、本件差押処分を前提としてされた本件引渡命令処分は違法である旨を主張する。
 しかしながら、預託金会員制ゴルフ会員権の譲渡については、当該譲渡をもってゴルフ場経営会社以外の第三者に対抗するためには、民法第467条に規定する指名債権の譲渡の場合に準じて、譲渡人が確定日付のある証書によりこれをゴルフ場経営会社に通知し、又は確定日付のある証書によりゴルフ場経営会社がこれを承諾することを要し、これと滞納処分による差押えとが競合した場合の優劣は、確定日付の譲渡通知書がゴルフ場経営会社に到達した日時(又は確定日付のあるゴルフ場経営会社の譲渡の承諾の日時)と、差押通知書がゴルフ場経営会社に到達した日時との先後により決せられるところ、本件においては、譲渡通知書より先に差押通知書がゴルフ場経営会社に到達しており、請求人は譲渡担保契約に基づく譲渡担保権の設定をもって差押権者に対抗することができないから、国税徴収法第24条の規定を適用する余地はなく告知をする必要がないというべきであり、また、本件入会保証金証書を占有する請求人は、国税徴収法第58条に規定する滞納者の財産を占有する第三者に該当することになる。
 また、国税徴収法第65条に規定する債権証書の取上げができる場合の「差押えのため必要があるとき」には、その債権の取立て、換価、権利の移転及び配当等のため必要と認められるときも含まれると解される。
 したがって、本件引渡命令処分は適法である。

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債権譲渡の通知がされた債権を差し押さえた後、譲渡担保財産であるとして譲渡担保権者に対してした告知処分は適法であるとした事例

裁決事例集 No.63 - 703頁

 請求人は、滞納会社から提出された「売掛代金債権担保差入書」には、「債務の根担保として譲渡した」旨の記載があるが、法律行為の解釈は、単なる文言のみによってなされるものではなく、当該法律行為がされた経緯、当事者の意思、効果などを総合考慮してなされるものであるから、本件担保差入書に「貴行において、本件債権の取立ての上は、滞納会社の債務の期限のいかんにかかわらず、ただちに債務の弁済に充当されても異議がありません」と記載されていること及び融資実行の経緯などから明らかなように、本件の債権譲渡は、担保のためではなく、弁済のためにされたものであるから、本件告知処分は違法である旨主張する。
 しかしながら、法律行為の意思表示の解釈に当たっては、意思の表示が一義的であり、しかも意思の表示に関し、表意者と相手方以外の者の利害がかかわる場合には、当事者の意思表示が一義的に合致していること、表示された意思どおりの効果が発生するとの第三者の信頼を保護すべきことに鑑み、表示された意思に基づいて意思表示を解釈し、表示どおりの効果を認めるべきであると解されるところ、これを本件についてみると、債権譲渡に係る担保差入書及び債権譲渡承諾依頼書には「担保とするため」「担保として」譲渡した旨が記載されており、一義的に担保である旨の意思表示がされていると認められ、また、本件債権譲渡は、定型的な処理が要求されている銀行取引の一環として行われており、第三者である原処分庁は本件債権を差し押さえて利害関係を有しているから、本件債権譲渡は、担保の設定として行われたものと認めるのが相当である。
 また、請求人は、国税徴収法第24条の譲渡担保財産には指名債権は含まれない旨も主張するが、同条の担保財産とは、納税者がその所有する財産を債権者又は第三者に譲渡し、その譲渡により、自己又は第三者の債務の担保の目的となっている財産をいい、動産、有価証券、債権、不動産、無体財産権等のほか、法律上まだ権利と認められていないものであっても、譲渡できるもの(手形を除く)は、譲渡担保の目的物とすることができると解されているから、請求人の主張には理由がない。

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集合債権譲渡担保契約に基づき譲渡された債権は譲渡担保財産として存続しているとして、国税徴収法第24条の譲渡担保権者に対する告知処分が適法であるとした事例

裁決事例集 No.64 - 593頁

 請求人は、債権の譲渡担保契約においては、契約時点で確定的に譲渡債権が譲渡担保権者に帰属し、第三者対抗要件を備えた時点、あるいは遅くとも担保権の実行通知をした時点で「譲渡担保財産」でなくなったとの主張をするが、いわゆる集合債権譲渡担保契約において、その担保権の実行方法や実行完了時期について特段の合意がない場合には、譲渡担保権者が譲渡債権を現実に第三債務者から取り立てて被担保債権の弁済に充当するまでは担保権の実行は完了しないと解され、その時点までは担保とされた譲渡債権は国税徴収法第24条にいう「譲渡担保財産」として存続すると解するのが相当である。

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譲渡担保財産が将来債権である場合、当該債権が譲渡担保財産となった時期は、債権が具体的に発生した時であるとした事例

裁決事例集 No.65 - 1010頁

 請求人は、滞納者との間において、滞納国税の法定納期限等以前に債権譲渡担保設定契約(この契約の締結日以後1年間に発生する売掛債権を担保物とする契約)を締結しており、当該納期限後に発生した債権であっても当該納期限前に既に譲渡担保財産となっているから、国税徴収法第24条第6項の規定により、当該債権から滞納国税を徴収することはできない旨主張するが、将来債権に対して譲渡担保権を設定した場合の同項に規定する「譲渡担保財産となっ」た時とは、担保目的となっている将来債権が現実に発生した時と解すべきであるから、本件差押えに係る債権が当該滞納国税の法定納期限等より後に発生したものである以上、本件について同項の規定を適用することはできず、原処分は適法である。

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告知処分時において譲渡担保権の実行は完了しておらず、被担保債権は消滅していないから、譲渡担保権者の物的納税責任に関する告知処分は適法であるとした事例

裁決事例集 No.66 - 363頁

 請求人は、本件債権につき、第三債務者に対し、債権譲渡通知及び担保権の実行を通知するとともに、登記事項証明書を送付していることから、本件債権は、告知処分の時点において、既に請求人に移転し、滞納会社に復帰する可能性はなく、担保の目的たる財産でなかった旨主張するが、本件債権は、告知処分の時点において、いまだ第三債務者から請求人への支払いがなされておらず、請求人の滞納会社に対する被担保債権が消滅していないことから、譲渡担保権財産であると認められる。
 請求人は、譲渡担保契約について、請求人と滞納会社Gの破産管財人との間で破産法の否認権行使の対象となるか否かの訴訟が係属中にもかかわらず、その判決の出る前に請求人に対してなされた告知処分は不当である旨主張するが、当該告知処分は、国税徴収法に基づき適法になされたものであり、また、否認権行使の効果は、否認の対象となった債権譲渡行為が破産管財人と請求人との間でさかのぼって無効となるにすぎず、そうすると、否認権訴訟の裁判の結果が原処分庁の行った告知処分の適法性に影響を及ぼすものではない。
 請求人は、滞納会社Gの破産管財人が裁判所に提出した財産報告書によれば、告知処分の時点において、滞納会社Gには相当の財産があると思われることから、当該告知処分は国税徴収法第24条第1項に規定する要件を満たしていない旨主張するが、当審判所の調査によると、仮に請求人の主張する財産の価額を滞納会社Gから徴収できる価額とみても、告知処分時の同社の滞納国税の総額はそれを上回ることが認められる。したがって、滞納会社Gの財産につき滞納処分により徴収できるものの価額が滞納国税の総額に満たない(いわゆる徴収不足)と認められることから、請求人の主張には理由がない。

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譲渡担保権者に対する告知処分及び譲渡担保財産につきした差押処分は、国税徴収法第24条第1項ないし第3項の規定に従って適法になされているとした事例

裁決事例集 No.69 - 437頁

 請求人は、告知処分について、[1]徴収不足であることを請求人に明らかにしないでなされたものであり違法であること、[2]延納の担保権設定順位に瑕疵があること、[3]徴収不足となったのは、延納の担保権設定後の経済情勢の変動により担保不足となったことによるものであるから、このような徴収不足は原処分庁の責任で処理すべきこと、[4]請求人が譲渡担保権の実行を猶予していたのは、譲渡担保財産が滞納者の生活維持に不可欠であるという事情からであり、したがって、告知処分は不適切であること、また、差押処分について、[5]滞納者について滞納処分の停止に該当する事由があるから、差押処分は違法であることなどを主張する。
 しかしながら、[1]国税徴収法施行令第8条には、徴収すべき国税に不足すると判断した根拠は記載事項とされていないことから、当該根拠の記載の有無が本件告知処分の適法性に影響を及ぼすものではないこと、[2]そもそも、延納許可は滞納者に対してなされたものであり、請求人に対してなされたものではないことから、延納許可に伴う担保権設定順位に係る瑕疵を請求人は主張できる立場にはないこと、[3]原処分庁が、延納担保物件を換価しても経済情勢により滞納国税の額に対してなお徴収不足となることに責任をとらなければならないとする法令等による規定はないこと、[4]譲渡担保権者に対する物的納税責任は、国税徴収法第24条第1項及び第6項に規定する要件を満たすことで必然的に負うことになるものであり、仮に、請求人が人道的見地から担保権の実行を猶予していたと主張するような事情があったとしても、それが告知処分の違法性に影響を及ぼすものではないこと、[5]国税徴収法第153条第1項の規定は、差押えの制限についての規定ではないことから、告知処分及び差押処分の適法性及び妥当性に影響を及ぼすものではないこと、また、国税徴収法第153条の規定に基づく滞納処分の停止は、税務署長等の職権により行われ、たとえ同条第1項各号所定の要件に該当する場合であっても、その停止をするかどうかは税務署長等の裁量に委ねられていると解され、当審判所が滞納者の生活状況及び所有財産等を調査した限りにおいて、原処分庁が滞納処分の停止をしていないことについて、裁量権の逸脱は認められないこと、等から請求人の主張は採用することはできない。

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譲渡担保財産が将来債権である場合、当該債権が譲渡担保財産となった時期は、譲渡担保契約の締結時ではなく、当該債権が現実に発生した時であるとした事例

裁決事例集 No.69 - 458頁

 請求人は、[1]滞納者との間において、滞納国税の法定納期限等以前に債権譲渡担保契約(この契約締結日後5年間に発生する将来債権を担保物とする契約)を締結したことにより、本件の将来債権は契約締結時点で請求人に譲渡され、具体的に将来においてその債権が発生した場合は、債権発生と同時に請求人はその債権を取得すること、[2]集合債権譲渡担保に対する滞納処分の取扱いは、集合物譲渡担保の取扱いについて定める国税徴収法基本通達第24条関係30と同様に処理されるべきことを主張する。
 しかしながら、[1]譲渡担保の目的となっている将来債権の移転時期は、それが現実に発生した時と解するのが相当であり、また、[2]国税徴収法基本通達第24条関係30は、集合物が動産である場合の譲渡担保契約を締結した場合の取扱いについて定めたものであり、債権について同様の取扱いをしなければならない理由は存しない。したがって、本件において、対象となる将来債権は滞納国税の法定納期限等後に譲渡担保財産となったものであることから、国税徴収法第24条第6項の規定を適用することはできず、本件の告知処分は適法である。

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滞納者の破産手続開始決定後に行われた滞納者を譲渡担保設定者とする譲渡担保債権についての滞納処分が破産法第43条第1項の規定に反しないとした事例

裁決事例集 No.75 - 725頁

 譲渡担保の目的とされた将来生ずべき債権については、遅くともそれが発生したときに譲渡担保権者に移転すると解されるところ、本件譲渡担保債権は、滞納法人についての破産手続開始決定前に発生し、債権譲渡登記により債権譲渡の対抗要件を備えていたことからすれば、本件譲渡担保債権は破産財団を構成しないものと認められる。
  また、譲渡担保財産は完全に譲渡担保権者に移転するのではなく、譲渡担保設定者にも一定の物権が帰属するとの理論に立脚したとしても、破産手続において譲渡担保権は別除権と同様に取り扱われるものと解されていることからすれば、譲渡担保の被担保債権の弁済期が経過した後に設定者について破産手続が開始された場合、破産管財人は担保権者による別除権の行使としての譲渡担保権の実行を受忍する立場に立たされるものと解され、また、別除権者が法律に定められた方法によらないで別除権の目的財産を処分する権利を有するときは、裁判所は破産管財人の申立てによって別除権者がその処分をすべき期間を定めることができ、当該期間内に別除権者が目的財産を処分しないときに別除権者の処分権が失われることからすれば、譲渡担保の被担保債権の弁済期が到来した後に設定者について破産手続が開始された場合、その目的財産についての担保権者の処分権が失われるまでは、その目的財産の管理処分権が破産管財人に専属することはないと解されるのであるから、当該財産は破産財団を構成しないものと解される。さらに、国税徴収法第24条の規定は、すべての担保制度が租税の徴収の面からはできるだけ同一の取扱いを受けることが望ましいとの観点に立って設けられたものであり、その趣旨は、滞納者について破産手続開始の決定があった場合にも尊重されなければならないところ、別除権の実行が民事執行法その他の強制執行の手続に従って行われるときは、交付要求をすることによって国税が別除権の被担保債権に優先して配当を受けることになるが、譲渡担保の場合は、別除権の実行が私的実行の方法によって行われ、交付要求ができないため、破産手続開始後における譲渡担保財産に対する滞納処分が許されないとすれば、滞納者について破産手続が開始されたことによって、本来、国税に劣後して配当を受けるべきであった別除権の被担保債権が国税に優先して配当を受けるという極めて不合理な結果をもたらすことになるのであるから、破産手続開始後であっても譲渡担保財産に対する滞納処分は許容されると解される。
  これを本件についてみると、本件債権譲渡担保契約に係る被担保債権は、滞納法人についての破産手続開始の申立てによって弁済期が到来し、請求人が本件譲渡担保債権の第三債務者に対して債権譲渡登記がされている旨を通知したことにより、譲渡担保権の実行を開始したと認められるのであるから、本件譲渡担保債権は、破産財団を構成するものではないと解され、原処分庁がした滞納処分は国税徴収法第24条の趣旨に沿ったものと認められるから、破産法第43条の規定に反しないというべきである。
  なお、破産法第43条第1項にいう国税滞納処分とは、国税の徴収に従事する職員が自ら強制換価手続を行って国税の徴収を図る手続をいうのであるから、国税徴収法第24条第2項の告知処分が同条の国税滞納処分に当たらないことは明らかである。

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告知処分時において譲渡担保の目的とされた債権が譲渡担保財産として存続していたとした事例

裁決事例集 No.75 - 745頁

 一般に、譲渡担保権は、弁済や担保権の実行による被担保債権の消滅に伴い消滅すると解されており、国税徴収法第24条第7項の規定からすると、同条も通常は被担保債権が消滅した場合に譲渡担保権が消滅し、譲渡担保財産が存在しなくなることを前提に規定されているものと解されるから、譲渡担保権者がその意思表示により担保権の実行を開始しても、当該実行が完了するまで、すなわち、譲渡担保財産の適正な評価又は換価をした上で被担保債権の清算等を行い、消滅する被担保債権の額が確定して消滅するまでは譲渡担保権は消滅せず、譲渡担保権の設定された財産は、譲渡担保財産として存続するものと解され、この理は譲渡担保財産が債権である場合にも当てはまると考えられる。そして、譲渡担保財産が債権の場合、譲渡担保権者としては担保権の実行として現実に譲渡債権から回収した金額と同額の被担保債権を消滅させるというのが通常の意思であることからすると、当事者間でこれと異なる特段の合意をしない限り、譲渡担保権者が第三債務者から現実に譲渡債権を取り立てて被担保債権の弁済に充当するまでは被担保債権は消滅しないから、その時点までは担保権の実行は完了せず、国税徴収法第24条第1項にいう譲渡担保財産として存続すると解するのが相当である。
  本件においては、本件滞納者と請求人との間に、第三債務者から現実に譲渡債権を取り立てて被担保債権の弁済に充当する以前に譲渡債権をその券面額で被担保債権の弁済に充当して被担保債権を消滅させるなど通常の意思と異なる特段の合意があったことは認められず、請求人の譲渡担保に係る本件各債権の回収状況をみると、本件告知処分前に請求人が本件各債権を現実に取り立てて被担保債権の弁済に充当し、被担保債権が消滅して担保権の実行が完了したということもできないから、本件各債権は、本件告知処分時において、国税徴収法第24条第1項の規定に係る譲渡担保財産に該当する。

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酒類を譲渡担保の目的財産とする譲渡担保設定契約が無効又は課税庁に対して相対的に無効ということはできないから、譲渡担保財産となっていた酒類が滞納者に帰属するとしてした差押処分は違法であり、したがって、当該差押処分に続く配当処分において滞納国税に配当された金額は、残余金として譲渡担保権者である請求人に交付すべきであるとした事例

裁決事例集 No.77 - 552頁

  1.  酒税法は、酒税の適正かつ確実な賦課徴収を図る観点から、酒類の製造と業として行う酒類の販売について免許を必要とする旨定めたものであって、酒類の製造免許又は販売業免許を有していない者が行う酒類の譲渡そのものを禁止したものではなく、酒税法及び他の法令においても酒類を譲渡担保の対象にすることを禁止した規定はないから、譲渡担保権者が酒類の製造免許又は販売業免許を有していないという理由のみで、酒類の譲渡担保設定契約が無効又は課税庁に対して相対的に無効であるということはできない。
     また、酒税は、その製造場から酒類が移出された場合にその製造者に課されるものであり、譲渡担保権の実行によってその製造場から酒類が移出された場合もその製造者に酒税が課されることになるが、そのことから直ちに、酒類を譲渡担保の目的とすることが移出酒税そのものを譲渡担保の目的にしているとは解し難く、一定の財産的価値を有し、譲渡できるものはすべて譲渡担保財産とすることができるところ、酒類を譲渡担保財産とすることは法令上禁止されておらず、譲渡担保権の実行による酒類の売却代金がすべて譲渡担保の被担保債権の弁済に充てられた場合には、移出酒税の納付・徴収が困難になることが考えられるものの、製造者が酒税を滞納した場合、製造者の総財産が滞納処分の対象となることを考えれば、酒類を譲渡担保の目的としたことによって酒税の徴収が全く不可能になるとは考えられないから、本件譲渡担保設定契約が詐害性や反社会性を有するとは認められず、たとえ移出酒税が酒類の販売価額の一部を構成しているとしても、本件酒類を譲渡担保の目的としたことが公序良俗に反するとはいえない。
  2.  先に行われた処分と後に行われた処分が相結合して一つの法律的効果の実現を目指し、これを完成させるものであるときは、原則として違法性が承継されると解されるところ、滞納処分における差押処分や公売処分、配当処分は、滞納となった国税債権の強制的実現という同一目的のために段階的に行われるものであるから、差押処分の違法性は、その後の公売処分や配当処分に承継されることとなる。そして、不動産等についての差押えに欠陥があることを理由とする不服申立てはその公売期日までにしなければならない旨を定めている国税徴収法第171条第1項第2号の規定は、差押処分の違法性がその後の公売処分や配当処分に承継されることを前提として、滞納処分手続の安定や換価手続により権利を承継した者等の権利利益の保護を図るため、不服申立てについて制限を定めたものと解されるところ、酒類のような動産については、このような不服申立てについての制限を定めた規定はないのであるから、動産の差押処分の違法性は配当処分にも承継され、したがって、請求人は、本件差押処分の欠陥を理由として、本件各配当処分の取消しを求めることができると解される。
     そして、国税徴収法第129条第1項は、配当を受ける債権の範囲を限定列挙したものと解されるから、本件譲渡担保の被担保債権は、同項に規定する債権には該当しないものの、本件差押処分は財産の帰属を誤った違法な差押えであり、本件差押処分の違法性は本件各配当処分に承継され、本件滞納国税は配当を受ける資格を有しないので、本件滞納国税に配当された金額は、残余金として請求人に交付すべきである。

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譲渡担保の目的とされた債権の譲渡に係る第三者対抗要件が滞納国税の法定納期限等以前に具備されていた事実は認められないから、当該債権が国税の法定納期限等以前に譲渡担保財産となったということはできないとした事例

裁決事例集 No.79

 国税の法定納期限等以前に、将来発生すべき債権を目的として、債権譲渡の効果の発生を留保する特段の付款のない譲渡担保契約が締結されたとしても、国税の法定納期限等以前に債権譲渡登記や国税徴収法第15条第2項各号に掲げる書類によって債権譲渡の第三者対抗要件が具備されていない限り、同法第24条第1項の適用は妨げられないと解されるところ、本件譲渡担保契約は、本件滞納国税の法定納期限等以前に締結されていることは認められるものの、第三者対抗要件が具備されたのは、本件滞納国税の法定納期限等後であるから、本件債権が本件滞納国税の法定納期限等以前に譲渡担保財産となっているとはいえず、よって、本件については、同法第24条第8項の規定により同条第1項を適用することができないということはできない。

《参照条文等》
国税徴収法第24条

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譲渡担保権者の物的納税責任に係る納付告知処分及び譲渡担保財産に対する差押処分について、その一部は譲渡担保財産ではないとした事例

平成25年5月8日裁決

《要旨》
 原処分庁は、滞納者から請求人へ所有権移転の登記がされた各不動産が国税徴収法第24条《譲渡担保権者の物的納税責任》第1項に規定する譲渡担保財産であるとして、請求人に対し同条第2項の規定に基づき納付告知処分及び同条第3項の規定に基づき当該各不動産の差押処分を行った。
 しかしながら、当該各不動産のうち代物弁済を原因とする所有権移転登記を経由した不動産については、登記の推定力の妨げとなる反証があったとはいえず、請求人は当該不動産を代物弁済により取得したと認められることから、当該不動産が譲渡担保財産であるということはできない。

《参照条文等》
 国税徴収法第24条

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