換価代金等の配当

換価代金等の配当

  1. 換価代金等の配当(3件)

生命保険契約に基づく解約返戻金の支払請求権を差押え、解約権を行使してその給付を受け、配当処分を行う一連の滞納処分手続に違法はないとした事例

裁決事例集 No.54 - 505頁

  1.  異議審理庁は、異議申立ての趣旨等が不明であることを理由に却下の決定をしているが、審判所の調査の結果、異議申立てに不適法とするほどのかしは認められないから、本件審査請求は適法と認められる。
  2.  差押えに係る債権が請求人の母に帰属するのであれば、本件債権の差押え及び配当処分は請求人に不利益を及ぼさないから、本件配当処分の取消しを求める請求人の主張は理由がないこととなるが、当審判所が調査したところ次のとおりである。
     本件生命保険契約の契約者は、保険契約書上は請求人本人であり、その保険料は、請求人の勤務するJ有限会社の給料から毎月5,604円が差し引かれ、請求人本人が負担していたことが認められる。したがって、本件債権は請求人に帰属すると認めるのが相当である。
  3.  本件滞納国税の納付について、月々の支払可能額を納付する旨の申し出があったとしてもこれを徴収職員が承諾したとは認められず、また、徴収職員は滞納国税が完納されるまでは滞納処分手続を続行できるものと解されるから、原処分庁の一連の滞納処分に違法はない。

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遺産分割の調停で、他の相続人が延滞税を負担することとされたにもかかわらず、本件公売代金をこの延滞税に配当したのは違法である等との請求人の主張が排斥された事例

裁決事例集 No.57 - 583頁

  1.  請求人は、本件調停条項を根拠として、延滞税は他の相続人が負担すべきものであるから、本件公売代金を当該延滞税に配当したことは違法である旨主張するが、本件調停条項の文言によれば、国に対する乙及び丙の延滞税の納税義務を甲が引き受けるという趣旨ではなく、延滞税相当額の金員を甲(L)から乙(M)及び丙(請求人)に支払うという趣旨にすぎないと解するのが相当であり、また、仮に国に対する乙(M)及び丙(請求人)の納税義務を甲(L)が引き受けるという趣旨であるとしても、納税義務の存否は法律の規定により定まるものであるところ、遺産分割調停における調停条項のような私人問の合意により納税者の国に対する納税義務が消滅すると解すべき法律の規定は存在しないから、請求人の主張には理由がない。
  2.  本件公売処分に係る公売通知及び不動産等の最高価申込者決定通知自体は、滞納者の権利義務その他法律上の地位に影響を及ぼすものではなく、国税に関する法律に基づく処分に当たらないというべきであるから、本件審査請求は、その対象となる処分を欠く不適法なものである。
     なお、本件審査請求が本件公売通知及び本件最高価申込者決定通知自体の取消しを求めるものではなく、これらの通知の対象となった本件公売処分及び本件最高価申込者の決定処分の取消しを求める趣旨であるとしても、本件公売処分の換価財産の買受代金の納付の期限は、平成9年9月16日午後3時00分とされており、本件審査請求書が提出された日は平成9年9月22日であるから、不服申立ての期限を徒過しており、やはり不適法なものである。

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換価代金等の交付期日を原処分庁が2日短縮した配当処分に手続上違法な点はなく、配当処分時に延滞税が滞納国税として存在しているから、その延滞税を徴収するためにした原処分は適法であるとした事例

裁決事例集 No.71 - 755頁

 請求人は、[1]換価代金等の交付期日の期間の短縮を定めた国税徴収法(以下「徴収法」という。)第132条《換価代金等の交付期日》第2項は、不服申立ての権利を奪うものであり、日本国憲法第11条に違反するので、同条項に基づいてされた配当処分は違法であること、[2]配当を受ける国税である延滞税は、本件更正処分が行われた日に確定し、国税通則法(以下「通則法」という。)第61条《延滞税の額の計算の基礎となる期間の特例》第1項の規定が適用され、そうすると、延滞税額は収納等の額を下回ることから配当処分時には存在しないことを主張する。
 しかしながら、[1]請求人の徴収法第132条第2項の規定が憲法に違反する旨の主張については、当審判所は、処分の基となった法令自体の適否を判断することはその権限に属さないことであるから、審理の限りではない。なお、徴収法第132条第2項は、配当計算書の謄本の交付を受けた滞納者等は、換価代金等の配当に関する異議がある場合は、換価代金等の交付期日までに申し出なければならないことから、異議申出に必要な事項を調査するために要すると思われる期間を定めることで利害関係人の保護を図るとともに、利害関係人が配当を受けない場合には、そうした保護の要請が働かないことから迅速な換価代金等の交付を可能とするために、上記期間を短縮することができるとしたものと解される。本件では、配当計算書を発送した日から起算して7日を経過した日が平成17年5月4日であるところ、その換価代金等の交付期日を5月2日として2日短縮したこととなるが、本件差押処分は、利害関係人がいなかったのであるから、本件配当処分は手続上違法な点はない。次に、[2]延滞税が存在しない旨の主張については、延滞税は通則法第60条第1項所定の事由に該当する場合に法律上当然に発生し、その成立と同時に特別の手続を要しないで納付すべき税額が確定するものであり、国税に関する法律に基づく処分によって確定するものではない。そして、更正処分は、更正処分により減少した税額に係る部分以外の部分の国税の納税義務に影響を及ぼさず、また、通則法第60条第1項及び同法第61条第1項に規定する更正による納付すべき国税には、減額更正処分は含まれない。そうすると、これらのことを前提に延滞税を計算すると、本件配当処分時には延滞税が存在したこととなるから、請求人の主張には理由がない。

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