平成21事務年度国税庁が達成すべき目標に対する実績の評価書(抜粋)
業績目標1-2-5
納税者の正当な権利利益の救済を図るため、不服申立て等に適正・迅速に対応します。
1. 業績目標に関する基本的考え方
国税における不服申立制度は、簡易・迅速な手続により納税者の皆様の正当な権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とするものであり、税務行政の適正な執行を担保する上で重要な役割を果たしています。納税者の皆様の理解と信頼を得るよう、不服申立ての適正かつ迅速な処理を目指すとともに、より利用しやすい環境の整備に努めます。
なお、不服申立制度の趣旨について、引き続き、担当者に対する研修等や会議の場における周知に努めることにより、公正な立場で充実した調査・審理を行い、事案の適正・迅速な処理に努めます。
2. 平成21事務年度の事務運営の報告
(1)不服申立ての適正・迅速な処理
税務署長等が行った国税の更正・決定などの課税処分、差押えなどの滞納処分等があったときに、その処分に不服のある納税者の方は、その処分の取消しや変更を求めてこれらの処分を行った行政庁(税務署長、国税局長(国税事務所長)又は国税庁長官)に対して「異議申立て」をすることができます。また、その異議申立てに対する行政庁(国税庁長官を除きます。)の決定を経た後の処分になお不服があるときは、国税不服審判所長に対して「審査請求」をすることができます。
イ 異議申立て
(省略)
ロ 審査請求
〔平成21事務年度実施計画〕
国税不服審判所は、審査請求人と処分を行った行政庁(税務署長や国税局長など)の双方から事実関係や主張を聞き、どのようなことが争点となっているのかを主な審理事項とし、必要があれば自ら調査を行って、公正な第三者的立場で審理した上で裁決を行います。
国税不服審判所では、手続の公正さや審査請求人が求める迅速さなどを総合勘案して、全処理件数のうち1年以内に処理した件数の割合を一つの目安として事件処理の適正さに配慮しつつ迅速な処理に努めます。
さらに、近年の経済取引の国際化・広域化・複雑化等を背景として、租税回避スキームや移転価格税制等に係る国際事件などの高度な専門性や技術性を必要とする事件も発生しており、これらの事件を適正に処理するために必要となる調査・審理の充実にも十分配慮しつつ、早期・的確な争点整理等のこれまでの取組に加え、個別の事件の実態に即したきめ細かな進行管理を行うとともに、計画的な事件処理を図ることにより、迅速さの向上に努めます。
〔施策の実施状況〕
国税不服審判所における審査請求の処理に当たっては、適正さを担保するために、審査請求人と処分を行った税務署長などの双方の主張を十分に聴いた上で公平に審理するなど、慎重を期することはもちろんのことですが、迅速に納税者の皆様の正当な権利利益の救済を図ることも制度の目的の一つであることから、原則1年以内に裁決するよう努めました。
このため、国税不服審判所では審査請求の1年以内の処理件数割合を業績指標とし、本事務年度においては、これまでの実績を踏まえ90%(平成20事務年度は85%以上)を目標値として取り組みました。
平成21年度においては、争点整理表を活用した早期・的確な争点整理に努めるなどにより、前年度から繰り越された2,166件と新たに発生した3,243件(前年2,835件)のうち、2,583件(前年2,812件)を処理しました。そのうち2,381件(前年2,604件)が発生から1年以内に処理したものであったことから、審査請求の1年以内処理件数割合は92.2%となり、目標値を達成することができました。
なお、経済取引の国際化・広域化・複雑化等を背景とする事件などは、関連する者が多数にのぼることから事実関係がふくそうしたり、審査請求の理由の追加的主張が再三にわたって提出されるなど、争点整理に長時間を要して裁決までに1年を超える場合がありますが、審査請求手続上の諸権利を尊重し審査請求人等が十分にその主張を尽くすことができるように配慮しつつ、早期・的確な争点整理や適切な進行管理を行うなどにより、適正かつ迅速な事件処理に努めました。
会計年度 | 平成17年度 | 18年度 | 19年度 | 20年度 | 21年度 | |
---|---|---|---|---|---|---|
期首繰越件数 | 2,439 | 2,235 | 1,794 | 2,143 | 2,166 | |
発生件数 | 2,961 | 2,504 | 2,753 | 2,835 | 3,243 | |
処理件数 | 3,165 | 2,945 | 2,404 | 2,812 | 2,583 | |
請求認容件数 | 470 | 361 | 304 | 415 | 384 | |
請求認容割合 | 14.8 | 12.3 | 12.6 | 14.8 | 14.9 | |
期末繰越件数 | 2,235 | 1,794 | 2,143 | 2,166 | 2,826 |
(出所)国税不服審判所調
(注)「請求認容件数」は、「処理件数」のうち審査請求人の主張が何らかの形で受け入れられたものの件数です。
会計年度 | 平成17年度 | 18年度 | 19年度 | 20年度 | 21年度 | |
---|---|---|---|---|---|---|
目標値 | 実績値 | |||||
処理件数割合 | 84.5 | 85.6 | 89.0 | 92.6 | 90 | 92.2 |
(出所)国税不服審判所調
(2)裁決事例の公表の拡充
〔平成21事務年度実施計画〕
国税不服審判所においては、納税者の皆様の適正な申告と納税のために有用であると考えられる事例や適正な賦課・徴収の実現に資すると考えられる事例を審査請求人等の秘密保持に十分配慮しながら「裁決事例集」(冊子)として作成するとともに、国税不服審判所ホームページ(https://www.kfs.go.jp)においても掲載し、公表しています。
平成21事務年度においても、引き続き、裁決事例集を作成し、ホームページに掲載して公表するとともに、現在ホームページ未掲載となっている平成5年以前分の裁決事例集について、順次ホームページへ掲載して公表の拡充に努めます。
〔施策の実施状況〕
平成21事務年度においては、平成21年12月に、同年1月から6月までにされた裁決の中から37事例を「裁決事例集77」(冊子)として公表し、平成22年6月には、平成21年7月から12月までにされた裁決の中から33事例を「裁決事例集78」として公表しました。これらの裁決事例集は、国公立図書館等に配付するとともに、国税不服審判所のホームページ(http:// www.kfs.go.jp)においても掲載しました。
また、ホームページでは、これまで未掲載であった平成5年分の裁決事例の掲載に取り組み、新たに44事例を掲載し、公表の拡充を行いました。その結果、ホームページにおいては、平成5年から21年までにされた裁決の中から1,147事例を掲載しています。
会計年度 | 平成17年度 | 18年度 | 19年度 | 20年度 | 21年度 |
---|---|---|---|---|---|
アクセス件数 | 954 | 1,039 | 1,171 | 904 | 1,159 |
(出所)国税不服審判所調
(注)国税不服審判所ホームページには、公表された裁決事例のほか、裁決要旨(平成8年7月以降のもので事例集に掲載されていないものを含む。)、国税不服審判所の概要、国税に関する不服申立制度などを掲載しています。
3. 平成20事務年度実績の評価結果の平成21事務年度施策等への反映状況
(1)不服申立ての適正・迅速な処理
イ 異議申立て
(省略)
ロ 審査請求
審査請求事件の処理に当たっては、すべての事件について早期・的確な争点整理や適切な進行管理を行うなどにより、適正かつ迅速な事件処理に努めました。
(2)裁決事例の公表の拡充
国税不服審判所の裁決結果のうち、納税者の皆様の適正な申告と納税のため有用であると考えられる事例について、審査請求人等の秘密保持に十分配慮しながら、早期公表を図るとともに、ホームページに未掲載となっていた事例を新たに掲載するなどに努めました。
4. 目標を巡る現状・外部要因等の動向
目標を巡る現状・外部要因等の動向については、「2.平成21事務年度の事務運営の報告」において、業績指標・参考指標と併せて記述しています。
なお、国税に関する法律に基づく処分についての納税者の救済制度には、処分庁及び国税不服審判所に対する「異議申立て」及び「審査請求」のほかに、裁判所に対して訴訟を提起して処分の是正を求める司法上の救済制度がありますが、訴訟の状況については、次のとおりとなっています。
会計年度 | 平成17年度 | 18年度 | 19年度 | 20年度 | 21年度 | |
---|---|---|---|---|---|---|
期首係属件数 | 608 | 443 | 397 | 355 | 354 | |
発生件数 | 394 | 401 | 345 | 355 | 339 | |
終結件数 | 559 | 447 | 387 | 356 | 320 | |
原告勝訴件数 | 52 | 80 | 55 | 38 | 16 | |
原告勝訴割合 | 9.3 | 17.9 | 14.2 | 10.7 | 5.0 | |
期末係属件数 | 443 | 397 | 355 | 354 | 373 |
(出所)課税部審理室、徴収部徴収課、国税不服審判所調
(注)「原告勝訴件数」は、「終結件数」のうち原告(納税者)の主張が何らかの形で受け入れられたものの件数です。
5. 今後の施策等に反映すべき事項
(1)今後の方針
イ 不服申立ての適正・迅速な処理
引き続き推進
ロ 裁決事例の公表の拡充
引き続き推進
(2)施策への反映に向けた提言
イ 不服申立ての適正・迅速な処理
異議申立て及び審査請求が、簡易・迅速な手続により納税者の皆様の正当な権利利益の救済を図るという趣旨を踏まえ、引き続き、担当者に対する研修や会議等の場において、早期処理の促進についてその周知に努めるとともに、公正・中立な立場で充実した調査・審理を行い、事案の適正かつ迅速な処理に努めます。
(イ) 異議申立て
(省略)
(ロ) 審査請求
国税不服審判所は、近年の経済取引のグローバル化・IT化などを背景として高度な専門性や技術性を必要とする事件も発生する中、これらの事件を適正に処理するために必要となる調査・審理の充実にも十分配慮しつつ、早期・的確な争点整理等のこれまでの取組に加え、個別の事件の実態に即したきめ細かな進行管理を行うとともに、計画的な事件処理を図ることにより、迅速な処理に努めます。
ロ 裁決事例の公表の拡充
平成21事務年度に引き続いて、裁決事例集を作成し、ホームページに掲載するとともに、ホームページに未掲載となっている平成4年以前分の裁決事例集についても、納税者の皆様の適正な申告と納税のために有用であると考えられる事例を掲載することとし、公表の拡充に努めます。
(3)平成23年度予算要求等への反映
納税者の皆様の正当な権利利益の救済を図るため、不服申立て等に適正・迅速に対応するために必要な経費の確保に努めます。