(平成27年10月2日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

本件は、平成23年8月○日に死亡したJ(以下「本件被相続人」という。)の相続(以下「本件相続」という。)に係る相続税について、原処分庁が、本件被相続人の子名義の各定期預金を本件相続に係る相続財産であると認定して相続税の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分を行ったのに対し、審査請求人G、同K、同L、同M及び同N(以下、これらの者を併せて「請求人ら」という。)が、上記各定期預金は、本件被相続人からその生前に当該名義人に対して贈与されたものであるから相続財産には当たらないなどとして、原処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2)審査請求に至る経緯

イ 審査請求(平成26年8月4日請求)に至る経緯及び内容は、別表1のとおりである。

以下、平成26年3月31日付で請求人らに対してされた本件相続に係る相続税の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分を、それぞれ「本件各更正処分」及び「本件各賦課決定処分」という。

ロ 請求人らは、Gを総代として選任し、その旨を平成26年8月4日に当審判所に対し届け出た。

(3)関係法令

国税通則法(以下「通則法」という。)第68条《重加算税》第1項は、通則法第65条第1項《過少申告加算税》の規定に該当する場合(同条第5項の規定の適用がある場合を除く。)において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に100分の35の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する旨規定している。

(4)基礎事実

次の事実は、請求人らと原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。

イ 本件被相続人等

(イ)本件被相続人は、平成○年○月頃まで、a市b町○−○(住居表示については、平成○年○月○日、行政区画及び土地の名称変更に伴い、「d市b町」から「a市b町」へ名称変更された後のものである。以下同じ。)において○○を営んでいたところ、平成23年8月○日に死亡した。

(ロ)本件相続に係る共同相続人は、本件被相続人の妻であるG並びに子であるK、L、M及びN(以下、順次「妻G」、「子K」、「子L」、「子M」及び「子N」という。)の5名である。

ロ 請求人らの住所地

(イ)妻Gは、昭和34年頃から本件相続の開始日である平成23年8月○日までの間、本件被相続人と共に、a市b町○−○に所在する自宅(以下「本件自宅」という。)に居住しており、同日以降も本件自宅に居住している。

(ロ)子Kは、平成8年3月頃、e市からf市g町へ転居し、平成14年9月頃、現在の住所地である同市h町へ転居した。

(ハ)子Lは、平成11年8月頃、i市から本件自宅と同じ住所地に所在する居宅へ転居し、平成15年3月頃、現在の住所地であるf市へ転居した。

(ニ)子Mは、平成7年9月頃、i市j町から現在の住所地である同市k町(平成○年○月○日、○○施行に伴い、「i市k町」は、「i市m町」へ名称変更された。)へ転居した。

(ホ)子Nは、平成6年5月頃からn市p町○丁目で居住していたが、平成14年3月頃、同市p町○丁目へ転居し、平成17年6月頃、現在の住所地である本件自宅と同じ住所地に所在する居宅へ転居した。

ハ 相続税の申告及び更正処分等

(イ)請求人らは、相続税の申告書の作成を本件被相続人の所得税の関与税理士であったP税理士(以下「本件関与税理士」という。)に依頼の上、平成24年4月5日、本件相続に係る相続財産は全て分割済みであるとして、本件相続に係る相続税の申告書(以下「本件申告書」という。)を原処分庁に提出した。
 請求人らが本件相続に係る相続財産として申告した預貯金(預貯金の名義は、いずれも本件被相続人である。)の明細は、別表2のとおりであるところ、本件申告書の第11表(相続税がかかる財産の明細書)の「分割が確定した財産」欄には、上記預貯金のうち、子K、子L、子M及び子N(以下、これらの者を併せて「本件子供ら」という。)は各16,034,824円を、妻Gは64,139,295円を、それぞれ本件相続により取得した旨記載されている。
 また、本件申告書に添付されていたx1銀行○○支店の平成23年10月25日付の残高証明書には、本件相続の開始日における同支店の本件被相続人名義の普通預金口座(別表2の順号8の口座)の残高は、8,708,479円と記載されている。

(ロ)本件申告書に添付されていた本件相続に係る平成24年1月3日付の遺産分割協議書(記載内容は別紙3のとおり。以下「本件分割協議書」という。)には、請求人らがそれぞれ取得する預金の金額が記載されているところ、当該預金の金額には、別表3記載の本件子供ら名義の各定期預金の金額は含まれていない。
 また、本件分割協議書の条項5の(8)には、妻Gが取得する財産として、「現金、家庭用財産など上記相続人が取得する以外の全財産」と記載されている。
 以下、本件分割協議書の条項5の(8)を「本件条項」という。

(ハ)原処分庁は、別表3記載の本件子供ら名義の各定期預金は、いずれも本件相続に係る相続財産であるから、本件条項に基づき妻Gが本件相続により取得することとなる財産であり、請求人らは上記各定期預金が本件被相続人の財産であることを知りながら課税財産として申告していなかったとして、請求人らに対し、平成26年3月31日付で、別表1の「更正処分等」欄のとおり、本件各更正処分及び本件各賦課決定処分を行った。

ニ 本件子供ら名義の各定期預金の預入れ及び継続等の状況

(イ)本件被相続人は、平成12年6月28日、x2銀行○○支店において、本件被相続人が本件子供らごとに1本ずつ用意した印鑑を使用して、本件子供ら名義でそれぞれ元金として10,000,000円を預け入れて、通帳式の各定期預金口座(計4口座)を開設した。
 以下、本件被相続人がx2銀行○○支店並びに後記(ロ)、(ハ)及び(ホ)の各金融機関において本件子供ら名義で預金取引をする際に届け出た各印鑑を「本件各印鑑」という。
 なお、本件各印鑑は、本件相続の開始日に至るまで本件子供らが日常生活で使用している預金口座の各届出印と異なっている。

(ロ)本件被相続人は、平成12年6月28日、x3銀行○○支店(平成○年○月○日、x3銀行とx4銀行が合併したことにより、x5銀行○○出張所に改称され、平成○年○月○日、x5銀行○○支店に改称された。以下、改称の前後を通じて「x5銀行○○支店」という。)において、本件各印鑑のうち子K及び子Mの各印鑑を使用して両人名義でそれぞれ元金として10,600,000円を預け入れて、通帳式の各定期預金口座(計2口座)を開設した。

(ハ)本件被相続人は、平成13年6月28日、x6銀行○○支店において、本件各印鑑を使用して本件子供ら名義でそれぞれ元金として10,000,000円を預け入れて、通帳式の各定期預金口座(計4口座)を開設した。

(ニ)本件被相続人は、平成13年7月3日、x5銀行○○支店において、上記(ロ)の子K名義及び子M名義の元金10,600,000円の各定期預金を解約し、これらの解約に係る各払戻金を原資として、同日、上記(ロ)の両人名義の通帳式の各定期預金口座に、それぞれ元金10,000,000円の定期預金を預け入れた。

(ホ)本件被相続人は、平成15年2月20日、x1銀行○○支店において、本件各印鑑のうち子Nの印鑑を使用して子N名義で開設されていた通帳式の定期預金口座に、元金10,000,000円の定期預金を預け入れた。

(へ)上記(イ)及び(ハ)から(ホ)までの本件子供ら名義の各定期預金(計11口)は、いずれも本件被相続人名義の預金の払戻金を原資として預け入れられたものであり、それぞれ元金10,000,000円の定期預金として預け入れられた日から本件相続の開始日に至るまで、おおむね1年が経過するごとに、本件被相続人又は妻Gによって、利息が元金に加算される形で継続、書替又は記帳手続が行われていた(以下、このような定期預金の継続、書替又は記帳手続を総称して「継続手続」という。)。
 なお、上記の本件子供ら名義の各定期預金(計11口)の本件相続の開始時の残高は、別表3のとおりであった。
 以下、別表3の各定期預金及びこれらにつき順次継続手続が行われる前の各定期預金を併せて「本件各定期預金」といい、本件各定期預金が預け入れられていた各定期預金口座を「本件各定期預金口座」といい、本件各定期預金口座に係る通帳を「本件各通帳」という。

(ト)本件各定期預金の各届出印(本件各印鑑)は、本件各定期預金が預け入れられた日から本件相続の開始日に至るまで、変更されたことはなかった。

(チ)本件各定期預金が、本件被相続人から本件子供らに贈与されたことを証する書面は、当事者間において作成されていない。

ホ 贈与税の申告の状況

子Kは、本件被相続人から10,000,000円の贈与を受けたとして、平成14年分の住宅取得資金等の贈与に係る贈与税の申告書をQ税務署長に提出しているが、本件子供らが、当該申告以外に平成12年分から平成23年分までにおいて贈与税の申告書をそれぞれ所轄の税務署長に提出したことはない。

(5)争点

争点1 本件各定期預金は、本件相続に係る相続財産であるか否か。

争点2 仮に、本件各定期預金が本件相続に係る相続財産に当たる場合において、本件各定期預金は、本件条項に基づき妻Gが本件相続により取得することになるのか否か。

争点3 仮に、本件各定期預金が本件相続に係る相続財産に当たる場合において、本件各定期預金を申告しなかった請求人らの行為は、通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たすか否か。

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2 主張

(1)争点1(本件各定期預金は、本件相続に係る相続財産であるか否か。)

原処分庁請求人ら
本件各定期預金は、本件被相続人名義の預金の払戻金を原資とするものであり、以下のとおり、請求人らが主張する贈与もないことから、本件各定期預金は、本件相続に係る相続財産である。 本件各定期預金は、本件被相続人名義の預金の払戻金を原資とするものであるところ、以下の理由のとおり、本件各定期預金は、平成12年から平成15年までの間に、本件被相続人から本件子供らに対して贈与され、その履行も完了していたものであるから、本件相続に係る相続財産ではない。
イ 本件各定期預金の贈与について イ 本件各定期預金の贈与について
後記ロのとおりの本件各定期預金の管理、運用状況及び以下の理由から、本件各定期預金は、本件相続の開始日以前において、本件被相続人から本件子供らに対して贈与されたものとはいえない。 以下の理由から、本件各定期預金は、既に本件被相続人から本件子供らに対して贈与されたものである。
(イ)本件被相続人から本件子供らが本件各定期預金の贈与を受けたことを明らかにする客観的資料は存在しない。

(イ)本件子供らは、本件各定期預金が元金10,000,000円の定期預金として預け入れられた日から1か月程度経過する日まで(子Nにあっては、1か月あるいは2か月程度経過する日まで)の間に、本件自宅において、本件被相続人からそれぞれ本件各通帳及び本件各印鑑を渡される方法で、それぞれ本件各定期預金の贈与を受けた。

 なお、本件子供らは、本件被相続人から本件各印鑑を渡された後、継続手続の際や本件被相続人又は妻Gから頼まれた際には、両人に本件各印鑑を渡していたが、本件各印鑑を両人に渡したままにしていたことはなく、その後、本件各印鑑の返却を受けていた。

(ロ)本件子供らは所得税については確定申告をしており、また、子Kは本件被相続人から受けた10,000,000円の住宅取得資金等の贈与について平成14年分の贈与税の申告をしていることからすれば、本件子供らが贈与税の申告につき無知であったとは考えられないものであるが、本件各定期預金を含め本件子供らが本件被相続人から贈与を受けたと主張する各定期預金の額は多額であるにもかかわらず、本件子供らは主張に係る各定期預金の贈与税の申告をしていない。

(ロ)本件子供らが贈与税の申告をしなかった理由は、本件被相続人から本件各定期預金を贈与されたという認識がなかったからではなく、いずれも税法に無知であったからである。
ロ 本件各定期預金の管理、運用について ロ 本件各定期預金の管理、運用について
以下の各事実から、本件子供らは、本件各通帳及び本件各印鑑を管理していたとは認められず、本件各定期預金は、本件被相続人の下で管理、運用されていたと認められる。 以下の各事実から、本件子供らは、上記イの贈与を受けた後、本件各通帳及び本件各印鑑をそれぞれ管理、運用していた。
(イ)本件各定期預金に係る満期時の継続手続は、各金融機関の渉外担当者が本件自宅を訪れて妻Gから本件各通帳を預かり、後日、継続手続が終わった本件各通帳を本件自宅に持参する方法によって行われていた。
 これは、本件被相続人の財産を、本件被相続人が管理、運用し、預金関係の手続は、本件被相続人の指示の下で妻Gが行っていた状況と同一である。

また、本件各定期預金は、平成12年から平成15年までにかけて、金融機関ごとに名義人1人当たり元金10,000,000円の定期預金として預け入れられたものであるところ、本件被相続人が、いわゆるペイオフに関して金融機関の渉外担当者から説明を受けていたことからすると、本件被相続人は、ペイオフ対策として、預金名義及び金融機関の分散を図る目的で、本件各定期預金を預け入れたものといえる。

(イ)本件各定期預金の預入先である各金融機関は、本件子供ら宛に定期預金の預入金額や利息金額、満期日等を記載した書面を送付しており、本件子供らは、本件各定期預金の具体的な内容を承知していた。
 また、本件子供らは、仕事等の関係上、自ら継続手続を行うことが困難であったため、本件各通帳及び本件各印鑑を本件自宅に持参して、本件被相続人又は妻Gに継続手続を依頼し、継続手続が完了した後は、これらの返却を受けていたものであり、本件子供らが、本件各通帳及び本件各印鑑をそれぞれ管理していた。
(ロ)x5銀行○○支店の子L名義の普通預金口座(番号○○○○。以下「子Lx5銀行普通預金口座」という。)及び子N名義の普通預金口座(番号○○○○。以下「子Nx5銀行普通預金口座」という。)は、本件各印鑑のうち子L及び子Nの各印鑑を使用していずれも平成17年10月27日に解約され、これらの解約に係る各払戻金は、本件被相続人が日常生活で使用している同支店の本件被相続人名義の普通預金口座(番号○○○○)に入金されているところ、子L及び子Nは当該各普通預金口座が解約されたことを認識していなかった。 (ロ)子Lx5銀行普通預金口座及び子Nx5銀行普通預金口座の解約について、子L及び子Nは具体的なことは知らないが、子Nがx5銀行○○支店で普通預金口座を開設しようとした際、既に子N名義の普通預金口座があることが分かり、解約しようということになり、子Nは解約のために本件被相続人に本件各印鑑のうち子Nの印鑑を渡した。
(ハ)平成14年2月20日に元金10,000,000円として預け入れられて平成21年2月23日に解約されたx1銀行○○支店の子M名義の通帳式の定期預金口座(番号○○○○。以下、当該口座内の平成14年2月20日以降の定期預金を「子Mx1銀行定期預金」という。)の届出印は本件各印鑑のうち子Mの印鑑であったところ、本件被相続人又は妻Gが当該印鑑を使用して当該定期預金の預入れ及び解約の手続を行った。 (ハ)子Mは、子Mx1銀行定期預金を妻Gに依頼して平成21年2月23日に解約し、この解約に係る払戻金を子Mが日常生活で使用しているx1銀行○○支店の子M名義の普通預金口座(番号○○○○)に入金しており、このことは、その解約以前に本件被相続人から子Mに対する当該定期預金の贈与の履行が完了し、当該定期預金が子Mの意思により自由に処分できる預金となっていたことの証である。
(ニ)子Lは、住宅資金の融資を受ける際にx2銀行に提出した借入申込書や、Q税務署長に提出した平成22年分の所得税に係る「財産及び債務の明細書」に、本件被相続人から贈与を受けたとする各定期預金をいずれも記載していなかった。 (ニ)子Lは、本件被相続人から贈与された各定期預金を住宅資金に充てる意思がなかったため、x2銀行に提出した借入申込書の自己資金欄には上記各定期預金を記載しなかったにすぎない。
 また、子LがQ税務署長に提出した平成22年分の所得税に係る「財産及び債務の明細書」に本件被相続人から贈与を受けた各定期預金をいずれも記載していない理由は、当該書類を記載した子Lの妻が、上記各定期預金の存在は知っていたが、金額を含め詳しいことを知らなかったので、同人が分かる範囲で記載したにすぎない。
ハ 請求人らの右記ハの主張は、以下の理由から、本件被相続人から贈与の履行が既に完了していたとみることはできず、誤っている。 ハ 以下のとおり、本件各定期預金以外の金融資産の贈与と本件各定期預金とを区別する理由はないから、本件各定期預金も贈与されていたことが明らかである。
(イ)原処分に係る調査(以下「本件調査」という。)の担当者(以下「本件調査担当者」という。)は、本件各定期預金が本件相続に係る相続財産となる根拠について、平成26年3月25日に請求人らに対し説明しており、また、本件調査の過程において本件調査担当者が請求人らに対し調査額を説明したことは、その時点において把握していた事実に基づいて説明をしたものであり、本件各定期預金が本件相続に係る相続財産であるとした原処分庁の認定に影響を及ぼすものではない。 (イ)本件調査担当者は、請求人らに対する調査を開始してから40日以上に及ぶ調査を実施した上で、本件各定期預金のみならず、別表4各定期預金及びその他の妻G名義の定期預金等も含めた総額272,620,983円の財産は、本件相続に係る相続財産であるとして修正申告を勧奨しながら、請求人らがこれを拒否すると、同日中に、妻G名義の定期預金等の一部は、本件相続に係る相続財産であるとして修正申告を勧奨した。
 再度、請求人らがこれを拒否すると、本件調査担当者は、本件各定期預金(総額111,445,006円)は、本件相続に係る相続財産であるとして修正申告を勧奨した。
 このように、本件調査担当者が修正申告の勧奨時に提示した金額が合理的な理由の説明もなく変遷し、最終的に原処分庁が認定した本件相続に係る相続財産が当初の勧奨時の半分以下の金額になったことからすると、本件各定期預金が本件相続に係る相続財産であるとした原処分庁の認定は、その根拠がない。
(ロ)原処分庁は、請求人らが主張する別表4に記載された各定期預金(以下、別表4の順号1から7までの各定期預金を併せて「別表4各定期預金」という。)及び子Mx1銀行定期預金について、本件被相続人が請求人らの名義を借用したものと認定できなかったにすぎないから、原処分庁が別表4各定期預金を相続財産として相続税の課税価格に加算しなかったこと及び上記ロの(ハ)の子Mx1銀行定期預金の解約に係る払戻金について相続税法第19条《相続開始前3年以内に贈与があった場合の相続税額》の規定を適用せず、これを相続税の課税価格に加算しなかったことをもって、本件被相続人から各名義人に対して贈与の履行が既に完了していたとみることはできない。 (ロ)別表4各定期預金及び子Mx1銀行定期預金に係る各名義人は、本件被相続人から、平成11年から平成14年までの間に、本件各定期預金と同様に、本件被相続人の預金を原資として預け入れられた別表4各定期預金の口座に係る通帳(順号1の定期預金については証書)及び子Mx1銀行定期預金口座に係る通帳をそれぞれ渡される方法で、別表4各定期預金及び子Mx1銀行定期預金の贈与を受けた。
 原処分庁は、上記(イ)のとおり、別表4各定期預金が存在することを認識しながら、本件各更正処分において、本件各定期預金のみを本件相続に係る相続財産であると認定したことからすると、別表4各定期預金については、本件被相続人から各名義人に対する贈与の履行が既に完了していたと認定したものである。
 また、原処分庁は、上記ロの(ハ)の子Mx1銀行定期預金の解約に係る払戻金の子M名義の普通預金口座への入金は、本件相続の開始前3年以内に行われているにもかかわらず、本件各更正処分において、相続税法第19条の規定を適用せず、これを相続税の課税価格に加算しなかったことからすると、子Mx1銀行定期預金については、本件被相続人から子Mに対する贈与の履行が、その解約以前に既に完了していたと認定したものである。
 そうすると、別表4各定期預金及び子Mx1銀行定期預金は、本件被相続人から各名義人に対して贈与された後に、本件各定期預金と同様に妻Gが毎年継続手続を行っていたものであるから、別表4各定期預金及び子Mx1銀行定期預金と本件各定期預金とを区別する理由はなく、本件各定期預金についてのみ、本件被相続人から本件子供らに対する贈与の履行の完了を否定した原処分庁の認定は、その根拠がない。

(2)争点2(仮に、本件各定期預金が本件相続に係る相続財産に当たる場合において、本件各定期預金は、本件条項に基づき妻Gが本件相続により取得することになるのか否か。)

原処分庁請求人ら
本件分割協議書には、本件子供らが取得する財産として本件各定期預金が記載されていない上、本件条項に、妻Gが取得する財産として本件子供らが取得する以外の全財産と定められている以上、本件各定期預金は、本件条項に基づき妻Gが相続により取得することになる。 仮に、本件各定期預金が本件相続に係る相続財産に当たるとしても、以下の理由のとおり、本件各定期預金について本件条項の適用はないから、本件条項に基づき妻Gが本件各定期預金を相続することにはならない。
イ 請求人らは、上記(1)の「請求人ら」欄のとおり、本件各定期預金は、平成12年から平成15年までの間に、本件被相続人から本件子供らに対して贈与されたものであり、本件相続に係る相続財産ではないと認識していたことから、本件分割協議書の作成に当たり、本件各定期預金を遺産分割協議の前提となる相続財産に含めていなかった。
ロ 本件条項には、妻Gが取得する財産として「現金、家庭用財産など」と例示されているところ、請求人らは、本件分割協議書の作成の際、少額の現金や本件自宅にある絵画等の動産を想定して本件条項を設けることに合意したものであり、本件条項に基づき妻Gが多額の財産を相続することを想定していたものではない。
 仮に、本件条項に基づき妻Gが本件各定期預金を相続することになれば、更に総額1億円を超える多額の財産を妻Gが取得することになるが、請求人らが、高齢である妻Gの相続を考慮することなく、同人がこのような多額の財産を取得することとなるような条項を設けるはずがない。

(3)争点3(仮に、本件各定期預金が本件相続に係る相続財産に当たる場合において、本件各定期預金を申告しなかった請求人らの行為は、通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たすか否か。)

原処分庁請求人ら
納税者が、当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたような場合には、通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課要件が満たされると解されるところ、以下の理由から、本件各定期預金を申告しなかった請求人らの行為は、重加算税の賦課要件を満たす。 仮に、本件各定期預金が本件相続に係る相続財産に当たるとしても、以下の理由のとおり、本件各定期預金を申告しなかった請求人らの行為は、通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たさない。
イ 妻Gは、本件子供らから本件相続に係る相続税の申告について委任を受けていたから、本件申告書の作成、提出に係る妻Gの行為は、本件子供らの行為と同視できるところ、本件各定期預金が本件被相続人又は本件被相続人の指示を受けた妻Gの下で管理、運用されていた状況から、妻Gは、本件各定期預金が本件被相続人に帰属することを認識していたと認められるにもかかわらず、相続税の申告書の作成を依頼した本件関与税理士に対して本件各定期預金の存在を伝えなかったものであり、このことは請求人らによる相続財産の隠匿といえる。 イ 上記(1)の「請求人ら」欄のとおり、本件各定期預金は、平成12年から平成15年までの間に、本件被相続人から本件子供らに対して贈与され、その履行も完了していたものであるから、請求人らは、相続税の申告書を作成する際、本件各定期預金は本件相続に係る相続財産ではなく、本件子供らの固有の財産であると認識しており、また、本件関与税理士から本件相続の開始日から約10年以上も前の贈与の有無を質問されることもなかったため、本件関与税理士に対して本件各定期預金の存在を伝えなかったにすぎない。
ロ 本件各定期預金は、本件相続の開始日以前に本件被相続人から本件子供らに贈与されていないにもかかわらず、請求人らは、本件調査の着手日以降、本件調査担当者に対し、本件被相続人が本件子供らに対して本件各通帳及び本件各印鑑をそれぞれ渡す方法で本件子供らは本件各定期預金の贈与を受けた旨の事実と異なる申述をしたものであり、このことは、請求人らが本件各定期預金が本件相続に係る相続財産であることを認識した上で申告しなかったものといえる。 ロ 請求人らは、本件調査担当者に対し、本件被相続人から本件各定期預金を贈与され、それ以降、本件各通帳及び本件各印鑑を管理していたことなどを述べたものであり、事実と異なる申述をしたことはない。
ハ 以上からすれば、請求人らは、本件各定期預金について、当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたものといえる。 ハ 以上のとおり、請求人らは、本件関与税理士に対し、本件各定期預金を隠匿したことはなく、また、本件調査担当者に対し、事実と異なる申述をしたこともないから、請求人らにおいて、隠ぺい又は仮装と評価される行為はない。

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3 判断

(1)争点1(本件各定期預金は、本件相続に係る相続財産であるか否か。)

イ 認定事実

請求人ら提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。

(イ)本件被相続人による本件子供らの名義を使った金融資産の取引等

A 本件被相続人の平成9年分の所得税に係る「財産及び債務の明細書」、妻Gの本件調査担当者に対する申述及び当審判所に対する答述によれば、本件被相続人は、昭和○年の開業後、上記1の(4)のイの(イ)のとおり平成○年○月頃まで○○を営むことにより収入を得ており、この間、本件被相続人及び妻Gの生活費は、本件被相続人が負担していた。そして、平成9年12月31日現在において本件被相続人は預貯金を含む約4億5千万円の金融資産を有しており、これらの財産管理は本件被相続人自身が行っていた。

B x7信託銀行○○支店(現x8信託銀行○○支店)の顧客別契約明細表及び顧客別信託異動明細表(本件被相続人、妻G、子L及び子Nの各名義の取引に係るもの)並びに別表4の順号7のx1銀行○○支店の子L名義の定期預金口座及び別表3の順号11の同支店の子N名義の定期預金口座に係る各通帳によれば、x7信託銀行○○支店において、平成8年頃には本件被相続人、妻G、子L及び子Nの各名義で取引が行われていたが、当該各取引のうち本件被相続人名義の取引を除く各取引は、いずれも平成10年10月7日に終了していた。
 そして、上記Aのとおり本件被相続人がx7信託銀行○○支店における取引が行われた当時に多額の財産を有し自ら管理していた状況に加え、1妻Gが当審判所に対して同支店の上記各取引に関して同支店の担当者と会った記憶はない旨答述していること、2子L名義の上記取引の終了に係る払戻金を原資として、平成10年10月8日にx1銀行○○支店の子L名義の定期預金口座(別表4の順号7の口座)に元金27,311,111円の定期預金が預け入れられているところ、子Lは当審判所に対してその預入手続は自分がしたものではない旨答述していること、3子N名義の上記取引の終了に係る払戻金を原資として、同日にx1銀行○○支店の子N名義の定期預金口座(別表3の順号11の口座)に元金26,523,201円の定期預金が預け入れられているところ、子Nは当審判所に対してその預入手続は自分がしたものではない旨答述していることからすれば、妻G、子L及び子Nの各名義で行われた上記各取引は、本件被相続人がこれらの者の名義を使って行っていたものである。

C x5銀行○○支店の通知・定期性預金取引明細表及び定期預金・通知預金印鑑届(いずれも子K名義の取引に係るもの)によれば、x5銀行○○支店において、平成2年12月21日時点で子K名義の元金6,150,438円の定期預金(番号○○○○)が存在していたところ、その後順次継続手続が行われて、平成7年6月22日時点では元金7,531,262円の定期預金(番号○○○○)となっており、同日当該定期預金が解約されていた。
 そして、上記Aの状況に加え、x5銀行○○支店の上記各取引に関して、子Kが当審判所に対して上記定期預金が存在していたこと自体知らない旨答述していることからすれば、子K名義の上記定期預金の取引は、本件被相続人が子Kの名義を使って行ったものである。

D 上記1の(4)のニの(ニ)のとおり、平成13年7月3日にx5銀行○○支店において子K名義及び子M名義の元金10,600,000円の各定期預金が解約され、これらの解約に係る各払戻金を原資として両人名義で元金10,000,000円の各定期預金(別表3の順号5及び6の定期預金)が預け入れられているところ、同支店の当該各定期預金口座に係る各通知・定期性預金取引明細表並びに子K名義の普通預金口座(番号○○○○)及び子M名義の普通預金口座(番号○○○○)に係る各要払性預金取引明細表及び各普通預金印鑑届によれば、解約された各定期預金に係る払戻金はいずれも10,626,649円であった。また、同日、同支店において本件各印鑑のうち子K及び子Mの各印鑑を使用して子K名義及び子M名義の当該各普通預金口座がそれぞれ開設され、当該各普通預金口座に上記各払戻金から10,000,000円を差し引いた金額626,649円がそれぞれ預け入れられた。
 そして、上記Aの状況に加え、同支店の上記各取引に関し、子K及び子Mが当審判所に対して、その当時上記のような取引が行われたことを知らなかった旨それぞれ答述していることからすれば、上記各普通預金口座に係る各取引は、本件被相続人が子K及び子Mの各名義を使って行ったものである。

E x5銀行○○支店の本件被相続人名義の普通預金口座(番号○○○○)、子Lx5銀行普通預金口座及び子Nx5銀行普通預金口座に係る各要払性預金取引明細表、本件被相続人名義の当該普通預金口座に係る平成17年10月27日付の入金票並びに子Lx5銀行普通預金口座及び子Nx5銀行普通預金口座に係る同日付の各解約依頼書によれば、x5銀行○○支店において、平成2年9月21日から平成17年10月27日までの間、本件各印鑑のうち子L及び子Nの印鑑をそれぞれ届出印とする子Lx5銀行普通預金口座及び子Nx5銀行普通預金口座が開設され、同日、当該各普通預金口座は解約手続が行われ、子Lx5銀行普通預金口座の解約に係る払戻金3,118,601円及び子Nx5銀行普通預金口座の解約に係る払戻金3,272,282円の合計額6,390,883円が本件被相続人名義の上記普通預金口座に預け入れられていた。
 そして、上記Aの状況に加え、同支店の上記各取引に関し、子L及び子Nが、当審判所に対して、子Lx5銀行普通預金口座及び子Nx5銀行普通預金口座は本件被相続人が管理していた口座である旨それぞれ答述していることからすれば、子Lx5銀行普通預金口座及び子Nx5銀行普通預金口座に係る各取引は、本件被相続人が子L及び子Nの各名義を使って行ったものである。

F x5銀行○○支店の子L名義の定期預金口座(番号○○○○及び○○○○に係るもの)及び子N名義の定期預金口座(番号○○○○及び○○○○に係るもの)に係る各通知・定期性預金取引明細表並びに子Lx5銀行普通預金口座及び子Nx5銀行普通預金口座に係る各要払性預金取引明細表によれば、1平成13年10月16日、子Lx5銀行普通預金口座及び子Nx5銀行普通預金口座からそれぞれ4,100,000円、4,200,000円が払い出された後、同支店において子L名義で元金4,100,000円、子N名義で元金4,200,000円の定期預金がそれぞれ預け入れられ、2平成14年2月1日、上記1の各定期預金がそれぞれ解約された後、これらの解約に係る各払戻金が各名義に対応する上記1の各普通預金口座にそれぞれ預け入れられ、3平成15年7月30日、上記1の各普通預金口座から4,000,000円がそれぞれ払い出された後、同支店において子L名義で元金4,000,000円、子N名義で元金4,000,000円の定期預金がそれぞれ預け入れられ、4同年11月4日、上記3の各定期預金がそれぞれ解約された後、これらの解約に係る各払戻金からそれぞれ1,000,000円を除いた金額3,000,162円が各名義に対応する上記1の各普通預金口座にそれぞれ預け入れられていた。
 そして、上記Eのとおり、上記各普通預金口座は、本件被相続人が子L及び子Nの各名義を使っていたと認められるところ、同支店の上記各取引に関し、子L及び子Nが、当審判所に対して、上記のとおり預け入れられた各定期預金については知らない旨それぞれ答述していることからすれば、子L及び子Nの各名義の定期預金に係る各取引は、本件被相続人が子L及び子Nの各名義を使って行ったものである。

(ロ)本件各定期預金の預入状況

上記1の(4)のニの(ヘ)のとおり、本件各定期預金はいずれも本件被相続人名義の預金の払戻金を原資として預け入れられていたところ、その預け入れられた状況は、次のとおりである。

A 別表2の順号3の本件被相続人名義の定期預金口座及び別表3の順号1から4までの本件子供ら名義の各定期預金口座に係るx2銀行○○支店の各「預金取引明細照会(定期性・通知)」並びに別表3の順号5及び6の子K名義及び子M名義の各定期預金口座に係るx5銀行○○支店の各通知・定期性預金取引明細表によれば、平成12年6月28日、x2銀行○○支店において、本件被相続人名義の元金110,000,000円及び元金10,000,000円の各定期預金(元金合計120,000,000円)が解約され、その解約に係る各払戻金等を原資として、同日、同支店において本件被相続人名義の元金60,000,000円の定期預金、本件子供ら名義の元金10,000,000円の各定期預金(別表3の順号1から4までの各定期預金)並びにx5銀行○○支店の子K名義及び子M名義の元金10,600,000円の各定期預金(上記1の(4)のニの(ニ)のとおり平成13年7月3日に解約されて別表3の順号5及び6の定期預金の原資となる各定期預金)が、それぞれ預け入れられた。

B 別表2の順号3の本件被相続人名義の定期預金口座に係るx2銀行○○支店の「預金取引明細照会(定期性・通知)」、別表2の順号7の本件被相続人名義の定期預金口座に係るx6銀行○○支店の定期性預金取引印鑑票(平成13年6月28日に当該定期預金口座に元金10,000,000円の定期預金が預け入れられたことが記載されているもの)及び別表3の順号7から10までの同支店の本件子供ら名義の定期預金口座に係る各通帳によれば、同日、上記Aで預け入れられたx2銀行○○支店の本件被相続人名義の元金60,000,000円の定期預金が解約され、その解約に係る払戻金を原資として、同日、同支店において別表2の順号3の本件被相続人名義の元金10,000,000円の定期預金が、x6銀行○○支店において、別表2の順号7の本件被相続人名義の定期預金及び別表3の順号7から10までの本件子供ら名義の元金10,000,000円の各定期預金が、それぞれ預け入れられた。

C x2銀行○○支店の本件被相続人名義の普通預金口座(番号○○○○)に係る「預金取引明細照会(流動性)」、x1銀行○○支店の子N名義の普通預金口座(番号○○○○)に係る普通預金取引明細表及び別表3の順号11の子N名義の定期預金口座に係る通帳によれば、平成15年2月19日、x2銀行○○支店の本件被相続人名義の上記普通預金口座から10,000,000円が払い出され、同日、x1銀行○○支店の子N名義の上記普通預金口座に本件被相続人から10,000,000円が振り込まれた後、同月20日、同普通預金口座から同額が払い出されて別表3の順号11の子N名義の元金10,000,000円の定期預金が預け入れられた。
 また、別表2の順号9の本件被相続人名義の定期預金口座に係るx1銀行○○支店の定期預金取引明細表によれば、別表2の順号9の本件被相続人名義の元金10,000,000円の定期預金は平成15年2月19日時点において存在していたが、本件調査担当者が同支店を調査した結果、同日時点において、同支店に子N名義の定期預金は預け入れられていなかった。

(ハ)本件各定期預金の継続手続

A 上記1の(4)のニの(ヘ)のとおり、本件各定期預金の継続手続は本件被相続人又は妻Gにより行われていたところ、x2銀行○○支店、x5銀行○○支店及びx1銀行○○支店の各「受取書」並びにx6銀行○○支店の「集金票」(いずれの書類も渉外担当者が本件自宅を訪れ、継続手続のため本件各通帳を含む通帳を預かり、その預かった通帳を返却したことを示す書類である。)、x2銀行○○支店及びx5銀行○○支店の本件被相続人を担当した渉外担当者の本件調査担当者に対する各申述並びにx1銀行○○支店の本件被相続人を担当した渉外担当者の本件調査担当者に対する各回答書によれば、本件各定期預金の継続手続は、ほとんどの場合、各金融機関の渉外担当者が、毎年、本件各定期預金の満期日が到来する頃に本件被相続人又は妻Gと連絡を取った上で、本件自宅を訪問し、本件被相続人又は妻Gから本件各通帳を預かり、後日、本件自宅において本件各通帳を返却する方法によって行われていた。また、別表2の順号3及び7の本件被相続人名義の各定期預金の継続手続は、本件相続の開始日に至るまで、本件各定期預金のうちx2銀行○○支店及びx6銀行○○支店の各定期預金の継続手続と同様の方法で行われていた。

B 本件各定期預金のうち別表3の順号5及び6のx5銀行○○支店の各定期預金口座に係る各通知・定期性預金取引明細表及び平成16年7月5日、平成17年7月5日、平成18年7月5日及び平成19年7月5日の同支店の各定期預金払戻請求書によれば、別表3の順号5及び6の各定期預金は、平成19年7月5日以降自動継続の定期預金として預け入れられたが、同日以前は預入期間を1年として預け入れられており、平成16年7月5日、平成17年7月5日、平成18年7月5日及び平成19年7月5日の各継続手続において本件各印鑑のうち子K又は子Mの各印鑑が使用されていた。

(ニ)本件各定期預金口座に係る届出住所の変更手続等

A x2銀行○○支店、x6銀行○○支店及びx1銀行○○支店の各届出事項変更届(本件各印鑑のうち各届出名義人に係る印鑑が押印されたもの)並びにx5銀行○○支店の取引印鑑届(住所変更に係る年月日がメモ書されたもの)によれば、1別表3の順号1及び4のx2銀行○○支店の子K名義及び子N名義の各定期預金口座についてはいずれも平成15年6月26日付で、2別表3の順号7、8及び10のx6銀行○○支店の子K名義、子L名義及び子N名義の各定期預金口座についてはいずれも同年7月4日付で、3別表3の順号5のx5銀行○○支店の子K名義の定期預金口座については同月7日付で、4別表3の順号4のx2銀行○○支店の子N名義の定期預金口座については平成17年7月1日付で、5別表3の順号10のx6銀行○○支店の子N名義の定期預金口座については同月7日付で、6別表3の順号11のx1銀行○○支店の子N名義の定期預金口座については平成18年2月28日付で、これらの各名義人の届出住所を変更する旨届け出られていた。
 そして、子L及び子Nが当審判所に対して、実家に住所変更の手続をお願いしていた旨答述し、両人は自ら住所変更の手続をしていないという趣旨の答述をしていること、また、上記1から3までのとおり、子Kについて3回もの住所変更手続が行われているにもかかわらず、子Kは当審判所に対して住所変更の手続を自らしたかどうか覚えていない旨の曖昧な答述をしており、このような答述の状況からすると、子Kが自らは当該手続をしていなかったと推認されるから、上記1から6までの各届出及び各手続は、本件被相続人又は妻Gが本件各印鑑(それぞれの届出の名義人に係るもの)を使用して行ったものである。

B x2銀行、x5銀行及びx6銀行から子Kに対して送付された本件各定期預金のうち子K名義の定期預金に関する各お知らせ文書並びに後記(ヘ)の各申立書によれば、本件子供らは、各金融機関から、本件各定期預金の預入金額、利息金額、満期日等の情報が記載された文書を本件子供らの住所地でそれぞれ受け取っていた。

(ホ)本件子供らに対する本件被相続人の資金贈与

A 子Kに対する贈与
 x2銀行○○支店の本件被相続人名義の普通預金口座(番号○○○○)及び同行○○支店の子K名義の普通預金口座(番号○○○○)に係る各「預金取引明細照会(流動性)」によれば、平成14年4月10日、同行○○支店の本件被相続人名義の上記普通預金口座から10,000,000円が払い出され、同日、同支店から同行○○支店の子K名義の上記普通預金口座に10,000,000円が送金されており、本件被相続人は、同日、子Kに対し、10,000,000円の金員を子K名義の普通預金口座に振り込む方法で贈与したものである。
なお、上記1の(4)のホのとおり、子Kは、本件被相続人から10,000,000円の贈与を受けたとして平成14年分の住宅取得資金等の贈与に係る贈与税の申告をしている。

B 子Nに対する贈与
 別表3の順号11のx1銀行○○支店の子N名義の定期預金口座に係る定期預金取引明細表、同支店の子N名義の普通預金口座(番号○○○○)に係る普通預金取引明細表及びn市p町○丁目に所在するマンション「R」の家屋番号「p町○−○」の建物に係る登記記録の全部事項証明書によれば、平成14年2月20日、x1銀行○○支店の子N名義の上記定期預金口座に預け入れられていた元金32,332,617円の定期預金が解約され、その解約に係る払戻金32,335,765円(定期預金利息を含む。)が、同日、子N名義の上記普通預金口座に一旦預け入れられた後、同額の現金が払い出されている。そして、子Nは、同年3月17日に上記マンションを購入しているところ、子Nが、当審判所に対し、マンション販売業者の口座か子N名義の口座かは定かではないが、口座振込の方法で約30,000,000円の送金を受けた旨答述していることからすれば、本件被相続人は、同年2月20日頃、子Nに対し、上記払戻金を原資として約30,000,000円の金員を販売業者の預金口座又は子N名義の預金口座に振り込む方法で贈与したものである。

C 子Lに対する贈与
 x2銀行○○支店の本件被相続人名義の普通預金口座(番号○○○○)及び子L名義の普通預金口座(番号○○○○)に係る各「預金取引明細照会(流動性)」によれば、平成17年7月7日、同支店の本件被相続人名義の上記普通預金口座から20,000,000円が払い出され、同日、子Lが日常生活で使用している同支店の子L名義の上記普通預金口座に同額が預け入れられているところ、子Lが、当審判所に対し、上記20,000,000円について、「本件被相続人から、『他の兄弟にはマンションを買ってやったりしているのに、お前にはしていないので20,000,000円を渡す。』と言われた。」旨答述していることからすれば、本件被相続人は、同日、子Lに対し、20,000,000円の金員を子L名義の普通預金口座に預け入れる方法で贈与したものである。

(ヘ) 本件子供らが異議審理庁に提出した各申立書

本件子供らは、異議審理庁に対し、平成26年4月24日付で「申立書」と題する書面をそれぞれ提出しているところ、各申立書には、本件子供らが本件被相続人から本件各定期預金のうち自己の名義の定期預金の贈与を受けたこと、本件子供らが自己の住所地で自己の名義の定期預金の更新日及び金額が記載された期日案内の通知を受け取っていたことがそれぞれ記載されている。また、贈与日時について、各申立書には、いずれもおおむね「10年以上前のことで正確な日時は失念したものの、いずれの定期預金も預入日から1カ月から2カ月前後の日」である旨が記載されている(以下、本件子供らが異議審理庁に提出した各申立書を「本件各申立書」という。)。

ロ 判断

相続財産である預貯金等の帰属については、一般的にはその名義人に帰属するのが通常であるが、預貯金等については別の名義への預け替えが容易にできることから、単に名義人が誰であるかという形式的事実のみにより判断するのではなく、その原資となった金員の出えん者、その管理、運用の状況、贈与の事実の有無等を総合的に勘案して預貯金等の帰属を判断するのが相当であると解される。
 そこで、上記判断基準に基づいて、本件各定期預金の帰属を検討すると、次のとおりである。

(イ)本件各定期預金の預入経緯及び原資の出えん者について

上記イの(イ)のとおり、本件被相続人は平成8年以前から本件子供らの名義を使って金融取引を行っていたところ、上記イの(ロ)のとおり、本件各定期預金は、本件被相続人の金融資産を原資として、上記1の(4)のニの(イ)から(ホ)までの各取引(平成12年6月から平成15年2月までの期間の取引)により、金融機関及び預入名義を分散する形でそれぞれ預け入れられ、最終的に金融機関4行に元金10,000,000円の各定期預金として預け入れられた。
 そして、上記預入手続の際に、本件子供ら名義の元金10,000,000円の各定期預金の預入れに合わせて、x2銀行○○支店及びx6銀行○○支店で本件被相続人名義の元金10,000,000円の各定期預金が預け入れられたものがあり、また、本件各定期預金のうちには元金10,600,000円であった定期預金を減額して元金10,000,000円の定期預金として預け入れられたものがあるところ、本件各定期預金のうち別表3の順号11の定期預金を除く各定期預金及び本件被相続人名義の上記各定期預金が預け入れられた平成12年6月、平成13年6月又は同年7月という時期は、平成12年5月の平成12年法律第93号による預金保険法等の改正の直後に当たる(この改正により、平成13年3月末までを期限として行われていた預金等の全額保護の特例措置(いわゆるペイオフの凍結)がその期限を1年延長されることになり、また、平成14年4月1日以降は、金融機関別、預金者別に定期預金については元金10,000,000円の範囲で保護されることになった。)。そして、本件各定期預金のうち別表3の順号11の定期預金を除く各定期預金及び本件被相続人名義の上記各定期預金が、x2銀行○○支店の本件被相続人名義の大口の定期預金を金融機関及び預入名義を分散する形で、いずれも平成14年4月1日以降に預金保険法による保護の対象となる定期預金の元金の上限額10,000,000円の定期預金として預け入れられていることに鑑みると、本件各定期預金のうち別表3の順号11の定期預金を除く各定期預金及び本件被相続人名義の上記各定期預金は、ペイオフ対策として、本件被相続人名義の大口の定期預金を金融機関及び預入名義を分散して預け替えられたことが推認される。
 さらに、別表3の順号11のx1銀行○○支店の子N名義の定期預金は、本件被相続人名義の普通預金口座の預金を原資として預け入れられたもの(上記イの(ロ)のC)であるが、本件被相続人名義の普通預金口座から払い出した平成15年2月19日時点では、同支店において既に元金10,000,000円の本件被相続人名義の定期預金(別表2の順号9の定期預金)はあったものの、子N名義の定期預金は預け入れられていなかったこと、また、別表3の順号11の定期預金が元金を10,000,000円として預け入れられていることからすると、子N名義の上記定期預金もペイオフ対策として預け入れられたことが推認される。
 このように、本件被相続人が平成8年以前から本件子供らの名義を使った金融取引を行っていた状況、本件各定期預金が本件被相続人の金融資産を原資としてペイオフ対策として預け入れられた状況からすると、本件被相続人は、自らの預金の管理について、ペイオフ対策を念頭に置き本件子供らの名義を使って本件各定期預金をそれぞれ預け入れたものと認められる。

(ロ)本件各通帳及び本件各印鑑の管理状況について

A 上記イの(ハ)のA及び(ニ)のAのとおり、本件子供らが各金融機関に赴き又はその担当者と面接して本件各定期預金に係る継続手続及び届出住所の変更手続を行った事実はない。本件各通帳及び本件各印鑑を使用して行う上記各手続の状況は、1本件各定期預金の各預入日から本件相続の開始日までの間、おおむね1年を経過するごとに各金融機関の渉外担当者が本件自宅を訪問した上で本件被相続人又は妻Gから本件各通帳を預かる方法によって本件各定期預金の継続手続が行われていた(上記1の(4)のニの(ヘ)及び上記イの(ハ)のA)、2少なくとも平成16年7月5日、平成17年7月5日、平成18年7月5日及び平成19年7月5日において、本件各定期預金のうち別表3の順号5及び6のx5銀行○○支店の各定期預金については、本件各通帳のうち子K及び子Mの各通帳のみならず本件各印鑑のうち子K及び子Mの各印鑑を使用して継続手続が行われていた(上記イの(ハ)のB)、3平成15年6月26日、同年7月4日、同月7日、平成17年7月1日、同月7日及び平成18年2月28日において、本件各印鑑のうち子Mの印鑑を除いた各印鑑を使用して本件各定期預金の預入先金融機関に対する届出住所の変更手続がそれぞれ行われていた(上記イの(ニ))というものであった。また、上記(イ)の本件各定期預金の預入経緯に照らせば、妻Gが行った継続手続は本件被相続人の指示の下で行われていたものと推認されることから、上記1から3までの状況は、本件相続の開始日に至るまでの間、本件各通帳又は本件各印鑑を使用した上記各手続が本件被相続人又は本件被相続人の指示を受けた妻Gの下で継続的に行われていたことを示すものというべきである。
 ところで、上記イの(イ)のEのとおり、子Lx5銀行普通預金口座及び子Nx5銀行普通預金口座の各届出印は、本件各印鑑のうち子L及び子Nの各印鑑であり、かつ、子L及び子Nが当審判所に対していずれも当該各普通預金口座は本件被相続人が管理していた口座である旨答述していること、一般に、預金の管理者は同預金に係る通帳と印鑑の両方をまとめて管理しているのが実情と考えられることからすると、本件被相続人は、当該各口座が解約された平成17年10月27日まで本件各印鑑のうち子L及び子Nの各印鑑を管理していたと認められる。そして、本件被相続人又は本件被相続人の指示を受けた妻Gの下で当該各印鑑を使用して行われた上記3の手続を行うに当たり、同日以降本件相続の開始日までの期間において、証拠上、当該各印鑑の管理形態(本件被相続人による管理)が同日以前と以後で変更されたことを示す客観的事実は認められないから、本件各印鑑は、本件各通帳とともに本件相続の開始日に至るまで本件被相続人の管理下にあったものと認められる。

B これに対し、請求人らは、上記2の(1)の「請求人ら」欄のイ及びロのとおり、本件子供らは、平成12年から平成15年までの間に、本件被相続人からそれぞれ本件各通帳及び本件各印鑑を渡され、その後、本件被相続人又は妻Gに本件各印鑑を渡したことはあったが、本件各印鑑を両人に渡したままにしていたことはないとして、本件子供らは本件各通帳及び本件各印鑑を管理していた旨主張し、当審判所に対し、本件各申立書を提出するとともに、当該主張の趣旨に沿った答述をする。
 しかしながら、本件各申立書には、本件各通帳及び本件各印鑑を本件被相続人から渡された時期について、上記イの(ヘ)のとおり、いずれもおおむね「10年以上前のことで正確な日時は失念したものの、いずれの定期預金も預入日から1カ月から2カ月前後の日」である旨が記載されているにもかかわらず、請求人らの当審判所に対する各答述は、いずれも本件被相続人が本件子供らに対して本件各通帳及び本件各印鑑を渡したとする具体的な時期のみならず回数さえ不明であるという曖昧なものである。さらに、本件各申立書においてこれらを渡された時期をある程度限定した根拠さえ全く明らかにしないものである上、本件各申立書に本件各印鑑を渡されたと記載された時期は、いずれも上記イの(イ)のEのとおり、本件各印鑑のうち子L及び子Nの各印鑑が平成17年10月27日の時点で本件被相続人の管理下にあったという客観的状況(上記Aのとおり、本件各印鑑のうち子K及び子Mの各印鑑も同様であったと認められる。)と矛盾するから、本件各申立書及び本件子供らの各答述のうち本件各印鑑を渡された時期に関する部分は信用できない。
 以上のとおり、請求人らが主張する時期に本件被相続人が本件各通帳及び本件各印鑑を本件子供らに渡した事実はないというべきであるから、請求人らの主張はその前提を誤っている。

(ハ)本件各定期預金の贈与の有無について

A 上記イの(ホ)のとおり、本件被相続人は、子K及び子Nにおいて住宅の取得という資金需要が生じた際には、これらの者が使用している普通預金口座又は関係者の口座に直接資金を振り込む方法により必要な資金を贈与し、また、子Lに対しては、子Lが日常生活で使用している普通預金口座に資金を預け入れる方法で資金の贈与をしていることからすると、本件被相続人は、実際に資金を贈与する場合には、その資金贈与の目的に応じて、受贈者がその資金を自由に処分できるような状況にして贈与していたことが認められる。
 他方、上記(イ)のとおり、本件各定期預金は本件被相続人がペイオフ対策を念頭に置いて本件子供らの名義を使ってそれぞれ預け入れられたもので、かつ、上記(ロ)のAのとおり、本件各通帳及び本件各印鑑は本件相続の開始日に至るまで一貫して本件被相続人の下で管理されていたものであるから、本件各定期預金は、本件子供らの処分可能な状況にあったということはできない。
 以上のとおり、本件被相続人が実際に資金の贈与をした場合のその後の財産の状況と本件各定期預金の管理の状況は全く異なるものであり、このような事実からすると、本件被相続人が、本件各定期預金を本件子供らに贈与していたと認められる状況にはないというべきである。

B これに対し、請求人らは、上記2の(1)の「請求人ら」欄のイ及びハのとおり、1本件各定期預金は、平成12年から平成15年までの間に、本件被相続人から本件子供らに対して本件各通帳及び本件各印鑑を渡す方法により贈与されたものである旨主張し、また、2本件各定期預金以外の金融資産の贈与と本件各定期預金とを区別する理由はなく、修正申告の勧奨経緯や別表4各定期預金及び子Mx1銀行定期預金に係る贈与認定を根拠として、本件各定期預金についてのみ贈与がなかったとする原処分庁の認定は誤っている旨主張する。
 しかしながら、上記(ロ)のAのとおり、請求人らが主張する時期に本件被相続人が本件各通帳及び本件各印鑑を本件子供らに渡した事実はないから、上記1の主張は前提を誤っている。
 また、修正申告の勧奨経緯や別表4各定期預金及び子Mx1銀行定期預金の帰属については、本件各定期預金の帰属の判断を直接左右するものではなく、本件被相続人が本件各定期預金を本件子供らに贈与した事実はないことは上記Aのとおりである。
 したがって、これらの点に関する請求人らの主張には理由がない。

(ニ)本件各定期預金の帰属

上記(イ)から(ハ)までのとおり、1本件被相続人が自ら資金を出えんし、ペイオフ対策を念頭に置いて本件子供らの名義を使って本件各定期預金を預け入れた状況、2本件各通帳及び本件各印鑑が本件相続開始時点まで本件被相続人の下で管理されていた状況、3本件被相続人の生前に本件各定期預金が本件子供らへ贈与された事実はないことからすると、本件各定期預金は、各預入日から本件相続の開始日までの間一貫して本件被相続人が管理、運用してきたものであり、本件被相続人に帰属する相続財産と認められる。

(2)争点2(仮に、本件各定期預金が本件相続に係る相続財産に当たる場合において、本件各定期預金は、本件条項に基づき妻Gが本件相続により取得することになるのか否か。)

イ 認定事実

(イ)本件分割協議書の記載状況並びに妻G及び本件関与税理士の当審判所に対する各答述によれば、1妻Gは本件関与税理士に対して本件被相続人の遺産に係る分割協議書の作成を依頼し、請求人らの話し合いによって金融資産については法定相続分に従って分割することになったこと、2本件関与税理士は、妻Gから聴き取りした内容に従って本件分割協議書の原案を作成し、本件条項を設けたが、これは、請求人らの積極的な意向によるものではなく、本件関与税理士の判断によるものであったこと、3本件関与税理士は、例示として掲げられている現金や家庭用財産は妻Gが取得し、また、その他に少額の預貯金等の存在が判明した場合に遺産分割の再協議を行う必要が生じないようにするという趣旨で本件条項を設けたこと、4本件関与税理士と妻Gとの間において本件条項の具体的な意味内容について話されたことはなく、請求人ら間においても本件条項の具体的な意味内容を協議したことはなかったことが認められる。

(ロ)本件分割協議書には、本件被相続人の相続財産に係る積極的財産である国債及び預貯金(各相続人ごとに法定相続分に従って各人が取得する金額がそれぞれ記載されている。)並びに不動産及び医療用器具など(各相続人ごとに各人が取得する財産が具体的に記載されている。)の取得状況及び消極的財産である債務についての負担者が記載され、また、相続税法第3条《相続又は遺贈により取得したものとみなす場合》第1項第1号に規定する生命保険契約の保険金の取得状況及び同法第13条《債務控除》第1項第2号に規定する葬式費用の負担者も記載されており、平成24年1月3日付で請求人らの署名、押印がされている(以下、上記生命保険契約の保険金を「本件みなし相続財産」という。)。
 本件分割協議書には、別表2記載の本件被相続人名義の預貯金について、妻Gが取得する預貯金が64,239,295円、本件子供らがそれぞれ取得する預貯金が16,034,824円と記載されているところ、本件関与税理士の当審判所に対する答述によれば、上記64,239,295円という金額は、本来、別表2の「合計」欄の金額128,278,591円について、請求人らの意思に従って妻Gの法定相続分2分の1を乗じて算出した金額64,139,295円(1円未満の端数を切り捨てた金額)が妻Gが取得する預貯金の額として本件分割協議書に記載されることになるが、本件関与税理士が上記金額64,139,295円に現金100,000円を加算した金額64,239,295円を妻Gが取得する預貯金の金額として本件分割協議書に記載したものと認められる。

(ハ)本件申告書の第11表(相続税がかかる財産の明細書)及び第13表(債務及び葬式費用の明細書)には、本件分割協議書に記載された財産等がその取得者又は負担者ごとに記載されており、このうち、本件条項に例示として掲げられた現金(100,000円)及び家庭用財産(評価額2,000,000円)はいずれも妻Gが取得する財産として記載され、また、妻Gが取得した預貯金の金額は、本件分割協議書の記載にかかわらず、別表2の「合計」欄の金額の2分の1に相当する金額64,139,295円と記載されている。

ロ 判断

(イ)争点について
 共同相続人間で行われる協議による遺産分割は、協議によって各遺産の取得者を定め、遺産の承継手続等のために、多くの場合、その協議の結果を遺産分割協議書と題する書面に記録するという方法が採られている。この場合、同協議書に個別的な記載がされなかった主要な相続財産以外の財産について、再度の遺産分割協議を行わなくても済むように、同協議書に個別的な記載のない財産の帰属者についても触れておくということが実務上見受けられ、本件分割協議書の本件条項もそのような趣旨で記載されたものと推測される。したがって、一般的には、本件分割協議書に記載のない財産については、本件条項によって妻Gに帰属すると考えられる。
 しかしながら、上記イの(イ)のとおり、本件条項は、妻Gから本件被相続人の遺産に対する請求人らの分割方針を聴き取りした本件関与税理士が、特に妻Gの意向を確認することもなく自らの判断により設けたものであり、本件関与税理士と妻Gとの間で具体的な意味内容について話されたことはなかった。また、請求人ら間においてもその具体的な意味内容についての協議はなされていなかったのであるから、本件各定期預金が本件被相続人の相続財産であると認定されたとしても、本件条項に妻Gが取得する財産として「現金、家庭用財産など上記相続人が取得する以外の全財産」と記載されていることのみをもって、直ちに妻Gが本件各定期預金を取得することになると断定することはできない。
 そこで、本件各定期預金が本件条項にいう「全財産」に含まれるか否かを検討したところ、次のとおりである。
 一般に、個別的財産の遺産分割を定める条項により各人が取得する財産以外の財産を一部の者に取得させる旨の本件条項のようなものは、個別的財産の遺産分割による取得を定めた条項を設けた上での補充的なものであって、失念していた財産や家財道具を被相続人と同居していた家族等の適当な者に取得させるために用いられるものと考えられ、個別的な記載のない相当高額な財産については、当該補充的条項にその高額な財産をも含める旨合意されているなどの特別の事情がない限り、含まれないと解するのが自然である。
 本件において、上記のとおり、請求人ら間において本件条項の具体的な意味内容についての協議はなされておらず、本件分割協議書の作成時に、請求人らにおいて本件各定期預金を妻Gに取得させるという積極的な言動も見当たらなかった。また、本件分割協議書により妻Gが取得した預貯金の金額は64,139,295円であるのに対し、本件各定期預金の金額が111,445,006円に上ることに鑑みると、上記イの(イ)及び(ロ)のとおり金融資産について法定相続分に従って分割するという意思を有していた請求人らが、その意思に沿って妻Gに預貯金64,139,295円を取得させることに加えて、それをはるかに超える金額の本件各定期預金をも妻G一人に取得させる意思を有していたとは考え難い。
 これらの本件条項に関する請求人ら間の協議状況及び請求人らの意思を勘案すると、請求人ら間において、本件分割協議書の作成時に、本件各定期預金について、本件条項によって妻Gが取得することの合意があったと認めることはできない。
 したがって、本件各定期預金は、本件条項に基づき妻Gが取得すると解することはできない。

(ロ)原処分庁の主張について
 原処分庁は、上記2の(2)の「原処分庁」欄のとおり、本件分割協議書には本件子供らが取得する財産として本件各定期預金が記載されていない上、本件条項に妻Gが取得する財産として本件子供らが取得する以外の全財産と定められている以上、本件各定期預金は、本件条項に基づき妻Gが取得することになる旨主張する。
 しかしながら、遺産分割協議は、相続人らの遺産に対する権利の帰属を定める相続人間の合意であり解釈の余地があるものであるから、たとえ本件条項に形式的に「上記相続人が取得する以外の全財産」との文言があったとしても、それのみをもって本件各定期預金が妻Gに帰属すると解することは妥当ではない。本件各定期預金につき本件条項の適用があるとするためには、本件分割協議書の作成時に、請求人らの間において、本件各定期預金について本件条項の「全財産」に当たる旨の合意が認められることが必要であるところ、上記(イ)のとおり、請求人ら間においてこのような合意が成立していたとは認められない。
 したがって、この点に関する原処分庁の主張には理由がない。

(3)争点3(仮に、本件各定期預金が本件相続に係る相続財産に当たる場合において、本件各定期預金を申告しなかった請求人らの行為は、通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たすか否か。)

イ 法令解釈

通則法第68条第1項は、過少申告をした納税者が、その国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、その納税者に対して重加算税を課すことを規定している。この重加算税制度は、納税者が過少申告をするについて隠ぺい、仮装という不正手段を用いていた場合に、過少申告加算税よりも重い行政上の制裁を課することによって、悪質な納税義務違反の発生を防止し、もって申告納税制度による適正な徴税の実現を確保しようとするものである。
 したがって、重加算税を課すためには、納税者のした過少申告行為そのものが隠ぺい、仮装に当たるというだけでは足りず、過少申告行為そのものとは別に、隠ぺい、仮装と評価すべき行為が存在し、これに合わせた過少申告がされたことを要するものである。しかし、上記の重加算税制度の趣旨に鑑みれば、架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在したことまで必要であると解するのは相当でなく、納税者が当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたような場合には、重加算税の賦課要件が満たされる。
 また、通則法第68条第1項は、重加算税の賦課要件として、隠ぺい又は仮装行為の行為者について「納税者」と規定しているところ、ここにいう「納税者」には、申告手続を行う受任者の選任及び監督について、納税者に過失がないと認められる等の特段の事情がある場合を除き、納税者本人だけでなく、納税者と同視可能である者(納税者が申告を委任した第三者)も含まれるのが原則である。したがって、納税者が委任した第三者が、その申告手続に関し、国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺい又は仮装した場合も、納税者の隠ぺい、仮装行為に該当するということになる。

ロ 認定事実

(イ)相続税の申告に係る妻Gへの委任
 妻Gは、本件調査担当者に対して「本件子供らから相続税の申告を任され、本件関与税理士に依頼して申告しました。」旨の申述をしていることから、妻Gは、本件子供らから本件相続に係る相続税の申告手続を委任されたことが認められる。また、本件申告書に添付された税理士法第30条《税務代理の権限の明示》に規定する「税務代理権限証書」(本件関与税理士が依頼者から同法第2条《税理士の業務》第1項第1号に規定する税務代理を委任されたことを示す書面)の依頼者欄には、妻Gの住所及び「被相続人J相続人代表G」と記載されて押印されている。したがって、妻Gは、本件子供らからの委任に係る分も含めて申告書の作成等の具体的な申告手続を本件関与税理士に委任したことが認められる。
 そして、上記(1)のロの(ロ)のAのとおり、妻Gは本件被相続人の指示の下で本件被相続人名義の定期預金及び本件各定期預金の継続手続を行っていたことに加え、妻Gが、当審判所に対して、本件被相続人の金融資産の管理及び所在に関して、本件被相続人は自らが管理していた黒いカバンの中に全ての通帳を入れ、また、印鑑はそれとは別の袋に入れていたという趣旨の具体的な答述をしていることからすると、本件被相続人と同居していた妻Gは、本件相続の開始日に至るまで、請求人らの中で本件被相続人の財産の状況を最もよく把握し得る立場にあったことが認められ、それゆえ本件子供らは妻Gに相続税の申告手続を委任したものと認められる。
 このような状況からすると、本件子供らは、妻Gに対して単に相続税の申告手続を委任したに留まらず、申告の前提となる相続財産の調査も委任していたと推認される。

(ロ)本件各定期預金に関する請求人らの認識

A 妻G
 本件各定期預金は、上記(1)のロの(ロ)のAのとおり、本件被相続人の下で管理されていた本件各通帳及び本件各印鑑を使用して運用されていたことからすると、妻Gは、本件相続の開始日において本件各定期預金が存在すること、そして、本件各定期預金が本件被相続人に帰属する相続財産であることを認識していたものと認められる。
 なお、妻Gは、本件申告書の提出前に、本件各定期預金の存在を本件関与税理士には告げていない。

B 本件子供ら
 上記(1)のイの(ニ)のBのとおり、本件子供らは本件各定期預金の各預入時から本件相続の開始日までの期間において、各金融機関から本件各定期預金のうち自己の名義に係る定期預金の預入金額等を記載した文書をそれぞれ受け取っていたこと、上記(1)のイの(ロ)、(ハ)のA及び(ニ)のAのとおり、本件子供らは本件各定期預金に係る預入手続等の各手続を行ったことはなかったこと、上記(1)のロの(ロ)のAのとおり、本件子供らは本件相続の開始日まで本件各通帳及び本件各印鑑を自ら管理していなかったことがそれぞれ認められる。そして、子L及び子Nが、当審判所に対し、いずれも自己の名義で本件被相続人が預金をしていたことを子供の頃に本件被相続人から聞いていた旨答述し、また、子K及び子Mも、当審判所に対し、自己の名義で本件被相続人が預金をしていたことを結婚する前又は大学に合格した頃に本件被相続人から聞いていたという趣旨の答述をそれぞれしていることからすると、本件子供らは、本件相続の開始日において、本件各定期預金のうち少なくとも自己の名義の定期預金が存在すること及び当該各定期預金が本件被相続人に帰属する財産であることを認識していたものと認められる。

(ハ)本件各定期預金に関する妻Gの申述
 妻Gは、本件調査において、本件調査担当者に対し、本件被相続人は、10年くらい前に本件子供らに対して本件各定期預金のうちそれぞれの名義の定期預金を贈与した旨申述した。

(ニ)本件各定期預金に関する本件子供らの答述
 本件子供らは、当審判所に対し、いずれも本件各定期預金については、遺産分割に当たり他の相続人又は本件関与税理士と何も話していない趣旨の答述をした。

ハ 判断

(イ)請求人らの隠ぺい行為について

A 妻Gに係る隠ぺい行為
 上記ロの(ロ)のAのとおり、妻Gは本件各定期預金が本件被相続人に帰属する相続財産であることを認識していながら、あえてこれを本件関与税理士には告げず、その上で、本件各定期預金が本件子供らの名義であって名義上本件被相続人に帰属しないかのような外形を備えていたことから、これが記載されていない本件分割協議書を本件申告書に添付して相続税の過少申告に及んだものである。そして、上記ロの(ハ)のとおり、本件調査の際にも、本件各定期預金が既に贈与されたものであるという根拠のない答弁を行うなど、真実の相続財産の価額を隠ぺいする態度をできる限り貫こうとしているのである。妻Gのこのような行為は、当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告を行ったものと認められる。
 そうすると、妻Gは、相続税の課税価格の計算の基礎となるべき事実を隠ぺいしたものと認められる。

B 本件子供らに係る隠ぺい行為
 上記ロの(ロ)のBのとおり、本件子供らは本件各定期預金のうち自己の名義の定期預金が本件被相続人に帰属する相続財産として存在していることを認識しながらこれを本件関与税理士に告げず、また、上記(2)のイの(ロ)のとおり、本件各定期預金が記載されていない本件分割協議書を本件申告書に添付して相続税の過少申告に及んだものである。したがって、本件子供らは、本件各定期預金の総額のうち、少なくとも自己の相続分に相当する部分については隠ぺい行為があったと認められる。
 また、上記ロの(イ)のとおり本件子供らは、本件被相続人の財産の把握及び相続税の申告手続を妻Gに委任していたところ、妻Gが、本件各定期預金の全部について隠ぺい行為を行ったことは上記のとおりである。そうすると、本件において、本件子供らが、相続税の申告手続を妻Gに委任したことについて、その選任及び監督につき過失がないと認められる特段の事情はないから、本件子供ら各人には、本件各定期預金の全部の隠ぺいがあったと認められる。

C 重加算税の賦課要件の充足性
 したがって、本件各定期預金を申告しなかった請求人らの行為は、通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たす。

(ロ)請求人らの主張について

請求人らは、上記2の(3)の「請求人ら」欄のとおり、本件被相続人から、本件各通帳及び本件各印鑑を渡される方法で本件各定期預金の贈与を受けており、本件調査担当者に対し事実と異なる申述をしたことはなく、請求人らにおいて隠ぺい又は仮装と評価される行為はない旨主張する。
 しかしながら、上記(1)のロの(ハ)のAのとおり、本件被相続人が本件各定期預金を本件子供らに対して贈与した事実はなかったから、請求人らの主張は前提を誤っている。
 したがって、この点に関する請求人らの主張には理由はない。

(4)本件各更正処分

イ 上記(1)のロの(ニ)のとおり、本件各定期預金は本件相続に係る相続財産となるところ、上記(2)のロの(イ)のとおり請求人らにおいて本件各定期預金について本件条項を適用する旨の合意はなく、証拠上、その他に請求人らにおいて本件各定期預金について分割協議が行われた事実も認められないから、本件各定期預金は、相続税法第55条《未分割遺産に対する課税》に規定する未分割財産に該当する。
 そして、相続税法第55条は、相続により取得した財産の全部又は一部が分割されていないときは、未分割財産については、各共同相続人が民法第900条《法定相続分》から第903条《特別受益者の相続分》までの規定による「相続分の割合」に従って当該財産を取得したものとして相続税の課税価格を計算する旨規定しているところ、「相続分の割合」とは、共同相続人が他の共同相続人に対してその権利を主張することができる持分的な権利の割合をいうものと解するのが相当であり、相続財産の一部が分割され、残余が未分割である場合には、各共同相続人は、他の共同相続人に対し、相続財産全体に対する自己の相続分に応じた価額相当分から、既に分割を受けた相続財産の価額を控除した価額相当分についてその権利を主張できるものと解される。
 そうすると、相続財産の一部が分割され、残余が未分割である場合には、既に分割により取得した財産の価額が、相続財産全体に対する民法の法定相続分の割合に応ずる価額を超えている者については未分割財産に係る相続分はないものとし、相続財産全体に対する民法の法定相続分の割合に応ずる価額に満たない者については未分割財産に係る相続分を有するものとして、未分割の相続財産の配分額を算定することとなる。

ロ そこで、未分割の相続財産の配分額の算定に当たっては、まず、請求人らが分割により取得した財産の価額を算定することが必要となるところ、請求人らが申告した取得財産の価額(別表5の1欄の金額)のうちには相続税法の規定により相続により取得したものとみなされる財産(本件みなし相続財産)の価額(別表5の2欄の金額)が含まれているから、これを控除するのが相当である。
 また、請求人らが分割が確定した財産として申告している別表2の順号8のx1銀行○○支店の普通預金口座の金額について、上記1の(4)のハの(イ)のとおり、本件相続の開始日における当該普通預金口座の残高は8,708,479円(残高証明書記載金額)であるのに対し、請求人らが申告した当該普通預金口座の金額は7,785,728円(別表2の順号8の金額)であるから、差額の922,751円が申告漏れとなっている。当審判所の調査の結果によれば、これは、本件関与税理士が遺産分割協議の対象となる各財産の金額を確定する際に、当該普通預金口座に係る通帳の残高(平成23年2月13日時点の残高)で金額を確認したことに基因する誤りで、遺産分割の対象とされていない財産に係る申告漏れではないこと、そして、上記(2)のイの(イ)のとおり請求人らが当該普通預金口座の預金を含む別表2の預貯金の全てについて法定相続分に従って分割することを合意していたことに鑑みると、請求人らは、上記申告漏れの金額922,751円を含めた上で法定相続分に従って当該普通預金口座の預金を分割する旨合意したものと認められる。
 そうすると、上記申告漏れの金額922,751円は、上記合意に基づいて、別表5の3欄のとおり、妻Gが461,375円を、本件子供らが各115,344円をそれぞれ取得したとみるのが相当である。
 以上を前提として、請求人らが分割により取得した財産の価額を算定すると、別表5の4欄の各金額のとおりとなる。

ハ 上記ロの請求人らが分割により取得した財産の価額の合計額○○○○円(別表5の4欄の「合計」欄の金額)に、本件各定期預金の価額111,445,006円(別表5の5欄の金額)を加算して、遺産分割の対象となる相続財産の価額を算定すると○○○○円(別表5の6欄の金額)となるから、当該金額について上記イの方法により未分割の相続財産(本件各定期預金)の請求人らへの配分額を算定すると、別表5の10欄のとおり、妻Gが○○○○円、子Kが○○○○円、子Lが○○○○円、子Mが○○○○円及び子Nが○○○○円となる。

ニ 上記ロ及びハで認定した請求人らが分割により取得した財産の価額及び本件各定期預金の価額の請求人らへの配分額を前提として、本件相続に係る相続税の請求人らの納付すべき税額を算定すると、別表6の11欄のとおり、妻Gが○○○○円、本件子供らがいずれも○○○○円となる。
 そうすると、本件子供らの納付すべき税額は、本件子供らに対する各更正処分のそれをいずれも上回るから、本件子供らに対する各更正処分はいずれも適法となるが、妻Gの納付すべき税額は、妻Gに対する更正処分のそれを下回るから、妻Gに対する更正処分は、その一部を別紙2の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。

(5)本件各賦課決定処分

イ 本件子供ら
 上記(4)のニのとおり、本件子供らに対する各更正処分はいずれも適法であり、また、上記(3)のハの(イ)のCのとおり、本件各定期預金を申告しなかった本件子供らの行為は、通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たしているところ、当審判所が、重加算税の計算の基礎となるべき税額を計算すると、別表7のC欄のとおりとなり、これらの金額は、本件子供らに対する各賦課決定処分のそれをいずれも上回るから、同項の規定に基づいてされた本件子供らに対する重加算税の各賦課決定処分はいずれも適法である。

ロ 妻G
 上記(4)のニのとおり、妻Gに対する更正処分の一部が取り消されることに伴い、妻Gの納付すべき税額は○○○○円となる。
 そして、上記(3)のハの(イ)のCのとおり、本件各定期預金を申告しなかった妻Gの行為は、通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たしているところ、当審判所が、重加算税の計算の基礎となるべき税額を計算すると、別表7の4欄のとおり○○○○円となり、同項の規定に基づいて計算した重加算税の額は○○○○円となる。
 また、上記(4)のロのとおり、x1銀行○○支店の本件被相続人名義の普通預金922,751円が申告漏れとなっていることに伴い、妻Gの過少申告加算税の計算の基礎となるべき税額は、別表7の3欄のとおり○○○○円となり、この基礎となるべき税額の計算の基礎となった事実が妻Gに対する更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、通則法第65条第4項に規定する正当な理由があると認められるものがある場合には当たらないから、同条第1項の規定に基づいて、妻Gに対する過少申告加算税相当額を計算すると○○○○円となる。
 そうすると、上記のとおり計算した妻Gに対する重加算税の額と過少申告加算税相当額との合計額○○○○円は、妻Gに対する重加算税の額を下回るから、妻Gに対する重加算税の賦課決定処分は、その一部を別紙2の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。

(6)その他

原処分のその他の部分については、請求人らは争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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