別紙2 関係法令等の要旨

1 不動産所得(争点1)に関するもの

(1)所得税法第26条《不動産所得》第1項は、不動産所得とは、不動産、不動産の上に存する権利、船舶又は航空機の貸付けによる所得をいう旨規定し、同条第2項は、不動産所得の金額は、その年中の不動産所得に係る総収入金額から必要経費を控除した金額とする旨規定している。

(2)所得税法第37条《必要経費》第1項は、その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする旨規定している。

(3)所得税法第45条《家事関連費等の必要経費不算入等》第1項は、居住者が支出する家事上の経費及びこれに関連する経費で政令で定めるもの(第1号)の額は、その者の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入しない旨規定している。

(4)所得税法第38条《譲渡所得の金額の計算上控除する取得費》第1項は、譲渡所得の金額の計算上控除する資産の取得費は、別段の定めがあるものを除き、その資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合計額とする旨規定している。

(5)所得税法施行令第181条《資本的支出》は、不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務を行う居住者が、修理、改良その他いずれの名義をもってするかを問わず、その業務の用に供する固定資産について支出する金額のうち、その支出により、当該資産の取得の時において当該資産につき通常の管理又は修理をするものとした場合に予測されるその支出の時における当該資産の価額を増加させる部分に対応する金額(第2号)は、不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入しない旨規定している。

(6)所得税基本通達38−10《土地についてした防壁、石垣積み等の費用》は、埋立て、土盛り、地ならし、切土、防壁工事その他土地の造成又は改良のために要した費用の額はその土地の取得費に算入するのであるが、土地についてした防壁、石垣積み等であっても、その規模、構造等からみて土地と区分して構築物とすることが適当と認められるものの費用の額は、土地の取得価額に算入しないで、構築物の取得費とすることができるとし、専ら建物、構築物等の建設のために行う地質調査、地盤強化、地盛り、特殊な切土等土地の改良のためのものでない工事に要した費用の額は、当該建物、構築物等の取得費に算入する旨定めている。

(7)所得税法第2条《定義》第1項第20号は、繰延資産とは、不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務に関し個人が支出する費用のうち支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶもので政令で定めるものをいう旨規定し、所得税法施行令第7条《繰延資産の範囲》第1項は、上記の「政令で定めるもの」は、個人が支出する費用(資産の取得に要した金額とされるべき費用及び前払費用を除く。)のうち、1開業費(不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を開始するまでの間に開業準備のために特別に支出する費用)(第1号)、2開発費(第2号)を定めるほか、3自己が便益を受ける公共的施設又は共同的施設の設置又は改良のために支出する費用で支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶもの(第3号イ)等をいう旨規定している。

(8)所得税基本通達2−24《公共的施設の設置又は改良のために支出する費用》は、上記(7)の3の自己が便益を受ける公共的施設の設置又は改良のために支出する費用とは、自己の必要に基づいて行う道路、堤防、護岸、その他の施設又は工作物の設置又は改良のために要する費用をいう旨定めている。

(9)所得税法第50条《繰延資産の償却費の計算及びその償却の方法》第1項は、その年12月31日における繰延資産につきその償却費として同法第37条の規定によりその者の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入する金額は、その繰延資産に係る支出の効果の及ぶ期間を基礎として政令で定めるところにより計算した金額とする旨規定している。

(10)所得税法施行令第137条《繰延資産の償却費の計算》第1項第1号は、開業費(上記(7)の1)の償却費について、その開業費の額を60で除し、これにその年において不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務を行っていた期間の月数を乗じて計算した金額とする旨規定した上で、居住者が、当該開業費につきその年分の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額として、当該開業費の額の範囲内の金額をその年分の確定申告書に記載した場合には、開業費の償却費の金額は、この規定にかかわらず、当該金額として記載された金額とする旨規定している(同条第3項)。
 また、自己が便益を受ける公共的施設又は共同的施設の設置又は改良のために支出する費用で支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶもの(上記(7)の3)の償却費については、その繰延資産の額をその繰延資産となる費用の支出の効果の及ぶ期間の月数で除し、業務を行っていた期間の月数を乗じて計算した金額とする旨規定している(同条第1項第2号)。

(11)所得税基本通達50−3《繰延資産の償却期間》は、自己が便益を受ける公共的施設又は共同的施設の設置又は改良のために支出する費用で支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶもの(上記(7)の3)のうち、公共的施設の設置又は改良のために支出する費用で、1その施設又は工作物がその負担をした者に専ら使用されるものである場合の償却期間はその施設又は工作物の耐用年数の70%に相当する年数であるとし、21以外の施設又は工作物の設置又は改良の場合の償却期間はその施設又は工作物の耐用年数の40%に相当する年数による旨定めている。

(12)民法第593条《使用貸借》は、使用貸借は、当事者の一方が無償で使用及び収益をした後に返還をすることを約して相手方からある物を受け取ることによって、その効力を生ずる旨規定している。

2 譲渡所得(争点2及び争点3)に関するもの

(1)所得税法第33条《譲渡所得》第1項は、譲渡所得とは、資産の譲渡による所得をいう旨規定し、同条第3項は、譲渡所得の金額は、その年中の当該所得に係る総収入金額から当該所得の基因となった資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用の額の合計額を控除し、その残額の合計額から譲渡所得の特別控除額を控除した金額とする旨規定している。

(2)所得税法第38条第1項は、譲渡所得の金額の計算上控除する資産の取得費は、別段の定めがあるものを除き、その資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合計額とする旨規定し(再掲。上記1の(4))、同条第2項第2号は、譲渡所得の基因となる資産が家屋その他使用又は期間の経過により減価する資産である場合には、同条第1項に規定する資産の取得費は、同項に規定する合計額に相当する金額から、その取得の日から譲渡の日までの期間のうち、その資産が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の用に供されていた期間以外の期間について、同法第49条《減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法》第1項の規定に準じて政令で定めるところにより計算したその資産の当該期間に係る減価の額を控除した金額とする旨規定している。

(3)所得税法第60条《贈与等により取得した資産の取得費等》第1項第1号は、居住者が贈与、相続(限定承認に係るものを除く。)又は遺贈(包括遺贈のうち限定承認に係るものを除く。)により取得した居住者の有する山林又は譲渡所得の基因となる資産を譲渡した場合における譲渡所得の金額の計算については、その者が引き続きこれを所有していたものとみなす旨規定している。

(4)所得税法施行令第85条《非事業用資産の減価の額の計算》は、所得税法第38条第2項に規定する資産の同項第2号に掲げる期間に係る減価の額は、当該資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の合計額につき、当該資産と同種の減価償却資産に係る所得税法施行令第129条《減価償却資産の耐用年数、償却率等》に規定する耐用年数に1.5を乗じて計算した年数(1年未満の端数は切り捨て)により同施行令第120条《減価償却資産の償却の方法》第1項第1号イ(1)に規定する旧定額法に準じて計算した金額に、当該資産の当該期間に係る年数(6月以上の端数は1年とし、6月に満たない端数は切り捨て)を乗じて計算した金額とし、この場合において、当該資産と同種の減価償却資産が同施行令第134条《減価償却資産の償却累積額による償却費の特例》第1項第1号イに掲げる減価償却資産に該当する場合には、当該計算した金額は、当該イに定める金額を限度とする旨規定している。

(5)租税特別措置法(昭和63年法律第4号による改正前のものをいい、以下、別紙2内において「旧措置法」という。)第36条の2《居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例》は、次のとおり規定している。

イ 旧措置法第36条の2第1項は、個人が、その有する家屋又は土地若しくは土地の上に存する権利で、その年1月1日において所有期間が10年を超えるもののうち、当該個人がその居住の用に供している家屋で政令で定めるもののうち所得税法の施行地にあるものなど一定のもの(譲渡資産)の譲渡をした場合において、当該譲渡の日の属する年の前年1月1日から当該譲渡の日の属する年の12月31日までの間に、当該個人の居住の用に供する家屋又は当該家屋の敷地の用に供する土地若しくは当該土地の上に存する権利で、所得税法の施行地にあるもの(買換資産)の取得をし、かつ、当該取得の日から当該譲渡の日の属する年の翌年12月31日までの間に当該個人の居住の用に供したとき、又は供する見込みであるときは、当該個人がその年における資産の譲渡につき旧措置法第35条《居住用財産の譲渡所得の特別控除》第1項の規定を受けている場合を除き、当該譲渡資産の譲渡による収入金額が当該買換資産の取得価額以下である場合にあっては当該譲渡資産の譲渡がなかったものとし、当該収入金額が当該取得価額を超える場合にあっては当該譲渡資産のうちその超える金額に相当するものとして政令で定める部分の譲渡があったものとして、同法第31条《長期譲渡所得の課税の特例》の規定を適用する旨規定している。

ロ 旧措置法第36条の2第4項は、同条第1項の規定は、同項の規定の適用を受けようとする者の譲渡資産の譲渡をした日の属する年分の確定申告書に、同項の規定の適用を受けようとする旨の記載があり、かつ、当該譲渡資産の譲渡価額、買換資産の取得価額又はその見積額に関する明細書その他大蔵省令で定める書類の添付がある場合に限り、適用する旨規定している。

(6)旧措置法第36条の4《買換えに係る居住用財産の譲渡の場合の取得価額の計算等》は、同法第36条の2第1項の規定の適用を受けた者の同項に規定する買換資産について、当該買換資産の取得の日以後その譲渡があった場合において、譲渡所得の金額を計算するときは、政令で定めるところにより、当該買換資産の取得価額は、同法第36条の4各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に掲げる金額(同項に規定する譲渡資産の譲渡に要した費用があるときは、政令で定めるところにより計算した当該費用の金額を加算した金額)とする旨規定し、同条第1号は、同項の譲渡による収入金額が買換資産の取得価額を超える場合には、当該譲渡をした譲渡資産の取得価額等のうちその超える額に対応する部分以外の部分の額として政令で定めるところにより計算した金額とする旨規定している。

(7)租税特別措置法施行令(平成19年政令第92号による改正前のもの。以下同じ。)第24条の3《買換えに係る居住用財産の譲渡の場合の取得価額の計算等》第3項は、旧措置法第36条の4の規定により同条に掲げる金額に加算する同条に規定する費用の金額は、同条に規定する譲渡資産の譲渡に要した費用の額のうち同法第36条の2第1項の規定による譲渡所得の金額の計算上控除されなかった部分の金額とする旨規定し、また、租税特別措置法施行令第24条の3第4項は、旧措置法第36条の4第1号に規定するその超える額に対応する部分以外の部分の額として政令で定めるところにより計算した金額は、同号に規定する譲渡資産の取得価額等に、同号に規定する買換資産の取得価額が同号に規定する収入金額のうちに占める割合を乗じて計算した金額とする旨規定している。

(8)租税特別措置法施行規則(昭和63年大蔵省令第15号による改正前のものをいい、以下、別紙2内において「旧措置法施行規則」という。)第18条の4《居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例》第2項は、旧措置法第36条の2第4項に規定する大蔵省令で定める書類は、譲渡資産に関する登記簿の謄本又は抄本並びに譲渡資産の所在地を管轄する市町村長等から交付を受けた当該譲渡をした者の住民票の写しとする旨規定している。
 また、旧措置法施行規則第18条の4第3項は、旧措置法第36条の2第6項において準用する旧措置法第33条《収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例》第7項に規定する大蔵省令で定める書類は、買換資産に関する登記簿の謄本又は抄本その他買換資産を取得した旨を証する書類並びに買換資産の所在地を管轄する市町村長等から交付を受けた当該取得をした者の住民票の写しとする旨規定している。

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