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所得税法の特例

特別税額控除及び減価償却の特例

  1. 不動産所得及び事業所得等の特例
    1. 新築貸家住宅の割増償却
    2. 社会保険診療報酬の所得計算の特例
    3. 土地の譲渡等に係る事業所得等の課税の特例
    4. 肉用牛の売却による農業所得の課税の特例
    5. 特別税額控除及び減価償却の特例(3件)
  2. 譲渡所得の特例
  3. 株式等に係る譲渡所得等の特例
  4. 住宅借入金(取得)等特別控除
  5. 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
  6. 先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除
  7. タックスヘイブン対策税制
  8. 寄附金特別控除

画像診断ワークステーションは租税特別措置法第10条の3に規定する特定機械装置等には該当しないとした事例(平成21年分の所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・棄却・平成25年11月27日裁決)

平成25年11月27日裁決

《ポイント》
 本事例は、租税特別措置法第10条の3の規定の内容やその制定経緯等からすれば、同条が、器具及び備品について「事務処理の能率化等に資するもの」として財務省令で定めるものとしたのは、中小企業における不特定の事務の用に供し、その事務処理の能率化等に資する電子計算機等について特別償却ないし税額控除の対象とする趣旨であったものと解され、病院、診療所等において直接診療又は治療の用に供する医療用電子機器は、事務処理の能率化等に資するものではないから、画像診断ワークステーションは、同条に規定する特定機械装置等には該当しないと判断したものである。

《要旨》
 請求人は、本件画像診断ワークステーションは、耐用年数省令別表第一の「器具及び備品」の「医療機器」に含まれるとしても、耐用年数省令は減価償却資産の耐用年数及び償却方法を定めるものであり、資産の属性を定めるものではないから、租税特別措置法施行規則第5条の8《中小企業者が機械等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除》に規定する要件からすれば、同条に規定する「電子計算機」に該当し、また、租税特別措置法第10条の3《中小企業者が機械等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除》と同法第12条の2《医療用機器等の特別償却》の両方の規定を満たす資産はありえると解釈することができるところ、同法第10条の3に同法第12条の2の適用資産を除く旨の規定はなく、同法第12条の2に、両方において適用可能な資産がある場合には、同法第12条の2を優先する旨の規定もないことからすれば、本件画像診断ワークステーションについて、同法第10条の3に規定する所得税額の特別控除が適用できる旨主張する。
 しかしながら、租税特別措置法第10条の3の規定の内容やその制定経緯等からすれば、同条が、工具、器具及び備品について「事務処理の能率化等に資するもの」として財務省令で定めるものとしたのは、中小企業における不特定の事務の用に供し、その事務処理の能率化等に資する電子計算機等について、特別償却ないし税額控除の対象とする趣旨であったものと解され、病院、診療所等において直接診療又は治療の用に供する医療用電子機器は、事務処理の能率化等に資するものではないから、同条に規定する特定機械装置等には該当しない。したがって、本件画像診断ワークステーションについて、租税特別措置法第10条の3に規定する所得税額の特別控除を適用することはできない。

《参照条文等》
  租税特別措置法第10条の3(平成22年法律第6号による改正前のもの)、第12条の2 租税特別措置法施行規則第5条の8(平成24年財務省令第30号による改正前のもの)

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請求人が確定申告書に添付した書類には、租税特別措置法第10条の5の4第4項に規定する内容が記載されていないから、同条第1項に規定する特別控除の適用は認められないとした事例(平成26年分の所得税及び復興特別所得税の更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の通知処分・棄却・平成28年4月7日裁決)

平成28年4月7日裁決

《ポイント》
 本事例は、雇用者給与等支給額が増加した場合の所得税額の特別控除の適用を受けるためには、当初の確定申告書に「雇用者給与等支給増加額」等を記載した明細書の添付が必要であると判断したものである。

《要旨》
 請求人は、租税特別措置法第10条の5の4《雇用者給与等支給額が増加した場合の所得税額の特別控除》第4項後段に規定する「当該確定申告書に添付された書類」には、青色申告決算書など確定申告書に添付すべき書類が含まれると解すべきであり、同条第1項に規定する特別控除(本件特別控除)の金額の計算の基礎となる雇用者給与等支給増加額は、請求人が所得税の確定申告書に添付した書類(本件添付書類)等を基に算出することができるから、更正の請求において本件特別控除の適用を受けることができる旨主張する。
 しかしながら、同条第1項の規定により控除を受けることができる金額は、「確定申告書に添付された書類に記載された雇用者給与等支給増加額を基礎として計算した金額」に限られるところ、同条の規定の構造に鑑みれば、同条第4項後段に規定する「当該確定申告書に添付された書類」とは、同項前段に規定する「第1項の規定による控除の対象となる雇用者給与等支給増加額、控除を受ける金額及び当該金額の計算に関する明細を記載した書類」を指すものと解するのが合理的である。そして、本件添付書類には、上記「雇用者給与等支給増加額、控除を受ける金額及び当該金額の計算に関する明細」のいずれの記載もないのであるから、本件添付書類を基に雇用者給与等支給増加額を算出することができたとしても、そのことをもって、本件特別控除の適用を受けることはできない。

《参照条文等》
 租税特別措置法第10条の5の4(平成27年法律第9号による改正前のもの)第1項、第4項

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請求人が経営する診療所の勤務医を診療協力として別病院の診療に従事させたことに伴い当該別病院から支給を受ける協力金は、措置法第10条の5の3第2項第3号(雇用者等給与支給額が増加した場合の所得税額の特別控除)括弧書きに規定する「その給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額」に該当するとした事例

令和2年7月7日裁決

《ポイント》
 本事例は、請求人が雇用する勤務医に対して、(賞与を支給する定めがないにもかかわらず)給与とは別に診療協力回数に応じて支給していた賞与が、租税特別措置法(平成29年法律第4号による改正前のもの)第10条の5の3《雇用者給与等支給額が増加した場合の所得税額の特別控除》(本件特別控除)に規定する「その給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額」に該当すると判断したものである。

《要旨》
 原処分庁は、請求人が経営する診療所に勤務する医師(勤務医)を診療協力として別病院の外来患者の診療に従事させたことに伴い当該別病院から請求人が支払を受ける協力金(本件協力金)について、1当該別病院が委託費として経理処理していること、また、2当該別病院の経理担当者が「勤務医の給与に充てるために(請求人に)支払ったものではない」旨証言していることを理由に、本件特別控除に規定する「その給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額」に該当しないから、請求人は本件特別控除の適用を受けることができない旨主張する。
 しかしながら、請求人と勤務医との雇用契約に賞与を支給する定めがないにもかかわらず、請求人が勤務医に対して当該診療協力の回数に応じて賞与を支給していたことは、当該勤務医が診療協力に従事し、本件協力金の支払を受けたために他ならないことから、本件協力金は、勤務医に対する賞与に充てるために当該別病院から支払を受けたものと認められる。
 したがって、本件協力金は、租税特別措置法第10条の5の3第2項第3号括弧書きに規定する「その給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額」に該当する。

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