差押え

預金

  1. 財産差押えの通則
    1. 破産宣告と財産の差押えとの関係
    2. 差押えの効力
    3. 差押財産の帰属
      1. 不動産
      2. 預金(3件)
      3. その他
    4. 超過差押え
    5. 無益な差押え
    6. その他
  2. 各種財産に対する差押え

原処分庁が差し押さえた滞納会社名義の普通預金は、滞納会社から任意整理の委任を受けた請求人に帰属する債権であるとの主張を退け、滞納会社に帰属するとした原処分に違法はないとした事例

裁決事例集 No.45 - 285頁

 請求人は、原処分庁が差し押さえた普通預金は、滞納法人から任意整理の委任を受けた請求人がその業務遂行上の財産として管理しているものであるから請求人に帰属する債権であること、また、仮に、それが認められない場合においても、差押え以前に滞納法人から譲り受けたものであるから請求人に帰属する債権である旨主張する。しかし、業務遂行上の財産として管理している請求人の行為は、いずれも請求人が委任された範囲内の行為であるから、請求人に帰属するとは認められない。また、本件普通預金の譲渡契約により滞納法人の債務者に対する通知又は債務者の承諾がなされたとは認められず、また、譲渡契約後においても、請求人は、譲渡されたとする財産を法人の財産として取り扱っている事実が認められるから、民法第467条《指名債権譲渡の対抗要件》の規定により、請求人は、当該譲渡契約をもって差押債権者たる原処分庁に対抗することはできない。

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滞納会社に対する滞納処分として差し押さえられた請求人名義の定期預金の払戻請求権について、預金の原資となっている滞納会社から振り込まれた金員は請求人に対する役員報酬ということはできないこと等から、滞納会社に帰属すると認めるのが相当であるとした事例

裁決事例集 No.59 - 450頁

 請求人は、同人名義の本件定期預金口座に係る払戻請求権は請求人に帰属しており、これが滞納会社に帰属するものとしてなされた本件差押処分は違法である旨主張する。
 本件定期預金口座は、滞納会社から請求人名義の普通預金口座(以下「本件普通預金口座」という。)に振り込まれた金員(以下「本件金員」という。)により開設されたものであることから、まず、本件普通預金口座の預金者について検討すると、[1]請求人は、本件金員は請求人が滞納会社から支給を受けた役員報酬である旨主張するが、請求人が滞納会社に対し役員としての役務を提供した事実は認められず、本件金員が役員報酬であると認められないから、本件普通預金口座は、滞納会社の出捐によって開設されたものというべきであり、また、[2]本件普通預金口座の開設手続等は、滞納会社の実質的経営者の指示でその社員が行っていたこと及び本件普通預金口座の届出印は滞納会社によって管理保管していたことが認められることから、本件普通預金口座は、滞納会社が自らの預金とする意思で開設したものというべきであり、したがって、本件普通預金口座の預金者は請求人ではなく滞納会社というべきである。
 次に、本件定期預金口座の預金者について検討すると、本件定期預金口座の届出印には請求人の印章が用いられており、このことからは、本件定期預金口座は請求人が自らの預金とする意思で開設したとみる余地もある。しかしながら、その原資となった本件普通預金口座の預金者は元々請求人ではないし、本件定期預金口座の開設に当たり、滞納会社が請求人に対し本件普通預金口座に係る払戻請求権を譲渡した事実も、請求人が本件普通預金口座から払戻を受けた金員を自己のものとした上、自らの預金とする意思で本件定期預金口座に入金したなどの特段の事情も認められないことから、本件定期預金口座の預金者は、やはり滞納会社というべきである。
 したがって、本件定期預金の払戻請求権は、請求人ではなく、滞納会社に帰属するものであり、請求人の主張には理由がない。

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滞納会社の任意整理を受任した滞納会社代理人(弁護士)名義の預金が滞納会社に帰属するとした事例

裁決事例集 No.63 - 728頁

 預金債権の帰属の認定に当たっては、特段の事情のない限り、出捐者、すなわち、預金に係る資産を現実に拠出した者に預金債権が帰属すると解されるところ、[1]本件預金口座は、請求人が、本件任意整理の業務を遂行するための資金を管理するために開設したものであること、[2]本件預金口座の入出金は、滞納法人の売掛債権の回収又は債務の弁済という専ら滞納法人関連のものであること、[3]請求人が、本件預金口座に係る通帳及び届出印の保管、入出金等の管理を行っていたのは、同人にとってこれらの行為が本件任意整理の業務を遂行する上で必要であったからにほかならないこと、[4]本件預金口座の名義人は、社会通念上滞納法人であると解されるところ、請求人であると解する特段の事情が存すると認められないこと等を併せ考えると、本件預金口座の預金者は、その出捐者である滞納法人であるというべきであり、したがって、本件預金債権は滞納法人に帰属すると認めるのが相当である。

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