(平成27年7月1日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、○○の生産販売業を営む審査請求人(以下「請求人」という。)が、請求人の役員名義の預金口座に振り込まれた金員に売上計上漏れがあったとして提出した法人税等の修正申告書について、原処分庁が、重加算税の賦課決定処分等を行ったのに対し、請求人が、当該修正申告書の提出は、国税通則法(以下「通則法」という。)第65条《過少申告加算税》第5項に規定する「その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当するなどとして、原処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 法人税について

(イ) 確定申告
 請求人は、平成18年6月1日から平成19年5月31日までの事業年度(以下「平成19年5月期」といい、他の事業年度についても同様に表記する。)、平成20年5月期、平成21年5月期、平成22年5月期、平成23年5月期、平成24年5月期及び平成25年5月期(以下、これらの事業年度を併せて「本件各事業年度」という。)の法人税について、青色の確定申告書に別表1の「確定申告」欄のとおり記載して、いずれも法定申告期限までに申告した。

(ロ) 修正申告
 請求人は、平成25年12月12日に、平成21年5月期ないし平成25年5月期の法人税について、別表1の「修正申告」欄のとおりとする各修正申告書(以下「本件法人税各修正申告書」という。)を郵送により原処分庁に提出した。

(ハ) 処分
 原処分庁は、平成26年5月28日付で、本件各事業年度について、次の各処分をした。

A 別表1の「賦課決定処分」欄記載のとおりの重加算税の各賦課決定処分及び平成23年5月期の「更正処分等」欄記載のとおりの重加算税の賦課決定処分(以下「本件法人税各賦課決定処分」という。)

B 別表1の「更正処分等」欄記載のとおりの各更正処分

(ニ) 審査請求
 請求人は、平成26年7月25日に、上記(ハ)のBの各更正処分のうち、平成24年5月期を除く各更正処分(以下「本件法人税各更正処分」という。)及び本件法人税各賦課決定処分について審査請求をした。

ロ 消費税及び地方消費税について

(イ) 確定申告
 請求人は、平成19年3月1日から平成19年5月31日までの課税期間(以下「平成19年5月課税期間」といい、他の課税期間についても同様に表記する。)、平成19年8月課税期間、平成19年11月課税期間、平成20年2月課税期間、平成20年5月課税期間、平成20年8月課税期間、平成20年11月課税期間、平成21年2月課税期間、平成21年5月課税期間、平成21年8月課税期間、平成21年11月課税期間、平成22年2月課税期間、平成22年5月課税期間、平成22年8月課税期間、平成22年11月課税期間、平成23年2月課税期間、平成23年5月課税期間、平成23年8月課税期間、平成23年11月課税期間、平成24年2月課税期間、平成24年5月課税期間、平成24年8月課税期間、平成24年11月課税期間及び平成25年2月課税期間(以下、これらの課税期間を併せて「本件各課税期間」という。)の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)について、別表2の「確定申告」欄のとおり記載して、いずれも法定申告期限までに申告した。

(ロ) 修正申告
 請求人は、平成25年12月12日に、平成22年8月課税期間ないし平成25年2月課税期間の消費税等について、別表2の「修正申告」欄のとおりとする各修正申告書(以下「本件消費税等各修正申告書」といい、「本件法人税各修正申告書」と併せて「本件各修正申告書」という。)を郵送により原処分庁に提出した。

(ハ) 処分
 原処分庁は、平成26年5月28日付で、本件各課税期間について、別表2の「更正処分等」欄記載のとおりの各更正処分(以下「本件消費税等各更正処分」といい、「本件法人税各更正処分」と併せて「本件各更正処分」という。)及び重加算税の各賦課決定処分(以下「本件消費税等各賦課決定処分」という。)をした。

(ニ) 異議申立て等
 請求人は、上記(ハ)の各処分を不服として平成26年7月25日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は同年10月24日付で棄却の異議決定をした。

(ホ) 審査請求
 請求人は、上記(ニ)の異議決定を経た後の処分に不服があるとして、平成26年11月14日に審査請求をした。

ハ 源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税について

(イ) 処分
 原処分庁は、源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税(以下「源泉所得税等」という。)について、平成26年5月28日付で、別表3の「納税告知処分(源泉所得税等の額)」欄記載のとおりの源泉所得税等の各納税告知処分(以下「本件各納税告知処分」という。)並びに「不納付加算税の額」欄及び「重加算税の額」欄記載のとおりの不納付加算税及び重加算税の各賦課決定処分(以下「本件源泉所得税等各賦課決定処分」という。)をした。

(ロ) 異議申立て等
 請求人は、上記(イ)の各処分を不服として平成26年7月28日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は同年10月24日付で棄却の異議決定をした。

(ハ) 審査請求
 請求人は、上記(ロ)の異議決定を経た後の処分に不服があるとして、平成26年11月14日に審査請求をした。

ニ 併合審理
 上記ロの(ホ)の消費税等に係る審査請求及び上記ハの(ハ)の源泉所得税等に係る審査請求は、通則法第104条《併合審理等》第1項の規定に基づき、上記イの(ニ)の法人税に係る審査請求と併合審理する。

(3) 関係法令の要旨

イ 通則法第65条第1項は、期限内申告書が提出された場合において、修正申告書の提出又は更正があったときは、当該納税者に対し、その修正申告又は更正に基づき納付すべき税額に100分の10の割合を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する旨規定し、同条第5項は、同条第1項の規定は、修正申告書の提出があった場合において、その提出が、その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないときは、適用しない旨規定している。

ロ 通則法第68条《重加算税》第1項は、同法第65条第1項の規定に該当する場合(同条第5項の規定の適用がある場合を除く。)において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に100分の35の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する旨規定している。

ハ 通則法第68条第3項は、同法第67条《不納付加算税》第1項の規定に該当する場合において、納税者が事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づきその国税をその法定納期限までに納付しなかったときは、税務署長は、当該納税者から、不納付加算税の額の計算の基礎となるべき税額に係る不納付加算税に代え、当該基礎となるべき税額に100分の35の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を徴収する旨規定している。

ニ 通則法第70条《国税の更正、決定等の期間制限》第4項は、偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れた国税についての更正決定等は、その更正又は決定に係る国税の法定申告期限から7年を経過する日まで、することができる旨規定している。

ホ 通則法第73条《時効の中断及び停止》第3項は、国税の徴収権で、偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れた国税に係るものの時効は、当該国税の法定納期限から2年間は、進行しない旨規定している。

ヘ 所得税法第28条《給与所得》第1項は、給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る所得をいうと規定している。

(4) 基礎事実

以下の事実は、請求人と原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。

イ 請求人は、農産物の生産及び販売を目的として平成12年8月○日に設立された法人であり、設立日以後、取締役に就任しているE、G及びH(以下、順次、「E取締役」、「G取締役」及び「H取締役」といい、これらを併せて「本件役員ら」という。)が、請求人の株式の○分の○ずつを所有している。
 そして、本件役員らは、請求人が建設した○棟のハウスをそれぞれ○棟ずつ管理して、○○の生産、選別及び出荷を行っている。

ロ 請求人は、平成13年5月期以後、法人税の青色申告の承認を受けている。

ハ 原処分庁は、請求人が、本件役員ら名義の各預金口座に振り込まれた○○の販売代金(以下「本件各金員」という。)を請求人の売上げとして計上しなかったことにつき、請求人に、偽りその他不正の行為があり、また、本件各金員は、本件役員らに対する給与に該当するとして、本件各更正処分及び本件各納税告知処分を行い、更に、売上計上漏れには、隠ぺい又は仮装の行為があるとして、本件法人税各賦課決定処分、本件消費税等各賦課決定処分及び本件源泉所得税等各賦課決定処分を行った。

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2 争点

(1) 本件各修正申告書の提出は、通則法第65条第5項に規定する「その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当するか否か。(争点1)

(2) 本件各金員は、本件役員らに対する給与に該当するか否か。(争点2)

(3) 請求人に、通則法第68条第1項及び第3項に規定する「隠ぺい又は仮装」並びに同法第70条第4項及び同法第73条第3項に規定する「偽りその他不正の行為」に該当する事実があったか否か。(争点3)

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3 主張

(1) 争点1(本件各修正申告書の提出は、通則法第65条第5項に規定する「その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当するか否か。)について

請求人 原処分庁
 請求人は、次の経緯で本件各修正申告書を提出した。  請求人は、次の経緯で本件各修正申告書を提出した。
イ 原処分庁所属の調査担当職員(以下「調査担当職員」という。)は、平成25年10月1日及び同月2日の調査において、また、同月17日の調査の事前連絡においても何ら問題点の指摘をしなかった。 イ 調査担当職員は、平成25年10月2日に本件関与税理士の使用人であるK事務員(以下「本件事務員」という。)に対し、請求人が取引をしている金融機関の調査を行う旨告知した。
ロ 平成25年10月2日、調査担当職員は「農協に寄って帰る。」旨、あいさつ程度の発言をして請求人の事務所を後にしており、2日間の調査においても指摘事項などが全くなかったので、請求人は、調査は終了し、申告是認の通知が送られてくると思っていた。そのため、請求人は、原処分庁が金融機関の調査を行うとは全く予想していなかった。 ロ 調査担当職員は、平成25年10月2日、同月8日、同月30日、同月31日及び同年11月8日における金融機関の調査並びに本件役員ら名義の各預金口座へ振込みを行った者等に対する調査の結果、請求人の法人税の確定申告書に添付された預貯金等の内訳書に記載のない本件役員ら名義の各預金口座に、請求人の売上げに係る対価が振り込まれていることを把握した。
ハ 調査担当職員からは、7期分の総勘定元帳を準備する理由についての説明はなく、単に根拠条文を棒読みされただけであった。 ハ 上記ロのことから、調査担当職員は、平成25年10月17日に本件事務員に対し、次回の実地の調査の日を同年11月14日と連絡し、併せて平成19年5月期以降の総勘定元帳を準備するよう依頼し、通則法第70条第4項に基づくものである旨説明した。それに対し、本件関与税理士は、請求人の不正計算を想定して7期分の総勘定元帳を見るのかと問いただした。
ニ 調査担当職員から何ら問題点の指摘がない状況において、請求人の税務代理人であるJ税理士(以下「本件関与税理士」という。)が自主的に本件役員らから話を聞いたところ、○○の話が出て申告漏れが判明したため、請求人は、平成25年11月7日に「個人通帳入金額」と題した書面等により修正事項を原処分庁に報告した。その際、調査担当職員からは、何の指摘もなかった。 ニ 上記ハの応答を受け、本件関与税理士は、平成25年11月7日に、平成21年5月期ないし平成25年5月期の期間に本件役員ら名義の各預金口座に振り込まれた金員を集計した「個人通帳入金額」と題した書面等を調査担当職員に提出したが、調査担当職員は、依頼している総勘定元帳に対応する事業年度でないことから、平成19年5月期まで遡及する旨説明した。また、上記ハの応答の後、本件役員らは、調査担当職員に対し、本件各金員が請求人の売上げに計上されていないことを申述した。
ホ 請求人は、上記ニのとおり、自ら把握した売上計上漏れについて原処分庁に報告した上で、平成25年11月14日に、請求人が同月7日に作成した修正申告書を提出したい旨、調査担当職員に連絡をしたが、調査担当職員から提出は待ってほしい旨指示を受けたため、修正申告書の郵送が同年12月12日になってしまった。 ホ 調査担当職員は、平成25年12月12日に請求人の事務所を訪れ、原処分庁が作成した集計表を提示して本件各金員が請求人の確定申告の売上げに計上されていない旨指摘し、その後、請求人は、本件各修正申告書を提出した。
 このように、請求人は、調査担当職員からの指摘を受けることなく請求人独自の調査により売上げの申告漏れを把握した上で、本件各修正申告書を提出したのである。
 したがって、本件各修正申告書の提出は、通則法第65条第5項に規定する「更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当する。
 仮に、本件各修正申告書の提出が、「更正を予知してされたものでないとき」に該当しないとしても、争点3で述べるとおり、本件各修正申告書に係る売上計上漏れは、本件役員らが廃棄処分予定の○○を販売していたものであり、本件役員らに、○○の販売代金が請求人の売上げになるという認識がなかったことに基因して生じたものであるから、請求人に通則法第68条第1項に規定する隠ぺい又は仮装の事実はない。
 以上のことから、調査担当職員は、金融機関調査の段階において、請求人の申告が不適正であることの端緒となる本件各金員を把握しており、請求人は、一連の調査の過程において、本件各金員に係る修正申告をしなければ、当然、更正に至るであろうことを認識した上で修正申告書の提出を決意し、本件各修正申告書を提出したものと認められる。
 したがって、本件各修正申告書の提出は、通則法第65条第5項に規定する「更正があるべきことを予知してされたものでないとき」には該当しない。

(2) 争点2(本件各金員は、本件役員らに対する給与に該当するか否か。)について

原処分庁 請求人
 所得税法第28条第1項に規定する給与所得とは、雇用契約又はこれに類する関係において、非独立的労働ないし従属的労働の対価として他人から受ける報酬及び実質的にこれに準ずる給付に係る所得であると解することが相当であり、その判断に当たっては、給与支給者との関係において何らかの空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務の提供があり、その対価として支給されるものであるかどうかを重視すべきものと解されている。そして、法人の役員は当該法人と委任関係にあり、法人に従属し、委任事務処理に関し善管注意義務を負っているものであることから、法人の役員に対し一定の利益が当該法人から支給され、担税力を増加させたとみられる場合には、その支給が役員の立場を離れて全く無関係になされるなどの特段の事情がない限り、当該法人の役員としての地位や仕事に対する見返りであり、空間的・時間的拘束、継続的ないし断続的な労務の対価とみることが相当である。
 そうすると、本件役員らが、請求人の売上げに係る対価である本件各金員を私的用途等に支出していたことは、請求人から、本件役員らに対し一定の利益が支給され、本件役員らの担税力を増加させたとみるのが相当であり、また、本件役員ら名義の各預金口座への振込みは本件役員らの立場を離れて全く無関係になされたものであるなどの特段の事情があるとは認められない。
 したがって、本件各金員は、給与に該当する。
 本件役員ら名義の各預金口座に振り込まれた本件各金員は、本件役員らが廃棄処分予定の○○を販売していたものであり、本件役員らには、○○の販売代金が請求人の売上げになるという認識がなかった。また、請求人は、○○販売の事実が判明した際に本件関与税理士の事務所において株主総会を開き、本件役員らの○○の売上げは、請求人へ返金する旨決議した。このことからすると、本件各金員は、請求人の意思決定の下に本件役員らへ支給されたとはいえない。
 したがって、本件各金員は、給与に該当しない。

(3) 争点3(請求人に、通則法第68条第1項及び第3項に規定する「隠ぺい又は仮装」並びに同法第70条第4項及び同法第73条第3項に規定する「偽りその他不正の行為」に該当する事実があったか否か。)について

原処分庁 請求人
イ 本件法人税各賦課決定処分及び本件消費税等各賦課決定処分
 本件各金員は、請求人の売上げに係る対価であるにもかかわらず、請求人は、これを本件役員ら名義の各預金口座に振り込ませ、売上げに計上せず、これに基づいて法人税及び消費税等の確定申告書を提出しており、この行為は、通則法第68条第1項に規定する、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、その隠ぺいしたことに基づき納税申告書を提出していたときに該当する。
イ 本件法人税各賦課決定処分及び本件消費税等各賦課決定処分
 請求人の売上計上漏れは、本件役員らに、○○の販売代金が請求人の売上げになるという認識がなかったことに基因して生じたものである。
 よって、請求人の売上計上漏れについて、通則法第68条第1項に規定する隠ぺい又は仮装の行為はない。
ロ 本件源泉所得税等各賦課決定処分
 争点2で述べたとおり、本件役員ら名義の各預金口座に振り込ませた本件各金員は、本件役員らに対する給与に該当するにもかかわらず、請求人は、支給した給与を総勘定元帳に一切記載せず、また、本件各金員を本件役員ら名義の各預金口座に入金させることにより源泉徴収の対象となる給与の支払事実を隠ぺいし、源泉所得税等を法定納期限までに納付していなかった。
 したがって、通則法第68条第3項の事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づきその国税をその法定納期限までに納付しなかったときに該当する。
ロ 本件源泉所得税等各賦課決定処分
 争点2で述べたとおり、本件各金員は、請求人から本件役員らに対して支給された給与に該当しない。
 仮に、本件各金員が本件役員らへの給与に該当するとしても、当該給与は、本件役員らに○○の販売代金が請求人の売上げになるという認識がなかったことに基因して生じたものであるから、請求人に通則法第68条第3項に規定する隠ぺい又は仮装の行為はない。
ハ 本件各更正処分
 上記イの行為は、通則法第70条第4項に規定する偽りその他不正の行為に該当する。
ハ 本件各更正処分
 請求人の売上計上漏れは、本件役員らに○○の販売代金が請求人の売上げになるという認識がなかったことに基因して生じたものである。
 よって、請求人の売上計上漏れは、通則法第70条第4項に規定する偽りその他不正の行為に該当しない。
ニ 本件各納税告知処分
 上記ロの行為は、通則法第73条第3項に規定する偽りその他不正の行為により全部の税額を免れた場合に該当する。
ニ 本件各納税告知処分
 争点2で述べたとおり、本件各金員は、請求人から本件役員らに対して支給された給与に該当しない。
 仮に、本件各金員が本件役員らへの給与に該当するとしても、当該給与は、本件役員らに○○の販売代金が請求人の売上げになるという認識がなかったことに基因して生じたものであるから、請求人に通則法第73条第3項に規定する偽りその他不正の行為に該当する事実はない。

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4 判断

(1) 争点1(本件各修正申告書の提出は、通則法第65条第5項に規定する「その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当するか否か。)について

イ 法令解釈
 通則法第65条第5項の規定は、課税庁において課税標準を調査する等の事務負担等を軽減することができることも勘案して、自発的に修正申告を決意して修正申告書を提出した者に対しては例外的に加算税を賦課しないこととし、もって納税者の自発的な修正申告を歓迎し、これを奨励することを目的とするものであり、かかる趣旨及び同項の文言からすると、修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないことの判断に当たっては、調査の内容及び進捗状況、それに関する納税者の認識、修正申告に至る経緯、修正申告と調査の内容との関連性等の事情を総合考慮して判断すべきである。

ロ 認定事実
 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。

(イ) 平成25年10月1日、調査担当職員は、請求人の事務所において、請求人の法人税、消費税等及び源泉所得税等についての調査(以下「本件調査」という。)を開始し、同月2日、請求人の事務所における当日の調査を終了する際、本件事務員に対し、金融機関調査を行う旨告げた。

(ロ) 平成25年10月2日、調査担当職員は、L農業協同組合及びM信用組合に臨場して本件役員らの個人預金の照会を行い、同月3日、N銀行及びP銀行に対して本件役員らの個人預金について照会文書を発送した。
 そして、平成25年10月8日、L農業協同組合から、その回答として別表4記載の各口座(以下「本件各口座」という。)の「当座性取引履歴明細表」を受け取った。当該「当座性取引履歴明細表」には、振込依頼人名として、「d」、「e」、「f」、「g」、「Q社」、「R社」、「h」、「S社」などが記載されているところ、d、f及びgは、農産物の直売所であり、Q社及びR社は、スーパーマーケットであり、hは、農産物の直売所を有する観光施設である。
 なお、本件各口座は、本件各事業年度に係る貸借対照表の預金勘定に計上されていない。

(ハ) 平成25年10月17日、調査担当職員は、本件事務員に対して、同年11月14日に請求人の事務所に臨場する旨、その際、7期分の総勘定元帳を準備してほしい旨電話により連絡した。
 その後、本件関与税理士は、上記の調査日の調整のため請求人の事務所に電話をし、E取締役に対して「7年間の帳簿を準備するように指示されるからには、何か特別な事情があるのではないか。」と尋ねたところ、同人は、「○○を販売し個人の通帳に入金しているものがある。」旨答えた。

(ニ) 平成25年10月18日、本件関与税理士は、調査担当職員に電話をし、7期分の総勘定元帳を準備するよう指示したことに関して、その理由を尋ねたところ、調査担当職員は、通則法第70条第4項である旨回答した。
 その後、本件関与税理士は、自身の事務所において本件役員らから事情を聴取したところ、本件各金員の存在及び本件各金員が請求人の売上げとして計上されていないことが判明したため、本件役員らに対し、売上計上漏れの額を調査するよう指示した。

(ホ) 上記(ニ)の指示を受けた本件役員らは、売上計上漏れの額につき、本件関与税理士に対する報告を平成25年10月23日までに終了させた。

(ヘ) 平成25年11月7日、本件関与税理士は、1本件各金員について請求人に売上計上漏れがあったとして、平成21年5月期ないし平成25年5月期の売上計上漏れの金額を記載した「個人通帳入金額」と題する別表5の書面、2別表5の金額に関し「個人通帳入金の金額は、法人に帰属すべきものであり、法人に全額返金するものとする。以上出席取締役全員同意した。」旨記載され、本件役員らの署名押印がある平成25年11月6日付「臨時株主総会議事録」及び3売上計上漏れの理由について記載され、本件役員らの署名押印がある平成25年11月5日付の「個人通帳の入金について」と題する書面等を持参して原処分庁を訪れた。

(ト) 平成25年11月14日、調査担当職員は、請求人の事務所において、本件事務員立会いの下、E取締役及びH取締役から本件各口座に振り込まれた金員の内容を聴取するとともに、H取締役名義の普通預金口座(口座番号○○○○)に、本件関与税理士が原処分庁に持参した別表5の「個人通帳入金額」に反映されていない、h及びS社からの振込入金があることを確認した。
 そして、調査担当職員が請求人の事務所を退出した後、本件事務員が、調査担当職員に電話をし、修正申告書を提出したい旨申し出たところ、調査担当職員は、修正申告書の提出は待ってもらいたい旨回答した。

(チ) 平成25年12月12日、調査担当職員は、請求人の事務所において、請求人に対して別表6の本件各金員の集計額を示した。その後、請求人は、同日付で本件各修正申告書を原処分庁に郵送した。本件各修正申告書においては、別表6に掲げる平成21年5月期ないし平成25年5月期の各合計額が請求人の売上げとして記載されている。
 なお、請求人は、平成26年5月期の法人税の確定申告書において、別表6の本件各金員の役員ごとの合計額を、本件役員らに対する貸付金として記載している。

(リ) 本件役員らの申述
 本件役員らは、調査担当職員に対して、要旨次のとおり申述した。

A E取締役の平成25年11月14日及び平成26年9月1日の申述
 ○○は、市場に出荷できない規格外の○○で、先が枯れたり、根が切れたりして廃棄処分していたものだった。よって、○○は会社のものという認識がなかった。出荷の代金は、個人名義の預金口座に振り込んでもらった。当該口座は、会社の経費の立替払や個人的な支払のために使用しており、通帳及び印鑑は、妻が管理している。

B H取締役の平成25年11月14日及び平成26年9月2日の申述
 販売していた○○は、農協に出荷している銘柄の二級品、先が枯れたもの、根が切れたもので、捨てるのがもったいないものだった。出荷の代金は、個人預金口座に振り込んでもらった。当該口座は、生活口座として使ったり、資材の購入のために使用したりしており、通帳及び印鑑は私が管理している。

C G取締役の平成25年11月21日及び平成26年9月2日の申述
 販売していた○○は、市場に出荷できない規格外の○○で、先が枯れたり、根が切れたりして廃棄処分していたものだった。○○だから、個人のものと考えていた。出荷の代金は、個人預金口座に振り込んでもらった。当該口座は、農協からの部材の購入や個人的な支払のために使用しており、通帳及び印鑑は私が管理している。

ハ 当てはめ

(イ) 調査の内容及び進捗状況
 上記ロの(ロ)からすると、調査担当職員は、平成25年10月8日に「当座性取引履歴明細表」を受領したことにより、本件各口座が本件各事業年度の貸借対照表の預金勘定に計上されていないこと及び当該「当座性取引履歴明細表」に表記された本件各金員の振込依頼人が農産物の直売所等であることを把握したのであるから、調査担当職員は、同日時点で、本件各金員が請求人の売上計上漏れに係る金員であることの端緒を把握していたということができる。そして、上記ロの(ロ)のとおり、調査担当職員が同月2日ないし3日にM信用組合、N銀行及びP銀行に対して預金照会を実施していたこと及び上記ロの(ハ)のとおり、調査担当職員は、同月17日に本件事務員に対して次回の調査日及び請求人の7期分の総勘定元帳を準備するよう連絡していることからすれば、原処分庁における調査は、少なくとも同日時点において、L農業協同組合のほか上記3行の金融機関に対する預金照会の回答内容が順次解明され、請求人の売上計上漏れに係る金額を把握する程度まで進行していたといえる。

(ロ) 調査の内容及び進捗状況に関する請求人の認識
 請求人は、上記ロの(イ)のとおり、平成25年10月2日に調査担当職員から金融機関調査を行う旨告げられ、その後、上記ロの(ハ)のとおり、同月17日に本件関与税理士から原処分庁による次回の調査日及び7期分の総勘定元帳を準備するよう依頼された旨の連絡を受けたのであるから、当該連絡を受けた時点で、同日においても、金融機関調査を含めた原処分庁による調査が継続中であることを認識したということができる。そして、同日、本件関与税理士から「7年間の帳簿を準備するように指示されるからには、何か特別な事情があるのではないか。」と尋ねられたE取締役は、「○○を販売し個人の通帳に入金しているものがある。」旨回答している。
 これらのことからすれば、請求人は、平成25年10月17日、金融機関調査を進めていた調査担当職員からの連絡を受けたことにより、原処分庁による売上計上漏れに関する具体的な調査が進捗していることを認識したと推認される。

(ハ) 修正申告に至る経緯
 請求人は、本件関与税理士から、上記ロの(ハ)のとおり、平成25年10月17日に請求人の7期分の総勘定元帳を準備するよう原処分庁に依頼された旨の連絡を受け、上記ロの(ニ)のとおり、同月18日に売上計上漏れの額を調査するよう指示されたため、上記ロの(ホ)のとおり、同月23日までに売上計上漏れの額を本件関与税理士に報告している。この報告を受けた本件関与税理士は、原処分庁に対し、上記ロの(ヘ)の1のとおり、同年11月7日に、「個人通帳入金額」と題する請求人の売上計上漏れの額を集計した表を示し、上記ロの(ト)のとおり、同月14日に修正申告書を提出したい旨申し出ている。
 これらのことからすれば、請求人は、平成25年10月17日から同年11月14日までの間に修正申告をする決意をしたと推認することができ、当該決意は、同年10月17日に調査担当職員から請求人の7期分の総勘定元帳を準備するよう依頼されたことに基因するものと認められる。

(ニ) 修正申告と調査の内容との関連性
 上記ロの(チ)によれば、本件各修正申告書は、売上計上漏れの是正を内容とするものであり、また、上記(イ)のとおり、進行していた調査の内容は、請求人の売上計上漏れに関する事実であって、ともに本件各金員に関するものであるということができる。加えて、上記ロの(チ)のとおり、本件各修正申告書において請求人が売上計上漏れとしている金額は、請求人が自発的に調査したとする別表5の売上計上漏れの金額とは異なり、調査担当職員から示された別表6の集計額と一致していることが認められる。
 これらのことからすれば、修正申告と原処分庁による調査の内容には関連性があり、本件各修正申告書が、本件調査と関係なく自発的に提出されたものと認めることはできない。

(ホ) 結論
 以上を総合すると、請求人は、調査により請求人の売上計上漏れを把握した調査担当職員からの過去7年分の総勘定元帳の準備依頼を発端として、当該売上計上漏れについて更正される可能性があることを認識し、その後、本件各修正申告書の提出を行っていることから、本件各修正申告書の提出は、「その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当しない。

(2) 争点2(本件各金員は、本件役員らに対する給与に該当するか否か。)について

イ 法令解釈
 所得税法第28条第1項は、給与所得となる給与等について、「俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与」と包括的に規定しており、この趣旨からすると、給与等には、雇用契約に限らず、これに類する委任契約などの原因に基づき提供した労務等の対価として、あるいは労務等を提供する地位に基づいて支給されるものも含まれるものと解される。
 そして、法人の代表者等が法人経営の実権を掌握し、法人を実質的に支配している事情がある場合には、法人の代表者等が、当該法人の事業活動を通じて得た利得は、給与支出の外形を有しない利得であっても、それが法人の資産から支出されたと認められる場合には、当該利得は、法人の代表者等がその地位及び権限に対して受けた給与等であると解するのが相当である。

ロ 当てはめ
 上記1の(4)のイのとおり、本件役員らは請求人の株式の○分の○ずつを保有し、上記(1)のロの(ヘ)の2の臨時株主総会議事録に示されているように、本件役員らの決議の下に経営方針が決定されており、また、上記1の(4)のイのとおり、請求人の業務は、本件役員らが管理する請求人のハウスにおいて栽培され、本件役員らの判断によって選別及び出荷された○○の売上げによって運営されている。これらのことから、請求人の業務は、本件役員らの意思決定により運営及び管理されているといえ、本件役員らが法人経営の実権を掌握し、法人を実質的に支配していると認められる。そして、本件各金員は、請求人の○○の販売に係る対価で請求人に帰属すべき資産であるにもかかわらず、上記(1)のロの(リ)のとおり、本件役員らが管理して生活口座等として自由に利用し、かつ、上記(1)のロの(ロ)のとおり、本件各事業年度の貸借対照表の預金勘定に計上されていない本件各口座に振り込まれ、本件役員らが任意に処分できる状態になったことからすれば、本件各金員は、本件役員らが、請求人の事業活動を通じて得た利得であり、本件各口座に振り込まれた時点で本件役員らに帰属したといえ、当該利得は、法人の代表者等がその地位及び権限に対して受けた給与であると認められる。
 したがって、請求人に帰属すべき本件各金員は、本件各口座に振り込まれた各年月日において、本件役員らにそれぞれ帰属し、請求人から本件役員らに対する給与として支払われたものと認められる。

ハ 請求人の主張について
 請求人は、本件役員らは本件各金員について請求人の売上げになるという認識がなかったのであり、平成25年11月6日の臨時株主総会で、別表5の金額を貸付金として決議したことから、本件各金員は本件役員らに対する給与に該当しない旨主張する。
 しかしながら、所得税法は、納税者の認識にかかわらず、飽くまで事実として発生した経済的利益状態に着目してこれを所得として課税対象としているところ、本件各金員が、本件各口座に振り込まれた時点で本件役員らに対する給与に該当することは上記ロのとおりであり、本件役員らの認識の有無が上記判断を左右するものではない。また、たとえ経済的利益の原因となった事柄につき、じ後に返還債務が発生した場合であっても、現実に経済的利益を取得した限り、その時点で給与に該当するというべきであるから、この点に関する請求人の主張は採用できない。

(3) 争点3(請求人に、通則法第68条第1項及び第3項に規定する「隠ぺい又は仮装」並びに同法第70条第4項及び同法第73条第3項に規定する「偽りその他不正の行為」に該当する事実があったか否か。)について

イ 法令解釈

(イ) 通則法第68条に規定する重加算税は、同法第65条ないし第67条に規定する各種の加算税を課すべき納税義務違反が事実の隠ぺい又は仮装という不正な方法に基づいて行われた場合に、違反者に対して課される行政上の措置であって、故意に納税義務違反を犯したことに対する制裁ではないから、同法第68条第1項及び第3項の「事実を隠ぺいし」とは、税額等の計算の基礎となる事実等について、これを隠ぺいしあるいは故意に脱漏することをいい、また、「事実を仮装し」とは、所得財産あるいは取引上の名義等に関し、あたかも、それが真実であるかのように装う等、故意に事実をわい曲したことをいうと解される。

(ロ) 通則法第70条は、国税の更正、決定等の期間制限(賦課権の除斥期間)を規定しており、同条第1項で、更正につき法定申告期限から5年という除斥期間を定めるなどしているが、同条第4項において、「偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れ、若しくはその全部若しくは一部の税額の還付を受けた国税(当該国税に係る加算税及び過怠税を含む。)についての更正決定等」に関しては、その除斥期間を7年と定め、それ以外の場合よりも長い除斥期間を定めている。これは、偽りその他不正の行為によって国税の全部又は一部を免れた納税者がある場合にこれに対して適正な課税を行うことができるよう、より長期の除斥期間を定めたものであり、同条第4項にいう「偽りその他不正の行為」とは、税額を免れる意図の下に、税の賦課徴収を不能又は著しく困難にするような何らかの偽計その他の工作を伴う不正な行為を行っていることをいうものと解される。
 また、同法第73条第3項は、偽りその他不正の行為によって国税の全部又は一部を免れた納税者がある場合にこれに対して適正な徴収を行うという趣旨から、「国税の徴収権で、偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れ、又はその全部若しくは一部の税額の還付を受けた国税に係るものの時効」に関しては、当該国税の法定納期限から2年間は進行しないと規定しており、この趣旨と文言からすると、ここでいう「偽りその他不正の行為」も、同法第70条第4項と同様のものと解される。

ロ 当てはめ

(イ) 通則法第68条第1項及び第3項について
 本件各金員は、請求人の○○の販売に係る対価であるにもかかわらず、請求人は、これを本件各口座に振り込ませ、売上げとして総勘定元帳に計上していなかったこと、また、上記(2)のロのとおり、本件各金員は本件役員らに対する給与として支給したものと認められるところ、請求人は、これを本件各口座に振り込ませ帳簿に一切記載していなかったことから、請求人は、税額等の計算の基礎となる事実等について隠ぺいしていたものと認められる。
 したがって、請求人が、総勘定元帳に本件各金員を売上げとして計上せず、また、源泉徴収の対象となる給与の支払事実について、帳簿に一切記載していなかったことは、通則法第68条第1項及び第3項に規定する隠ぺい又は仮装の事実に該当する。

(ロ) 通則法第70条第4項及び同法第73条第3項について
 本件各金員は、請求人の○○の販売に係る対価であるにもかかわらず、請求人は、これを本件各口座に振り込ませ、売上げとして総勘定元帳に計上せず、また、上記(2)のロのとおり、本件各金員は本件役員らに対する給与として支給したものと認められるところ、請求人は、これを本件各口座に振り込ませ帳簿に一切記載していなかった。通常、預金口座に振り込まれた金員についてはその名義人に帰属するものであるから、請求人の売上げとして請求人に帰属すべき金員を本件役員らの各預金口座に振り込ませる行為は、収入の帰属及び給与の支払事実を偽るものとして、税の賦課徴収を不能又は著しく困難ならしめる偽計行為といえ、自己の所得の実態が把握されることを免れる意図を有していたものと認められる。
 したがって、請求人が、本件各金員を売上げとして総勘定元帳に計上せず、また、源泉徴収の対象となる給与の支払事実について、帳簿に一切記載していなかったことは、通則法第70条第4項及び同法第73条第3項に規定する偽りその他不正の行為に該当する。

(4) 原処分の適法性

イ 本件各更正処分について

(イ) 本件法人税各更正処分
 上記(3)のロの(ロ)のとおり、請求人が本件各金員を売上げとして総勘定元帳に計上していなかったことは、偽りその他不正の行為に該当する。また、上記(3)のロの(イ)からすると、本件各金員は、請求人が事実を隠ぺい又は仮装して経理することによって本件役員らに対し給与として支給していたものといえることから、法人税法第34条《役員給与の損金不算入》第3項の規定により、当該給与の金額は、請求人の所得金額の計算上、損金の額に算入されない。
 そうすると、本件各金員に係る金額を本件役員らに対する給与であるとした上で請求人の益金の額に算入すべきであるとした本件法人税各更正処分にはこれを取り消すべき理由はなく、本件法人税各更正処分に係る事業年度の所得金額及び納付すべき税額を計算すると、別表1の「更正処分等」欄の金額と同額となるから、本件法人税各更正処分はいずれも適法である。

(ロ) 本件消費税等各更正処分
 上記(3)のロの(ロ)のとおり、請求人が本件各金員を売上げとして総勘定元帳に計上していなかったことは、偽りその他不正の行為に該当するため、本件各金員に係る金額を課税標準額に算入すべきであるとした本件消費税等各更正処分にはこれを取り消すべき理由はなく、平成19年5月課税期間ないし平成22年5月課税期間の納付すべき消費税額及び地方消費税額を計算すると、別表2の「更正処分等」欄の金額と同額となるから、本件消費税等各更正処分はいずれも適法である。

ロ 本件法人税各賦課決定処分及び本件消費税等各賦課決定処分について
 上記(1)のハのとおり、本件各修正申告書の提出には、通則法第65条第5項の規定が適用されず、また、上記(3)のロの(イ)のとおり、本件各金員を売上げとして総勘定元帳に計上していなかったことについて、請求人に通則法第68条第1項に規定する隠ぺい又は仮装の行為があったと認められ、請求人は、これに基づき納税申告書を提出したことから、本件法人税各賦課決定処分及び本件消費税等各賦課決定処分はいずれも適法である。

ハ 源泉所得税等について

(イ) 本件各納税告知処分
 上記(2)のロのとおり、本件各金員は、本件役員らに対して給与として支給されたものと認められ、また、上記(3)のロの(ロ)のとおり、請求人が源泉徴収の対象となる給与の支払事実について、帳簿に一切記載していなかったことは、偽りその他不正の行為に該当するため、当該給与の支給について請求人に源泉徴収義務があるとしてされた本件各納税告知処分にはこれを取り消すべき理由はなく、本件各金員の額に基づいて源泉所得税の額を計算すると、別表3の「納税告知処分(源泉所得税等の額)」欄の金額と同額となるから、本件各納税告知処分はいずれも適法である。

(ロ) 本件源泉所得税等各賦課決定処分
 上記(3)のロの(イ)のとおり、本件各金員を本件役員らに対する給与として支給したにもかかわらず、これを帳簿に一切記載せずに本件各口座に振り込ませていたことについて、請求人に通則法第68条第3項に規定する隠ぺい又は仮装の行為があったと認められ、請求人は、これに基づき源泉所得税等を法定納期限までに納付していなかった。また、法定納期限までに納付していなかったことについて、同法第67条第1項ただし書きに規定する正当な理由があると認められる場合に該当しない。
 したがって、本件源泉所得税等各賦課決定処分は、いずれも適法である。

(5) その他

原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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