(平成30年2月1日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、不動産貸付業を営む審査請求人(以下「請求人」という。)が、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入した各経費について、原処分庁から必要経費に算入できない部分があるなどとして所得税又は所得税及び復興特別所得税並びに消費税及び地方消費税の各更正処分等を受けたため、原処分庁の調査手続には違法があり、また、必要経費等の認定に誤りがあるとして、当該各処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令

  • イ 国税通則法(以下「通則法」という。)第74条の2《当該職員の所得税等に関する調査に係る質問検査権》第1項は、国税庁、国税局又は税務署の当該職員は、所得税又は消費税に関する調査について必要があるときは、同項各号に掲げる調査の区分に応じ、当該各号に定める者に質問し、その者の事業に関する帳簿書類その他の物件を検査し、又は当該物件の提示若しくは提出を求めることができる旨規定している。
  • ロ 通則法第74条の11《調査の終了の際の手続》第2項は、国税に関する調査の結果、更正決定等をすべきと認める場合には、国税庁、国税局又は税務署の当該職員は、当該納税義務者に対し、その調査結果の内容(更正決定等をすべきと認めた額及びその理由を含む。)を説明する旨規定している。
  • ハ 所得税法第37条《必要経費》第1項は、その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用の額とする旨規定している。
  • ニ 所得税法第45条《家事関連費等の必要経費不算入等》第1項第1号は、居住者が支出する家事上の経費及びこれに関連する経費で政令で定めるもの(以下「家事関連費」という。)の額は、その者の不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入しない旨規定している。
  • ホ 所得税法施行令第96条《家事関連費》は、所得税法第45条第1項第1号(必要経費とされない家事関連費)に規定する政令で定める経費は、次に掲げる経費以外の経費とする旨規定し、次に掲げる経費として、第1号で、家事関連費の主たる部分が不動産所得を生ずべき業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分することができる場合における当該部分に相当する経費とし、第2号で、第1号に掲げるもののほか、青色の確定申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている居住者に係る家事関連費のうち、取引の記録等に基づいて、不動産所得を生ずべき業務の遂行上直接必要であったことが明らかにされる部分の金額に相当する経費とする旨規定している。

(3) 基礎事実

当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

  • イ 請求人の職業及び収入について
    • (イ) 請求人は、平成24年分ないし平成26年分(以下「本件各年分」という。)において、会社役員であって不動産貸付業を営む者である。
    • (ロ) 請求人は、本件各年分において、不動産貸付業による収入のほかに、給与収入と、厚生年金等による年金収入を得ている。
  • ロ 請求人の所有する土地等について
     請求人は、a市b町○−○及び○番○の各土地(以下「本件各土地」という。)を所有している。
  • ハ 請求人の所有する自動車について
    • (イ) 請求人は、メルセデスベンツ及びダイハツハイゼットを遅くとも平成24年から所有していた(以下、当該メルセデスベンツを「本件自動車甲」、当該ダイハツハイゼットを「本件自動車乙」といい、これらの自動車を併せて「本件自動車」という。)。
    • (ロ) 請求人は、平成24年ないし平成26年に、本件自動車に係る税金、損害保険料、修繕費及びガソリン代をそれぞれ支払った。

(4) 審査請求に至る経緯

  • イ 確定申告の状況等
     請求人は、平成24年分の所得税並びに平成25年分及び平成26年分の所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」という。)について、青色の確定申告書に別表1−1の「確定申告」欄のとおり記載して、法定申告期限までにそれぞれ申告した。
     また、請求人は、平成24年1月1日から平成24年12月31日まで、平成25年1月1日から平成25年12月31日まで及び平成26年1月1日から平成26年12月31日までの各課税期間(以下、それぞれ「平成24年課税期間」、「平成25年課税期間」及び「平成26年課税期間」といい、これらを併せて「本件各課税期間」という。)の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の確定申告書に別表1−2の「確定申告」欄のとおり記載して、法定申告期限までにそれぞれ申告した。
     なお、請求人は、平成24年課税期間は税込経理方式を適用し、平成25年課税期間及び平成26年課税期間は税抜経理方式を適用している。
  • ロ 原処分庁による調査の概要
    • (イ) 原処分庁所属の調査担当者(以下「本件調査担当者」という。)は、平成27年10月21日、請求人の自宅において、F税理士(以下「本件税理士」という。)立会いの下、本件各年分の所得税等(平成24年分については所得税。以下同じ。)及び本件各課税期間の消費税等に係る調査(以下「本件調査」という。)を開始した。
       その際、本件調査担当者は、請求人から提出された本件各年分に係る総勘定元帳及び経費関係書類を留め置いた。
    • (ロ) 本件調査担当者は、平成27年11月25日、請求人の自宅において、請求人及び本件税理士に対し、本件各年分の不動産所得に係る総収入金額及び必要経費並びに本件各課税期間の消費税等に係る課税売上げ及び課税仕入れの内容を確認した上で、同内容について検討する旨伝えた。
    • (ハ) 本件調査担当者は、平成28年1月下旬、本件税理士に対し、請求人の本件各年分の不動産所得に係る必要経費の各勘定科目及び本件各課税期間の課税仕入れについて、確定申告した金額と修正した場合の金額を対比させた書類を交付した(以下「本件書類」という。)。
    • (ニ) 本件調査担当者は、平成28年4月5日、請求人の自宅において、請求人及び本件税理士に対し、同日時点において修正すべきと考えられる内容を説明したところ、本件税理士から、不動産所得に係る収入金額の計上漏れ及びそれに対応する消費税等の適用誤りについては修正申告するが、不動産所得に係る必要経費が認められないこと及びそれに対応する消費税等の適用誤りには納得できないとの発言があったため、同必要経費の適否等については、引き続き調査を行うと説明し、同必要経費に係る領収書等を留め置いた。
    • (ホ) 本件調査担当者は、平成28年4月14日、請求人の自宅において、本件各年分の不動産所得に係る必要経費に算入したもののうち当該算入に疑義があるものについて、支払日、支払金額、支払金額のうち必要経費計上額、事業割合及び支払先名称をそれぞれ記載し、請求人が記載する欄として、「必要経費とした根拠」及び「事業割合の根拠」の各欄を設けた一覧表を作成し、同表を請求人に手交した。
    • (ヘ) 請求人は、本件税理士を通じて、平成28年4月22日から同年5月18日にかけて、上記(ホ)の書面を本件調査担当者に提出したものの、同書面の「必要経費とした根拠」及び「事業割合の根拠」の各欄には、「業務上必要と判断したため」、「実態に基づき判断」などとの記載がなされているか、全く記載がなされていない状態であったため、本件調査担当者は請求人に対し同書面の記載内容の見直し及び再提出を依頼した。そして、請求人は、平成28年5月20日、それらの各欄の記載内容を「賃貸物件に係る固定資産税のため」、「賃貸物件を修理・手入れする際に使用する車両に関するもののため」などに訂正した上で、同書面を提出した。
    • (ト) 本件調査担当者は、平成28年6月1日、請求人の自宅において、請求人に対する聴き取り等により、請求人が必要経費に算入している費用の内容及び消費税等の課税仕入れの内容等を確認した。
    • (チ) 請求人は、平成28年6月8日、本件税理士を通じて、別表1−1の「修正申告」欄のとおり、平成24年分の所得税及び平成25年分の所得税等の各修正申告書を原処分庁に提出するとともに、同表の「更正の請求」欄のとおり、平成26年分の所得税等の更正の請求書を原処分庁に提出した。
       また、請求人は、同日、本件税理士を通じて、別表1−2の「修正申告」欄のとおり、本件各課税期間の消費税等の各修正申告書を原処分庁に提出した。
    • (リ) 原処分庁は、平成28年7月8日付で、上記(チ)の平成24年分の所得税及び平成25年分の所得税等の各修正申告に基づき納付すべき税額を基礎として、それぞれ、別表1−1の「修正申告」欄の「過少申告加算税の額」欄のとおり所得税及び所得税等に係る過少申告加算税の各賦課決定処分をした。
       また、原処分庁は、同日付で、上記(チ)の平成24年課税期間及び平成26年課税期間の消費税等の各修正申告に基づき納付すべき税額を基礎として、それぞれ、別表1−2の「修正申告」欄の「過少申告加算税の額」欄のとおり消費税等に係る過少申告加算税の各賦課決定処分をした。
       なお、請求人は、これらの過少申告加算税の各賦課決定処分について、いずれも争っていない。
    • (ヌ) 本件調査担当者は、平成28年8月1日、本件税理士の事務所において、本件税理士に対し、要旨、不動産所得の計算上必要経費に算入されている金額の一部について、事業に関連性がないこと等を理由に、必要経費にならないものが含まれていること及び消費税等の計算上、控除対象仕入税額としたものの一部について、同様の理由により控除対象仕入税額にならないものが含まれていることについて、それぞれ説明を行った。
  • ハ 原処分庁による処分
     原処分庁は、平成28年9月29日、請求人が上記ロの(チ)の所得税及び所得税等の各修正申告書及び更正の請求書において、本件各年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入したもののうち、必要経費に算入されないと判断したものを減算して、別表1−1の「更正処分」欄のとおり、本件各年分の所得税等の各更正処分(以下「本件所得税等各更正処分」という。)並びに平成24年分の所得税及び平成25年分の所得税等の過少申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件所得税等各賦課決定処分」という。)をした。
     また、原処分庁は、同日、請求人が上記ロの(チ)の消費税等の各修正申告書において、本件各課税期間の控除対象仕入税額としたもののうち、控除対象仕入税額に該当しないと判断した部分を減算して、別表1−2の「更正処分」欄のとおり、本件各課税期間の消費税等の各更正処分(以下「本件消費税等各更正処分」といい、本件所得税等各更正処分と併せて「本件各更正処分」という。)及び平成25年課税期間の消費税等の過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件消費税等賦課決定処分」といい、本件所得税等各賦課決定処分と併せて「本件各賦課決定処分」という。)をした(以下、本件各更正処分と本件各賦課決定処分を併せて「本件各処分」という。)。
  • ニ 再調査の請求
     請求人は、平成28年10月31日、本件各処分に不服があるとして、再調査の請求をしたところ、再調査審理庁は、平成29年1月25日、別表1−1及び別表1−2の各「再調査決定」欄記載のとおり、棄却の再調査決定をした。
  • ホ 審査請求
    請求人は、平成29年2月23日、本件調査の手続には違法があること並びに本件所得税等各更正処分において不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額に該当しないと判断されたもののうち、次の(イ)ないし(チ)の各費用の額について、必要経費に算入すべきであること及びこれらのうち一部については課税仕入れに係る支払対価の額(詳細は、別表2−1ないし別表2−3の「消費税等課税取引金額」欄に記載された金額)に該当することを理由に、上記ニの再調査決定を経た後の本件各処分に不服があるとして、審査請求をした。
    • (イ) 本件各土地に関する租税公課(別表2−1ないし別表2−3の「内訳」欄の「固定資産税・都市計画税」欄に記載された各金額)合計○○○○円(平成24年分○○○○円、平成25年分○○○○円及び平成26年分○○○○円の合計金額であり、以下「本件固定資産税等」という。)
    • (ロ) 本件自動車に関する租税公課(別表2−1ないし別表2−3の「租税公課」欄に記載された各金額のうち「固定資産税・都市計画税」欄に記載された金額(本件固定資産税等)を除いた金額を合計したもの)合計○○○○円(平成24年分○○○○円、平成25年分○○○○円及び平成26年分○○○○円の合計金額であり、以下「本件自動車税等」という。)
    • (ハ) 旅費交通費(別表2−2及び別表2−3の「旅費交通費」欄に記載された各金額)合計213,946円(平成25年分112,374円及び平成26年分101,572円の合計金額であり、以下「本件旅費交通費」という。)
    • (ニ) 損害保険料(別表2−1及び別表2−2の「損害保険料」欄に記載された各金額)合計108,470円(平成24年分52,098円及び平成25年分56,372円の合計金額であり、以下「本件損害保険料」という。)
    • (ホ) 修繕費(別表2−1及び別表2−2の「修繕費」欄に記載された各金額)合計70,908円(平成24年分31,349円及び平成25年分39,559円の合計金額であり、以下「本件修繕費」という。)
    • (ヘ) 消耗品費(別表2−1の「消耗品費」欄に記載された金額)108,365円(全て平成24年分であり、以下「本件消耗品費」という。)
    • (ト) 減価償却費(別表2−1ないし別表2−3の「減価償却費」欄に記載された各金額)合計719,608円(平成24年分107,014円、平成25年分409,523円及び平成26年分203,071円の合計金額であり、これらの減価償却費と、本件自動車税等、本件旅費交通費、本件損害保険料、本件修繕費及び本件消耗品費を併せて「本件自動車関係経費」という。)
    • (チ) 接待交際費(別表2−1ないし別表2−3の「接待交際費」欄に記載された各金額)合計225,726円(平成24年分56,672円、平成25年分135,248円及び平成26年分33,806円の合計金額であり、以下「本件接待交際費」という。また、本件接待交際費、本件固定資産税等及び本件自動車関係経費を併せて「本件各費用」という。)

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2 争点

(1) 争点1

本件調査の手続に本件各処分を取り消すべき違法があったか否か。

(2) 争点2

本件各費用の額は、請求人の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入されるか否か。また、課税仕入れに係る支払対価の額に該当するか否か。

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3 争点についての主張

(1) 争点1(本件調査の手続に本件各処分を取り消すべき違法があったか否か。)について

請求人 原処分庁
本件調査担当者は、平成28年1月下旬に、本件各処分の調査過程において、不動産所得に係る修正額を記載した本件書類を請求人に提示し、調査結果の説明を行った上で、本件書類に記載された修正額で修正申告書を提出するよう求めてきた。しかし、これは、請求人に対して、修正を求める経費科目について何ら調査や事実確認を行うことなく、本件調査担当者の恣意的な解釈による根拠のない金額をもって、請求人に調査結果の説明を行い、更に修正申告書の提出を求めたものであった。このように、調査を行うことなく修正申告の勧奨を行ったことには、明らかに調査手続に違法があったと認められる。
 したがって、調査手続に違法がある本件各処分は取り消されるべきである。
本件調査担当者が、平成28年1月下旬に、請求人又は本件税理士に対して本件書類を交付したのは、検討事項の説明を行うためであり、調査結果の内容を説明したものではない。本件調査担当者が本件各処分に係る調査結果の説明及び修正申告の勧奨を行ったのは、同年8月1日である。
 本件調査担当者は、国税通則法の規定、国税通則法第7章の2《国税の調査》関係通達等に基づいて適法に本件調査を行っており、本件調査の手続に本件各処分を取り消すべき違法はない。

(2) 争点2(本件各費用の額は、請求人の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入されるか否か。また、課税仕入れに係る支払対価の額に該当するか否か。)について

原処分庁 請求人
次のとおり、本件各費用は、請求人の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入されない。
 また、消費税等について、別表2−1ないし別表2−3の「消費税等課税取引金額」欄記載の各金額は、課税仕入れに係る支払対価の額に該当しない。
次のとおり、本件各費用は、請求人の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入される。
 また、消費税等について、別表2−1ないし別表2−3の「消費税等課税取引金額」欄記載の各金額は、課税仕入れに係る支払対価の額に該当する。
イ 本件固定資産税等
 請求人の本件各土地は、特定の場所が駐車場専用として使用されているか明らかでないから、本件固定資産税等は「その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用」(所得税法第37条第1項)には当たらない。
 また、家事関連費としてみても、請求人は、本件各土地について、取引の記録に基づいた事業で使用する割合の具体的根拠を示さず、「業務の遂行上直接必要であつた」(所得税法第45条第1項第1号、所得税法施行令第96条第2号)部分を明らかにしているとはいえないから、本件固定資産税等は必要経費に算入されない。
イ 本件固定資産税等
 請求人は、本件各土地を駐車場専用として貸し付けているから、本件固定資産税等は「その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用」に当たる。
 また、家事関連費としてみても、請求人は、調査において固定資産税課税証明書を提出するなどして、本件各土地が賃貸されていることを明らかにしているから、本件固定資産税等は、「業務の遂行上直接必要であつた」ものとして、必要経費に算入される。
ロ 本件自動車関係経費
 請求人が不動産の管理業務等に使用していたと主張する本件自動車の使用回数、走行距離は、いずれも概算により算定した数値であり、かつ、数値算定に用いた自動車は、いずれも現在使用している自動車であり、本件自動車とは異なる。したがって、請求人は、取引の記録等に基づいて、「業務の遂行上直接必要であつた」部分を明らかにしているとはいえず、本件自動車関係経費は必要経費に算入されない。
ロ 本件自動車関係経費
 請求人は、所有し、貸付けを行っている不動産について、平成24年から平成26年については、本件自動車を用いて管理業務等を行っていたところ、取引の記録等に基づいて、本件自動車関係経費が「業務の遂行上直接必要であつた」部分に当たることを明らかにしているから、本件自動車関係経費は必要経費に算入される。
ハ 本件接待交際費
 請求人は、本件接待交際費について、支出した目的及び相手先の名称や相手先との関係等を、その一部しか明らかにしておらず、不動産貸付業との直接の関連性及び必要性が認められない。したがって、社会通念上必要なものとして客観的に必要経費として認識できるものとはいえないから、本件接待交際費は必要経費に算入されない。
ハ 本件接待交際費
 必要経費に算入した本件接待交際費は、請求人の業務と直接の関連性及び必要性を持つものである。請求人は、調査等において、一部ではあるが具体的な相手先を明らかにしているほか、金額も過大ではなく客観的に妥当であるから、本件接待交際費は必要経費に算入される。

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4 当審判所の判断

(1) 争点1(本件調査の手続に本件各処分を取り消すべき違法があったか否か。)について

  • イ 認定事実
     請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、次の事実が認められる。
    • (イ) 本件調査担当者は、平成28年1月21日、本件税理士に対し、これまでの本件調査の経過及び修正を要すると考えられる内容について説明した上で、本件書類を交付した。
    • (ロ) 本件調査担当者は、平成28年8月1日、本件税理士に対し、前記1の(4)のロの(ヌ)に記載した内容の説明を本件調査に係る結果として行った。そして、本件調査担当者は、その説明の場において、本件各年分に係る所得税等及び本件各課税期間に係る消費税等の修正申告の勧奨を行った。
  • ロ 判断
     前記1の(4)のロ及び上記イ記載のとおり、本件調査は、本件各年分の所得税等及び本件各課税期間の消費税等を対象に行われ、本件調査担当者は、平成28年1月21日、同年4月5日及び同月14日に、請求人若しくは本件税理士と応対し、本件調査の判断の基礎となる情報収集等を行っており、同月14日以降、本件各費用を必要経費とした根拠等について請求人及び本件税理士に対し説明を求めるなど、不動産所得の金額の計算における本件各費用の必要経費算入の適否等を主眼として本件調査を実施し、請求人及び本件税理士も同月5日の本件調査担当者の説明を前提に、その後も本件調査担当者と不動産所得の必要経費の適否等に係るやり取りを行った。そして、上記イの(ロ)記載のとおり、本件調査担当者は、平成28年8月1日に、本件税理士に対し、不動産所得の計算における本件各費用の必要経費算入の適否等について本件調査の結果として説明し、その説明の場において、この結果に基づく修正申告の勧奨を行った。
     したがって、本件調査担当者が通則法第74条の11第2項に規定する調査結果を説明し、同条第3項に規定する修正申告の勧奨を行ったのはいずれも平成28年8月1日と認められ、これらの手続を行う上で違法と認められる点はないことから、本件調査の手続はこれらの規定に従って適法に行われており、この点において本件各処分を取り消すべき違法はない。
  • ハ 請求人の主張について
     請求人は、本件調査担当者が、平成28年1月下旬に、修正を求める必要経費の勘定科目について何ら調査や事実確認を行わず、自らの恣意的な解釈による根拠のない修正金額をもって請求人に調査結果の説明を行ったと主張する。
     しかしながら、通則法第74条の11第2項に規定する調査の終了の際の手続である調査結果の説明が平成28年8月1日に行われたことは上記イの(ロ)のとおりであり、同年1月下旬の説明は、上記イの(イ)のとおり、同日時点における修正を要する事項を説明したにとどまるものと認められる。
     したがって、この点についての請求人の主張には理由がない。

(2) 争点2(本件各費用の額は、請求人の不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入されるか否か。また、課税仕入れに係る支払対価の額に該当するか否か。)について

  • イ 認定事実
     請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、次の事実が認められる。
    • (イ) 請求人は、遅くとも平成24年から平成26年までの間、本件各土地をG社に貸し付けており、同社から毎月12,000円の賃料を得ていた。
    • (ロ) 請求人は、本件各費用を、本件各年分において支払っていた。
    • (ハ) 請求人は、当審判所に対し、本件自動車の具体的な使用方法や頻度を明らかにする証拠や、本件接待交際費が請求人の不動産貸付業務に直接関連している支出であることを明らかにする証拠を提出していない。
  • ロ 法令解釈
    • (イ) 所得税法第37条第1項に規定する「販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用」とは、その費用が業務と直接の関係を持ち、かつ、業務の遂行上必要なものに限られ、また、その必要性の判断においては、事業主の主観的な判断のみによるべきではなく、通常必要なものとして客観的に認識できるものでなければならないと解するのが相当である。
    • (ロ) 所得税法第45条第1項第1号及び所得税法施行令第96条第2号の各規定によれば、家事関連費が不動産所得の計算上必要経費と認められるためには、取引の記録等に基づいて、不動産所得を生ずべき業務の遂行上直接必要であった部分が明らかにされる必要があると解するのが相当である。
  • ハ 当てはめ及び当事者の主張について
    • (イ) 本件固定資産税等
      • A 前記1の(3)のイ及びロ並びに上記イの(イ)の事実によれば、請求人は、不動産貸付業の一環として、本件各土地をG社に賃貸していることが認められるところ、本件固定資産税等は、本件各土地を所有していることに伴い生じる租税であるから、本件各土地に係る賃料収入を得るために直接の関連があり、かつ、請求人の業務の遂行上必要なものである。
         したがって、本件固定資産税等は、請求人の本件各年分の不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入される。
      • B 原処分庁は、本件各土地の特定の場所が駐車場専用として使用されているか明らかでないことを前提に、本件固定資産税等は必要経費に算入されない旨主張するが、上記イの(イ)のとおり、請求人は、本件各年分において、本件各土地をG社に賃貸していたことからすれば、本件各土地の使用状況に係る原処分庁の主張には理由がない。
    • (ロ) 本件自動車関係経費
      • A 上記イの(ハ)のとおり、本件自動車関係経費については、請求人から取引の記録等に基づいた本件各年分における本件自動車の具体的な使用方法や頻度等を明らかにする証拠の提出はないから、請求人の不動産貸付業務の遂行上必要であった部分が明らかとなっているとはいえず、加えて、当審判所の調査及び審理の結果によっても、本件自動車関係経費が、客観的にみて、請求人の業務と直接の関係を持ち、かつ、業務の遂行上必要な支出であると認めることはできない。
         したがって、本件自動車関係経費は、請求人の本件各年分の不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入されず、また課税仕入れに係る支払対価の額に該当しない。
      • B 請求人は、本件各年分における本件自動車に関する具体的な使用方法や頻度等を明らかにする証拠として、本件自動車から乗り換えた後の自動車(メルセデスベンツ及びダイハツハイゼット)の走行距離の計算書及び自動車検査証等を提出し、これをもって、本件自動車関係経費が必要経費及び課税仕入れの支払対価に該当する旨主張する。
         しかしながら、当該走行距離の計算書等は本件審査請求後に作成された資料である上、本件各年分において実際に使用していた本件自動車の記録に基づいて作成されたものでもないから、それらの証拠によって、本件自動車の具体的な使用方法や頻度等は明らかになったとはいえない。加えて、当審判所の調査の結果によっても、本件自動車が、客観的にみて、請求人の不動産貸付業務に供されていたと認めることもできない。
         したがって、この点についての請求人の主張には理由がない。
    • (ハ) 本件接待交際費
      • A 前記1の(4)のロ及び上記イの(ハ)のとおり、請求人から、本件接待交際費について、請求人の不動産貸付業務との関係について合理的な説明はなく、本件接待交際費の内訳についても抽象的な説明にとどまり、具体的な支出先や支出目的等の合理的な説明はない上、請求人の主張を裏付ける証拠の提出もない。そして、当審判所の調査及び審理の結果によっても、本件接待交際費が、客観的にみて、請求人の業務と直接の関係を持ち、かつ、業務の遂行上必要な支出であるとは認められない。
         したがって、本件接待交際費は、請求人の本件各年分の不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入されず、また課税仕入れに係る支払対価の額に該当しない。
      • B 請求人は、本件接待交際費に対応する贈答先を示して、本件接待交際費について、不動産貸付業務と直接関連し、業務の遂行上必要なものであり、また定期的に贈答する相手先を明らかにしていると主張する。しかしながら、上記Aのとおり、請求人の主張を裏付けるに足る証拠はなく、本件接待交際費と請求人の不動産貸付業務との関連性も不明である。
         したがって、この点についての請求人の主張には理由がない。

(3) 原処分の適法性について

  • イ 本件所得税等各更正処分の適法性について
    • (イ) 総所得金額
       上記(2)のハの(イ)のAのとおり、本件固定資産税等は、本件各年分において、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入される。
       また、請求人は、平成26年4月1日にH社に対し売却した建物等に係る平成26年度の固定資産税及び都市計画税(以下「固定資産税等」という。)のうち○○○○円について、平成26年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入していないところ、当該建物等は請求人の不動産貸付業に供されていることからすれば、○○○○円も不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入されるものとみるのが相当である。
       加えて、請求人は、後記(ロ)のとおり、上記建物等の売却に際し、当該建物等の固定資産税等相当額として○○○○円(消費税等込み。以下「本件建物等固定資産税等相当額」という。)を受領しているものの、本件建物等固定資産税等相当額に係る仮受消費税等について経理処理していない。そこで、この点を含め、平成26年課税期間の消費税等の額を再計算すると、仮受消費税等の金額と仮払消費税等の金額の差額と納付すべき消費税等の額の差額が112円生じることから、当該差額について、平成26年分の不動産所得の金額の計算上、必要経費(別表3−3「11 510以外の必要経費」欄)の額から減算することが相当である。
       そして、以上の判断を前提とすると、本件各年分における請求人の不動産所得の金額の計算上、総収入金額に計上すべき金額、必要経費に算入すべき金額及び不動産所得の金額は、それぞれ別表3−1ないし別表3−3の「審判所認定額」欄の「1総収入金額」欄、「4必要経費」欄及び「13不動産所得の金額」欄のとおりとなり、また、本件各年分の総所得金額は、それぞれ別表4−1の「総所得金額」欄のとおりとなる。
    • (ロ) 分離長期譲渡所得の金額
       請求人は、平成26年4月1日にH社に対して売却した建物等について、同社から、本件建物等固定資産税等相当額の支払を受けているところ、これは当該建物等の売却に基づいて受領したものである以上、当該建物の譲渡所得に係る総収入金額に該当することは明らかである。
       そうすると、分離長期譲渡所得に係る収入金額は、上記建物等の売却代金○○○○円に本件建物等固定資産税等相当額を消費税等抜きで計算した○○○○円を加えた○○○○円となり、分離長期譲渡所得の金額は、別表4−1の「平成26年分」欄の「分離長期譲渡所得の金額」欄のとおりとなる。
    • (ハ) 所得税又は所得税等の納付すべき税額
       以上を踏まえると、請求人の本件各年分の所得税等の納付すべき税額は、それぞれ別表4−1の「納付すべき税額」欄のとおりとなり、本件各年分の所得税等は、いずれも本件所得税等各更正処分の額を下回ることとなるから、本件所得税等各更正処分は、いずれもその一部を別紙1ないし別紙3の各「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。
       なお、本件所得税等各更正処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
       したがって、本件所得税等各更正処分は、いずれも上記の下回る部分につき違法となる。
  • ロ 本件所得税等各賦課決定処分の適法性について
     上記イの(ハ)のとおり、本件所得税等各更正処分は一部違法であるが、請求人の平成24年分の所得税及び平成25年分の所得税等の過少申告加算税の基礎となる税額は、それぞれ別紙1及び別紙2の「加算税の基礎となる税額」欄の「裁決後の額 B」欄のとおりであり、上記各年分の過少申告加算税の基礎となる金額に変更はない。また、平成24年分の所得税及び平成25年分の所得税等の各更正処分(取り消すべき部分を除く。)により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が当該各更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、それぞれ通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する「正当な理由」があるとは認められず、他に計算の基礎となる金額及び計算方法につき請求人は争っていないから、同条第1項の規定に基づきされた本件所得税等各賦課決定処分はいずれも適法である。
  • ハ 本件消費税等各更正処分の適法性について
     請求人の本件各課税期間の消費税等の納付すべき税額を計算すると、それぞれ別表4−2の「納付すべき消費税等の額」欄のとおり、平成24年課税期間の消費税等は○○○○円、平成25年課税期間の消費税等は○○○○円、平成26年課税期間の消費税等は○○○○円(なお、平成26年課税期間の課税標準額(○○○○円)は、同課税期間の消費税等の更正処分の課税売上額(税抜き)(○○○○円)に本件建物等固定資産税等相当額を消費税等抜きで計算した○○○○円を加算した金額から千円未満の端数を切り捨てたものである。)となり、本件消費税等各更正処分における納付すべき消費税等の額(それぞれ別表1−2の「更正処分」欄の「納付すべき消費税等の額」欄のとおり、平成24年課税期間の消費税等は○○○○円、平成25年課税期間の消費税等は○○○○円、平成26年課税期間の消費税等は○○○○円)と同額か、若しくはそれを上回ると認められる。
     なお、本件消費税等各更正処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
     したがって、本件消費税等各更正処分は、いずれも適法である。
  • ニ 本件消費税等賦課決定処分の適法性について
     上記ハのとおり、平成25年課税期間の消費税等の更正処分は適法であり、この処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実がこの処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」があるとは認められない。そして、当審判所においても、平成25年課税期間の消費税等の過少申告加算税の額は、本件消費税等賦課決定処分における額と同額であると認められる。
     したがって、本件消費税等賦課決定処分は適法である。

(4) 結論

よって、平成24年分の所得税の更正処分並びに平成25年分及び平成26年分の所得税等の各更正処分の一部をいずれも別紙1ないし別紙3の各「取消額等計算書」のとおり取り消し、その他の原処分に対する審査請求には理由がないからいずれも棄却することとする。

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