(平成28年12月20日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、審査請求人H(以下「請求人H」という。)、同K(以下「請求人K」という。)、同L(以下「請求人L」という。)、同M(以下「請求人M」といい、これら4名を併せて「請求人ら」という。)が、相続税の期限内申告及び修正申告をした後、請求人らが相続により取得した各土地の価額について、当該各土地及びその隣接地を併せた土地を一つの評価単位として財産評価基本通達(昭和39年4月25日付直資56ほか国税庁長官通達をいい、以下「評価通達」という。)24-4《広大地の評価》の定めを適用して評価すべきであるとして、それぞれ更正の請求をしたところ、原処分庁が、当該各土地は複数の評価単位に区分して評価すべきである等として、その請求の一部のみを認める内容で各更正処分をしたことに対して、これを不服とする請求人らが当該処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 基礎事実

当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

  • イ 本件各土地の取得状況等
    1. (イ) 請求人ら4名は、平成23年6月○日に死亡したN(以下「本件被相続人」といい、本件被相続人の死亡によって開始した相続を「本件相続」という。)の共同相続人であり、いずれも本件被相続人の養子である。
       請求人Kは請求人Hの妻であり、請求人L及び請求人Mは請求人H及び請求人Kの子である。
    2. (ロ) 請求人らは、平成23年11月10日に本件相続に係る全ての財産についての遺産分割協議(以下「本件遺産分割」という。)を成立させ、次のとおりf市g町に所在する各土地(以下「本件各土地」という。)をそれぞれ相続により取得した(別表2及び別表3参照)。
      • A f市g町○-○及び同-○の各土地(以下「本件甲土地」という。)は、本件被相続人が単独で所有していた所有権を請求人Kが100分の30、請求人Lが100分の35、請求人Mが100分の35の割合で取得した。
      • B f市g町○-○及び同-○の各土地(以下「本件乙土地」という。)は、本件被相続人の共有持分を請求人Hが全て取得した。これにより、本件乙土地は請求人Hの単独所有となった。
      • C f市g町○-○の土地は、本件被相続人が単独で所有していた所有権を請求人Hが100分の30、請求人Lが100分の35、請求人Mが100分の35の割合で取得した。
      • D f市g町○-○の土地(以下、同-○の土地と併せて「本件丙土地」という。)は、本件被相続人の共有持分を請求人Lが全て相続した。これにより上記土地は請求人Hが672分の290、請求人Lが672分の172、請求人Mが672分の210の割合で所有することとなった。
  • ロ Pテニスクラブについて
    1. (イ) 本件被相続人は、請求人H及びQ(請求人Hの実兄)とともにPテニスクラブという名称のテニスクラブ(以下「本件テニスクラブ」という。)を共同で経営していた。
    2. (ロ) 本件テニスクラブは、昭和○年○月○日に設立された会員制のテニスクラブであり、f市g町に所在する敷地約○uには、約○坪のロッカー室等を備えたクラブハウス、○○、○台分の駐車場、○区画○面のテニスコート等の施設が設置されていた。
    3. (ハ) 本件被相続人は、本件相続が開始した時点において、本件テニスクラブの事業用地として、本件各土地のうちf市g町○-○の大部分と同○-○の全部(以下、併せて「本件A区画」という。)と、同○-○の大部分及び同○-○の大部分の共有持分(以下、併せて「本件D区画」という。)を提供していた(別表3及び別図参照)。
       なお、本件テニスクラブの敷地には、本件A区画及び本件D区画の他、他の共同経営者らの所有するf市g町○-○の一部(以下「本件F区画」という。)と同○-○ほか2筆(以下「本件G区画」という。)があった(別表3及び別図参照)。
    4. (ニ) 本件被相続人は、本件テニスクラブに係る共同事業の分配金を事業所得として毎年の所得税の確定申告において申告していた。
  • ハ 本件各土地及び本件各土地に隣接する土地の利用状況について
    1. (イ) 本件テニスクラブの敷地として利用されていた部分
       上記ロの(ハ)のとおり本件A区画及び本件D区画は、本件テニスクラブの敷地の一部として利用されており、本件A区画及び本件D区画の○○はテニスコートの敷地、本件D区画の○○はクラブハウスの敷地や本件テニスクラブの利用者のための駐車場等に使用されていた。
    2. (ロ) 本件被相続人及び請求人らの居宅の敷地として利用されていた部分
       請求人Hの所有する家屋番号f市g町○-○の建物(以下「本件居宅」という。)の敷地として、本件各土地のうち同○-○の全部並びに同○-○、同○-○及び同○-○の一部の土地(以下「本件B区画」という。)のほか、同○-○の全部及び同○-○の一部の土地(以下、併せて「本件E区画」という。)が利用されていた(別表3及び別図参照)。
       本件被相続人は、本件相続開始前に請求人らとともに本件居宅に居住(同居)しており、請求人らは、本件相続開始後も引き続き本件居宅に居住している。
       なお、本件居宅の敷地の使用に関して、本件被相続人及び請求人ら相互の間で地代の支払はない。
    3. (ハ) 請求人Hの経営する月ぎめ駐車場の敷地として利用されていた部分
       f市g町○-○、同○-○及び同○-○の一部の土地(以下「本件C区画」という。)は、請求人Hの経営する月ぎめ駐車場の敷地として利用されていた。
       なお、請求人Hは、本件C区画を月ぎめ駐車場の敷地として利用するに当たり、請求人H以外の本件C区画の権利者に対して地代を支払っておらず、他の権利者から使用貸借により借り受けて利用していた。
  • ニ 本件各土地の一部の売買
     平成24年7月31日、請求人H、請求人L及び請求人Mは、f市g町○-○から分筆した同-○の土地約347.40uを○○○○円、同-○から分筆した同-○の土地約183.40uを○○○○円の合計○○○○円(1u当たり○○○○円)で、Q及びRに譲渡した。
  • ホ f市と請求人らの間で締結された協定書について
    1. (イ) 平成26年○月○日付で、f市とQ及び請求人らを含む計8名は、f市g町○-○外の土地について、Qの行うf市g町○-○外(以下「第1次計画地」という。)の土地利用に関して、○○第○条《○○》第1項の規定に基づく協議の結果、次のとおり協定する旨記載された「協定書」(以下「第1次協定書」という。)を作成した。
      • A 第1条《協定区域》には、この協定の対象となる区域(以下「第1次開発区域」という。)は、第1次協定書の別添図に記載のとおり○○uとする旨記載されている。
         なお、第1次協定書の別添図には、「工事件名」欄にPテニスクラブ、クラブハウス新築工事、「敷地全体図」と記載された下に敷地面積○○uと記載され、本件テニスクラブの敷地(本件A区画、本件D区画、本件F区画及び本件G区画)を含む土地が第1次計画地として示されている。
      • B 第2条《土地利用》には、Qは、第1次計画地(○○u)の利用計画については、第1次協定書の別添図に記載のとおりとする旨記載されている。
         なお、第1次開発区域の面積○○uは、第1次計画地の面積○○uに本件D区画に隣接するf市g町○-○等の土地の面積168.63uを加えたものである。
      • C 第3条《道路拡幅》には、Qは、第1次協定書の別添図に記載のとおり開発区域に接する道路を建築物の竣工1か月前(平成26年○月○日)までに拡幅・整備し、f市へ無償で譲渡する旨記載されており、第1次協定書の別添図には、f市g町○-○の土地を図示した上で、○○道路拡幅工事(隅切り部分含む)24.499uと記載されている。
      • D 第4条《一団の空地》には、Qは、第1次協定書の別添図に記載のとおり協定区域の3%以上の空地(○○u)を確保・整備し、自主管理をする。また、一時避難場所として使用できるよう敷地内整備をする。一団の空地に変更が生じたときは、同等以上の空地を確保する旨記載されている。
         なお、第1次協定書の別添図には、一団の空地、必要面積○○u(○○u×3%)、有効面積○○u(○○m×○○m)と図示された場所があり、一団の空地として、本件G区画の○○のテニスコートの敷地の一部が充てられている。
    2. (ロ) 平成28年○月○日付で、f市と請求人Hを含む計8名は、f市g町○-○外の土地について、請求人Hが行う同○-○外(以下「第2次計画地」という。)の土地利用に関し、○○第○条第1項の規定に基づく協議が整ったので、○○第○条《○○》第1項の規定に基づき、次のとおり協定を締結する旨記載された「協定書」(以下「第2次協定書」という。)を作成した。
      • A 第1条《協定の対象となる区域》には、この協定の対象となる区域(以下「第2次開発区域」という。)は、第2次協定書の別添図に記載のとおり○○uとする旨記載されている。
         なお、第2次協定書の別添図の記載には、「工事件名」欄にH邸新築工事と記載され、第2次計画地として上記新築工事の建物の敷地が示されている。
      • B 第2条《土地利用》には、請求人Hは、第2次計画地(372.03u)の利用計画については、第2次協定書の別添図に記載のとおりとする旨記載されている。
         なお、第2次開発区域の面積○○uは、第1次開発区域の面積○○uに第2次計画地の面積372.03uを加えたものである。
      • C 第3条《一団の空地》には、請求人Hは、第2次協定書の別添図に記載のとおり協定区域の3%以上の空地(○○u)を確保・整備し、自主管理をする旨、一時避難場所として使用できるよう敷地内整備をする旨、及び一団の空地に変更が生じたときは、同等以上の空地を確保する旨記載されている。
         なお、第2次協定書の別添図の記載には、第1次協定書の別添図の記載と同じ場所に一団の空地、必要面積○○u(○○u×3%)、有効面積○○u(○○m×○○m)と図示された場所があり、一団の空地として、本件G区画の○○のテニスコートの敷地の一部が充てられている。
  • ヘ 請求人らの主張する本件各土地の評価
    1. (イ) 期限内申告及び修正申告
       請求人らは、本件相続に係る相続税(以下「本件相続税」という。)の期限内申告及び修正申告において、本件各土地を次の5区画に区分して評価し、申告している。なお、請求人らは、上記各申告において評価通達24-4に定める広大地補正率を適用していない。
      • A f市g町○-○
      • B f市g町○-○
      • C 本件甲土地
      • D 本件丙土地のうち主に本件テニスクラブのテニスコートとして使用していた部分
      • E 本件丙土地のうちクラブハウス等の敷地として使用していた部分
    2. (ロ)  更正の請求、異議申立て及び審査請求
       請求人らは、本件各土地に本件E区画及び本件F区画の各土地を加えた土地全体(○○u)を一つの評価単位として、評価通達24-4に定める広大地補正率を適用して評価した価額を請求人らの相続した本件各土地の面積及び持分であん分して、請求人らの取得した本件各土地の価額及び請求人らの各課税価格を算定して、それぞれ、更正の請求をした。
       なお、請求人らが本審査請求において主張している本件各土地の評価額は、上記各更正の請求の金額と同じである。
  • ト 原処分庁算定の本件各土地の評価額について
     原処分庁は、本件各土地を利用状況に応じて本件A区画ないし本件D区画の4区画に区分した上で、本件各土地の評価額を算出して、請求人らに対して本件相続税の各更正処分(以下「本件各更正処分」という。)を行った。
     なお、本件A区画、本件B区画及び本件D区画は、評価通達24-4に定める広大地補正率を適用して評価している。

(3) 審査請求に至る経緯

  • イ 請求人らは、本件相続税について、別表1の「期限内申告」欄のとおり記載した相続税の申告書を法定申告期限までに共同で原処分庁に提出した。
  • ロ 平成24年6月28日、請求人らは、相続税額の加算漏れ等があったとして、別表1の「修正申告」欄のとおり記載した修正申告書を共同で原処分庁に提出した。
  • ハ 平成27年2月12日、請求人らは、相続した各土地の価額に誤りがあったとして、別表1の「更正の請求」欄のとおり、それぞれ、更正の請求をした。
  • ニ 原処分庁は、平成27年7月9日付で、請求人らに対して、別表1の「更正」欄のとおり、本件各更正処分をした。
  • ホ 平成27年9月8日、請求人らは、本件各更正処分に不服があるとして、別表1の「異議申立て」欄のとおり、それぞれ、異議申立てをした。
  • ヘ 異議審理庁は、平成27年12月2日付で、別表1の「異議決定」欄のとおり、請求人らの異議申立てをいずれも棄却の異議決定をした。
  • ト 請求人らは、平成27年12月28日、異議決定を経た後の本件各更正処分に不服があるとして、それぞれ審査請求をした。なお、請求人らは、請求人Hを総代として選任し、その旨を平成28年1月4日に当審判所に届け出た。

(4) 関係法令等

  • イ 相続税法
     相続税法第22条《評価の原則》は、相続等により取得した財産の価額は、特別の定めのあるものを除き、当該財産の取得の時における時価による旨規定している。
  • ロ 評価通達
    1. (イ) 評価通達7《土地の評価上の区分》は、土地の価額は、宅地、田、畑、山林、原野、牧場、池沼、鉱泉地及び雑種地の地目の別に評価し、地目は、課税時期の現況によって判定する旨定め、さらに、ただし書において、一体として利用されている一団の土地が2以上の地目からなる場合には、その一団の土地は、そのうちの主たる地目からなるものとして、その一団の土地ごとに評価するものとする旨定めている。そして、同通達7の注書には、地目の判定は不動産登記事務取扱手続準則(平成17年2月25日付民二第456号法務省民事局長通達、以下「本件準則」という。)第68条《地目》及び第69条《地目の認定》に準じて行う旨定めている。
    2. (ロ) 評価通達7-2《評価単位》(1)は、宅地については、1画地の宅地(利用の単位となっている1区画の宅地をいう。)を評価単位とする旨定め、さらに、注書で、贈与、遺産分割等による宅地の分割が親族間等で行われた場合において、例えば、分割後の画地が宅地として通常の用途に供することができないなど、その分割が著しく不合理であると認められるときは、その分割前の画地を「1画地の宅地」とする旨定めている。
       また、上記通達(7)は、雑種地については、利用の単位となっている一団の雑種地(同一の目的に供されている雑種地をいう。)を評価単位とする旨定め、さらに、ただし書で、市街化調整区域以外の都市計画区域で市街地的形態を形成する地域において、評価通達82《雑種地の評価》の本文の定めにより評価する宅地と状況が類似する雑種地が2以上の評価単位により一団となっており、その形状、地積の大小、位置等からみてこれらを一団として評価することが合理的と認められる場合には、その一団の雑種地ごとに評価する旨、また、この場合において、同通達(1)の注書に定める場合に該当するときは、その注書を準用する旨定めている。なお、上記通達の注書の1は、1画地の宅地は、必ずしも1筆の宅地からなるとは限らず、2筆以上の宅地からなる場合もあり、1筆の宅地が2画地以上の宅地として利用されている場合もあることに留意する旨定めている。
    3. (ハ) 評価通達11《評価の方式》は、宅地の評価は、市街地的形態を形成する地域にある宅地は、路線価方式によって行う旨定めている。
    4. (ニ) 評価通達24-4は、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地で都市計画法第4条《定義》第12項に規定する開発行為(以下「開発行為」という。)を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるもの(中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているもの(その宅地について、経済的に最も合理的であると認められる開発行為が中高層の集合住宅等を建築することを目的とするものであると認められるものをいう。)等を除く。以下「広大地」という。)の価額は、その広大地の面する路線の路線価等に、同通達15《奥行価格補正》から同通達20-5《容積率の異なる2以上の地域にわたる宅地の評価》までの定めに代わるものとして次の算式により求めた広大地補正率を乗じて計算した価額にその広大地の地積を乗じて計算した金額によって評価する旨定めている。
    5. 算式
    6. (ホ) 評価通達24-7《都市計画道路予定地の区域内にある宅地の評価》は、都市計画道路予定地内の区域内(都市計画法第4条第6項に規定する都市計画施設のうちの道路の予定地の区域内をいう。)となる部分を有する宅地の価額は、その宅地のうちの都市計画道路予定地の区域内となる部分が都市計画道路予定地の区域内となる部分でないものとした場合の価額に、次表の地区区分、容積率、地積割合の別に応じて定める補正率を乗じて計算した価額によって評価する旨定めている。なお、地区区分が普通住宅地区、容積率が200%未満、地積割合が30%未満の次表に記載された補正率は、0.99である旨定められている。
    7. (ヘ) 評価通達82は、雑種地の価額は、原則として、その雑種地と状況が類似する付近の土地についてこの通達の定めるところにより評価した1平方メートル当たりの価額を基とし、その土地とその雑種地との位置、形状等の条件の差を考慮して評定した価額に、その雑種地の地積を乗じて計算した金額によって評価する旨定めている。
  • ハ 本件準則
    1. (イ) 本件準則第68条は、地目を定める場合には、土地の現況及び利用目的に重点を置き、部分的に僅かな差異の存するときでも、土地全体としての状況を観察して定めるものとする旨、同条(3)は、宅地とは、建物の敷地及びその維持若しくは効用を果たすために必要な土地である旨、同条(23)には、雑種地とは、同条(1)ないし同条(22)のいずれにも該当しない土地である旨定めている。
    2. (ロ) 本件準則第69条は、土地の地目は、次に掲げるところによって定めるものとする旨定め、同条(7)は、遊園地、運動場、ゴルフ場又は飛行場において、一部に建物がある場合でも、建物敷地以外の土地の利用を主とし、建物はその付随的なものにすぎないと認められるときは、その全部を一団の雑種地とする旨、同条(9)は、テニスコート又はプールについては、宅地に接続するものは宅地とし、その他は雑種地とする旨定めている。
  • ニ ○○について
    1. (イ) ○○第○条《○○》第1項は、事業者は、開発区域の面積が300u以上の開発事業などを行うとするときは、あらかじめ、規則で定めるところにより○○に届け出なければならない旨規定している。
    2. (ロ) ○○第○条第1項は、事業者は、○○第○条《○○》第1項に規定する近隣住民に対する宅地開発事業の計画などの説明及び同条第4項の協議を行った上、事業計画案の概要に関する事項などを記載した書面により○○に申請し、宅地開発事業について協議しなければならない旨規定している。
    3. (ハ) ○○第○条第1項は、○○及び事業者は、○○第○条第1項の規定による宅地開発事業についての協議が整ったときは、当該協議の内容を記載した書面を作成し、協定を締結しなければならない旨規定している。
    4. (ニ) ○○第○条《○○》は、隣接した土地において、同一の土地所有者等又は事業者が、同時に又は継続して2年以内に行う開発事業である場合などに該当するときは、それぞれ1の開発事業とみなし、この○○を適用する旨規定している。

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2 争点

評価通達に基づき本件各土地を評価する場合、その評価単位(利用の単位となっている一区画の宅地又は一団の雑種地)に本件各土地に隣接する土地を含めることができるか否か。

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3 争点についての主張

請求人ら 原処分庁
本件各土地は、次の(1)ないし(3)の理由により、本件各土地以外の土地も含めた一団の土地を評価単位として評価すべきである。
 その上で、請求人らがそれぞれ取得した土地の面積に応じて本件各土地の価額を配分すべきである。
土地の価額は評価単位ごとに評価することとされている(評価通達7-2)。
 次の(1)ないし(3)のとおり、本件各土地は、本件A区画ないし本件D区画のそれぞれが1つの評価単位となるので、それぞれの評価単位ごとに評価すべきである。
(1) 本件A区画及び本件D区画について
 本件テニスクラブは、昭和○年から本件相続の開始時まで本件被相続人、請求人H及びQにより共同で経営され、本件テニスクラブの敷地全体をもって運営されており、当該敷地を分断した場合には、本件テニスクラブの共同事業の実施が困難であることから、本件A区画及び本件D区画の評価に当たっては、本件テニスクラブの敷地全体の土地(本件A区画、本件D区画、本件F区画及び本件G区画。別図参照。)を評価単位として、評価通達24-4に定める広大地として評価すべきである。
(1) 本件各土地の地目の判定
  • イ 本件A区画
     本件A区画は、本件テニスクラブのテニスコートの敷地として利用され、本件居宅の敷地(本件B区画)に隣接しているところ、本件準則第69条(9)によれば、宅地に接続するテニスコートの地目は宅地とする旨規定されているから、本件A区画の地目は宅地である。
  • ロ 本件B区画
     本件B区画は、本件居宅の敷地として利用されており、本件準則第68条(3)によれば、建物の敷地の地目は宅地とする旨規定されているから、本件B区画の地目は宅地である。
  • ハ 本件C区画
     本件C区画は、駐車場の敷地として利用されており、本件準則第68条(23)の規定によれば、同条の他の各号のいずれにも該当しない土地の地目は雑種地とする旨規定されているから、本件C区画の地目は雑種地である。
  • 二 本件D区画
     本件D区画は、本件B区画に接続する本件テニスクラブのテニスコート、同クラブのクラブハウス及び同クラブの利用者の駐車場の敷地として利用されており、本件準則第68条の規定によれば、土地の現況及び利用目的に重点を置き、部分的に僅かな差異が存するときでも、土地全体としての状況を観察して地目を定めるものとされていることから、本件D区画の全体の利用状況を鑑みれば、地目は宅地である。
(2) 本件B区画について
  • イ 本件居宅の敷地は、本件B区画及び本件E区画であり、当該敷地は、万年塀に囲まれている。
  • ロ 平成27年秋頃、本件居宅を取り壊して、新たに建物を建築することを計画した際、f市との宅地開発事業に係る平成28年○月○日付の協定により、協定区域の地積の3%に相当する○○u(本件居宅の敷地○○uの地積の約60%)の空地を確保しなければならないこととされたため、本件居宅の敷地のみでは、開発事業を行うことができず、また、当該協定区域は、本件テニスクラブの敷地全体及びf市g町○-○の土地に本件居宅の敷地の一部を併せた区域とされた。
  • ハ なお、複数の不動産業者等に本件居宅の敷地(本件B区画及び本件E区画)の購入価額について尋ねたところ、皆口をそろえて、このような利用制限のある土地は購入しない、もしどうしても購入するとしたら路線価の3分の1以下の金額であるとの回答を得た。
  • ニ 以上のことから、本件B区画の評価に当たっては、第2次開発区域を評価単位として、評価通達24-4に定める広大地として評価すべきである。
(2) 本件各土地の評価単位
  • イ 宅地の評価単位
     上記(1)のとおり、本件A区画、本件B区画及び本件D区画の地目は、宅地であるところ、1これらの各土地には、賃借権等の他者の権利は存在していないこと、2本件A区画と本件D区画は、本件テニスクラブの敷地ではあるものの、物理的に区分されていること、3本件居宅と本件テニスクラブとの間に利用の一体性は認められないこと、4本件居宅の敷地(本件B区画)と、本件テニスクラブの敷地(本件A区画及び本件D区画)は、外形上明瞭に区分されていることから、本件A区画、本件B区画及び本件D区画は、それぞれが独立して使用、収益及び処分をすることができるから、評価通達7-2(1)の定めにより、これらの各土地はそれぞれ利用区分が異なるものと認められる。
  • ロ 雑種地の評価単位
     本件C区画は、1駐車場として利用されていること、2当該駐車場は本件居宅及び本件テニスクラブとの間での利用の関連性がなく、本件A区画、本件B区画及び本件D区画には、本件C区画と一体で利用されていると認められる部分はないことから、評価通達7の定めにより、本件C区画はそれ以外の土地と評価上の区分が異なるものと認められる。
(3) 本件C区画について
  • イ 仮に、今後、本件C区画上に建物を建築することになった場合には、上記(2)のロと同様に、f市と宅地開発事業に係る協定を締結して、一団の空地(潰れ地)を確保しなければならず、当該空地確保の算定根拠となる協定区域は、第2次開発区域を含んだ土地となる。
  • ロ なお、本件C区画についても、上記(2)のハと同様に複数の不動産業者等から、このような利用制限のある土地は購入しない、もしどうしても購入するとしたら路線価の3分の1以下の金額であるとの回答を得た。
  • ハ 以上のことから、本件C区画の評価に当たっては、第2次開発区域を評価単位として、評価通達24-4に定める広大地として評価すべきである。
(3) 以上のことから、本件A区画ないし本件D区画は、それぞれを1つの評価単位とすべきである。
 そして、本件各土地のうち本件C区画を除く、本件A区画、本件B区画及び本件D区画の各地積は、開発許可面積基準(500u)を上回るので、評価通達24-4に定める広大地に該当するので、本件A区画、本件B区画及び本件D区画の各価額は、当該各土地の地積を基にして求めた広大地補正率を乗じて算定し、本件C区画の地積は、開発許可面積基準(500u)未満であるので、評価通達24-4の定めの適用がない土地として評価すべきである。

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4 判断

(1) 認定事実

  • イ 本件各土地は、都市計画法第8条《地域地区》第3項第2号ロに規定する「第一種低層住居専用地域」に所在する土地であり、最低敷地面積は80u、同地域における建築基準法第52条《容積率》第1項に規定する建築物の「容積率」は100%、同法第53条《建ぺい率》第1項に規定する建築物の「建ぺい率」は50%である。
  • ロ f市g町○-○の土地の一部には、○○・○○の2計画線が含まれていることから、上記土地は、評価通達24-7に定める都市計画道路予定地の区域内となる部分を有する宅地等に該当する。
  • ハ f市内にある500u以上の一団の土地において、都市計画法に規定する開発行為などの宅地開発事業を行うときには、あらかじめ○○の開発行為の許可を受けなければならないこととされている。
  • ニ 本件各土地は、本件テニスクラブの敷地として利用されていた本件A区画及び本件D区画を含め全体として段差のない平坦な土地であり、宅地として使用するに当たり造成を必要とする部分はない。

(2) 法令解釈等

  • イ 評価通達に定める土地の評価について
     相続税法第22条は、相続財産の価額は、特別に定めのあるものを除き、当該財産の取得の時における時価による旨を規定しており、ここにいう時価とは相続開始時における当該財産の客観的な交換価値をいうものと解するのが相当である。しかし、客観的交換価値は、必ずしも一義的に確定されるものではないから、これを個別に評価する方法をとった場合には、その評価方式等により異なる評価額が生じたり、課税庁の事務負担が重くなり、大量に発生する課税事務の迅速な処理が困難となったりするおそれがある。そこで、課税実務上は、特別の定めのあるものを除き、相続財産評価の一般的基準が評価通達によって定められ、原則としてこれに定められた画一的な評価方式によって相続財産を評価することとされている。このように、あらかじめ定められた評価方式によってこれを画一的に評価することは、税負担の公平、効率的な租税行政の実現という観点から見て合理的であり、相続財産の評価に当たっては、評価通達によって評価することが著しく不適当と認められる特別の事情がない限り、評価通達に規定された評価方法によって画一的に評価することが相当である。
  • ロ 評価単位の判定について
    1. (イ) 評価通達において、土地の価額は、評価単位ごとに評価することとされ(評価通達7-2)、宅地については、利用の単位となっている1区画の宅地(1画地の宅地、同通達(1))、雑種地については、同一の目的に供され、利用の単位となっている一団の雑種地(同通達(7))が一つの評価単位となる。
       この評価単位(1画地の宅地又は一団の雑種地)とは、その土地を取得した者が、その土地を使用、収益及び処分をすることができる利用単位又は処分単位であって、原則として、1所有者による自由な使用収益を制約する他者の権利(原則として使用貸借による使用借権を除く。)の存在の有無により区分し、2他者の権利が存在する場合には、その権利の種類及び権利者の異なるごとに区分して、それを1画地の宅地又は一団の雑種地として評価するのが相当である。
       したがって、土地の価額は、原則として、遺産分割後の取得者ごと、利用の単位となっている土地ごとに判定した評価単位を基に評価することになる。
    2. (ロ) また、評価単位の判定に当たっては、評価通達7-2(1)注書により、遺産分割後の画地が宅地として通常の用途に供することができないなど、遺産分割等による宅地の分割が著しく不合理であると認められるときは、当該分割前の画地によるが、かかる事情がない限り、分割後の画地によることとなる。これは、相続税の計算について、いわゆる法定相続分課税方式による遺産取得者課税を採用していることなどから、土地の時価の算定に当たり、遺産分割後の所有者単位で評価することが相当であるとの理由に基づくものである。
    3. (ハ) さらに、評価対象地が、居住の用、事業の用と利用の単位が分かれている場合であっても、自用の宅地であれば、他人の権利(借地権、賃借権、借家権等)による制約がないので、その全体を一体として利用することが可能であるから、所有する宅地を自ら使用している場合には、居住の用か事業の用かにかかわらず、その全体を1画地の宅地として評価するのが相当である。
    4. (ニ) そして、所有している宅地の一部を自ら使用し、他の部分を使用貸借により貸し付けている場合には、当該宅地の全体を1画地の宅地として評価するのが相当である。これは、使用借権が、その性質上対価を伴わないものであり、また、一般に貸主・借主間の人的つながりを基盤とするものが多く、借主としての立場が極めて弱い権利であるといえることから、宅地の評価に当たっては、このような使用借権の実態に配慮し、当該権利に客観的交換価値があるものとみてその価額を控除するのは相当でないためである。

(3) 当てはめ

  • イ 本件各土地の地目及び評価方法について
     本件各土地は、上記1の(2)のとおり、大別すると本件テニスクラブの敷地、本件居宅の敷地及び請求人Hが経営する月ぎめ駐車場の敷地として利用されていたので、その利用形態により、まず、地目を判定する。
    1. (イ) 本件テニスクラブの敷地として利用されていた区画について
       上記1の(2)のロの(ロ)及びハの(イ)のとおり、本件テニスクラブの敷地は一体として利用され、本件D区画及び本件G区画の○○にクラブハウスが存在し、当該クラブハウスの周囲に利用者用の駐車場、当該クラブハウスの敷地に隣接する土地に○区画、○面のテニスコート(本件A区画、本件D区画及び本件G区画)、○○の敷地(本件F区画)が存在した。
       評価通達7の注書は、地目の判定は本件準則に準じて行う旨定め、本件準則第68条は、地目を定める場合には、土地の現況及び利用目的に重点を置き、部分的に僅かな差異の存するときでも、土地全体としての状況を観察し定めるものとし、本件準則第69条(7)は、運動場等において、一部に建物がある場合でも、建物敷地以外の土地の利用を主とし、建物はその付随的なものにすぎないと認められるときは、その全部を一団の雑種地とする旨定めている。
       本件テニスクラブの敷地は、その一部にクラブハウス等の建物が存在するものの本件テニスクラブの利用者が主に利用していたのは雑種地に区分される○面のテニスコートであって、クラブハウスはテニスコートの利用者が本件テニスクラブを使用する際に使用していた附属的な設備と認められるので、その全部が「雑種地」に判定される。
       したがって、本件A区画及び本件D区画の地目は「雑種地」に該当する。
    2. (ロ) 本件居宅の敷地として利用されていた区画について
       本件居宅の敷地(本件B区画)は、本件被相続人及び請求人らの居住する家屋(本件居宅)の敷地として利用されていたので、その地目は「宅地」に該当する。
    3. (ハ) 請求人Hの経営する月ぎめ駐車場の敷地として利用されていた区画について
       本件C区画は、請求人Hの経営する月ぎめ駐車場の敷地として利用されていたので、その地目は「雑種地」に該当する。
    4. (ニ) 本件各土地の評価方式
       本件各土地は市街地に位置し評価通達11に定める路線価方式によって評価されるところ、本件A区画、本件C区画及び本件D区画はいずれも平坦な土地であり、宅地として利用するに当たり造成工事を要する必要はないものと認められる。
  • ロ 本件各土地の評価単位について
    1. (イ) 本件甲土地について
      • A 本件甲土地は、いずれも本件被相続人が単独で所有していた土地であり、本件相続により請求人Kが100分の30、請求人Lが100分の35、請求人Mが100分の35の共有持分をそれぞれ取得した(別表2及び別表3参照)。
      • B 本件甲土地の形状は、ほぼ、整形(矩形)であり、そのほとんどがテニスコートの敷地として利用され(本件A区画)、f市g町○-○のごく一部が本件居宅の敷地の一部として利用されていた(以下「本件b1区画」という。別表3及び別図参照)。
      • C このように本件甲土地のほとんどの部分は本件テニスクラブの敷地として利用されている本件A区画(雑種地)が占めているものの、本件居宅の敷地の一部として利用されている本件b1区画(宅地)も含まれていることから、仮に地目に基づき本件甲土地の評価単位を判定すると、地目の異なる本件b1区画と本件A区画は別々に評価されることとなる。その場合、本件b1区画は、間口が狭く、奥行きの長い著しく狭あいな宅地となり、単独での利用が困難な土地となるので、本件遺産分割は、評価通達7-2(1)の注書に定める不合理分割に当たるのではないかという疑問が生じる。
      • D しかしながら、本件の場合、1本件A区画は地目が雑種地と判定されるものの本件A区画の周辺は住宅地であり、本件A区画は宅地に比準して評価することになること、2本件被相続人は、本件甲土地(本件A区画及び本件b1区画)の全部を所有し、請求人Hとともに本件居宅に居住していたことから、本件甲土地の一部である本件b1区画について本件居宅の敷地としての利用を許容していたと認められ、本件遺産分割後も本件b1区画の利用について請求人Hを除く他の請求人らがその利用を黙認している状況にあり、さらに請求人Hと本件被相続人及び他の請求人らとの間に地代の収受等が特にないことなど本件遺産分割前後における状況も踏まえて判断すると、請求人Hが本件b1区画を本件居宅の敷地として利用している状況は、使用貸借に基づく一時利用が継続しているとみることができる。
         このことからすれば、本件遺産分割において、本件b1区画を含む本件甲土地を請求人H以外の請求人らが取得する旨合意したことをもって、評価通達7-2(1)注書に定める著しく不合理な分割が行われたとまでいうことはできない。
         上記(2)のロの(ニ)のとおり使用貸借に基づく権利は、貸主、借主間の人的なつながりのみを基盤とするもので借主の権利が極めて弱いことから、所有する宅地の一部を自ら使用し、他の部分を使用貸借により貸し付けている場合には、その全体を1画地の宅地として評価するのが相当であり、本件では本件相続開始後も使用貸借の状況が継続している状況にあるとみられることからすると、地目は異なるものの、請求人Hが使用貸借に基づき使用している本件b1区画は、本件甲土地の一部に含めて本件甲土地全体を一団の雑種地として評価するのが相当である。
    2. (ロ) 本件乙土地について
      • A 本件被相続人の保有していた本件乙土地の各共有持分はいずれも請求人Hが取得し、請求人Hは本件乙土地を本件居宅の敷地(本件B区画)の一部と請求人Hの月ぎめ駐車場の敷地(本件C区画)の一部として利用していた。
      • B 本件B区画のうち本件b1区画及びf市g町○-○の一部(以下「本件b2区画」という。)と、本件C区画のうち同-○の一部及び同-○の一部(以下、同-○の一部と併せて「本件c1区画」という。)は、請求人Hが、本件被相続人及び他の請求人らから使用貸借により借り受けて使用していたもので、上記1の(2)のハの(ロ)及び(ハ)のとおり、請求人Hと本件被相続人及び他の請求人らとの間に地代の授受はない。
         上記(2)のロの(ニ)のとおり、使用貸借における借主の権利は極めて弱いことから、自己の所有する土地に隣接する土地を使用貸借により借り受け、自己の所有する土地と一体として利用していても、所有する土地のみを1画地の宅地又は一団の雑種地として評価するのが相当である。
      • C したがって、本件乙土地は、本件居宅の敷地として利用されていた部分(本件B区画のうち本件b1区画及び本件b2区画を除く部分、以下「本件乙1土地」という。)を1画地の宅地として、請求人Hの月ぎめ駐車場の敷地として利用されていた土地(本件C区画のうち本件c1区画を除く部分、以下「本件乙2土地」という。)を一団の雑種地として、それぞれ評価するのが相当である。
    3. (ハ) 本件丙土地について
      • A f市g町○-○の土地は、本件被相続人が単独所有していたものを、本件相続により請求人Hが100分の30、請求人Lが100分の35、請求人Mが100分の35の共有持分をそれぞれ取得した。
         また、f市g町○-○の土地は、本件相続開始前に本件被相続人が672分の172、請求人Hが672分の290、請求人Mが672分の210の割合で所有していたものを、本件相続により、本件被相続人の共有持分672分の172を請求人Lが取得している。
         したがって、上記各土地は、本件相続により取得した相続人が異なることから、本来であれば、別々に評価すべき土地となる。
      • B しかしながら、本件丙土地の○○に位置し、公道に面しないf市g町○-○の土地は、当該土地と公道との間に同○-○の土地が存在することから、単独での利用が困難な土地であり、公道に通じる同○-○の土地を併せて利用することによって、はじめて有効活用が図れる土地である。
         本件丙土地の現実の利用状況を見ても、上記1の(2)のハの(イ)のとおり、本件丙土地のほとんどの部分を占める本件D区画は○○の約半分がテニスコートの敷地、○○の約半分が、クラブハウス、駐車場及び公道からクラブハウスに繋がる通路の敷地として一体利用されており、かつ、本件丙土地の各土地は、共有持分の割合が異なるものの、本件相続開始後は、いずれも請求人H、請求人L及び請求人Mの3名共有の土地になっていて、上記1の(2)のニのとおり、本件相続開始後にf市g町○-○から同○-○、同○-○から同○-○がそれぞれ分筆され、分筆後の2筆が一括して譲渡されている。
         したがって、本件丙土地は、現実の利用状況及び処分の状況からみても、これを一つの画地として捉えて評価するのが相当である。
      • C なお、本件丙土地のほとんどの部分は、本件テニスクラブの敷地として利用されていたものの、その一部は、本件居宅の敷地の一部(本件b2区画)と、請求人Hの月ぎめ駐車場の敷地の一部(本件c1区画)として利用されていた。
         本件b2区画と本件c1区画は、本件甲土地と本件b1区画の場合と同様の事情で、本件丙土地の一部を請求人Hが本件相続開始前から無償で使用していた土地であり、本件相続開始後も、請求人Hと請求人らとの間で使用貸借の状況が継続している土地であるので、上記(イ)のDと同様に本件b2区画、本件c1区画と本件D区画とを区別せずに本件丙土地全体を1画地の雑種地として評価するのが相当である。
    4. (ニ) 以上のとおり、本件各土地のうち主に本件テニスクラブの敷地として利用されていた本件甲土地と本件丙土地は、それぞれ一団の雑種地として評価することになるが、上記各土地の地積は、f市における開発許可面積基準(500u)を上回るなどその地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な土地で、開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるので、本件甲土地と本件丙土地は、評価通達24-4に定める広大地として評価するのが相当である。
       また、請求人Hが相続して本件居宅の敷地として利用していた本件乙1土地は1画地の宅地、請求人Hの月ぎめ駐車場の敷地として利用されていた本件乙2土地は一団の雑種地として評価することになるが、これらの土地の地積は、開発許可面積基準未満であり、戸建住宅の分譲開発を行うとした場合であっても公共公益的施設用地の負担が必要とは認められないから、評価通達24-4の定めの適用がない土地として評価するのが相当である。
       なお、f市g町○-○の一部には、○○・○○の2計画線内の土地が含まれていると認められるので、本件丙土地は、評価通達24-7に定める都市計画道路予定地の区域内となる部分を有する土地として、評価通達24-7に定められた補正率0.99(地区区分が普通住宅地区、容積率が200%未満、地積割合が30%未満)を乗じて、その価額を算出することとなる。
       上記のとおりに区分して請求人らの取得した本件各土地の価額を算定すると別表4のとおりとなる。

(4) 請求人らの主張について

  • イ 請求人らは、本件A区画及び本件D区画が本件テニスクラブの敷地の一部として利用されていたことから、本件A区画及び本件D区画の価額は、本件テニスクラブの敷地として利用されていた土地全体を一つの「評価単位」として評価通達24-4に定める広大地補正率を適用してその価額を算定した上で、上記各土地の面積に応じて配分して算定すべきである旨主張する。
     しかしながら、評価通達では、原則として、取得者課税の観点から遺産分割後の画地を1画地として評価することとされている(評価通達7-2(1)注書)。
     上記(2)のロの(イ)のとおり、土地の評価単位は、原則として、1遺産分割後の取得者ごとに区分した後、2利用の単位となっている土地ごとに判定した評価単位を基に評価すべきであり、本件各土地の場合、取得者別、利用の単位別に区分すると4区画(本件甲土地、本件乙1土地、本件乙2土地及び本件丙土地)の土地に区分されることになるので、それぞれを一つの評価単位として評価すべきである。なお、これら上記4区画の土地の中には、上記(1)のイのとおり、敷地面積の最低限度である80uに満たないために単独での有効活用が図れないような土地はなく、いずれの土地も宅地又は雑種地として利用する際に十分な地積を有することから、上記4区画を併せて一画地の宅地又は一団の雑種地として評価すべき事情は見当たらない。
     また、請求人らは、請求人らが一体評価すべきである旨主張する他者の所有地に何ら権限を有しておらず、その利用及び処分について自らの判断で何も決めることはできないのであるから、本件相続開始時の利用状況のみを捉えて、何ら権限を有していない他者の所有地まで含めて1画地の土地として評価すべきであるという、請求人らの主張に理由があるとは認められない。
  • ロ さらに、請求人らは、第1次協定書及び第2次協定書において開発行為を行おうとした場合に制約を受けたことを理由にその協定区域全域を一つの評価単位として、本件B区画及び本件C区画を評価する際にも、評価通達24-4に定める広大地補正率を適用して評価すべきであるとも主張しているが、本件各土地の評価単位の認定については前記イのとおりであり、請求人らの主張する上記事実を前提としても、評価通達24-4に定める広大地の評価に照らし、何ら影響を及ぼすものではないことは明らかである。
     したがって、f市との間で締結した第1次協定書及び第2次協定書において開発区域が設定されたからといって、第2次開発区域を評価単位として、本件B区画及び本件C区画について、評価通達24-4に定める広大地の評価を行うべきであるという、請求人らの主張を認めることはできない。

(5) 原処分庁の認定した評価単位について

  • イ 原処分庁は、本件各土地を利用の単位を基準として本件A区画ないし本件D区画に区分して、それぞれの区画ごとに評価している。
  • ロ しかしながら、本件各土地の評価単位は、原則として取得者ごとに評価単位を判定すべきであり、これによらずに遺産分割によって分割された土地について分割前の画地を1画地として評価することができるのは、当該遺産分割によって分割された後の宅地が、通常の用途に供することができないなど、その分割が著しく不合理な場合であると認められるときであるところ(評価通達7-2(1)注書)、本件相続により請求人らが取得した本件甲土地、本件乙土地及び本件丙土地は、いずれも矩形の土地であり本件遺産分割により通常の用途に供することができないと認められる土地とは認められない。また、その他に遺産分割前の画地を1画地として評価する事情は認められない。
  • ハ なお、本件甲土地には本件b1区画、本件乙土地には本件b2区画及び本件c1区画と当該各土地の面積に比べれば僅かではあるが、利用状況の異なる土地が含まれているが、上記(3)のロの(イ)のD及び同(ハ)のCのとおり、これらの土地を利用している請求人Hが本件相続開始後も他の相続人から使用貸借によって借り受けて使用している土地であることなどの事情を踏まえた場合、本件各土地は、まず、本件相続による取得者ごとに区分した本件甲土地、本件乙土地及び本件丙土地を基準として、さらに異なる二つの利用状況の土地を含む本件乙土地については、その利用状況に応じて、本件居宅の敷地として利用されている本件乙1土地と、請求人Hの月ぎめ駐車場として利用されている本件乙2土地に分けてそれぞれ評価すべきであり、本件においては、利用状況のみに着目して区分された本件A区画ないし本件D区画を評価単位として評価するのは適当ではない。

(6) 本件各更正処分について

上記(3)のロの(ニ)で算定した請求人らの取得した本件各土地の価額を基に請求人らの納付すべき本件相続に係る相続税の税額を計算すると、別表5の「審判所認定額」のとおりとなる。
 そうすると、請求人Hについては、その納付すべき税額が、本件各更正処分のうち請求人Hに係るものの額を上回るから、請求人Hに係る更正処分は適法である。
 また、請求人K、請求人L及び請求人Mについては、その納付すべき税額が、いずれも本件各更正処分(上記各3名に係るもの)の額を下回るから、当該各更正処分は、いずれもその一部を別紙2ないし4の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。

(7) 結論

以上によれば、請求人Hの審査請求は理由がないからこれを棄却し、請求人K、請求人L及び請求人Mの各審査請求は、いずれも原処分の一部を別紙2ないし4の「取消額等計算書」のとおり取り消す限度で理由があるからこれらを認容することとする。

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