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法人税法の特例

新規取得土地等に係る負債の利子の課税の特例

  1. 特定設備等の特別償却
  2. 中小企業者の機械等の特別償却
  3. 新築貸家住宅等の割増償却
  4. 交際費等の課税の特例
  5. 使途秘匿金の支出がある場合の課税の特例
  6. 土地の譲渡等がある場合の特別税率
  7. 収用等の場合の課税の特例
  8. 特定資産の買換えの場合等の課税の特例
  9. 準備金
  10. 税額控除
  11. 新規取得土地等に係る負債の利子の課税の特例(4件)
  12. 移転価格税制
  13. タックスヘイブン対策税制

負債利子損金不算入期間の適用上、長期間にわたって使用される建物又は構築物と一体的に事業の用に供される施設は、現に事業の用に供されていなければならないとした事例

裁決事例集 No.51 - 407頁

  1.  請求人は、新規取得土地等に係る負債の利子の課税の特例制度の趣旨は、法人企業本来の正常な営業活動を逸脱するような土地売買を抑制することにあり、本件土地は正常な営業活動として取得したもので、仮需要によるものではないから、適用除外になると主張するが、法律上の規定は、税負担回避目的等で取得したものでないことが客観的に明らかな場合等を類型化し、適用除外になる場合を個々に定めているから、その規定に該当しない限り、適用除外にはならない。
  2.  請求人は、負債利子損金不算入期間の適用上、「長期間にわたって使用される建物又は構築物と一体的に事業の用に供される施設の用に供される土地等」は、将来その用に供する目的であれば、現にその用に供されていなくてもよいと主張するが、建物又は構築物の直接的な敷地でさえ事業の用に供されていることが要件とされていることからすれば、それらと一体的に使用される土地等について条件が緩和されているとは解されないから、現にその用に供されていることが必要である。

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請求人は、区分所有建物であるマンションは一戸でも譲渡すれば、これに係る新規取得土地等に係る負債利子の損金不算入額の全額を損金に算入すべき旨主張するが、1棟の建物のうちの一部の区分所有物が譲渡されたというだけで、その敷地全体が譲渡されたと同じに扱うことはできないとした事例

裁決事例集 No.54 - 323頁

  1.  請求人は、[1]租税特別措置法第62条の2の規定の立法趣旨は、租税負担回避の防止、地価の高騰を抑制することにあるが、当該土地は、新築マンションを販売する目的で取得したのであるから租税負担回避目的の土地取得でないこと、また、地価が下落しており地価が高騰するおそれはない、[2]同法の規定の適用を受ける企業と受けない企業とで租税負担が不公平となるから同法の規定の適用はなく、累積損金不算入負債利子の全額を損金に算入すべきである旨主張する。
     しかしながら、同法は[1]新たな資金コストが生じないと認められるもの、[2]取得が節税又は投機目的ではないと認められるものを限定的に列挙し、新規取得土地等から除外しているところ、当該土地は除外される土地等に該当せず、請求人が主張する取得目的等の事情によって同法を適用しない規定も存しないから、当該土地は新規取得土地等に該当する。
  2.  請求人は、区分所有建物であるマンションの1戸でも譲渡すれば、[1]購入者は当該マンションの敷地全体を利用できること、[2]敷地の不動産登記がなされれば土地の所有権移転はできないことなどから、新規取得土地等の一部を譲渡しても全部を譲渡したことと同様に累積負債利子額を譲渡面積で按分して損金の額を計算するのではなく、全額を損金の額に算入すべきである旨主張する。
     しかしながら、一部の区分所有建物の所有者が敷地全体を利用できるとしても、1棟の建物のうちの一部の区分所有物が譲渡された場合に譲渡される敷地利用権は一部にとどまり、敷地全体が譲渡されたものとは異なるから、租税特別措置法第62条の2の規定の適用において、新規取得土地等を敷地とする1棟の建物のうち、一部の区分所有建物が譲渡されたというだけでその敷地全体が譲渡されたものと同じに扱うことはできない。

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請求人が取得した新規取得土地等の基準取得価額は、本件土地と造成工事とは一体として取引されたものであるから、本件土地と造成工事代金との合計額であり、また、本件土地の取得日は、造成工事が完了し宅地に地目変更された日であると認められるから、負債利子損金不算入期間の起算日は当該日の翌日であるとした事例

裁決事例集 No.55 - 391頁

 請求人は、本件土地を取得し、その後、当該土地の造成工事を別の業者に依頼したものであるから、租税特別措置法第62条の2第3項第3号に規定する新規取得土地等の基準取得価額は、土地の代金のみである旨主張するが、[1]当該土地の譲渡法人及び造成業者等との契約内容等から判断すると、当該土地の開発・造成工事等の内容は、当該土地の売買契約時に既に具体化していたこと及び[2]本件土地代金を支払うとともに造成工事代金を造成工事を施工する前に支払ったのは、譲渡法人の事情及び譲渡法人からの指示により行われたことなどから、当該土地と造成工事とは一体として取引されたものと認められるため、基準取得価額は土地代金と造成工事代金との合計額である。
 また、請求人及び原処分庁は、本件土地は平成4年3月31日受付で同日の売買を原因として所有権移転登記を経由していることなどから、同日を新規取得土地等の取得日とし、平成4年4月1日から平成5年3月31日までの事業年度について負債利子の損金不算入期間を平成4年4月1日から平成5年3月31日までの12月としているが、新規取得土地等を取得した日とは、当該土地等の引渡しを受けた日であると解されているところ、上記[1]及び[2]の事実並びに造成工事期間は、開発行為の許可を受けた平成4年8月27日から検査を受けた同年12月21日までの期間と認められること及び同年12月21日に宅地に地目変更されていることなどから、請求人は造成工事が完了し宅地に地目変更された平成4年12月21日に本件土地の引渡しを受けたものと認められるため、負債利子の損金不算入期間は、平成4年12月22日から平成5年3月31日までの3月となり、原処分はその全部を取り消すべきである。

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本件土地の取得価額とともに借入金の利子を建設仮勘定に計上しており、新規取得土地等に係る負債の利子の課税の特例の適用上損金不算入金額はないことから、以後の事業年度における累積損金不算入額もないとした事例

裁決事例集 No.60 - 469頁

 請求人は、本件各事業年度において本件土地の取得価額とともに本件建設仮勘定等に含めて計上していた本件借入金利子の額を、措置法第62条の2(本件特例)を適用して、その後の事業年度である本件事業年度の損金の額に算入すべき旨主張する。
 しかしながら、本件特例による累積損金不算入額の適用に当たっては、本件各事業年度及び本件事業年度の確定申告書に本件特例の適用に関する明細書の添付が必要であるところ、請求人の確定申告書にはその明細書の添付がなく、また、その添付がないことについてやむを得ない事情も認められない。
 さらに、本件土地は本件特例の対象となる新規取得土地等に該当するのであるが、本件各事業年度において、本件借入金利子の額は損金の額に算入されないで本件建設仮勘定等の資産勘定に計上されていることから、本件各事業年度における本件特例による負債利子の損金不算入額を計算すると、いずれの事業年度においても損金不算入額は算出されず、累積損金不算入額も零円となることから、本件事業年度において本件特例により損金の額に算入される累積損金不算入額もないことになる。
 したがって、本件建設仮勘定等に計上していた本件借入金利子の額について、本件事業年度において本件特例を適用して損金の額に算入することはできない。

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