ホーム >> 公表裁決事例集等の紹介 >> 公表裁決事例要旨 >> 租税特別措置法関係 >> 居住用財産の判定
居住用財産の判定
- 不動産所得及び事業所得等の特例
- 譲渡所得の特例
- 株式等に係る譲渡所得等の特例
- 住宅借入金(取得)等特別控除
- 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
- 先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除
- タックスヘイブン対策税制
- 寄附金特別控除
空家の期間が1年を超える居住用家屋の譲渡について租税特別措置法第35条の規定を適用できないとした事例
裁決事例集 No.13 - 63頁
租税特別措置法(昭和50年法律第16号による改正前のもの)第35条による特別控除の対象となる家屋は、譲渡時において実際に居住の用に供しているものに限るべきところ、譲渡時において当該家屋を空家にした場合においても、執行上は、他の用途に供することなく空家とした日から1年以内に譲渡したものに限り、従前の居住用の用途が継続しているものとして、同条の適用を認めることとしている。執行上、空家の期間を1年と定めているのは、同じく同条に規定されている災害により滅失した居住用家屋の敷地の譲渡における1年の期間制限と比較考量しているためと認められる。すなわち、災害という最悪の事態の場合においても、災害のあった日から1年以内に譲渡されたものに限り、同条の特別控除を認めているのであるから、災害以外の事由による場合に1年を超える期間延長をすることは不相当と認めたためと解され、空家とした期間が1年を超えている本件の場合においては、たとえ空家となった後貸家等の用に供しなかったとしても同条の特別控除の適用は認められない。
昭和51年9月13日裁決
譲渡した土地は、居住用家屋の一部を取り壊して更地とした部分であり、居住用財産に該当しないとした事例
裁決事例集 No.17 - 76頁
土地の譲渡に当たって、当該土地を更地とした上で譲渡することが条件となっていたので、当該土地の上にまたがって建っていた居住用家屋の一部を取り壊して譲渡した事実は認められるが、[1]取壊し後において旧家屋の相当部分が残っていたこと、[2][1]の状態となった家屋について増改築を行い引き続き居住の用に供していたこと、[3]その増改築の工事の間も他に移転することなく当該家屋に引き続き居住していたことが認められるから、当該土地の譲渡については、租税特別措置法(昭和49年法律第17号による改正前のもの)第35条第1項の規定の適用はない。
昭和53年12月11日裁決
譲渡した家屋は、隣接家屋が市に買収されたため居住しなかったとしても、租税特別措置法第35条第1項に規定する居住用財産に該当しないとした事例
裁決事例集 No.20 - 275頁
本件家屋に隣接する家屋が市に買収され、本件家屋だけでは手狭になったため、転勤による帰郷後、本件家屋に居住しなかったものであり、買収されなかったとすれば当然に本件家屋に居住したものであるから、本件家屋は居住用財産に該当すると主張するが、本件家屋を生活の本拠に利用することなく他に賃貸していた以上、本件家屋は居住用財産に当たらないとした原処分は相当である。
昭和55年7月29日裁決
転勤に伴って賃貸した家屋をその後居住の用に供さないで譲渡した当該譲渡所得について租税特別措置法第35条第1項の規定の適用は認められないとした事例
裁決事例集 No.21 - 237頁
請求人は、本件家屋を、勤務先に借上げ社宅として賃貸していたため、請求人が本社へ復帰後、直ちに本件家屋に居住することができず、いったん勤務先の社宅に家族と共に入居し、その後請求人のみが本件家屋へ引っ越し、それ以後、請求人の生活の拠点として居住していたものであるから、本件家屋は、居住用財産に該当する旨の主張について、請求人が1週間のうち4日ないし5日をA市の社宅で家族と共に生活していたこと、家財道具の大部分がA市の社宅に残されていたこと、本件家屋においては新聞の購読、郵便物の配達、電話の架設等がなかったこと及び請求人のみが家族と別居して通勤に不便な本件家屋に居住しなければならない生活上の必要性が認められないこと等からみて、本件家屋が一時的に使用されていたとしても、これを請求人の生活の拠点として居住の用に供していたものとは認めることはできず、租税特別措置法(昭和57年法律第8号による改正前のもの)第35条第1項の規定を適用しなかった原処分は相当である。
昭和56年1月29日裁決
転勤前に居住していた旧家屋を除却し、建替え中であった建築中の家屋を譲渡した場合、租税特別措置法第35条の規定の適用はできないとした事例
裁決事例集 No.22 - 237頁
本件建築中の物件は、請求人が転勤前に居住していた旧家屋を、転勤先から戻った後に、建て替えて入居する計画の下に建築中のもので、その建築途中に隣接家屋の所有者から苦情を受け、建築工事を中止したままの状態で譲渡したものであるところ、租税特別措置法(昭和57年法律第8号による改正前のもの)第35条第1項に規定する「居住の用に供している家屋」とは、「譲渡の日若しくはこれに近い所定の時期までに、その者がある程度の期間継続して居住する意思をもってこれに居住し、生活の本拠として利用している家屋をいう」と解されることから、本件建築中の物件の譲渡については、居住用財産の譲渡所得の特別控除の規定の適用はない。
昭和56年4月27日裁決
居住の用に供している一構えの家屋の一部を譲渡した場合において、譲渡した部分以外の部分が機能的にみて独立した居住用家屋と認められる場合には、居住用家屋の譲渡には該当しないとした事例
裁決事例集 No.35 - 175頁
譲渡建物と隣接建物とが一構えの家屋を構成している場合において、当該隣接建物において請求人とその家族の日常生活の大部分が何ら支障なく営まれている場合には、隣接建物は機能的にみて独立した家屋と認められる。したがって、本件譲渡は、居住の用に供している一構えの家屋の一部を譲渡したにすぎないから、その譲渡をもって居住用家屋の譲渡に該当するとはいえない。
昭和63年6月14日裁決
居住用家屋を取り壊した日から1年以内にその敷地の譲渡契約が締結されていないとした事例
請求人は、居住用家屋を取り壊した日から1年6か月後にその敷地を譲渡する売買契約を締結して譲渡しているものの、当該契約に先立ってその取り壊した日から1年以内に他の者と売買契約を締結し、請求人の責めに帰さない理由により先発契約が解除された事情があるのであるから、両契約を一体のものとみれば租税特別措置法第35条の居住用財産の譲渡所得の特別控除等が適用されるべきであると主張するが、両契約はそれぞれ別個の契約であり、居住用家屋を取り壊した日から1年以内に締結した契約は解除されているものであるから、同特別控除等の適用はない。
平成4年4月23日裁決
本件家屋は同一世帯に属する長男及び義母等の居住の用に供されていたが、請求人は、本件家屋を相続により取得してから一度も居住しないまま譲渡しているので、本件譲渡は居住用財産の譲渡に当たらないとした事例
請求人の本件譲渡時における生活の本拠は、請求人が日常実際に起居し、住民登録もしていた勤務先の社宅であり、請求人が所有者として本件家屋を居住の用に供していたとは認められず、また、請求人と社会通念上同居を通常とする妻及び次男も長期間居住していない本件家屋については、永続的な利用を目的として請求人及び妻等の日常生活に利用されていたとは到底いえず、請求人らの生活の本拠が本件家屋にあったとは認められない。
平成4年1月20日裁決
夫婦が隣接して各自所有していた不動産の一方は居住用財産に当たらないとした事例
請求人は、自己の所有家屋と妻の所有家屋を一体として居住の用に供していたから、自己の所有不動産についても措置法第35条の適用があると主張するが、[1]両家屋は各々独立しており、[2]両家屋を一体として利用しなければ居住の用に供せない事情もなく、[3]電気量も大半が妻の所有家屋で消費されていることから、請求人の所有不動産は居住の用に供していたものとは認められない。
平成4年9月30日裁決
譲渡物件は居宅新築のための仮住まいと認められ、譲渡所得について租税特別措置法第35条の規定による特別控除はできず、また、居住期間を偽った住民票の添付は重加算税の対象になるとした事例
- 請求人は、本件資産の譲渡所得の計算に当たり、本件資産は居住の用に供していたものであり、仮住まい、あるいは特例の適用を受けるためのみの目的で入居したものではないから、租税特別措置法第35条の規定を適用すべきであると主張する。
しかしながら、本件資産は、居宅を新築する資金に充てるため、それまで貸家にしていたものを売ることとしたが、当該譲渡に係る譲渡所得について租税特別措置法第35条の規定の適用を受けんがため、住民票上、居住期間を仮装したものであり、電気の使用量等から居宅が完成するまでの仮住まいであったと認められる。したがって、本件資産は本件特例に規定する居住用財産に該当しないことは明らかであり、居住用財産の売却に係る特別控除の適用はできない。 - 本件資産の賃貸期間を偽って確定申告をするとともに、本件資産について、虚偽の居住の為の補修工事をしたこと等の申立てをし、また、実際の居住期間とは異なる住民登録をした住民票を確定申告書に添付し本件特例を適用したことは、通則法第68条第1項の規定に該当し、重加算税の賦課決定は適法である。
平成5年5月21日裁決
譲渡土地1,567平方メートルのうちゲートボール場として使用されていた397平方メートルは、居住用家屋の敷地に該当しないので、この部分の譲渡については、租税特別措置法第35条の適用がないとした事例
請求人は、そもそもゲートボール場は、請求人及び家族が使用するものとして居住用家屋に隣接して設置したものであるから、当該土地も租税特別措置法第35条に規定する「居住用家屋の敷地の用に供されている土地」に該当する旨主張する。
しかしながら、原処分関係書類及び請求人の答述によれば、ゲートボール場として使用されていた部分の土地について、[1]請求人は、昭和56年9月以降Q町長寿会と無償貸借契約を締結していること、[2]P市長は、昭和56年10月Q町自治会から受けた同場設置の陳情に基づき同場の整地工事を行ったこと、[3]同場の出入口は、居住用家屋の出入口と別であること、[4]請求人は、平成3年1月17日P市長に対し同場の設置されている土地の固定資産税免除申請を行い、[5]市長は、平成3年2月〜5年2月までの間総額322千円の固定資産税を免除していること、[6]道具用倉庫は、Q町長寿会の会員が設置管理していることが認められる。
ところで、租税特別措置法第35条第1項に規定する「譲渡土地が居住用家屋」の敷地に該当するか否かの判定は、社会通念に従い当該家屋と一体として利用されていたか否かにより、具体的には、敷地と当該家屋の位置、面積及び利用状況等を総合して、当該家屋と一体として利用されている土地をいうものと解されるところ、本件ゲートボール場として使用されていた部分の土地は、居住用家屋の敷地の用に供されていた土地に該当しないというべきであるから、当該土地が居住用財産に当たらないとした本件更正処分は、適法である。
平成7年12月18日裁決
優良再開発建築物整備事業における譲渡契約の締結日は、当該事業の事業計画の同意書を作成、提出した日であるとして、居住用財産の譲渡所得の特別控除及び居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例の適用を認めた事例
原処分庁は、居住用財産を譲渡した場合の課税の特例における居住用財産とは、居住の用に供している家屋及びその土地等をいい、敷地であった土地等のみを譲渡した場合は、土地等の譲渡に関する契約が家屋を取り壊した日から1年以内に締結されている場合に特例を適用できるとされているところ、本件は、平成5年12月20日作成の売買契約書により本件譲渡資産を譲渡する旨の契約を締結したものと認められるが、本件建物は平成4年3月31日に取り壊されているから、本件売買契約書により請求人が譲渡したのは本件借地権のみと認められ、かつ、本件売買契約は本件建物を取り壊した日から1年以内に締結されていないことから、特例の適用はできない旨主張する。
しかしながら、本件再開発事業において、本件共同事業施行者が平成3年6月30日付で作成提出した事業計画の同意書には、本件共同事業施行者が保有する資産の価額等、同資産の価額等で取得可能な再開発ビルの区分所有建物等を取得する方法及び譲渡の相手方等が定められており、本件同意書は、本件共同事業施行者がその保有する資産を譲渡する旨の譲渡契約を締結したものと認めるのが相当である。また、平成5年12月20日付で作成された売買契約書は、その作成時点で本件再開発事業がほぼ完了している事実からすると、本件再開発事業の清算の過程を明らかにするために作成されたものと認めるのが相当である。
そうすると、請求人は、平成3年6月30日に、本件建物及び借地権を譲渡する旨の譲渡契約を締結したものであり、本件建物及び借地権で請求人が居住の用に供していた部分は、居住の用に供さなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までにこれを引き渡したのであるから、居住用財産を譲渡した場合の各特例を適用することができる。
平成9年6月26日裁決
本件譲渡家屋における電気・ガス・水道の使用状況等から判断すると、本件譲渡家屋に居住したとしても一時的な目的で入居したものと認められるので、居住用財産の課税の特例の適用はできないとした事例
請求人は本件土地を売却する契約をしたが、市街化調整区域に存する畑であった本件土地上に建物を建築できないことから、本件建物を請求人名義で建築した後、本件資産として売買の形式を採るとともに、本件特例を適用することにより租税負担の軽減を企図したものであり、本件工事請負契約書及び本件資産売買約定書に係る売買は真実の売買ではないとする請求人の主張は採用することがきない。
請求人は、電気の使用開始が平成6年6月3日になったのは、請求人が入居したとする同年4月25日から6月3日までの間工事用配線を使用していたためであると主張しているが、建物が完成して入居した後1か月以上も工事用配線が存在することは通常考えにくく、むしろ、生活に必要な電気及び水道に加え、ガスの使用が可能となった同年7月2日以降が入居日と考えるのが自然であること及び同年4月25日には、電気、水道及びガスがすべて使える状態であったとする請求人の答述は信用できず、この点からも請求人の主張を採用することはできない。
請求人は、生まれた時から本件資産の所在地と同じ町内に居住する両親及び弟と同居していたところ、結婚後の生活を営むために本件建物に入居した旨主張するが、通常、結婚が決まったとはいえ結婚前に、しかも建物完成前で、なおかつ電気及びガスが調う前に、それまで同居していた親元を離れ、急きょ独り住まいをしなければならない必要性はないものと認められ、仮に、住民登録の異動のとおり請求人が本件建物へ入居していたとしても、本件借入れの申込みは、請求人が本件特例の適用を受ける目的で行われていることから、請求人は本件建物へは本件特例の適用を受けるためのみの一時的な目的で入居したものと認められる。
本件借入れを行った以前の段階で、すでに本件資産は売却する予定であり、購入者も決まっていたのであるから、請求人の婚約解消後は継続して生活することに堪え難い事情が生じたことから本件資産を売却したとの主張は採用できない。
請求人の主張はいずれも理由がなく、本件建物は本件特例の対象となる居住用家屋とは認められないから、本件譲渡について本件特例を適用することはできない。
平成10年3月20日裁決
被相続人が所有していた建物が火災で焼失した後に当該建物の敷地を相続により取得し、当該敷地をその後に譲渡した場合、相続人は、当該建物の所有者として居住の用に供していた事実は認められず、3,000万円特別控除の対象となる居住用財産の譲渡には該当しないとした事例
請求人は、本件建物が焼失するまでの間、当該建物で被相続人と生計を一にしており、被相続人が生存中に本件土地を所定の期限内に譲渡すれば特例の適用が受けられるところであり、被相続人の死亡により本件土地の現実の占有を承継し、また、財産的地位を包括的に承継しているから、相続により被相続人に属していた特例の適用を受けられる地位を承継しているので居住用財産の譲渡所得の特別控除の適用が認められるべきである旨主張する。
しかしながら、本件特例は、譲渡所得者の帰属者の立場において適用されるべきものであるところ、請求人において本件建物を居住の用に供していたというためには、単に請求人が本件建物に居住していたあるいは被相続人と生計を一にしていたというだけでは足りず、請求人が本件建物の所有者として居住の用に供していたことを要件として判断すべきである。
本件建物の所有者は被相続人であり、請求人は本件建物の所有者として居住の用に供していたとは認められないから、本件特例の適用は認められないと解するのが相当である。
平成10年4月30日裁決
本件家屋の近隣住民の答述、家屋の電気の使用量や通勤手当の受給状況等からみて、譲渡した土地等は、租税特別措置法第35条等で規定する居住用財産に当たらないとした事例
請求人は、生まれたときから居住していた本件家屋から、昭和49年にR地の家屋へ妻子と共に転居したが、平成3年に母Mの病気が悪化したので、請求人のみが同年4月から看病のため本件家屋に再度転居して生活の本拠地としていたのであるから、租税特別措置法第31条の3及び同法第35条の各特例が適用されるべきある旨主張する。
しかしながら、請求人の母Mが日常生活に必要な買物等を通常一人で行っていたとの近隣住民の答述、本件家屋の電気の使用量、勤務先からの通勤手当の受給状況及び給与振込口座からの出勤状況等からして、請求人が本件家屋を居住の用に供した事実は認められないから、本件譲渡には租税特別措置法第31条の3及び同法第35条の規定の適用はない。
平成10年9月30日裁決
本件旧家屋と新家屋の水道と電気の使用量の状況、ガス会社との供給契約の終了時期や電話の移設の状況等から判断すると、本件の課税の特例が適用される期限を徒過した以後に本件譲渡が行われているものと認められるとして、居住用財産の課税の特例は適用されないとした事例
請求人は、旧家屋から新家屋に家財道具等を搬出したのは、祖母が死亡した日(平成6年9月14日)以降であり、平成6年に生活の本拠が新家屋に移っているので、本件の旧家屋について租税特別措置法第35条第1項で規定する「居住の用に供されなくなった日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日」は、平成9年12月31日となるところ、本件旧家屋の譲渡はこれ以前に行われているから、居住用財産の特別控除の適用が認められるべきである旨主張する。
しかしながら、[1]旧家屋と新家屋の水道と電気の使用状況をみると、平成3年3月以降は旧家屋での使用実績はなく、同年1月以降の新家屋の使用量は、新家屋に生活の本拠を移したことに争いのない時期である平成7年の使用量と同程度であると認められること、[2]旧家屋におけるガス会社との間の取引は平成3年2月28日で終了していること、[3]旧家屋の電話は、平成2年11月20日に他の場所に移されていることの各事実を総合すれば、請求人が平成3年3月以降旧家屋に居住していた事実はなく、生活の本拠は、遅くとも同月までに新家屋に移っていたと認めるのが相当である。
したがって、旧家屋が請求人の「居住の用に供されなくなった日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日」は、平成6年12月31日となり、甲土地はこの日以前(同月2日)に譲渡契約がなされ、乙土地はこの日以後(平成7年1月10日)に譲渡契約がなされているが、これらの土地の引渡しは、いずれも平成7年1月になされており、また、本件土地の譲渡所得についての確定申告も平成7年分の所得として申告されていることからみて、本件譲渡は、平成6年12月31日までに行われた取引とは認められず、本件土地等の譲渡所得に居住用財産の課税の特例は適用できない。
平成10年12月18日裁決
請求人が相続により取得した甲建物及び本件宅地は、同人が取得後一度も居住しないままに譲渡しており、また、乙建物等は買主が取得後すぐに取り壊していることに加え、本件土地の売買価額の清算条項の土地清算単価に宅地の面積を乗じた価額は売買代金に一致していること等から、譲渡対価はすべて宅地の対価と認められ、居住用財産の課税の特例は適用されないとした事例
請求人は、本件譲渡資産については、[1]昭和48年に父F所有の甲建物を増築し、当該増築部分を請求人所有の乙建物として登記して、以後これらの建物を一体として居住の用に供しており、また、事実上父母の生活費を負担していたこと、[2]その後、請求人は転勤のため昭和50年以降本件建物に居住できなくなったが、生計を一にしていた父Fは死亡時まで、母Gは本件譲渡時まで本件建物に引き続き居住しており、請求人とその親族は本件譲渡資産を一体として居住の用に供していたのであるから、措置法第31条の3第1項及び第35条第1項の規定による課税の特例を適用すべきである旨主張する。
ところで、居住の用に供していた家屋の敷地である土地については、家屋の所有者と土地の所有者は同一人であることを前提として、居住用財産の課税の特例は規定されているものと解され、また、「居住の用に供されていた家屋等」であっても、居住しなくなった後の一定期間内の譲渡であれば、本件の特例が適用されるのであるが、その要件の解釈に当たっては、いずれも所有者として家屋等を所有している期間において居住の用に供していたことを要するものと解されており、かつて居住の用に供していた家屋等を居住の用に供しなくなった後、当該家屋等を相続により取得して譲渡した場合には、本件の特例の対象となる居住用財産には当たらないと解すべきである。
また、乙建物は、請求人が居住の用に供しなくなった後も、請求人が生活費を負担していたGが譲渡時まで引き続き居住していたことから、居住用財産に該当すると認められるとしても、[1]本件譲渡に係る売買契約書には、本件宅地の公簿面積と建築確認対象面積とに差があった場合には、売買代金の額を本件宅地の面積で除した金額に相当する金額の割合により売買代金を清算する旨の特約が付されていること及び[2]本件建物は買主において取得後すぐに取り壊されていること等からみて、本件譲渡資産の譲渡対価は、すべて居住用財産には該当しない本件宅地の対価であると認めることが相当である。
したがって、本件譲渡資産の譲渡所得金額について本件特例を適用することはできない。
平成10年12月22日裁決
譲渡した土地及び建物は、請求人の生活の本拠ではなく、居住用財産の譲渡とは認められず、請求人が住民票を異動したことは、特例の適用を受けるための事実を仮装するために行ったものであるから、重加算税の賦課決定処分は適法であるとした事例
- 請求人が、本件家屋及び長男家族の家財道具の管理等のために、昭和63年頃から本件家屋を譲渡した直前までにおいて、時折本件家屋に住んでいたことを否定することはできないが、[1]請求人の住所が本件家屋の所在地となっているものは、平成7年8月10日から同年9月29日までの住民登録及び本件売買契約書の請求人の住所のみで、他はすべてS町の家屋の所在地であったこと、[2]本件家屋における水道及び電気の使用量並びに電話の利用料金は、長男家族が帰省したお盆、正月の時期等はそれなりに使用されていたことは認められるが、その他の月のこれらの使用量及び利用料金は僅少又は使用されていなかった月があること、[3]本件家屋及びS町の家屋の近隣住民等の申述からすれば、請求人は、S町の家屋を生活の本拠としていたことがうかがえること、[4]仏壇は、生活の本拠である家屋に置き、先祖を供養するのが一般的であるが、請求人は、S町の家屋に置いていたことが認められ、これらを総合すると、請求人は、本件家屋及び長男家族の家財道具の管理等のために本件家屋を一時的に利用したにすぎず、請求人の生活の本拠はS町の家屋と認められる。
- 請求人が住民登録を本件家屋所在地に転居の届出をしたときは、すでに本件譲渡資産を譲渡する認識をもっていたとみるのが相当であり、請求人が、本件家屋を真に居住の意思をもって、生活の本拠として居住していたという事実及び請求人の住民登録の住所を異動しなければならなかった合理的な理由が認められない以上、この届出は、本件特例の適用を受けるための事実を仮装するためにあえて届出したものと認められ、この事実に反する住民票の写しを本件申告書に添付して提出したことは、国税通則法第68条第1項の課税標準の基礎となるべき事実を仮装し隠ぺいしたことに該当する。
平成11年3月15日裁決
本件建物の2階を居住用とし、1階を店舗工場として同族会社に賃貸していた請求人が、当該同族会社の倒産後において1階部分を居住用に改装した事実はなく、また、居住用として利用する必然性も認められないので、1階部分については、居住用財産の課税の特例の適用はできないとした事例
請求人は、本件建物の1階は賃貸していた同族会社の倒産後は空家同然となったので、同社所有の備品等を整理して、車庫、倉庫及び物干し場等居住用としての利用をしていたのであるから、本件建物の全部について居住用財産の譲渡所得の特別控除等の特例の適用が認められるべきである旨主張する。
しかしながら、本件建物2階は、家族構成からみても一般家庭の居宅としての広さや設備を十分備えた構造となっており、同族会社の倒産後に1階を居住の用に供さなければならないという特段の事情は認められず、また、1階部分を家族が起居するために改装した事実は認められない。
また、請求人は、賃貸していた同族会社の倒産後は1階を生活の拠点として利用していた旨主張するが、[1]2階には台所があるにもかかわらず、その機能のない店舗工場を台所として使用することは考えにくいこと、[2]金融機関から倒産会社の保証債務の履行を迫られている中で、本件建物を相続すれば債務の弁済をしなければならず、他方、相続登記をしなければ譲渡することができないという状況にあって、本件建物を相続すると同時に譲渡をする必要があったものと認められることからすれば、相続後に本件建物の1階を居住用として利用する必然性はなく、例え生活用資産を保管していたとしても、それは一時的なものであり、居住用とは認められないことから、本件建物の1階部分について本件特例を適用することはできない。
平成11年2月25日裁決
居住用財産の譲渡と認めなかった事例
請求人は、空き家となっていた本件家屋が傷むのを防ぐため、妻とともに本件マンションから本件家屋に転居して住民票を移し、居住の用に供していたので、措置法35条の特別控除を適用できる旨主張するが、[1]本件家屋には、ほぼ同時期から譲受人の娘夫婦が居住していること、[2]本件家屋及び本件マンションの近隣住民らの申述、及び[3]本件家屋及び本件マンションの電気・ガスの使用量などから総合判断すると、請求人が本件家屋を主たる生活の本拠として居住していたとは認められないので、本件特例の対象となる居住の用に供していた家屋には該当しない。
平成12年11月10日裁決
請求人の譲渡した家屋及びその敷地は、病気の老母の看護のために居住していたとする請求人の主張を排斥して、居住用財産とは認められないから租税特別措置法第35条の特例を適用することはできないとした事例
請求人は、譲渡した物件(本件家屋及びその敷地)に病気の老母の看護のため居住していたことから、その譲渡については租税特別措置法第35条の特例を適用すべきである旨主張する。
しかしながら、[1]本件家屋及び請求人がS市に有する家屋の電気及びガス等の使用料の状況という客観的数値、[2]双方の家屋の近隣住民の申述内容、[3]請求人の住民登録の状況、[4]請求人の過去の確定申告書の記載内容、[5]老母の居住状況に係る市役所の認定などを併せて判断すると、請求人が主として居住の用に供していたのはS市の家屋であり、本件家屋は仮に使用していたとしても、一時的あるいは臨時的なものであったと判断するのが相当であり、本件譲渡物件は居住用財産とは認められないことから、本件譲渡について本件特例を適用することはできない。
平成13年6月28日裁決
二以上の家屋が併せて一構えの一の家屋であると認められるか否かについては、まず、それぞれの家屋の規模、構造、間取り、設備、各家屋間の距離等客観的状況によって判断すべきであり、個人及びその家族の使用状況等主観的事情は二次的に参酌すべき要素にすぎないものと解するのが相当であるとした事例
請求人は、本件Y家屋の敷地は、隣接する本件X家屋の敷地と地続きであり、また、本件Y家屋は、その設備状況からして、独立した1棟の居住用家屋としての機能を有していなかった上、主として居室としての用途で利用していたものであるから、一体として居住の用に供していた本件X家屋及び本件Y家屋(以下、これらを併せて「本件各家屋」という。)は、一構えの一の家屋として、それらの敷地とともに本件特例が適用されるべきである旨主張する。
ところで、二以上の家屋が併せて一構えの一の家屋であると認められるか否かについては、まず、それぞれの家屋の規模、構造、間取り、設備、各家屋間の距離等客観的状況によって判断すべきであり、個人及びその家族の使用状況等主観的事情は二次的に参酌すべき要素にすぎないものと解するのが相当である。
したがって、単にこれらの家屋がその者及びその者と同居することが通常である親族等によって機能的に一体として居住の用に供されているのみでは不十分であり、家屋の構造、規模、設備等の状況から判断していずれか又はそれぞれが独立の居住用家屋としては機能できないものでなければならない。
そうすると、これらの家屋がそれぞれ独立の家屋としての機能を有する場合には、これらの家屋を併せて一構えの一の家屋であるとは認められず、その者が主としてその居住の用に供していると認められる一の家屋に限り、本件特例の適用対象となるというべきである。
これを本件についてみると、本件各家屋の規模、構造、間取り、設備、両家屋間の距離並びに通常考えられる用法及び機能等を考慮すれば、本件各家屋は、それぞれ独立して居住の用に供し得る機能を有する居住用家屋であることは明らかであり、本件各家屋を併せて一構えの一の家屋であると認めることはできない。
また、請求人が本件Y家屋の台所や風呂を老朽化を理由として使用せず、一方、居室については修繕を行って使用していたのは、そもそも請求人の本件Y家屋の使用目的が、居室としてのみ利用することにあったためであり、請求人の主観的事情にすぎないというべきである。
そうすると、請求人の主観的事情は二次的に参酌すべき要素にすぎないから、本件各家屋を機能的に一体として利用していたことをもって、本件各家屋が併せて一構えの一の家屋であると認めることはできない。よって、請求人の主張には理由がない。
そして、本件特例の適用対象となる家屋は、租税特別措置法施行令第23条第1項の規定により、その者が主として居住の用に供していると認められる一の家屋に限られるところ、主として居住の用に供していた家屋は、本件X家屋と認められることから、本件特例の適用対象となるのは、本件X家屋及びその敷地である本件X土地に限られる。
平成19年2月7日裁決
10年以上居住の用に供していた家屋及びその敷地について、贈与を受けた直後に譲渡した場合には、租税特別措置法第35条の適用を受けることはできないとした事例
請求人は、譲渡したA建物を、10年以上にわたって生活の拠点としており、また、贈与により取得して所有者になった日から売買契約締結の日の前後を通じて5か月の間、居住の意思を持って居住の用に供していたところ、租税特別措置法第35条第1項には、所有期間及び居住期間についての定めはないから、A建物の所有者になってからの居住期間が短いとしても、A建物は、同項に規定する個人が居住の用に供している家屋に該当する旨主張する。
しかしながら、租税特別措置法第35条第1項に規定する個人がその居住の用に供している家屋に該当するというためには、当該家屋を所有者として居住する意思を持って、客観的にもある程度の期間継続して生活の本拠としていたことを要すると解すべきであるところ、請求人がA建物の所有者となる前の居住期間は、同項の適用を判断するに当たり考慮すべき事実とはならず、また、請求人がA建物の所有者となった日前にA土地建物の買主から諸条件の提示を受けて購入申込みを受諾していることからすれば、同受諾した日以降は、A土地建物は買主に譲渡されることが予定されていたものといえるから、請求人がA建物の所有者となった日以降において、請求人は、A建物を所有者として居住する意思を持って居住の用に供していたものとは認められない。
したがって、請求人がA建物に居住していた全期間について、A建物を租税特別措置法第35条第1項に規定する個人が居住の用に供している家屋であると認めることはできない。
《参照条文等》
租税特別措置法第35条第1項
平成22年6月24日裁決
居住用家屋の一部を取り壊し、その取壊し部分の敷地の用に供されていた土地の譲渡に係る譲渡所得について、租税特別措置法第35条を適用することができないとした事例(平成22年分の所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・一部取消し・平成26年2月17日裁決)
《要旨》
請求人は、居住の用に供している家屋の一部を取り壊し、その取り壊した部分の敷地の用に供されていた土地の譲渡について、当該家屋の取壊し後の残存家屋は、改修工事をしなければ機能的にみて居住可能な独立した家屋とはいえず、その物理的形状に照らし、居住の用に供しえなくなったものといえるのであるから、租税特別措置法第35条《居住用財産の譲渡所得の特別控除》の規定を適用できる旨主張する。
しかしながら、当該残存家屋には、人が居住して日常生活を送るのに必要な台所、便所、浴室及び居室の全てを備えており、当該家屋の一部取壊し及び残存家屋の改修工事の各工事期間中も請求人は居住していたのであるから、家屋の一部取壊しによって、当該残存家屋がその物理的形状等に照らし居住の用に供しえなくなったということはできない。したがって、当該譲渡に租税特別措置法第35条の規定を適用することはできない。
《参照条文等》
租税特別措置法第35条
租税特別措置法通達(山林所得・譲渡所得関係)31の3-10、35-2、35-5
《参考判決・裁決》
東京地裁昭和54年11月19日判決(裁Web)
東京地裁平成21年11月4日判決(税資259号順号11304)
東京高裁平成22年7月15日判決(税資260号順号11479)
請求人が譲渡した土地上にある家屋は、請求人が真に居住の意思をもって客観的にもある程度の期間継続して生活の本拠としていたとは認められないから、租税特別措置法第35条の適用はないとした事例(平成24年分の所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・棄却・平成28年3月16日裁決)
《要旨》
請求人は、譲渡した土地上に存していた家屋(本件家屋)が、租税特別措置法(平成25年法律第5号による改正前のもの)第35条《居住用財産の譲渡所得の特別控除》第1項に規定する「居住の用に供している家屋」に該当する旨主張する。
しかしながら、本件家屋におけるガス及び水道の使用実績がなく、電気の使用量は極めて少ないこと、本件家屋の窓ガラスが割れたまま放置され、複数の近隣住民が人の住める建物ではなかったと評していること、また、請求人が住民票上の住所を本件家屋とは別の借家の所在地に置いていたこと、当該借家に係る賃貸借契約及びその更新の際に、請求人が同居人として名を連ねていたことなどからすれば、請求人が本件家屋を真に居住の意思を持って客観的にもある程度の期間継続して生活の本拠としていたとは認められない。以上によれば、本件家屋は、請求人の「居住の用に供している家屋」に該当しない。
《参照条文等》
租税特別措置法(平成25年法律第5号による改正前のもの)第35条第1項
《参考判決・裁決》
東京地裁昭和54年11月19日判決(税資109号396頁)
大阪地裁平成8年3月19日判決(税資215号922頁)
神戸地裁平成10年12月16日判決(税資239号458頁)
平成22年6月24日裁決(裁決事例集No.79)