(平成28年9月7日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、建物の賃貸借取引について、消費税法(平成27年法律第9号による改正前のもの。以下同じ。)第2条《定義》第1項第9号に規定する課税資産の譲渡等に該当するとして当該建物に係る消費税及び地方消費税の還付を求める旨の確定申告を行ったところ、原処分庁が、当該賃貸借取引は同法第6条《非課税》に規定する別表第一第13号に掲げる「住宅の貸付け」に該当するため消費税が課されない取引であるとして消費税及び地方消費税の更正処分等をしたのに対し、請求人がその全部の取消しを求めた事案である。

(2) 基礎事実

以下は、請求人と原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によっても認められる事実、又は証拠資料によっても容易に認められる事実である。

  • イ 請求人は、平成26年7月23日、F社との間で、g市h町○−○ほかに所在するQ○号室(以下「本物件」という。)を○○○○円で売買する旨の売買契約(以下「本件売買契約」という。)を締結し、本物件を同年8月18日に取得した。
     なお、本件売買契約に係る契約書(以下「本件売買契約書」という。)には、管理に関する遵守事項として、請求人は本物件を居住の目的以外の用に供さないものとする旨(第○条《○○》)記載されている。
  • ロ Gは、○○再開発事業として、施行者をd県、特定建築者をF社として平成○年○月○日に竣工された地上○階建ての○○の複合施設建築物であり、○○、○○、○○、○○、○○等で構成され、Gの施設の管理・運営はF社が行っている。
     そして、Qは、Gの○階から○階までのフロアにある総戸数○戸の住宅部分の名称であり、「G管理規約」においても、Gの○階から○階までの各専有部分の用途は「住宅」とされている。
  • ハ F社は、本件売買契約の締結に先立ち、2014(平成26年)年6月3日付の○○と題する書面(以下「本件提案書」という。)を作成し、請求人に対して本件提案書を交付した。
     本件提案書には、要旨、F社のマスターリース(オーナーからF社が購入物件を借り受け、オーナーに代わって貸主となり、テナントへサブリース(転貸)するもの)の概要として、○○の先駆けとなるHをはじめ、これまでにg市のj、k、mエリアを中心に約○戸の住宅を供給・運営していること、J等の大型物件をはじめ、○棟、約○戸のマスターリース物件の実績があること、「K」は、長年にわたる賃貸住宅事業の運営管理等のノウハウを基盤として確立されたブランドであること等が記載されている。
  • ニ 請求人は、平成26年8月18日、F社との間で、本物件を同社に賃貸する旨の賃貸借契約(以下「本件賃貸借契約」という。)を締結し、同社に本物件を賃貸した(以下、本件賃貸借契約に基づく賃貸借取引を「本件賃貸借取引」という。)。
     なお、本件賃貸借契約に係る契約書(以下「本件賃貸借契約書」という。)には、要旨、別紙1(略語は本文中の例による。)のとおり、F社は、1本物件を第三者に転貸等して収益事業を営むことを目的として賃借する旨(第○条《○○》第○項)、2本物件を同社の住宅賃貸事業のブランドである「K」対象の貸室として取り扱うものとする旨(同条第○項)などが記載されている。
  • ホ F社は、平成26年12月15日、L社との間で、本物件を同社に賃貸する旨の定期建物賃貸借契約(以下「本件転貸借契約」という。)を締結し、同社に本物件を賃貸した。
     なお、本件転貸借契約に係る契約書(以下「本件転貸借契約書」という。)には、要旨、別紙2(略語は本文中の例による。)のとおり、L社は本物件のうち居室を住居専用として、その用途に応じて使用し、他の目的に使用してはならない旨(第○条《○○》第○項)などが記載されている。
  • ヘ 請求人は、平成26年10月16日、原処分庁に対し、適用開始課税期間を平成26年8月18日から同年12月31日までと記載した消費税課税事業者選択届出書を提出した。

(3) 審査請求に至る経緯

  • イ 請求人は、平成27年3月13日、平成26年1月1日から同年12月31日までの課税期間(以下「本件課税期間」という。)分の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)について、別表の「確定申告」欄のとおり記載した確定申告書を原処分庁に提出して、確定申告した。
  • ロ 原処分庁は、これに対し、平成27年7月28日付で別表の「更正処分等」欄のとおり、本件課税期間の消費税等の更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」という。)をした。
  • ハ 請求人は、平成27年9月14日、上記ロの各処分を不服として異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年12月2日付でいずれも棄却する旨の異議決定をした。
  • ニ 請求人は、平成27年12月24日、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして審査請求をした。

(4) 関係法令等

  • イ 消費税法第2条第1項第8号は、資産の譲渡等とは、事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供をいう旨規定し、同項第9号は、課税資産の譲渡等とは、資産の譲渡等のうち、同法第6条第1項の規定により消費税を課さないこととされるもの以外のものをいう旨規定している。
  • ロ 消費税法第6条第1項は、国内において行われる資産の譲渡等のうち、別表第一に掲げるものには、消費税を課さない(以下、消費税が課されない取引を「非課税取引」という。)旨規定し、同法別表第一第13号において、住宅(人の居住の用に供する家屋又は家屋のうち人の居住の用に供する部分をいう。)の貸付け(当該貸付けに係る契約において人の居住の用に供することが明らかにされているものに限るものとし、一時的に使用させる場合その他の政令で定める場合を除く。)を掲げている。
  • ハ 消費税法基本通達6−13−7《転貸する場合の取扱い》(以下「本件通達」という。)は、住宅用の建物を賃貸する場合において、賃借人が自ら使用しない場合であっても、当該賃貸借に係る契約において、賃借人が住宅として転貸することが契約書その他において明らかな場合には、当該住宅用の建物の貸付けは、住宅の貸付けに含まれる旨定めている。

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2 争点

本件賃貸借取引は、非課税取引である「住宅の貸付け」に該当するか否か。

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3 争点についての主張

(1) 原処分庁

本件賃貸借取引は、以下のとおり、本件賃貸借契約において、本物件を人の居住の用に供することが明らかであるから、本件通達が適用され消費税法別表第一第13号に規定する「住宅の貸付け」に該当し、非課税取引となる。

  • イ 請求人は、本件賃貸借契約に基づきF社に本物件を賃貸しているところ、本件賃貸借契約書には、1F社が請求人から本物件を賃借する目的は、同社が本物件を第三者に転貸等して収益事業を営むことである旨、2F社は当該収益事業を営むに当たり、本物件を同社の住宅賃貸事業のブランドである「K」対象の貸室として取り扱う旨、3月額賃料の計算において消費税は含まれない旨の記載がある。
  • ロ また、F社のN部のP氏は、請求人の異議申立てに係る調査を担当した職員(以下「異議調査担当職員」という。)に対し、1Gの○階から○階までのQ部分は、全て住宅用のマンションである旨、2「K」ブランドは住宅専用のマンションのブランドであり、住宅用以外の用途はあり得ない旨、3本件賃貸借契約書第○条の「貸室を自由に第三者に対して転貸」の「自由に」の意味は、条件のことであり、家賃などの条件を決める裁量権をF社が持つという意味で、用途を自由に決めるという意味ではなく、用途は飽くまでも住宅用である旨、及び4本物件の用途は住宅用以外には考えていないので、本件賃貸借契約の説明の際、請求人に対し、F社が本物件を転貸する場合も、住宅として転貸することを説明した旨申述しており、当該各申述は、本件転貸借契約において、本物件の居室の使用目的を住居専用としていることとも符合する。
  • ハ これらのことから、請求人が本物件を賃貸する場合において、賃借人であるF社が本物件を使用しない場合であっても、本件賃貸借契約において、F社が住宅として転貸することが明らかである。
  • ニ なお、本件賃貸借契約において本物件が住宅の用に供されるか否かは、請求人とF社との間に存在する事実によって判断すべきところ、当該事実は、本件賃貸借契約書の記載事項及び当該記載事項の趣旨(契約当事者の意思)に基づき認定されるべきであり、請求人が主張する本件賃貸借契約書の記載事項のみによる解釈及び本物件以外の貸室の使用状況などは、本物件が住宅の用に供されるものであるとの認定を左右するものではない。

(2) 請求人

本件賃貸借取引は本件通達適用の前提を欠いており(後記イ)、仮に適用の余地があるとしても、本件賃貸借契約などにおいて、F社が本物件を実際に居住する人の居住の用に供することが明らかでなく、転貸の目的が実際に居住する転借人の居住の用に供するものであるかも明らかでないため(後記ロ)、本件賃貸借取引は、消費税法別表第一第13号に規定する「住宅の貸付け」には該当せず、非課税取引とはならない。

  • イ 本件通達について
    1. (イ) 本件通達は、消費税法別表第一第13号を受けて、例外的に非課税取引となる場合を定めているから、その解釈は厳格になされるべきところ、本件通達が想定しているのは転貸借取引のみであり、再転貸借取引が行われる場合までをも含むものではないと解される。そして、自然人である転借人(転貸借取引における賃借人)が居住することが本件通達適用の前提となる。
    2. (ロ) この点、本件賃貸借契約書第○条第○号には、「転借人名(法人のみ)」と記載され、転借人には実際に居住することができない法人が想定されており、また、同第○条第○項には「貸室を自由に第三者に対して転貸等(転借人をして再転貸させることを含む。)することができる」とあり、本物件が再転貸借されることが想定されているから、本件賃貸借取引は、本件通達適用の前提を欠いている。
    3. (ハ) なお、本件通達の「住宅用の建物を賃貸する」とは、事業の用に供することを含む多目的での転貸を認める賃貸借取引のことをいい、本件通達の「賃借人が住宅として転貸することが契約書その他において明らか」とは、「賃借人が実際に居住する転借人の居住の用に供する目的で転貸することが契約書その他において明らか」であることを意味するから、「住宅用の建物の賃貸」であることだけで本件通達を適用することはできない。
  • ロ 本件賃貸借契約などについて
    1. (イ) 本件賃貸借取引は、F社に対して本物件を「第三者に転貸等して収益事業を営むこと」を認める対価として、請求人が賃料を得るものであり(本件賃貸借契約書第○条第○項)、F社が本物件を転貸に限定されない事業(本物件を住宅として転貸する以外の事業)に使用する可能性が排除されていない。
    2. (ロ) 本物件は「K」という事業ブランド対象の貸室として取り扱われているにすぎず、「K」のサービス内容は本件賃貸借契約上不明であり、かつ、F社が自由に決めるものである(本件賃貸借契約書第○条第○項)から、請求人において、本件賃貸借契約から本物件を実際に居住する人の居住の用に供することが明らかでなく、転貸の目的が実際に居住する転借人の居住の用に供するものであるかも明らかでない。
    3. (ハ) Qは、○○に位置し、ビジネス活動における拠点や応接スペースとしても高い価値を有している。実際にも、インターネットにおいて、賃貸物件としてQを○○として紹介するものや○○として利用していることを確認することができ、本物件は、実際の入居者の居住の用に限られない幅広い用途での利用が見込まれ、また実際に利用されている物件である。このような本物件の特徴からして、本件賃貸借契約の内容から実際に居住する人の居住の用に供することが明らかであるとはいえない。
    4. (ニ) 本件賃貸借取引では、F社が第三者へ転貸借することが想定されていたにもかかわらず、本件賃貸借契約には、本物件が実際に居住する人の居住の用に供されることや、転貸の目的が実際に居住する転借人の居住の用に供される点にあることを明らかにするような規定が見られない。このことからすると、本件賃貸借契約締結時において、本物件を実際に居住する人の居住の用に供する意図のなかったことが明らかである。
    5. (ホ) 原処分庁は、上記(1)のロのとおり、Q部分が住宅用のマンションであること、「K」が住宅専用のマンションのブランドであること等を根拠として、本件賃貸借契約において、本物件が人の居住の用に供されることが明らかである旨主張しているが、これらのことは、本物件が「住宅用の建物」であることを述べているにすぎない。
    6. (ヘ) 本件賃貸借取引において、請求人に対するF社からの賃料保証が設定(本件賃貸借契約書第○条第○項及び第○項)されていることは、人が居住していないにもかかわらず賃貸料が支払われることを意味し、実際に居住する人の居住と賃料が対価関係にないことを表しており、このことは本件通達が間接的に区別する「住宅としての賃貸取引」と「住宅用の建物の賃貸取引」において、本件賃貸借取引が後者であることを強くうかがわせるものである。

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4 当審判所の判断

(1) 争点について

  • イ 認定事実
     P氏が異議調査担当職員に対して行った申述からすれば、次の事実が認められる。
     なお、P氏の申述は、本件転貸借契約において、本物件の用途が住居に限定されているなど(別紙2の2の(1))の事実と符合するとともに、P氏が異議調査担当職員に対して虚偽あるいは誤った回答をする理由は見当たらず、また、その申述内容はP氏の日々の業務に関するものであって相応の正確性を有するものと認められ信用することができる。
    1. (イ) F社は、ここ数年、「K」ブランドで分譲や賃貸のマンション事業を展開しており、Q以外の「K」ブランドのマンションの用途も全て住宅用である。
    2. (ロ) P氏は、請求人に対し、本件賃貸借契約書の英語版を用いながら契約の内容を説明し、正文である日本語の同契約書に請求人からサインをもらっているところ、上記説明時に本物件を転貸する場合にも住宅として賃貸することになることを説明した。
  • ロ 法令解釈
     建物等の賃貸に係る取引については、消費税法上課税取引となるところ、上記1の(4)のロのとおり、住宅の貸付けについては、特別の政策的な配慮から非課税取引とされている。このように、住宅の貸付けが非課税取引とされている趣旨は、住宅の貸付けを行う事業者が賃借人に対し、消費税相当額を転嫁しないことにより、住宅賃借人を政策的に保護することにあるものと解される。
     そして、本件通達は、上記1の(4)のハのとおり、住宅用の建物の賃貸借に係る契約において、賃借人が自ら使用しない場合であっても、賃借人が「住宅として転貸することが契約書その他において明らかな場合」には、上記の趣旨に鑑み、当該住宅用の建物の賃貸借を非課税取引と取り扱う旨を定めたものであり、本件通達の取扱いは当審判所においても相当であると認められる。
  • ハ 検討
     本件賃貸借取引に係る契約は、F社が本物件を自ら使用せず、他に転貸することを前提とするものであるから、本件賃貸借取引に係る契約において、F社が本物件を「住宅として転貸することが契約書その他において明らかな場合」に該当するか否かについて検討すると、次のとおりである。
    1. (イ) 請求人は、上記1の(2)のイないしニのとおり、本件売買契約によって平成26年8月18日に本物件をF社から取得し、かねてよりF社から説明を受けていた本件提案書の内容を受け入れ、同日付で、F社との間で本件賃貸借契約を締結したものと認められる。本件賃貸借契約書第○条第○項は、F社が本物件を同社の住宅賃貸事業のブランドである「K」対象の貸室として転貸する旨定めているところ、住宅賃貸事業とは、一般に人の居住の用に供する家屋を賃貸する事業と解されるから、同項により、賃借人であるF社は、本物件を住宅(人の居住の用に供する家屋等)として転貸することを明示しているものと認められる。
    2. (ロ) また、本件売買契約書第○条には本物件の管理に関する遵守事項として「本物件を居住の目的以外の用に供さないものとする」旨が記載されているところ(上記1の(2)のイ)、本件賃貸借契約書には、本物件を居住の目的以外の用に供することができる旨の規定がないことからすれば、本件売買契約及び本件賃貸借契約の一方の当事者であるF社は、本物件の転貸を居住の用に供する場合に限定しているものと認められる。さらに、本件提案書にはF社のマスターリースの概要として、約○戸の住宅を供給・運営していること、「K」は、長年にわたる賃貸住宅事業の運営管理等のノウハウを基盤として確立されたブランドである旨が記載されていること(上記1の(2)のハ)からしても、F社が本物件を住宅(人の居住の用に供する家屋等)として転貸することが明らかであったといえる。
    3. (ハ) そして、上記イの(ロ)のとおり、本件賃貸借契約締結時の請求人に対するP氏の説明においても、本物件をF社が行う住宅賃貸事業の対象の物件、すなわち住宅(人の居住の用に供する家屋等)として転貸されることが明確にされていたといえる。
       なお、請求人は、当審判所の釈明の求めに対し、P氏から本物件の転貸につき人の居住の用に供する目的での転貸に限定されるのか、それ以外での目的での転貸を認めるのかといった説明を受けたか否か記憶にはないなどと曖昧な回答をするところ、P氏の申述内容に信用性が認められることは上記イのとおりである。
    4. (ニ) 以上のことからすると、本件賃貸借契約において、賃借人であるF社が本物件を住宅(人の居住の用に供する家屋等)として転貸することが本件賃貸借契約書その他において明らかであるから、本件賃貸借取引は、消費税法別表第一第13号に規定する「住宅の貸付け」に該当し、その全額が非課税取引となる。
  • ニ 請求人の主張について
    1. (イ) 請求人は、上記3の(2)のイの(イ)及び(ロ)のとおり、本件通達が想定するのは転貸借取引のみであり、再転貸借取引までも含むものではなく、また、自然人である転借人が居住することが本件通達適用の前提となるとし、本件賃貸借契約においては、本件賃貸借契約書第○条第○号及び同第○条第○項の規定内容から、本物件に実際に居住することができない法人が転借人になることが想定されていることに加え、本物件が再転貸借されることも想定されているから、本件賃貸借取引は本件通達適用の前提を欠く旨、また、同(ハ)のとおり、本件通達の「賃借人が住宅として転貸すること」とは、「賃借人が実際に居住する転借人の居住の用に供する目的で転貸すること」を意味する旨主張する。
       しかしながら、上記ロのとおり、消費税法上、住宅の貸付けが非課税とされている趣旨は、住宅の貸付けを行う事業者が賃借人に対し、消費税相当額を転嫁しないことにより、住宅賃借人を政策的に保護することにあり、消費税法別表第一第13号に規定する「住宅の貸付け」の貸付けとは「当該貸付けに係る契約において人の居住の用に供することが明らかにされているものに限る」とされていることからすれば、上記のような解釈により本件通達の適用範囲を限定しようとする請求人の主張に合理性は認められず採用できない。
    2. (ロ) また、請求人は、上記3の(2)のロのとおり、仮に、本件通達が適用されるとしても、本件賃貸借契約の規定内容等において、F社が本物件を実際に人の居住の用に供することが明らかでないなどとして、本件賃貸借取引は、消費税法別表第一第13号に規定する「住宅の貸付け」には該当しない旨主張する。
       しかしながら、本件賃貸借契約において、賃借人であるF社が本物件を住宅(人の居住の用に供する家屋等)として転貸することが本件賃貸借契約書その他において明らかなことは上記ハのとおりであり、この点の請求人の主張には理由がない。

(2) 本件更正処分の適法性について

上記(1)のハのとおり、本件賃貸借取引はその全額が非課税取引であるから、本件課税期間における請求人の消費税の課税標準額及び納付すべき税額並びに地方消費税の納付すべき税額は○○○○円となり、これらの金額は、本件更正処分の額と同額であるから、本件更正処分は適法である。

(3) 本件賦課決定処分の適法性について

上記(2)のとおり、本件更正処分は適法であり、同処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法(平成26年法律第10号による改正前のもの。)第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項及び第2項並びに地方税法附則第9条の4《譲渡割の賦課徴収の特例等》及び第9条の9《譲渡割に係る延滞税等の計算の特例》第1項の規定に基づいてされた本件賦課決定処分は適法である。

(4) 結論

よって、本審査請求は理由がないから棄却することとする。

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