(平成28年6月8日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、土地及び建物の所有権移転登記を受け登録免許税を納付した審査請求人(以下「請求人」という。)が、当該建物のうち1棟の固定資産課税台帳の価格に過去に発生した火災による損害が反映されておらず、これを基に納付した登録免許税の額が過大であったとして、過誤納を理由に原処分庁に対し還付通知の請求をしたところ、原処分庁が、還付通知をすべき理由がない旨の通知処分をしたのに対し、請求人が、同処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 基礎事実及び審査請求に至る経緯

以下の事実は、請求人と原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査及び審理の結果によってもその事実が認められる。

  • イ 請求人の概要
     請求人は、平成○年○月○日、本店の所在地をa市b町○−○、目的を産業廃棄物の処理等として設立された法人である。
  • ロ 請求人による不動産の取得等
     請求人は、平成○年○月○日、J社からa市b町○−○の土地を含む土地14筆及び建物2棟を取得した(以下、これらの土地及び建物を併せて「本件各不動産」という。)。
     本件各不動産は、産業廃棄物中間処理施設として使用されていたが、平成○年○月○日に発生した火災により本件各不動産のうち別表1の建物(以下「本件建物」という。)の一部が損害を受け、本件建物は補修されないまま、J社が平成○年○月○日に取得し、その後請求人が取得した。
     以下、上記火災による本件建物への損害を「本件損害」という。
  • ハ 登録免許税の納付状況等
     請求人は、平成○年○月○日、原処分庁に対して、本件各不動産の登記申請書(G法務局d出張所同日受付第○○号)を提出するとともに、登録免許税○○○○円(別表2の5欄の額)を納付して、所有権移転登記を受けた(以下、この所有権移転登記を「本件登記」という。)。
     本件登記に係る登録免許税の課税標準の額○○○○円(別表2の2欄の額の合計であり、以下「本件課税標準額」という。)は、本件各不動産のうち、平成26年度の地方税法第341条《固定資産税に関する用語の意義》第9号に規定する固定資産課税台帳(以下「課税台帳」という。)に登録された価格(以下「台帳価格」という。)のある不動産は当該台帳価格から計算した金額に相当する価額を、台帳価格のない不動産は登記官が認定した価額を基に計算した金額の合計である。
     そして、本件課税標準額の計算の基礎とした本件建物の価額は、本件建物の平成26年度の台帳価格である○○○○円を基に算出されている。
  • ニ 本件建物の平成27年度の台帳価格
     a市は、本件建物の固定資産評価に係る調査結果に基づき、本件損害を台帳価格に反映させ、本件建物の平成27年度の台帳価格を平成27年4月1日付で○○○○円とした。
  • ホ 還付通知の請求
     請求人は、平成27年8月21日、原処分庁に対し、本件課税標準額の計算の基礎とした本件建物の平成26年度の台帳価格は、本件損害が反映されておらず、登録免許税の課税標準の額の計算の基礎となる本件建物の価額は、本件損害が反映された価額(本件建物の平成27年度の台帳価格)によるべきであるから、上記ハの本件各不動産の登記申請において納付した登録免許税の額○○○○円のうち○○○○円の過誤納があるとして、登録免許税法第31条《過誤納金の還付等》第2項の規定に基づき還付通知の請求(以下「本件還付通知請求」という。)をした。
  • ヘ 原処分
     原処分庁は、請求人に対し、平成27年9月10日付で本件還付通知請求について還付通知をすべき理由がない旨の通知処分(以下「本件通知処分」という。)をした。
     なお、原処分庁は、平成28年4月1日付人事異動により、G法務局d出張所登記官KからG法務局d出張所登記官Hとなった。
  • ト 審査請求
     請求人は、平成27年9月16日、本件通知処分の全部の取消しを求めて、審査請求をした。

(3) 関係法令

  • イ 登録免許税法第10条《不動産等の価額》第1項は、不動産の登記の場合における課税標準たる不動産の価額は、当該登記の時における不動産の価額による旨規定している。
  • ロ 登録免許税法第31条第1項第3号は、登記機関は、登記等を受けた者が過大に登録免許税を納付して登記等を受けたときは、遅滞なく、登記等を受けた者の当該登録免許税に係る納税地の所轄税務署長に、当該過大に納付された登録免許税の額等を通知しなければならない旨規定している。
     また、登録免許税法第31条第2項は、登記等を受けた者は、当該登記等の申請書に記載した登録免許税の課税標準又は税額の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったことにより、登録免許税の過誤納があるときは、当該登記等を受けた日から5年を経過する日までに、その旨を登記機関に申し出て、同条第1項の通知をすべき旨の請求をすることができる旨規定している。
  • ハ 登録免許税法附則第7条《不動産登記に係る不動産価額の特例》は、不動産の登記の場合における同法第10条第1項の課税標準たる不動産の価額は、当分の間、当該登記の申請の日の属する年の前年12月31日現在又は当該申請の日の属する年の1月1日現在における台帳価格を基礎として政令で定める価額によることができる旨規定している。
  • ニ 登録免許税法施行令附則第3項第1号は、登録免許税法附則第7条に規定する政令で定める価額は、台帳価格のある不動産については、登記の申請の日がその年の1月1日から3月31日までの期間内であるものは、その年の前年12月31日現在における台帳価格に100分の100を乗じて計算した金額とする旨規定している。
  • ホ 登録免許税法施行令附則第4項は、登記の目的となる不動産について増築、改築、損壊、地目の変換その他これらに類する特別の事情があるため、登記官が台帳価格から計算した金額に相当する価額を課税標準の額とすることを適当でないと認めるときは、当該台帳価格から計算した金額を基礎とし、当該事情を考慮して当該登記官が認定した価額を不動産の課税標準の額とする旨規定している。

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2 争点

  • (1)争点1 本件損害は、登録免許税法施行令附則第4項の「特別の事情」に該当するか。
  • (2)争点2 登録免許税法第10条第1項の「不動産の価額」は、平成26年度の台帳価格か否か。

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3 争点についての主張

  • (1) 争点1(本件損害は、登録免許税法施行令附則第4項の「特別の事情」に該当するか。)について
    請求人 原処分庁
    本件課税標準額の計算の基礎とした本件建物の平成26年度の台帳価格には本件損害が反映されていない。
     このことから、本件建物の平成26年度の台帳価格には、これを登録免許税の課税標準たる不動産の価額とすることが適当でないと認められるべき登録免許税法施行令附則第4項の「特別の事情」がある。
    本件各不動産の登記申請時、本件建物の種類、構造及び床面積について、本件建物に係る登記簿と平成26年度の課税台帳に登録された各事項は一致している。
     このことから、仮に本件建物の平成26年度の台帳価格には本件損害が反映されていないとしても、登録免許税法施行令附則第4項の「特別の事情」はない。
  • (2) 争点2(登録免許税法第10条第1項の「不動産の価額」は、平成26年度の台帳価格か否か。)について
    請求人 原処分庁
    仮に登録免許税法施行令附則第4項の「特別の事情」がないとしても、登録免許税法第10条第1項は、所有権移転の不動産の登記の場合における登録免許税の課税標準たる不動産の価額は、当該登記の時における不動産の価額、つまり不動産の時価による旨規定しているから、本件登記の時における本件建物の価額(時価)は、本件損害が反映された本件建物の平成27年度の台帳価格によるべきである。 仮に本件建物の平成26年度の台帳価格には本件損害が反映されていないとしても、次のとおり、登録免許税法第10条第1項の「不動産の価額」は、平成26年度の台帳価格となる。
    • イ 台帳価格のある不動産の登録免許税の課税標準の額については、登録免許税法附則第7条により、登記官に登録免許税法施行令附則第3項で定める価額によらないことのできる裁量はない。
    • ロ 本件各不動産の登記申請の日は平成○年○月○日であるから、登録免許税法施行令附則第3項第1号により、登録免許税の課税標準の額は、平成26年12月31日現在の台帳価格に相当する価額となる。

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4 当審判所の判断

(1) 争点1(本件損害は、登録免許税法施行令附則第4項の「特別の事情」に該当するか。)について

  1. イ 法令解釈
     登録免許税法施行令附則第4項の「台帳価格を課税標準の額とすることが適当でない特別の事情」とは、登録免許税が各種の登記、登録を担税力の間接的表現として捉え、登記、登録を課税の対象とするものであることを考慮すると、登記の目的となる不動産に台帳価格が付された後に、当該不動産自体に、同項に列挙する事由その他これらに類する事情により質的又は量的な形状の変化が生じ、その結果、台帳価格が当該不動産の適正な時価を示しているということができない場合をいい、同規定は、台帳価格により難い例外的な取扱いをすべき旨を規定したものと解される。
  2. ロ 当てはめ
     これを本件についてみると、平成26年度の固定資産税の賦課期日は平成26年1月1日であるところ、本件建物は、上記1の(2)のロのとおり、平成○年○月○日に本件損害を受けているものの、本件損害は、本件建物の平成26年度の台帳価格が付されるよりも前に生じたものであり、登記の目的となる本件建物に台帳価格が付された後に生じたものではないから、本件損害は、登録免許税法施行令附則第4項の「特別の事情」に該当しない。

(2) 争点2(登録免許税法第10条第1項の「不動産の価額」は、平成26年度の台帳価格か否か。)について

  1. イ 認定事実
     請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、次の事実が認められる。
    • (イ) 本件建物の平成26年度の台帳価格
       本件建物の平成26年度の台帳価格は、地方税法第349条《土地又は家屋に対して課する固定資産税の課税標準》第3項の規定により、その基準年度である本件建物の平成24年度の台帳価格と同額となるところ、請求人がした本件建物の台帳価格の積算根拠の照会に対するa市長の平成27年12月14日付回答(以下「本件回答」という。)によると、本件建物の平成24年度の台帳価格は、同法第388条《固定資産税に係る総務大臣の任務》第1項の規定により定められた固定資産評価基準(昭和38年12月25日自治省告示第158号)に基づき算出した再建築費評点数を基礎として、これに、経過年数に応ずる減点補正率(以下「経年減点補正率」といい、本件建物の平成24年度の台帳価格の算定で適用された経年減点補正率を「本件経年減点補正率」という。)を用いて、別表3のとおり算出されている。
       そうすると、本件建物の平成26年度の台帳価格は○○○○円である。
    • (ロ) 本件建物の平成27年度の台帳価格
       本件建物の平成27年度の台帳価格は、本件回答によると、固定資産評価基準に基づく再建築費評点数を基礎として、これに損耗の程度に応ずる減点補正率(以下「損耗減点補正率」といい、本件建物の平成27年度の台帳価格の算定で適用された損耗減点補正率を「本件損耗減点補正率」という。)を用いて、別表4のとおり○○○○円と算出されている。本件損耗減点補正率は、本件損害の状況等を判定して算出した補正後再建築費評点数を用いて、別表5のとおりである。
  2. ロ 法令解釈
    • (イ) 登録免許税法第10条第1項に規定する不動産の価額
       登録免許税法第10条第1項は、不動産の登記の場合における課税標準たる不動産の価額について、当該登記の時における不動産の価額による旨規定しているところ、当該登記の時における不動産の価額とは、当該登記の時における不動産の客観的交換価値、すなわち時価であると解される。
    • (ロ) 登録免許税法附則第7条に規定する台帳価格
       登録免許税法附則第7条は、同法第10条第1項の課税標準たる不動産の価額について、当分の間、台帳価格を基礎として政令で定める価額によることができる旨規定しているが、これは、登録免許税が、納税義務の成立と同時に特別の手続を要しないで納付すべき税額が確定する自動確定方式による国税で、流通税的な性格を有し、このような性格を持つ登録免許税において、登記官が、課税標準たる不動産の登記の時における時価をその都度判断することは容易ではなく、登記の迅速処理という点から問題が生じるため、登記事務の迅速化等を考慮して規定したものと解される。
    • (ハ) 登録免許税法第10条第1項に規定する不動産の価額と同法附則第7条に規定する台帳価格の関係
       上記(イ)及び(ロ)からすると、簡易迅速な税額確定が求められる登録免許税においては、台帳価格という課税基準を一律に適用することにより課税の公平が担保されることから、登録免許税法第10条第1項に規定する課税標準たる不動産の価額は、基本的には台帳価格によるべきであると解される。
       しかしながら、台帳価格が何らかの理由により不動産の時価を表していない場合には、不動産の価額は飽くまで時価であることに照らし、登記官は、他の方法により求めた不動産の価額(時価)を登録免許税の課税標準として採用することができると解するのが相当である。
  3. ハ 当てはめ
    • (イ) 本件登記の時における本件建物の時価について
       上記イの(イ)の本件建物の平成26年度の台帳価格(○○○○円)が時価を表しているか否か検討するに当たり、本件登記の時における本件建物の時価がいくらかを検討する。
      1. A まず、地方税法上、課税台帳には、固定資産評価基準によって決定された価格を登録するものとされているが、固定資産評価基準において、建物の価額は、いわゆる再建築価額法(建物の再建築価額を基準とし、建物の物理的又は時の経過による損耗の程度等による減価を考慮して評価する方法)により評価する方法が採用されており、この方法が建物の客観的価格を算出する方法として基本的・普遍的なものであり、客観性を有する評価方法であることを考慮すると、課税台帳に登録された建物の価格も、一般的に、建物の適正な時価を表していると認めることができる。
         しかしながら、固定資産評価基準第2章第3節五によると、非木造家屋の損耗の状況による減点補正率は経年減点補正率によるものとするが、天災、火災その他の事由により当該非木造家屋の状況からみて経年減点補正率によることが適当でないと認められる場合は損耗減点補正率による旨規定されている。この点、上記イのとおり、本件建物の平成27年度の台帳価格は、経年減点補正率によることが適当でなく、本件損害を反映すべきとして、本件損耗減点補正率を用いて算定されたものであるが、本件建物の平成26年度の台帳価格は、本件経年減点補正率を用いて算定されたものであって、本件損害が反映されたものではない。
         他方、本件損害が平成○年○月○日に生じていたこと、本件損害が生じて以後、本件建物の改修等が行われた事実も認められず、物理的状態に際立った変化があったものとは認められないことからすると、本件建物の平成26年度の台帳価格は、本来考慮されるべき本件損害を反映して固定資産評価基準に従って適正に算定されたものとは認められず、本件登記の時における本件建物の適正な時価を表していないことが想定される。
      2. B そこで、本件登記の時における本件建物の時価評価の手法について検討するに、不動産の時価評価の手法としては、上記Aの再建築価額法以外にも、実際に取引された不動産の売買事例に係る取引価格を基に、評価対象不動産の評価額を求める取引事例比較法や、将来の収益性を基礎として、評価対象不動産の評価額を求める収益還元法があるが、本件建物は、産業廃棄物中間処理施設としての使用を前提とした特殊な建物で、かつ、本件損害を受けた状態にあったこと、当審判所の調査によっても比較対象とすべき取引事例として適当なものが見当たらないことなどから、これらの手法により、本件建物の時価評価をすることはできない。
      3. C ところで、上記Aのとおり、課税台帳に登録された建物の価格は、基本的・普遍的な時価評価の手法である再建築価額法により算定されていることからすると、当該価格も、固定資産評価基準に従って適正に算定されている限りにおいては、建物の適正な時価を表しているものと認められる。
         この点、本件建物の平成26年度の台帳価格の基準年度である平成24年度の台帳価格は、本件損害が反映されていない点(具体的には損耗減点補正率ではなく経年減点補正率により算定している点)を除き、上記イの(イ)のとおり、固定資産評価基準に基づき適正に算定されていることが認められる。
         そうすると、本件経年減点補正率により算定された本件建物の平成26年度の台帳価格に、a市が上記1の(2)のニの本件建物の固定資産評価に係る調査結果に基づき算定した別表5の建築時再建築費評点数(同表の(B)の評点数)に占める同表の補正後再建築費評点数(同表の(C)の評点数)の割合を乗ずることで、本来考慮されるべき本件損害を反映した本件建物の平成26年度の台帳価格に相当する価額の算出が可能であり、当該価額は、固定資産評価基準に従って適正に算定されたものといえ、本件登記の時における本件建物の適正な時価を表したものと認められる。
         これを計算すると、別表6のとおり○○○○円となり、当該価額を、本件登記の時における本件建物の時価とするのが相当である。
    • (ロ) 争点について
       これを本件についてみると、上記イの(イ)の本件建物の平成26年度の台帳価格(○○○○円)は、上記(イ)のCの本件建物の時価を約二千万円も上回る価格であり、本件建物の適正な時価を表しているとは認められないから、本件登記の時における本件建物の登録免許税法第10条第1項の「不動産の価額」、すなわち課税標準たる本件建物の価額は、平成26年度の台帳価格ではなく、他の方法により求めた不動産の時価を登録免許税の課税標準として採用することができる。
       したがって、本件登記の時における本件建物の登録免許税法第10条第1項の「不動産の価額」、すなわち課税標準たる本件建物の価額は、本件建物の平成26年度の台帳価格とはならず、上記(イ)のCの本件建物の時価である○○○○円とするのが相当である。
    • (ハ) 原処分庁の主張について
       原処分庁は、上記3の(2)の「原処分庁」欄のとおり、台帳価格のある不動産の登録免許税の課税標準の額については、登録免許税法附則第7条により、登記官に登録免許税法施行令附則第3項で定める価額によらないことのできる裁量はないから、同項第1号により、本件建物の登録免許税の課税標準の額は平成26年度の台帳価格となる旨主張する。
       しかしながら、上記(ロ)のとおり、登録免許税法第10条第1項の「不動産の価額」は時価であり、台帳価格が不動産の時価を表していない場合には、登記官は、他の方法により求めた不動産の時価を登録免許税の課税標準とすることができ、本件建物の時価が平成26年度の台帳価格を約二千万円も下回っていることも考慮すると、この点に関する原処分庁の主張には理由がない。
    • (ニ) 請求人の主張について
       請求人は、上記3の(2)の「請求人」欄のとおり、登録免許税法第10条第1項は、当該登記の時における不動産の時価による旨規定しているから、本件登記の時における本件建物の価額(時価)は、本件損害が反映された本件建物の平成27年度の台帳価格によるべきである旨主張する。
       しかしながら、本件建物の平成27年度の台帳価格は、固定資産評価基準に基づき、本件損害を台帳価格に反映させたものであるが、上記1の(2)のハのとおり本件各不動産の登記申請は平成○年○月○日であるから、上記1の(3)のニのとおり課税標準の額の算定に用いるべき台帳価格は平成26年12月31日現在のものであり、上記ロの(ハ)のとおり本件登記の時における本件建物の平成26年度の台帳価格(ただし、固定資産評価基準に従って適正に算定され時価を表しているもの)に基づいて課税標準の額を算定することで納税者間の課税の公平が保たれるものと解されるから、本件建物の平成27年度の台帳価格を、本件登記の時における本件建物の登録免許税の課税標準の額として採用することはできないというべきである。
       したがって、この点に関する請求人の主張は採用できない。

(3) 本件通知処分の適法性について

本件登記の時における課税標準たる本件建物の価額(時価)は、上記(2)のハの(ロ)のとおり○○○○円となるから、本件登記の時における課税標準たる本件各不動産に係る課税標準の額は○○○○円(別表7の2欄の額の合計)となり、上記1の(2)のハの本件各不動産の登記申請に係る登録免許税の額は、○○○○円(別表7の5欄の額)となる。
 そうすると、上記登録免許税の額○○○○円は、請求人が既に納付した登録免許税の額○○○○円を下回るから、本件通知処分は、課税標準の額○○○○円及び登録免許税の額○○○○円を超える部分につき違法となる。

(4) 結論

よって、原処分の一部を取り消すこととする。

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