ホーム >> 公表裁決事例集等の紹介 >> 公表裁決事例 >> 平成29年7月〜9月分 >> (平成29年8月22日裁決) >> 別紙 関係法令等の要旨
別紙 関係法令等の要旨
-
1 国税通則法
国税通則法(平成27年法律第9号による改正前のもの。以下「通則法」という。)第23条《更正の請求》第1項は、納税申告書を提出した者は、次の各号のいずれかに該当する場合には、当該申告書に係る国税の法定申告期限から5年以内に限り、税務署長に対し、その申告に係る課税標準等又は税額等につき更正をすべき旨の請求をすることができる旨規定し、更正の請求をすることができる場合として、同項第1号は、当該申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったことにより、当該申告書の提出により納付すべき税額が過大であるときである旨規定している。
-
2 租税特別措置法
- (1) 租税特別措置法(平成25年法律第5号による改正前のもの。以下「措置法」という。)第2条《用語の意義》第1項第1号の2は、居住者又は非居住者とは、それぞれ所得税法(平成26年法律第10号による改正前のもの。以下同じ。)第2条《定義》第1項第3号又は第5号に規定する居住者又は非居住者をいう旨規定している。
- (2) 措置法第29条の2《特定の取締役等が受ける新株予約権等の行使による株式の取得に係る経済的利益の非課税等》第1項は、会社法第238条《募集事項の決定》第2項等の決議により新株予約権(政令で定めるものに限る。)を与えられる者とされた当該決議(以下「付与決議」という。)のあった株式会社の取締役若しくは使用人である個人(一定の大口株主等を除く。)が、当該付与決議に基づき当該株式会社と当該取締役等との間に締結された契約により与えられた新株予約権(当該新株予約権に係る契約において措置法第29条の2第1項各号に掲げる要件が定められているものに限る。以下「税制適格ストックオプション」という。)を当該契約に従って行使することにより当該新株予約権に係る株式を取得した場合には、当該株式の取得に係る経済的利益(以下「権利行使益」という。)については、所得税を課さない旨規定している。
- (3) 措置法第29条の2第4項は、同条第1項第6号に規定する金融商品取引業者等の振替口座簿への記載若しくは記録、保管の委託又は管理等信託(以下「保管の委託等」という。)の解約又は終了(同号の取決めに従ってされる譲渡に係る終了を除く。)により、特定株式(同項本文の規定の適用を受けた個人が有する当該適用を受けて取得した株式で、保管の委託等がされているものをいう。以下同じ。)の全部又は一部の返還又は移転があった場合には、当該返還又は移転があった特定株式については、その事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額による譲渡があったものとみなして(以下、同条第4項の規定による譲渡があったものとみなされる当該返還又は移転を「みなし譲渡」という。)、同法第37条の10《株式等に係る譲渡所得等の課税の特例》の規定その他の所得税に関する法令の規定を適用する旨規定している。
- (4) 措置法第29条の2第7項は、同条第1項本文の規定の適用を受ける場合における株式の取得価額の計算の特例、同項本文の規定の適用を受ける場合における株式の譲渡に係る国内源泉所得の範囲及び非居住者に対する課税の方法の特例、その他同項及び同条第4項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める旨規定している。
- (5) 措置法第37条の12《恒久的施設を有しない非居住者の株式等の譲渡に係る国内源泉所得に対する課税の特例》第1項は、国内に恒久的施設を有しない非居住者(所得税法第164条《非居住者に対する課税の方法》第1項第4号に掲げる非居住者をいう。)が措置法第37条の10第2項に規定する株式等の同条第1項に規定する譲渡をした場合には、当該株式等の譲渡に係る国内源泉所得については、所得税法第165条《総合課税に係る所得税の課税標準、税額等の計算》の規定にかかわらず、他の所得と区分し、その年中の当該株式等の譲渡に係る国内源泉所得の金額として政令で定めるところにより計算した金額に対し、当該金額の100分の15に相当する金額に相当する所得税を課する旨規定している。
-
3 所得税法、所得税法施行令等
- (1) 所得税法第2条第1項第3号は、居住者とは、国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人をいう旨規定し、また、同項第5号は、非居住者とは、居住者以外の個人をいう旨規定している。
- (2) 所得税法第5条《納税義務者》第2項第1号は、非居住者が、同法第161条《国内源泉所得》に規定する国内源泉所得を有する場合には、所得税法により、所得税を納める義務がある旨規定している。
- (3) 所得税法第161条柱書及び第1号は、国内にある資産の譲渡により生ずる所得その他その源泉が国内にある所得として政令で定めるものは国内源泉所得である旨規定している。
- (4) 所得税法第164条第1項柱書及び同項第4号イは、同項第1号から第3号までに掲げる非居住者以外の非居住者(すなわち国内において恒久的施設を有しない非居住者)に対して課する所得税の額は、同法第161条第1号に掲げる国内源泉所得その他政令で定めるものについて、同法第165条の規定を適用して計算したところによる旨規定している。
- (5) 所得税法施行令(平成25年政令第165号による改正前のもの。以下同じ。)第109条《有価証券の取得価額》第1項柱書及び同項第2号は、発行法人から与えられた所得税法施行令第84条《株式等を取得する権利の価額》の規定に該当する場合における新株予約権の行使により取得した有価証券の取得価額は、その有価証券のその権利の行使の日における価額とする旨規定しているところ、措置法第29条の2第7項の委任を受けた租税特別措置法施行令(以下「措置法施行令」という。)第19条の3《特定の取締役等が受ける新株予約権等の行使による株式の取得に係る経済的利益の非課税等》第12項の規定による読替え後の所得税法施行令第109条第1項第2号は、措置法第29条の2第1項本文の適用がある新株予約権の行使により取得した有価証券を除く旨規定している。そして、所得税法施行令第109条第1項柱書及び同項第1号は、金銭の払込みにより取得した有価証券(次号に該当するものを除く。)の取得価額は、その払込みをした金銭の額(新株予約権の行使により取得した有価証券にあっては当該新株予約権の取得価額を含むものとし、その金銭の払込みによる取得のために要した費用がある場合には、その費用を加算した金額)とする旨規定している。
- (6) 所得税法施行令第280条《国内にある資産の所得》第2項柱書及び同項第4号は、所得税法施行令第291条《恒久的施設を有しない非居住者の課税所得》第1項第3号に規定する株式等でその譲渡による所得が同号ロに該当する資産の譲渡により生ずる所得は、所得税法第161条第1号に規定する国内にある資産の譲渡により生ずる所得とする旨規定している。
- (7) 措置法第29条の2第7項の委任を受けた措置法施行令第19条の3第14項の規定による読替え後の所得税法施行令第291条第1項柱書及び同項第3号ロは、措置法第29条の2第4項に規定する特定株式の譲渡及び内国法人の特殊関係株主等である非居住者が行うその内国法人の株式等の譲渡による所得は、所得税法第164条第1項第4号に規定する政令で定める国内泉所得である旨規定している。
- (8) 所得税基本通達(平成28年7月5日付課個2-22による改正前のもの。以下「基本通達」という。)23〜35共-6《株式等を取得する権利を与えられた場合の所得区分》柱書及び同(1)は、所得税法施行令第84条第1号又は第2号に掲げる権利を与えられた取締役又は使用人がこれを行使した場合の当該権利の行使による株式の取得に係る所得区分は、給与所得とするが、退職後に当該権利の行使が行われた場合において、例えば、権利付与後短期間のうちに退職を予定している者に付与され、かつ、退職後長期間にわたって生じた株式の値上がり益に相当するものが主として供与されているときなど、主として職務の遂行に関連を有しない利益が供与されていると認められるときは、雑所得とする旨定め、また、同(2)及び同(2)イは、所得税法施行令第84条第3号又は第4号に掲げる権利を与えられた者がこれを行使した場合において、発行法人と権利を与えられた者との間の雇用契約又はこれに類する関係に基因して当該権利が与えられたと認められるときは、同(1)の取扱いに準ずる旨定め、さらに、同(2)イ注書は、措置法第29条の2第1項に規定する「取締役等」の関係については、雇用契約又はこれに類する関係に該当する旨定めている。
-
4 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とK国政府との間の協定
- (1) 「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とK国政府との間の協定」(平成○年条約第○号。以下「○○租税協定」という。)第3条第2項は、一方の締約国によるこの協定の適用上、この協定において定義されていない用語は、文脈により別に解釈すべき場合を除くほか、この協定の適用を受ける租税に関する当該一方の締約国の法令における当該用語の意義を有するものとする旨規定している。
- (2) ○○租税協定第13条各項は、要旨次のとおり規定している。
- イ 第1項は、一方の締約国の居住者が第6条に規定する不動産で他方の締約国内に存在するものの譲渡によって取得する収益に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる旨規定している。
- ロ 第2項は、一方の締約国の企業が他方の締約国内に有する恒久的施設の事業用資産の一部を成す財産の譲渡又は一方の締約国の居住者が独立の人的役務を提供するため他方の締約国内においてその用に供している固定的施設に係る財産の譲渡から生ずる収益に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる旨規定している。
- ハ 第3項は、一方の締約国の居住者が国際運輸に運用する船舶又は航空機及びこれらの船舶又は航空機の運用に係る財産の譲渡によって取得する収益に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる旨規定している。
- ニ 第4項は、第2項の規定が適用される場合を除くほかとして、要旨次の(イ)及び(ロ)を規定している。
- (イ) 一方の締約国内に存在する不動産を主要な財産とする法人の株式又は一方の締約国内に存在する不動産を主要な財産とする組合等の持分の譲渡から生ずる収益に対しては、当該一方の締約国において租税を課することができる(第4項(a))。
- (ロ) 一方の締約国の居住者が他方の締約国の居住者である法人の株式の譲渡によって取得する収益に対しては、当該譲渡者が保有し又は所有する株式(当該譲渡者の特殊関係者が保有し又は所有する株式で当該譲渡者が保有し又は所有するものと合算されるものを含む。)の数が、当該課税年度中のいかなる時点においても当該法人の株式の総数の少なくとも25%であること、当該譲渡者及びその特殊関係者が当該課税年度中に譲渡した株式の総数が、当該法人の株式の総数の少なくとも5%であることを条件として、当該他方の締約国において租税を課することができる(第4項(b))。
- ホ 第5項は、第1項から第4項までに規定する財産以外の財産の譲渡から生ずる収益に対しては、譲渡者が居住者である締約国においてのみ租税を課することができる旨規定している。
- (3) ○○租税協定第15条第1項前段は、次条等の規定が適用される場合を除くほか、一方の締約国の居住者がその勤務について取得する給料、賃金その他これらに類する報酬に対しては、勤務が他方の締約国内において行われない限り、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる旨規定し、同項後段は、勤務が他方の締約国内において行われる場合には、当該勤務から生ずる報酬に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる旨規定している。
- (4) ○○租税協定第16条は、一方の締約国の居住者が他方の締約国の居住者である法人の役員の資格で取得する役員報酬その他これに類する支払金に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる旨規定している。
- (5) ○○租税協定第21条第1項は、一方の締約国の居住者の所得(源泉地を問わない。)で前各条に規定がないものに対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる旨規定し、同協定第21条第3項は、同条第1項及び第2項の規定にかかわらず、一方の締約国の居住者の所得のうち、他方の締約国内において生ずるものであって前各条に規定のないものに対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる旨規定している。
-
5 条約法に関するウィーン条約
- (1) 条約法に関するウィーン条約(昭和56年条約第16号。以下「ウィーン条約」という。)第31条《解釈に関する一般的な規則》第1項は、条約は、文脈によりかつその趣旨及び目的に照らして与えられる用語の通常の意味に従い、誠実に解釈するものとする旨規定している。
- (2) ウィーン条約第32条《解釈の補足的な手段》は、前条の規定の適用により得られた意味を確認するため又は前条の規定による解釈によっては意味が曖昧又は不明確である場合(第32条(a))及び前条の規定による解釈により明らかに常識に反した又は不合理な結果がもたらされる場合(第32条(b))における意味を決定するため、解釈の補足的な手段に依拠することができる旨規定している。
-
6 OECDモデル条約
- (1) OECDモデル条約(以下「モデル条約」という。)第13条《譲渡収益》第5項は、同条第1項から第4項までに規定する財産以外の財産の譲渡から生ずる収益に対しては、譲渡者が居住者とされる締約国においてのみ租税を課することができる旨規定している。
- (2) モデル条約第15条《給与所得》第1項前段は、次条等の規定が適用される場合を除くほか、一方の締約国の居住者がその勤務について取得する給料、賃金、その他これらに類する報酬に対しては、勤務が他方の締約国内において行われない限り、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる旨規定し、同項後段は、勤務が他方の締約国内において行われる場合には、当該勤務について取得する給料、賃金その他これらに類する報酬に対しては、当該他方の国において租税を課することができる旨規定している。
- (3) モデル条約第16条《役員報酬》は、一方の締約国の居住者が他方の締約国の居住者である法人の役員の資格で取得する役員報酬その他これに類する支払金に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる旨規定している。
-
7 OECDモデル条約コメンタリー
- (1) モデル条約第13条に関するOECDモデル条約コメンタリー(以下「コメンタリー」という。)の、第5パラグラフは、同条は、譲渡収益について詳しい定義を与えていない旨、また、第9パラグラフは、資本価値の増加及び事業用資産の再評価に対して租税が課される場合には、原則として、そのような資産の譲渡の場合と同じ原則が適用されるべきである旨、さらに、第10パラグラフは、国によっては、その国の領域内に所在するある企業の恒久的施設から他方の国内に所在する同一企業の恒久的施設又は本店への資産の移転を財産の譲渡と同様に扱う国もあるが、これらの国が、当該移転に関連して生じたとみなされる利得又は収益に対して租税を課することを妨げるものではない旨定めている。
- (2) モデル条約第15条に関するコメンタリー第12.2パラグラフは、同条は、使用人に付与されたストックオプションから生ずる給付で勤務に係る給付に適用される(当該給付について、租税が課される時点を問わない)が、一方、そのような勤務に係る給付は、当該オプションの行使により取得した株式の譲渡による譲渡収益とは区別される必要があるとした上で、オプションそれ自体から生ずる一切の給付については、当該オプションが行使されるまで、第13条ではなく、第15条が適用されるが、当該オプションが一旦行使されれば、勤務に係る給付は実現し、当該使用人は取得した株式に関するその後の一切の利得(つまり、行使後に発生した株式の価値)を投資家である株主の資格で取得したものであり、当該利得については、第13条が適用される旨定めている。
また、モデル条約第15条に関する第12.3パラグラフは、同条は、関連する所得について、源泉地国が租税を課する時期に関して何ら制限を課すものではなく、それ故、源泉地国は、当該オプションの付与時、行使時、株式の売却時又はその他一切の時点において当該関連する所得について租税を課することができる旨定めている。
さらに、モデル条約第15条に関する第12.4パラグラフは、第1項は、オプションが行使され、売却等されるまでに当該オプションから取得する給付又はその一部が国内での課税に関しどのように性質決定されるかは問題でないとした上で、そのような給付についてどのように(例えば、給与所得又は譲渡所得のいずれの所得として)租税を課するかについての決定は、源泉地国に委ねられる旨定めている。 - (3) モデル条約第16条に関するコメンタリー第3.1パラグラフは、使用人に付与されるストックオプションに関連して第15条に関するコメンタリー第12ないし第12.15パラグラフの下で議論される多くの問題は、法人の取締役会の構成員に付与されるストックオプションの場合においても生ずるとした上で、第16条は、役員報酬その他これに類する支払金を構成するストックオプションの給付がいずれの時点において租税が課されるかにかかわらず、法人の役員に付与されるストックオプションから取得する給付について適用されるが、当該給付と、当該オプションの行使により取得した株式の譲渡から生ずる譲渡収益を区別する必要があり、オプションそれ自体から生ずる一切の給付については、当該オプションが行使等されるまで、第13条ではなく、第16条が適用されるが、当該オプションが一旦行使等されれば、役員の株式の取得に関するその後の利得については第13条が適用される旨定めている。