法人税法の特例

収用等の場合の課税の特例

  1. 特定設備等の特別償却
  2. 中小企業者の機械等の特別償却
  3. 新築貸家住宅等の割増償却
  4. 交際費等の課税の特例
  5. 使途秘匿金の支出がある場合の課税の特例
  6. 土地の譲渡等がある場合の特別税率
  7. 収用等の場合の課税の特例(5件)
  8. 特定資産の買換えの場合等の課税の特例
  9. 準備金
  10. 税額控除
  11. 新規取得土地等に係る負債の利子の課税の特例
  12. 移転価格税制
  13. タックスヘイブン対策税制

代替資産として取得した建物及び建物附属設備のうち、建物についてのみ圧縮記帳したために生じた圧縮限度超過額は、建物附属設備に係る圧縮損の計上額として取り扱うことはできないとした事例

裁決事例集 No.37 - 311頁

 租税特別措置法第64条第1項の規定は、法人がその決算を確定する際に、同項に定める方法により経理上の処理をすることを要件として、その処理をした金額に限り、しかも、圧縮限度額の範囲内で、所得の金額の計算上、損金の額に算入することを認めているものであるところ、請求人は、損金経理により帳簿価額を減額する方法により建物のみを圧縮経理しており、建物附属設備については、その経理をしていないことが認められるから、建物附属設備を圧縮限度額の計算の基礎になる代替資産に含めて圧縮限度額を算定することはできない。

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収用等に伴う代替資産の取得の特例の適用に関し、代替資産である賃貸用ビル等の建物は、建物本体と電気、給排水、昇降機等の各設備が一体となってその効用を有する不可分一体のものとみるべきで、一個の代替資産とみるのが相当であるとして、原処分庁の主張を退けた事例

裁決事例集 No.48 - 295頁

 請求人は、ダム建設事業に伴い土地、立木等を譲渡し、その対価補償金をもって賃貸用ビルを取得し、租税特別措置法第64条“収用等に伴い代替資産を取得した場合の特例”第1項等を適用し、ビルを1個の代替資産として圧縮限度額を計算し、申告した。
 原処分庁は、請求人が経理処理上ビルを建物及び付属設備等の複数の資産に区分していることから、個々の代替資産ごとに圧縮限度額を計算すべきである等として更正処分をした。
 しかし、代替資産の範囲に関する原則規定である租税特別措置法施行令第39条第2項は、代替資産として「建物(その付属設備を含む。)又は建物に付属する大蔵省令で定める構築物」と規定していることから、代替資産の区分としては付属設備はすべて「建物」に含まれる資産と解していることが明らかであり、同条第4項についても同様に解すべきである。
 請求人が、経理処理の各段階でビルを複数の資産に区分したことは原処分庁の主張のとおりであるが、これは、減価償却費の額の計算のための区分に過ぎず、代替資産として区分することを自認したということはできない。
 したがって、原処分庁の主張はいずれも採用できず、一方、賃貸用ビル等の建物は、建物本体と電気、給排水、昇降機等の各設備が一体となってその効用を有する不可分一体のものとみるべきであり、これを一個の代替資産とみるのが相当である。

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請求人が主張する参考文献に漁業補償に係る租税特別措置法第65条の2所定の特別控除の記載がなかったこと、申告時期までに証明書が請求人に届かなかったことは、同条第5項に規定する「やむを得ない事情」に該当しないとした事例

裁決事例集 No.65 - 511頁

 請求人は、租税特別措置法第65条の2に規定する所得の特別控除(以下「本件特別控除」という。)の適用ができる漁業補償金について、[1]請求人の関与税理士が参考とした文献に本件特別控除の記載がなかったこと、[2]申告期限までにその適用を受けるための証明書が届かなかったことから、その適用をせずに確定申告を行ったものであり、これらの事情は同条第5項に規定する「やむを得ない事情」に該当する旨主張する。
 しかしながら、同条第5項に規定する「やむを得ない事情」とは、自然災害、人為的災害、交通途絶等の客観的に見て本人の責めに帰すことのできない事情をいい、個人的な事情はこれに該当しないと解されているところ、本件特別控除の申告記載などのない本件確定申告書を提出したのは、要するに、関与税理士が確認した文献に漁業補償に関する本件特別控除が記載されていなかったことをもって、漁業補償には本件特別控除の適用がないと軽信したことによるのであるから、このことは単に個人的な事情に過ぎず、また、請求人は、申告期限までに本件特別控除の適用を受けるための証明書の発行を請求すれば取得できる状態にあったものであり、それをしなかったのは請求人の責めに帰すべき事情である。
 したがって、「やむを得ない事情」はないとして、本件特別控除の適用を認めなかった原処分は適法である。

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収用等がされる土地の上に存しない建物に係る移転補償金は、収用換地等の場合の所得の特別控除の特例の適用対象となる補償金には該当しないとした事例

裁決事例集 No.77 - 369頁

 請求人は、請求人の所有する建物及び固定給油設備等(以下「本件建物等」という。)は請求人が営むガソリンスタンドの敷地と一体として使用していたものであり、租税特別措置法(以下「措置法」という。)第64条第2項第2号に規定する「その土地の上にある資産」として取り扱われるべきであるから、土地収用法に定める事業である道路拡幅工事(以下「本件事業」という。)に基因して取得した本件建物等の移転等補償金(以下「本件物件移転等補償金」という。)は、本件特例の対象となる旨主張する。
 しかしながら、土地収用法等の規定によって強制的に収用等をされる資産は、原則としてその資産を収用することができる公共事業の用に直接供されるものに限られるところ、本件特例が、収用等をされる土地の上にある資産の取壊し又は除去が土地の収用等と同じ性格のものであり、収用等に準じて課税の特例を認めることが相当であるとの趣旨から、資産の取壊し又は除去であっても、同号に規定する土地の上にある資産について収用等による譲渡があったものとみなし、土地の収用等の場合と同様の課税の特例を認めることとしていることからすれば、同号に規定する「その土地の上にある資産」とは正に収用されることとなる土地自体の上にある資産をいうものと解するのが相当であり、このことは文理上も明らかである。また、租税特別措置法関係通達64(2)−8及び64(2)−9は、公共事業施行者の補償の仕方いかんにより課税上の差異が生じることのないよう措置法第64条第2項第2号の規定との課税の公平を図る趣旨から定められたものであることからすると、同通達64(2)−8に定める「当該土地等の上にある建物又は構築物」も、同通達64(2)−9の対象となる「機械又は装置」も、ともに措置法第64条第2項第2号に規定する「その土地の上にある資産」と同様、収用されることとなる土地自体の上にある物件をいうものと解するのが相当である。そうすると、本件物件移転等補償金は、本件事業用地の地域外に存する資産の移転に要する費用等を補償したものであり、収用されることとなる土地の上の資産について補償したものではないから、本件特例の対象となる補償金に該当しないことは明らかであり、請求人の主張には理由がない。

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請求人が建物補償金などの名義で取得した金員の一部について、収用等の場合の課税の特例を適用することはできないとした事例(平22.4.1〜平23.3.31までの事業年度の法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・棄却・平成26年6月3日裁決)

平成26年6月3日裁決

《要旨》
 請求人は、請求人の建物の敷地として賃借していた土地の一部(本件土地)の公共用地の買取りに伴い起業者(本件起業者)から取得した補償金(本件建物補償金)について、@租税特別措置法関係通達(措置法通達)64(2)−3《対価補償金等の判定》の定めにより本件起業者の判断が尊重されるところ、本件起業者が請求人に交付した「公共事業用資産の買取り等の証明書」に「買取」と記載されていること、また、A本件建物補償金の算定根拠となった建物の庇部分を取り壊していることからすると64(2)−8《ひき(曳)家補償等の名義で交付を受ける補償金》の各定めに該当又は類似し、本件建物補償金の全額が、租税特別措置法第65条の2《収用換地等の場合の所得の特別控除》第1項の規定による所得の特別控除の特例(本件特例)の対象となる補償金に該当する旨主張する。
 しかしながら、@措置法通達64(2)−3は、交付の目的が明らかでない補償金について、対価補償金、収益補償金、経費補償金、移転補償金又はその他対価補償金たる実質を有しない補償金のいずれに該当するかの判定が困難な場合に、課税上弊害がない限り、起業者が証明するところによる旨定めているのであって、請求人は、本件起業者から本件建物補償金の算定資料の交付を受けており、本件建物補償金については、その算定の内訳等が明らかであり、いずれの補償金に該当するかが判断できる。また、A請求人が本件起業者から交付を受けた本件建物補償金の算定資料によれば、本件建物補償金のうち、本件土地の買取りによって減少する展示場及び駐車場の代替として本件土地の外に立体駐車場を設置する費用の補償及び当該立体駐車場を設置する際に支障となる建物の移転に要する費用の補償の各金額は、いずれも本件土地の上に存する資産に係るものではないから、措置法通達64(2)−8の定めに該当しない。

《参照条文等》
 租税特別措置法第65条の2
 租税特別措置法関係通達64(2)−3、64(2)−8

《参考判決・裁決》
平成21年5月25日裁決(裁決事例集77)
福井地裁平成15年12月3日判決(税資253号順号9482)

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