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土地と建物の譲渡対価の区分
- 特定設備等の特別償却
- 中小企業者の機械等の特別償却
- 新築貸家住宅等の割増償却
- 交際費等の課税の特例
- 使途秘匿金の支出がある場合の課税の特例
- 土地の譲渡等がある場合の特別税率
- 収用等の場合の課税の特例
- 特定資産の買換えの場合等の課税の特例
- 準備金
- 税額控除
- 新規取得土地等に係る負債の利子の課税の特例
- 移転価格税制
- タックスヘイブン対策税制
土地と建物を一括譲渡した場合において、土地譲渡益重課制度の対象となる土地の譲渡対価の額は、建物の未償却残額に建築費上昇率を乗じて得た建物の価額を土地建物の譲渡対価の額から控除して算定すべきものとした事例
裁決事例集 No.39 - 516頁
土地と建物を一括譲渡した場合において、土地譲渡益重課制度の対象となる土地の譲渡対価の額を算定するに当たり、請求人主張の譲渡時の土地建物の帳簿価額によりあん分する方法によると、土地と建物の譲渡対価の額が帳簿価額と同じ割合で上昇するので、土地高騰の現状に適しないといえる。
土地価額の上昇率が都市区域において急激であるのに対し、建物価額の上昇率が比較的緩やかである現状からみて、建物価額をまず算定して控除する方式が合理的であり、建物取得価額から定率法による減価償却費を控除した未償却残額に建設省建築動態統計調査による建築価額の上昇率を乗じて計算した建物価額を算定し、これを一括譲渡対価の額から控除して土地の譲渡価額を算定するのが相当である。
平成2年6月19日裁決
建築条件付土地の譲渡について、一つの売買契約書が作成されていても、取引の経緯等から土地と建物の取引はそれぞれ別個の取引であると認められ、土地と建物の「一括譲渡」には当たらないとした事例
請求人は、新築した建物を土地とともに一括譲渡したとして、租税特別措置法関係通達63の2(2)−4に定めるいわゆる142パーセント基準を適用して課税土地譲渡利益金額を計算しているが、本件の場合、請求人は、[1]建築条件付である土地の販売価額を記載したチラシを配布して土地の購入者を募集し、その上で土地の購入予定者と新築しようとする建物の額を交渉の上決定していること、[2]建物の建築確認通知書の建築主は、請求人でなく土地の購入者であること、[3]売買契約書は、[1]のチラシに記載された土地の譲渡対価の額及び交渉の上決定した建物の譲渡対価の額並びにそれらの総額を記載したものであること、[4]消費税の確定申告は、売買契約書に記載されている建物の譲渡対価の額により課税標準を計算していることからみると、租税特別措置法関係通達63の2(2)−4にいう「土地と建物の一括譲渡」に該当するとは認められず、原処分庁が売買契約書の土地の譲渡対価の額を基に課税譲渡利益金額を計算したのは相当である。
平成5年12月22日裁決
土地及び建物の一括譲渡契約において、その契約書の特約条項欄に土地及び建物の譲渡価額の記載があるとしても、本件建物の固定資産税の評価額が少額であって固定資産税も賦課されていないこと、本件建物の取得時及び譲渡時の取引先がいずれも本件建物の評価価値はない旨申述していること、請求人自ら確定申告において本件土地建物の取得価額を全額本件土地の原価の額としていること等から本件建物の譲渡価額は零円とするのが相当であるとした事例
- 請求人は、課税土地譲渡利益金額の計算上、土地及び建物を一括譲渡した場合の土地の譲渡価額はその不動産売買契約書の特約条項欄に売買金額の内訳として記載されている土地及び建物の価格のうちの土地の価格であると主張するが、本件建物の固定資産税の評価額が少額であって固定資産税も賦課されていないこと、本件建物の取得時及び譲渡時の取引先がいずれも本件建物の評価価値は無い旨申述していること、請求人自ら確定申告及び修正申告において本件土地建物の取得価額を全額本件土地の原価の額としていることから本件建物の価額はないものと認められ、また、近隣の土地の売買実例からみて本件物件の譲渡価額の総額は本件土地の譲渡価額と認められ、不動産売買契約書の特約条項欄の売買金額の内訳として記載されている土地及び建物の価格は取引の真実を反映したものではないと認めるのが相当である。
- 本件土地の譲渡費用の算定について、請求人は、実額配賦法によって本件土地の譲渡に係る部分の金額を合理的に計算して申告したと主張しているが、租税特別措置法施行令第38条第8項及び第38条の5第4項の規定は、土地の譲渡等の全てについて支出する経費のうち、当該土地の譲渡等に係る部分の金額を合理的に計算することができるものにあっては、概算法に代えて実額配賦法により計算することを例外的に認めたものと解されるところ、請求人は、実額配賦法により算定した根拠を何ら示さないためそれによる方法が合理的か否か審理できないのであるから概算法により算定したことは相当である。
- 譲渡収益の一部を除外していたことについて、請求人は会計帳簿に正当に記帳さており隠ぺい又は仮装の事実はないこと、また、その除外した金員は代表者からの借入金の返済に充てたものであって代表者が個人的に費消したものではないと主張するが、本件物件について契約価額の違う2通の契約書を作成していること、除外した本件金員の一部を代表者個人の普通預金口座に入金していること、請求人の会計帳簿への記載はなく申告もしていないこと等の行為は国税通則法第69条第1項に規定する隠ぺい又は仮装に該当する。
また、請求人の代表者は、請求人の株式の80パ−セントを所有しており、その代表取締役として請求人を支配・管理していること、その地位を利用して本件金員を受領したと認められること、代表者から請求人に対し返金した事実はないこと等の事実から代表者が当該金員を費消したものと認めるほかはなく、原処分庁が本件金員を代表者に対する賞与と認定したことは相当である。
なお、源泉所得税の計算に当たって、代表者に対する賞与と認定した本件金員の支払確定日は、代表者が本件金員を受領した事実に応じ、現金受領日、代表者個人の普通預金口座に振り替えた日(入金した日)又は当該事業年度終了の日とするのが相当である。
平成7年4月27日裁決
請求人がJ社から受領した金員は、請求人及びJ社を含む5社が各1,300万円を出資して構成した本件共同体(民法第667条の組合)が、土地等の譲渡をして得た譲渡益の分配金であるから、その構成員たる請求人が本件共同体から受領すべき金額は請求人の土地等の譲渡益であり、また、当該土地等の取得から譲渡までの期間は2年以下であるから、租税特別措置法第63条の2に規定する超短期所有に係る土地等の譲渡利益に該当するとした事例
- 本件共同体は、本件土地等の取引のために5社が各1,300万円を出資していること、5社のうち請求人を除く4社は本件土地等の取引を共同事業として認識していたこと、請求人の代表者も出資目的が本件土地等のリゾート開発事業のためであることを認めていること等を併せ考えると、本件土地等の取引について共同事業を営む旨の合意があったと認められるから民法第667条に規定する組合に該当する。また、請求人は、その構成員であると認めるのが相当である。
- 本件金員は、本件共同体により行われた本件土地等の譲渡による譲渡代金30億3,676万円(内砂代金6億円)のうち、請求人が受け取るべき金額6億666万円(内砂代金1億2,000万円)に係る利益の分配金である。
- 本件土地等の取得の日については、本件取得契約書上、土地等の代金の決済期日を昭和62年5月末日とし、引渡しは所有権移転登記申請手続及び売買代金授受の完了後遅滞なく当事者立会いの上これを行う旨定めており、現実には平成元年2月15日に所有権移転登記又は所有権移転請求権仮登記がされていること、売買代金の支払が平成元年2月27日に完結していること、本件清算書上も同日が取得日と記載されていること、請求人を除4社はいずれも同日を取得日と認識していたこと等の事実から、平成元年2月27日に本件土地の取得等があったものと認められる。
また、その譲渡の日については、本件共同体が本件売却契約書の日付である平成2年3月6日に買主との間で土地等の代金の授受が行われたものであるから同日が譲渡の日であると認められる。
そうすると、本件共同体による本件土地等の所有期間は2年以下となるから、租税特別措置法第63条の2(超短期所有に係る土地の譲渡等がある場合の特別税率)に規定する超短期所有に係る土地等の譲渡に該当する。 - 本件土地等の譲渡代金のうち請求人が受け取るべき金額6億666万円のうち砂代金1億2,000万円については、本件共同体において、本件砂が現に採掘・精製されたものであり、本件土地から分離された別個の売買の対象とされていると認められること、また、砂利採取業者に周知されている取引価格に基づいて決定された陸砂の1立方メートル当たりの単価に本件砂の体積を乗じて算定された6億円のうちの請求人の収受すべき金額であることから本件土地等の譲渡代金6億666万円から控除するのが相当である。
そうすると、4億8,666万円が土地の譲渡価額となる。
平成8年6月26日裁決