(平成30年6月28日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、原処分庁が、審査請求人(以下「請求人」という。)においてインターネットオークション事業に係る売上げが計上されていないなどとして法人税等の更正処分等を行ったのに対し、請求人が、当該事業は従業員の個人事業であるから当該事業に係る収益は請求人に帰属しないなどとして、その一部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令

  • イ 国税通則法(平成28年法律第15号による改正前のもの。以下「通則法」という。)第68条《重加算税》第1項は、通則法第65条《過少申告加算税》第1項の規定に該当する場合において、納税者が、その国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に100分の35の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する旨規定している。
  • ロ 通則法第74条の2《当該職員の所得税等に関する調査に係る質問検査権》第1項は、国税庁、国税局若しくは税務署の当該職員は、法人税又は地方法人税に関する調査について必要があるときは、法人(第2号イ)又は当該法人に対し、金銭の支払若しくは物品の譲渡をする義務があると認められる者又は金銭の支払若しくは物品の譲渡を受ける権利があると認められる者(第2号ロ)に質問し、その者の事業に関する帳簿書類その他の物件を検査し、又は当該物件の提示若しくは提出を求めることができる旨規定している。
  • ハ 法人税法(平成30年法律第7号による改正前のもの。以下同じ。)第11条《実質所得者課税の原則》は、資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であって、その収益を享受せず、その者以外の法人がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する法人に帰属するものとして、法人税法の規定を適用する旨規定している。
  • ニ 法人税法第22条《各事業年度の所得の金額の計算》第3項は、内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする旨規定し、第1号は、当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額、第2号は、前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額を掲げている。
  • ホ 消費税法(平成27年10月1日前の資産の譲渡等については、平成27年法律第9号による改正前のもの。以下同じ。)第13条《資産の譲渡等又は特定仕入れを行った者の実質判定》第1項は、法律上資産の譲渡等を行ったとみられる者が単なる名義人であって、その資産の譲渡等に係る対価を享受せず、その者以外の者がその資産の譲渡等に係る対価を享受する場合には、当該資産の譲渡等は、当該対価を享受する者が行ったものとして、消費税法の規定を適用する旨規定している。
  • ヘ 消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第1項は、事業者が、国内において行う課税仕入れ(特定課税仕入れに該当するものを除く。以下同じ。)については、当該課税仕入れを行った日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額から、当該課税期間中に国内において行った課税仕入れに係る消費税額を控除する旨規定している。
     また、消費税法第30条第7項本文は、同条第1項の規定は、事業者が当該課税期間の課税仕入れの税額の控除に係る帳簿及び請求書等(同項に規定する課税仕入れに係る支払対価の額の合計額が少額である場合における当該課税仕入れの税額については、帳簿)を保存しない場合には、当該保存がない課税仕入れの税額については、適用しない旨規定し、同条第7項ただし書は、災害その他やむを得ない事情により、当該保存をすることができなかったことを当該事業者において証明した場合は、この限りでない旨規定している。

(3) 基礎事実

当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

  • イ 請求人は、鉄、非鉄スクラップ及び非鉄含有スクラップ(家電製品、機械、銅屑、銅管及び電線を含む。)等の販売を営む同族会社であり、平成26年5月31日、平成27年5月31日及び平成28年5月31日における請求人の代表者G(以下「請求人代表者」という。)を含む従業員数は、それぞれ6人、8人及び8人であった。
  • ロ 請求人の従業員であるJ(請求人代表者の妹の夫)、K及びLは、M社が主催するインターネットオークション(以下「本件オークション」という。)において、○○○○(以下「ID1」という。)及び○○○○(以下「ID2」という。)の二つのIDを用いて商品の出品及び販売に係る業務(以下「本件業務」という。)に従事している。
  • ハ 上記ロの二つのIDに係る平成28年5月31日までのM社への登録内容は次のとおりである。
    • (イ) ID1については、登録者名はJで、登録日は平成26年5月20日であり、利用料(支払手数料)等の支払はJ名義のクレジットカード払いである。
    • (ロ) ID2については、登録者名はKで、登録日は平成26年8月27日であり、利用料(支払手数料)等の支払はID1と同じくJ名義のクレジットカード払いである。
    • (ハ) 本件業務における商品代金の振込口座は、ID1については、N銀行○○支店普通預金(口座番号:○○○○)J名義、N銀行○○支店普通預金(口座番号:○○○○)P名義及びQ銀行○○支店普通預金(口座番号:○○○○)P名義の3口座が指定されていた。
       また、ID2については、N銀行○○支店普通預金(口座番号:○○○○)R名義の口座が指定されていたが、平成27年10月以降は、請求人名義の預金口座が2口座追加で指定されている。
       以下、上記の請求人名義以外の個人名義の4口座を「本件4口座」という。
       なお、Pは請求人の従業員で、請求人代表者の妹であり、Jの妻である。Rは請求人代表者の姉である。
  • ニ 本件業務に係る本件4口座への入金額は、売上げとして請求人の帳簿書類に計上されておらず、本件業務に係る諸経費(運賃、送料、消耗品費、支払手数料及び梱包材料費)の支出額は、費用として請求人の帳簿書類に計上されていなかった。また、請求人の平成25年6月1日から平成26年5月31日まで、平成26年6月1日から平成27年5月31日まで及び平成27年6月1日から平成28年5月31日までの各事業年度(以下、順次「平成26年5月期」、「平成27年5月期」及び「平成28年5月期」といい、これらを併せて「本件各事業年度」という。)における本件業務に係る本件4口座への入金額は別表1のとおりである。
     なお、請求人は、ID2に係る本件業務については平成27年10月1日から請求人の事業に取り入れたとして、上記ハの(ハ)のとおり平成27年10月以降に追加した請求人名義の2口座への本件業務に係る入金額について、請求人の売上げに計上していたが、平成27年10月1日以降のR名義の口座への入金額については請求人の売上げに計上していなかった。
     また、Jは、本件業務に係る収益を個人事業であるとして平成26年分の所得税の確定申告書を法定申告期限(平成27年3月16日)に遅れて、原処分庁の請求人に対する調査中の平成28年12月27日に所轄税務署長に提出したものの、平成27年分以降の所得税の確定申告書は提出していなかった。
  • ホ 請求人は在庫の受払いの記録を行っていない。そのため、請求人は、決算期末の5月末に行う実地棚卸によって商品数量を把握し、その結果を商品群別に数量(重量又は個数)を記録した一覧表を作成し、これに単価を乗じて期末在庫金額を算定している。
  • ヘ d県公安委員会より、請求人は平成26年10月○日付で古物商許可を受けており、請求人代表者も平成20年10月○日付で同許可を受けていた。他方、Jは古物商許可を受けていなかった。
  • ト 原処分庁所属の調査担当職員(以下「本件調査担当職員」という。)による請求人に対する調査において、本件調査担当職員は、請求人代表者への質問及び回答の内容について質問応答記録書(以下「本件質問応答記録書」という。)を作成した。
     なお、本件質問応答記録書の要旨は別紙1のとおりである。

(4) 審査請求に至る経緯

  • イ 請求人は、本件各事業年度の法人税、平成25年6月1日から平成26年5月31日までの課税事業年度(以下「平成26年5月課税事業年度」という。)の復興特別法人税、平成27年6月1日から平成28年5月31日までの課税事業年度(以下「平成28年5月課税事業年度」という。)の地方法人税並びに平成26年6月1日から平成27年5月31日までの課税期間及び平成27年6月1日から平成28年5月31日までの課税期間(以下、これらの課税期間を併せて「本件各課税期間」という。)の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の確定申告書を、別表2ないし別表5の各「確定申告」欄のとおり記載して、いずれも法定申告期限までに原処分庁にそれぞれ提出した。
  • ロ 原処分庁は、平成28年12月26日、請求人に対し、本件業務に係る収益が請求人に帰属するにもかかわらず請求人の売上げとして計上されていない及び本件業務に係る諸経費(運賃、送料、消耗品費、支払手数料及び梱包材料費)が請求人の費用として計上されていないなどとして、別表2ないし別表5の各「更正処分等」欄のとおり、本件各事業年度の法人税、平成26年5月課税事業年度の復興特別法人税、平成28年5月課税事業年度の地方法人税及び本件各課税期間の消費税等に係る各更正処分(以下「本件各更正処分」という。)並びに平成27年5月期及び平成28年5月期の法人税、平成28年5月課税事業年度の地方法人税及び本件各課税期間の消費税等に係る重加算税の各賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」という。)を行った。
  • ハ 請求人は、平成29年2月24日、再調査審理庁に対し、これらの原処分に不服があるとして再調査の請求をしたところ、再調査審理庁は、同年6月19日、請求人に対し、いずれも棄却する旨の再調査決定をした。
  • ニ 請求人は、平成29年7月19日、再調査決定後の原処分に不服があるとして原処分の全部の取消しを求めて審査請求をした。その後、請求人は、平成28年5月期の本件業務に係る収益として認定された金額○○○○円のうち、ID2に係る落札代金として平成27年10月以降にR名義の預金口座に入金された1,108,139円については争わないとして、原処分の一部の取消しを求めることとした。

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2 争点

  • (1) 本件質問応答記録書の作成過程に原処分を取り消すべき違法があるか否か(争点1)。
  • (2) 本件業務に係る収益が請求人に帰属するか否か(争点2)。
  • (3) 本件業務に係る収益が請求人に帰属するとした場合、売上原価相当額及び人件費相当額を損金の額に算入すべきか否か(争点3)。
  • (4) 本件業務に係る収益が請求人に帰属するとした場合、請求人が本件業務に係る収益を売上げに計上していなかったことは、通則法第68条第1項に規定する「隠ぺい」に当たるか否か(争点4)。

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3 争点についての主張

(1) 争点1(本件質問応答記録書の作成過程に原処分を取り消すべき違法があるか否か。)について

請求人 原処分庁
以下のことから、本件質問応答記録書の作成過程に原処分を取り消すべき違法がある。 以下のとおり、本件質問応答記録書の作成過程に原処分を取り消すべき違法はない。
イ 請求人代表者は、回答日である平成28年9月16日当時において、請求人がJからID2の本件業務を譲り受けた平成27年10月1日以降の状況を回答する旨を前置きして申述したにもかかわらず、本件調査担当職員は、あえてその旨を本件質問応答記録書に記載せず、本件質問応答記録書を本件各事業年度の事実認定の証拠としたこと。 イ 本件調査担当職員が請求人代表者に対し記載内容を読み上げ提示をしており、請求人代表者は、回答内容の訂正等の機会を与えられた上で本件質問応答記録書に署名押印しているから、記載内容の信用性は高い。そうすると、本件質問応答記録書の内容に事実がすり替えられていると認められる点はない。
ロ 請求人代表者が、本件質問応答記録書に記載された内容が申述内容と一致していないことを理由に署名押印を拒絶したところ、本件調査担当職員は本件質問応答記録書が単なる内部資料にすぎないという虚偽の説明をして、これを信じ込ませた上で、請求人代表者に署名押印に応じさせたこと。 ロ 本件質問応答記録書は、調査において聴取した事項を記録する書面であるから、本件調査担当職員がこれを証拠としない旨説明するとは到底考えられない。仮に、本件調査担当職員が本件質問応答記録書は内部資料であるという説明をしたとしても、その趣旨は本件調査担当職員の守秘義務について請求人代表者の理解を促すための発言である。

(2) 争点2(本件業務に係る収益が請求人に帰属するか否か。)について

原処分庁 請求人
以下の理由から、本件業務に係る収益(ID2については平成27年9月以前分に限る。)は請求人に帰属する。 以下の理由から、本件業務に係る収益(ID2については平成27年9月以前分に限る。)は請求人に帰属しない。
イ 請求人代表者は、Jに本件業務を行わせていた。 イ ID1の本件業務及び平成27年9月以前のID2の本件業務はJの個人事業であり、請求人の関与はない。
 ID2の本件業務に係る収益が請求人に帰属するのは、請求人がJからID2の本件業務を譲り受けた平成27年10月1日以降である。
 他方、平成27年10月1日以降においても、ID1の本件業務に係る収益はJに帰属し、請求人には帰属しない。
ロ 本件オークションに出品された商品は請求人の敷地内に保管されていたものであり、当該敷地内に保管されていたものは全て請求人が仕入れに計上したものである。 ロ ID1を通じて本件オークションに出品した商品及び平成27年9月以前にID2を通じて本件オークションに出品した商品は、請求人代表者の姉夫婦から販売委託又は譲り受けた商品、Jが個人的に仕入れた商品、第三者から販売委託を受けた商品及びJの私物であり、請求人が仕入れた商品ではない。
ハ 請求人は、落札者に対し、請求人の名称及び所在地を示して取引をしていた。 ハ ID1を通じて本件オークションに出品した商品及び平成27年9月以前にID2を通じて本件オークションに出品した商品の取引に際し、落札者に対して個人名義で取引しており、発送も個人名義で行っていた。原処分庁の証拠は、ID2の本件業務を請求人に移管した平成27年10月以降に成立した取引において落札者に示していた内容である。
ニ 本件業務に従事させるため、請求人は、平成26年8月、Kを従業員として採用した。 ニ 請求人がKを採用したのは、鉄、非鉄スクラップ及び非鉄含有スクラップ(家電製品、機械、銅屑、銅管及び電線を含む。)等の販売に従事させるためであり、本件業務に従事させるためではない。
ホ 本件業務の商品代金の振込口座として、本件4口座が登録されており、ID1に係る預金口座はJが管理し、ID2に係る預金口座も、事実上、Jが管理していた。 ホ 請求人代表者は、本件4口座の存在を知らなかった。
へ Jは、請求人事務所にあるパソコン2台を用いて、本件業務を運営していた。  

(3) 争点3(本件業務に係る収益が請求人に帰属するとした場合、売上原価相当額及び人件費相当額を損金の額に算入すべきか否か。)について

原処分庁 請求人
法人において帳簿書類に記録されたところとは別に損金が存在すると主張する場合には、売上原価のようなその存在自体を否定できない損金を主張するときであっても、その法人においてそのような損金の存在及びその金額を含む損金の内容につき具体的に主張及び立証すべき必要があり、その主張及び立証がされない限り、当該損金は存在しないとの事実上の推定が働くものと解するのが相当であるところ、以下のとおり、請求人からそのような主張及び立証はないから、損金の額に算入する必要はない。 以下の理由から、損金の額に算入すべきである。
イ 売上原価のうち、請求人の公表の仕入勘定に計上されていると推認される本件業務に係る収益に対応する売上原価については、本件各事業年度における計上漏れを把握できなかった。それ以外の原価の有無及び金額については、請求人が本件各事業年度において損金の額に算入してない原価の金額の存否自体不明であり、請求人は売上原価の実額を主張及び立証していない。 イ 本件業務に係る収益(ID2については平成27年9月以前分に限る。)が請求人に帰属するという認定をするならば、当該収益に対応する売上原価相当額を減算する必要があるにもかかわらず、一切算入されていない。
ロ 人件費については、原処分調査において支払事実を確認することができず、再調査において請求人からの主張及び立証もなかった。 ロ Kに対する人件費のうち、平成26年8月から平成27年1月までの6か月分はJが現金で支払っている。

(4) 争点4(本件業務に係る収益が請求人に帰属するとした場合、請求人が本件業務に係る収益を売上げに計上していなかったことは、通則法第68条第1項に規定する「隠ぺい」に当たるか否か。)について

原処分庁 請求人
以下の理由から、請求人が本件業務に係る収益を売上げに計上していなかったことは、通則法第68条第1項に規定する「隠ぺい」に当たる。
 請求人は、本件各事業年度において、本件4口座をいわゆる簿外預金とし、本件業務に係る収益について帳簿書類を作成せず確定決算に計上していなかったから、請求人は、本件業務に係る収益を脱漏したことになり、これは「隠ぺい」に該当する事実である。
以下の理由から、請求人が本件業務に係る収益を売上げに計上していなかったことは、通則法第68条第1項に規定する「隠ぺい」に当たらない。
 本件4口座の存在を知らなかった請求人代表者は、過少申告の意図に基づく「隠ぺい」をすることができない。
 ただし、ID2の本件業務に係る商品代金として平成27年10月1日以降に本件4口座に入金された金額を除く。

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4 当審判所の判断

(1) 争点1(本件質問応答記録書の作成過程に原処分を取り消すべき違法があるか否か。)について

  • イ 認定事実
     請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、本件質問応答記録書の作成過程に関し、以下の事実が認められる。
    • (イ) 本件調査担当職員は、平成28年9月16日、請求人の事務室において、請求人の関与税理士であるS税理士及びS税理士事務所職員1名同席の下、請求人代表者に対して本件質問応答記録書を読み聞かせ、かつ提示し、請求人代表者に署名押印を求めた。
    • (ロ) その際、S税理士とS税理士事務所職員の両名は、署名押印しても問題はないかという請求人代表者の質問に対し、提示された本件質問応答記録書を閲覧した上で、請求人代表者に対し、記載内容は抽象的ではあるが事実関係に誤りはないこと及び署名押印に応じなかった場合の不利益(調査長期化、取引先に対する調査等)を説明し、署名押印に応じた方がよいと助言した。その後、請求人代表者は本件質問応答記録書に自筆で署名押印した。
  • ロ 検討
     通則法第74条の2は、上記1の(2)のロのとおり、税務署の当該職員は、法人税等に関する調査について必要があるときは、法人に質問することができる旨規定しているところ、上記1の(3)のトのとおり、本件調査担当職員は請求人代表者へ質問を行い、上記イのとおり、本件質問応答記録書が作成されており、本件質問応答記録書の作成過程に原処分を取り消すべき違法は認められない。
  • ハ 請求人の主張について
     請求人は、上記3の(1)の請求人欄のとおり、本件調査担当職員が、1請求人代表者は請求人がJからID2の本件業務を譲り受けた平成27年10月1日以降の状況を回答する旨を前置きして申述したにもかかわらず、これを本件質問応答記録書に記載しなかったこと及び2記載内容が申述内容と一致していないことを理由に請求人代表者が署名押印を拒絶したところ、本件質問応答記録書は単なる内部資料にすぎないという説明をして請求人代表者に署名押印に応じさせたことから、本件質問応答記録書の作成過程に違法がある旨主張する。
     しかしながら、本件質問応答記録書の作成過程は上記イのとおりであり、そのほかに請求人が主張する事実を認めるに足りる証拠はないから、請求人の主張には理由がない。

(2) 争点2(本件業務に係る収益が請求人に帰属するか否か。)について

  • イ 法令解釈
     法人税法第11条は、上記1の(2)のハのとおり規定するところ、法律上の所得の帰属の形式とその実質が異なるときには、実質に従って租税関係が定められるべきであるという租税法上の当然の条理を確認的に定めたものと解される。
     したがって、事業収益の帰属者が誰であるかは、当該事業の遂行に際して行われる法律行為の名義だけでなく、1事業の経緯、2業務の遂行状況、3業務に係る費用の支払状況及び4請求人の認識などの事実関係を総合勘案して、当該事業の主体は誰であるかにより判断することとなる。
     また、消費税法第13条第1項は、上記1の(2)のホのとおり規定するところ、同規定は、上記法人税法第11条の実質所得者課税の原則と同趣旨であると解される。
  • ロ 認定事実
     請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
    • (イ) 本件業務の事業の経緯について
       本件業務は、ID1を使用して平成26年5月から、ID2を使用して平成26年8月から開始されている。
       請求人は、Jから平成27年10月1日以降のID2の本件業務を譲り受けたとしているが、Jに対してその対価の支払及び平成27年9月30日以前に出品されて同日現在未落札の商品及び平成27年9月30日時点の売掛金等を承継したとする会計処理をしておらず、平成27年10月以降、本件業務の商品代金の振込口座に請求人名義の預金口座が2口座追加で指定されただけである。
    • (ロ) 本件業務の遂行状況について
      • A 出品者名義について
         本件オークションにおいては、落札時に落札者に出品者として表示されるのはM社に登録された内容であるから、落札時には、ID1については請求人の従業員であるJ、ID2についても請求人の従業員であるKがそれぞれ出品者として表示される。そして、その後の交渉の結果合意が成立して売買契約が成立するのであるが、売買契約の成立に至るまでに請求人の名称を使用したことを認めるに足りる証拠はない。
      • B 従事者について
         請求人の従業員であるJ、K及びLは、請求人に採用(Jは平成26年4月、Kは平成26年8月及びLは平成27年2月)されて以降、請求人が取り扱う商品の販売等の業務に従事するとともに、Jは本件業務の開始(平成26年5月)当初から、K及びLは請求人に採用されて以降、本件業務にも従事してきた。そして、KとLは、Jの指示の下、本件業務のうち、出品、梱包、発送及び落札者との連絡等に従事していた。
      • C 設備について
         本件業務に従事するJ、K及びLの3名は、請求人の所在地にある請求人の事務所においてJ所有のパソコン2台を利用して本件業務の事務を行っていた。
      • D 発送について
         本件業務において落札された商品(以下「落札商品」という。)の発送については、主にT社が利用されており、T社においては、荷主コードとして請求人の電話番号、名称として「Y社(請求人の社名)」、所在地として請求人所在地が顧客登録されていた。そして、別表6のとおり、本件各事業年度における落札商品数は合計5,972個であるところ、請求人の所在地から発送された配送伝票の枚数は、5,635枚であり、落札商品の9割超が請求人の所在地から発送されていた。
         また、T社は、平日のほぼ毎日、おおむね午後4時までに請求人の所在地において集荷を行っていた。
         なお、本件業務以外では、請求人がT社に発送を委託することはなかった。
      • E 落札商品について
         本件各事業年度における本件業務に係る落札商品のほとんどは、バッテリー、アルミホイール付タイヤ、ミシン、パソコン、家電雑品(ステレオアンプ、DVDレコーダー等)及び工業雑品(カゴ台車、コンプレッサー、ポンプ等)等の中古雑品であり、別表7に記載のある請求人が取り扱う商品の属性と同じであった。
         また、ID2の平成27年9月以前の落札商品と同年10月以降の落札商品の属性に変化はなく、いずれも請求人が取り扱う商品と属性は同じであった。
      • F 本件業務において出品された商品の調達について
        • (A) 請求人は、Jが個人的に仕入れたと主張する商品について、2個のスマートフォンに係るカード会社からの利用明細書以外は証ひょうを提出せず、当該2個の商品を除き、個人的に仕入れたと主張する商品について、これが事実であることを認めるに足りる証拠はなく、Jが販売委託を受けたとする商品についても、これを事実であることを認めるに足りる証拠はない。
        • (B) 請求人代表者の姉であるRは、本件調査担当職員に対し、Jに本件オークションでの販売を委託していた商品に子供服が含まれていた旨申述したものの、落札商品に子供服は含まれておらず、また、落札商品のうち、請求人がRから販売を委託された商品又は譲り受けた商品であると主張する商品について、これが事実であることを認めるに足りる証拠はない。
        • (C) 本件業務を開始した平成26年5月から本件各事業年度終了の平成28年5月までの2年1か月の間に、別表6のとおり本件業務におけるID1の落札商品数は1,113個及びID2の平成27年9月以前の落札商品数は2,596個の合計3,709個と大量であったこと、また上記Eのとおり落札商品のほとんどは中古雑品であったことからすると、Jが請求人の業務の合間にこれらの中古雑品を独力で調達することは極めて困難であると認められる。
        • (D) 請求人がJからID2の本件業務を譲り受けたとする平成27年10月1日以降に、本件業務に係る商品の出品のために、請求人が取り扱う商品以外で新たに商品を仕入れたとする事実を認めるに足りる証拠はない。
        • (E) 上記Eのとおり、本件業務に係る落札商品と請求人が取り扱う商品の属性は同じだったこと及び上記(A)ないし(D)のことからすると、本件業務の出品商品のほとんどは請求人が調達し仕入れに計上した商品であったと推認できる。
    • (ハ) 本件業務に係る費用の支払状況について
      • A 本件業務の従事者の給与について
         請求人は、Jに対して平成26年4月分以降に支払った給与並びにK及びLに対して平成27年2月分以降に支払った給与について請求人の給与手当勘定に計上していたが、Kへの平成26年8月分110,000円及び平成26年9月分から平成27年1月分まで毎月220,000円の合計1,210,000円について給与手当勘定に計上していなかった。
      • B 本件業務に係る諸経費について
         本件業務に係る諸経費(運賃、送料、消耗品費、支払手数料及び梱包材料費)のうち運賃、送料及び消耗品費に係る支出については、現金で支出され、Kが平成26年8月下旬から本件業務に係る現金出納簿(以下「本件現金出納簿」という。)に記録していた。また、支払手数料及び梱包材料費に係る支出については、上記1の(3)のハのJ名義のクレジットカードから支払われていた。
         ただし、これらの金額については、いずれも本件各事業年度の請求人の総勘定元帳に計上されておらず、法人税の確定申告において損金の額に算入されていなかった(原処分において損金の額に算入されている。)。
    • (ニ) 本件業務における請求人代表者の認識
       上記(ロ)のB及びCのとおり、請求人の従業員であるJが同じく請求人の従業員であるKとLに指示して本件業務を請求人の事務所で行っていたこと、そして本件業務に従事していたのは請求人の本件各事業年度の従業員数の半数近くに当たること、上記(ロ)のFのとおり、本件業務の出品商品のほとんどは請求人が調達し仕入れに計上したものと認められること、上記(ロ)のDのとおり、本件業務以外では発送を委託していないT社が平日はほぼ毎日請求人の所在地に落札商品の集荷に来ており、落札商品の9割超は請求人の所在地から発送されていたことなどの事情からすれば、請求人代表者の目の届く範囲で本件業務が行われていたことは明らかであるから、請求人代表者には、本件業務において請求人の仕入商品を販売することによって収益を得ていたとの認識はあったというべきである。
  • ハ 当てはめ
     これを本件に当てはめてみると、法律行為の名義については、上記ロの(ロ)のAのとおり、本件業務は、落札者に対して出品者として表示されるのがID1はJ及びID2はKと個人名義であるが、どちらも請求人の従業員名義である。本件業務の遂行状況については、上記ロの(ロ)のBないしDのとおり、請求人の従業員が請求人の事務所において本件業務の事務及び落札商品の発送を行っており、上記ロの(ロ)のFのとおり、請求人の仕入商品を出品することによって収益が獲得されていた。本件業務に係る費用の支払状況については、落札商品のほとんどは請求人が調達し仕入れに計上した商品であった上に、業務に従事する者の給与についても上記ロの(ハ)のAのとおり、一部を除いて請求人から支払われていた。そして、上記ロの(ニ)のとおり、請求人代表者には本件業務で収益を得ていたとの認識があったこと、更に大量の中古雑品等の出品を、上記1の(3)のヘのとおり古物商許可すら受けていないJが請求人の業務の合間に請求人と無関係に行うことができるものではなく、むしろ請求人によってのみ行うことのできる業務というべきであることを考慮すると、本件業務は請求人の業務の一環として行われたものとみるのが相当である。
     したがって、本件業務の事業主体は請求人であり、本件業務に係る収益は請求人に帰属すると認められる。
  • ニ 請求人の主張について
    • (イ) 請求人は、ID1及び平成27年9月以前のID2の本件業務はJ個人の事業であり、請求人の事業ではない旨主張する。
       しかしながら、上記1の(3)のニのとおり、請求人の従業員であるJは本件業務が個人事業であるとして、所得税の確定申告をしていなかった(平成26年分については、請求人に対する調査が開始された後の法定申告期限後に確定申告をした。)ところ、上記イに掲げた1事業の経緯、2業務の遂行状況、3業務に係る費用の支払状況及び4請求人の認識などの事実関係については、上記ロのとおりであり、これらを上記ハのとおり総合勘案すると本件業務の事業主体は請求人と認められる。
       したがって、請求人の主張には理由がない。
    • (ロ) 請求人は、ID1及び平成27年9月以前のID2を通じて本件オークションに出品した商品は請求人が仕入れた商品ではない旨主張する。
       しかしながら、上記ロの(ロ)のFのとおり、本件業務に出品された商品のほとんどは請求人が調達し仕入れに計上した商品であったと推認できることから、請求人の主張には理由がない。
    • (ハ) 請求人は、Kを採用したのは本件業務に従事させるためではない旨主張する。
       しかしながら、仮にKを採用したのは本件業務に従事させるためではなかったとしても、実際に上記ロの(ロ)のBのとおり、Kは請求人に採用された平成26年8月以降、本件業務にも従事しており、また、上記ロの(ハ)のBのとおり、本件業務に係る本件現金出納簿の記録も行っているのであるから、請求人の主張は上記ハの判断に影響を与えるものではない。
       したがって、請求人の主張には理由がない。
    • (ニ) 請求人は本件4口座の存在を知らなかった旨主張する。
       しかしながら、上記ロの(ニ)のとおり、請求人代表者には、本件業務において請求人の仕入商品を販売することによって収益を得ていたとの認識はあったというべきであり、上記ハのとおり、本件業務の事業主体は請求人と認められることから、仮に請求人が本件4口座の存在を知らなかったとしてもその判断が左右されるものではない。
       したがって、請求人の主張には理由がない。

(3) 争点3(本件業務に係る収益が請求人に帰属するとした場合、売上原価相当額及び人件費相当額を損金の額に算入すべきか否か。)について

  • イ 検討
     上記(2)のハのとおり、本件業務に係る収益は請求人に帰属すると認められるから、請求人は、当該収益に係る売上原価、販売費、一般管理費その他の費用のうち、法人税法第22条第3項第1号及び第2号の要件を満たす金額を損金の額に算入することとなる。そして、本件業務に係る売上原価、人件費並びに運賃及び送料等の諸経費は、おおむね売上げに対応して不可避的に発生する費用であって業務の遂行上必要と認められるから、請求人の帳簿書類に計上されていない当該費用のうち、法人税法第22条第3項第1号及び第2号の要件を満たす金額を本件各事業年度の損金の額に算入すべきである。
    • (イ) 売上原価
       上記(2)のロの(ロ)のFのとおり、本件業務の出品商品のほとんどは請求人が調達し仕入れに計上した商品であったと認められるところ、請求人は、Jが個人的に仕入れたとして2個のスマートフォンに係る証ひょうを当審判所に提出しており、当審判所の調査及び審理の結果によれば、当該2個のスマートフォンは請求人の仕入れに計上されていないことから、本件業務において売り上げた商品のうち、請求人の仕入れに計上されていない当該2個のスマートフォンについては、その仕入れの額を売上原価として損金の額に算入すべきである。
       そこで、請求人の仕入れに計上されていない2個のスマートフォン、すなわち、平成26年9月19日に購入し、平成26年9月25日に落札された当該商品の仕入金額107,784円を請求人の平成27年5月期の損金の額に、平成27年11月9日に購入し、平成27年12月21日に落札された当該商品の仕入金額97,632円を請求人の平成28年5月期の損金の額に算入するのが相当である。
    • (ロ) Kに対する給与
       上記(2)のロの(ロ)のBのとおり、Kは平成26年8月以降、本件業務に従事しているものの、上記(2)のロの(ハ)のAのとおり、請求人は、本件業務に係る人件費のうちJに対して平成26年4月分以降に支払った給与並びにK及びLに対して平成27年2月分以降に支払った給与については請求人の給与手当勘定に計上していたが、Kへの平成26年8月分110,000円及び平成26年9月分から平成27年1月分まで毎月220,000円の合計1,210,000円について給与手当勘定に計上していなかった。そこで、請求人の給与手当勘定に計上されていなかった平成26年8月分から平成27年1月分のKの給与支給額の合計額1,210,000円を請求人の平成27年5月期の損金の額に算入するのが相当である。
    • (ハ) 小括
       請求人の平成27年5月期に係る法人税の所得金額の計算上、上記(イ)の売上原価の額107,784円及び上記(ロ)の給与支給額1,210,000円を損金の額に、請求人の平成28年5月期に係る法人税の所得金額の計算上、上記(イ)の売上原価の額97,632円を損金の額に算入するのが相当である。
  • ロ 原処分庁の主張について
     原処分庁は、売上原価のようなその存在自体を否定できない損金を主張するときであっても、その法人においてそのような損金の存在及びその金額を含む損金の内容につき具体的に主張及び立証すべき必要があり、その主張及び立証がされない限り、当該損金は存在しないとの事実上の推定が働くところ、請求人は、本件業務の売上原価の額及び人件費の額について主張及び立証をしていないから当該損金は存在しないとの事実上の推定が働く旨主張する。
     しかしながら、上記イの(ハ)の売上原価の額及び給与支給額は、請求人提出資料並びに当審判所の調査及び審理の結果、損金の額に算入するのが相当と認められることから、原処分庁の主張には理由がない。
  • ハ 請求人の主張について
     請求人は、本件業務に係る収益(ID2については平成27年9月以前分に限る。)が請求人に帰属するならば、当該収益に対応する売上原価相当額を損金の額に算入すべきであると主張する。
     しかしながら、上記(2)のロの(ロ)のFのとおり、本件業務の出品商品のほとんどは請求人が調達し仕入れに計上した商品であったと認められることから、本件業務に係る売上原価の額は損金の額に算入されている。
     また、請求人は、本件業務に係る売上原価について2個のスマートフォンに係るカード会社からの利用明細書以外は証ひょうを提出せず、当審判所の調査及び審理によっても、当該2個のスマートフォン以外に請求人の損金の額に算入すべき売上原価があることを認めるに足りる証拠はない。
     したがって、上記イの(イ)のとおり、当該2個のスマートフォンの仕入れの額を売上原価として損金の額に算入するのが相当であることを除き、請求人の主張には理由がない。

(4) 争点4(本件業務に係る収益が請求人に帰属するとした場合、請求人が本件業務に係る収益を売上げに計上していなかったことは、通則法第68条第1項に規定する「隠ぺい」に当たるか否か。)について

  • イ 法令解釈
     「重加算税を課し得るためには、納税者が故意に課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺい、仮装行為を原因として過少申告の結果が発生したものであれば足り、それ以上に、申告に際し、納税者において過少申告を行うことの認識を有していることまでを必要とするものではないと解するのが相当である」(最二小判昭和62年5月8日集民151号35頁)。そして、「事実の全部又は一部を隠ぺい」とは、課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実の全部又は一部を隠ぺいし、あるいは故意に脱漏することをいうと解するのが相当である。
  • ロ 検討
     上記(2)のハのとおり、本件業務に係る収益は請求人に帰属するにもかかわらず、請求人は、上記1の(3)のニのとおり、当該収益を本件各事業年度の売上げとして帳簿書類に計上せず、その結果として過少申告している。
     そして、上記(2)のロの(ニ)のとおり、請求人代表者は本件業務で収益を得ていたことを認識していたにもかかわらず、本件4口座(請求人の従業員の個人名義口座3件及び請求人代表者の姉の個人名義口座1件)に入金された本件業務に係る売上げを請求人の帳簿書類に記載しないことによって、過少申告の結果が発生したものであることから、当該行為は、通則法第68条第1項に規定する「隠ぺい」に当たる。
  • ハ 請求人の主張について
     請求人は、過少申告の意図がないから「隠ぺい」に当たらない旨主張する。
     しかしながら、上記ロのとおり、請求人は、本件業務で収益を得ていたことを認識していたにもかかわらず、請求人の従業員等の個人名義口座に入金された本件業務に係る売上げを請求人の帳簿書類に記載しなかったことは、事実の一部を隠ぺいしたことに当たるところ、上記イのとおり、申告に際し過少申告を行うことの認識まで必要としないから、過少申告の意図がないことは「隠ぺい」がないことの根拠とならない。
     したがって、請求人の主張は採用できない。

(5) 本件各更正処分の適法性について

  • イ 本件各事業年度の法人税の各更正処分
    • (イ) 平成26年5月期
       上記(2)のハのとおり、本件業務に係る収益は請求人に帰属し、これを前提に、当審判所において、請求人の平成26年5月期の法人税の所得金額及び納付すべき税額を算出すると、いずれも原処分における額と同額となる。そして、平成26年5月期の法人税の更正処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
       したがって、平成26年5月期の法人税の更正処分は、適法である。
    • (ロ) 平成27年5月期
       上記(2)のハのとおり、本件業務に係る収益は請求人に帰属し、上記(3)のイの(ハ)のとおり、平成27年5月期の売上原価の額107,784円及び給与支給額1,210,000円は、法人税の所得金額の計算上損金の額に算入するのが相当である。
       また、平成26年5月期の法人税の更正処分に伴い納付すべき事業税及び地方法人特別税の額○○○○円が、平成27年5月期の法人税の更正処分において損金の額に算入されていないため、同額を損金の額に算入するのが相当である。
       これに基づき、平成27年5月期の法人税の所得金額及び納付すべき税額を算出すると、別表8の「審判所認定額」欄のとおりとなり、いずれも原処分の額を下回る。そして、平成27年5月期の法人税の更正処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
       したがって、平成27年5月期の法人税の更正処分は、その一部を別紙2「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。
    • (ハ) 平成28年5月期
       上記(2)のハのとおり、本件業務に係る収益は請求人に帰属し、上記(3)のイの(ハ)のとおり、平成28年5月期の売上原価の額97,632円は、法人税の所得金額の計算上損金の額に算入するのが相当である。
       また、上記(ロ)のとおり平成27年5月期の法人税の更正処分の一部を取り消すことにより平成28年5月期の納付すべき事業税及び地方法人特別税の額が減少するため、当該減少額○○○○円は、損金の額に算入されないこととなる。
       これに基づき、平成28年5月期の法人税の所得金額及び納付すべき税額を算出すると、別表9の「審判所認定額」欄のとおりとなり、いずれも原処分の額を上回る。そして、平成28年5月期の法人税の更正処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
       したがって、平成28年5月期の法人税の更正処分は適法である。
  • ロ 平成26年5月課税事業年度の復興特別法人税の更正処分
     上記イの(イ)を前提に、請求人の平成26年5月課税事業年度の復興特別法人税に係る課税標準法人税額及び納付すべき税額を算出すると、いずれも原処分の額と同額となる。そして、平成26年5月課税事業年度の復興特別法人税の更正処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
     したがって、平成26年5月課税事業年度の復興特別法人税の更正処分は適法である。
  • ハ 平成28年5月課税事業年度の地方法人税の更正処分
     上記イの(ハ)を前提に、請求人の平成28年5月課税事業年度の地方法人税に係る課税標準法人税額及び納付すべき税額を算出すると、別表10の「審判所認定額」欄のとおりとなり、いずれも原処分の額を上回る。そして、平成28年5月課税事業年度の地方法人税の更正処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
     したがって、平成28年5月課税事業年度の地方法人税の更正処分は適法である。
  • ニ 本件各課税期間の消費税等の各更正処分
     上記(2)のハのとおり、本件業務に係る収益は請求人に帰属し、これを前提に、当審判所において、請求人の本件各課税期間の消費税等の課税標準額及び納付すべき税額を計算すると、いずれも原処分の額と同額となる。そして、本件各課税期間の消費税等の各更正処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
     なお、請求人は、本件各課税期間において本件業務の仕入れに関して2個のスマートフォンを含め、帳簿及び請求書等を保存していないことが認められ、また、請求人は帳簿及び請求書等を保存できなかったことにつきやむを得ない事情が存したことを主張、立証せず、当審判所の調査及び審理の結果によってもそのような事情が存したとは認められないことから、消費税法第30条第7項の規定に従い、本件各課税期間の消費税額の算定に当たり仕入税額控除の適用は認められない。
     したがって、本件各課税期間の消費税等の各更正処分は、適法である。

(6) 本件各賦課決定処分の適法性について

上記(4)のロのとおり、請求人において、通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課要件を充足するところ、更正により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が、更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」があるとは認められない。

  • イ 平成27年5月期の法人税に係る賦課決定処分
     当審判所において、平成27年5月期の法人税に係る重加算税の額を計算すると、上記(5)のイの(ロ)のとおり、法人税の更正処分の一部が取り消されることに伴い、別表8の「審判所認定額」欄のとおり、原処分の額を下回るから、平成27年5月期の法人税に係る重加算税の賦課決定処分は、その一部を別紙2「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。
  • ロ その他の各賦課決定処分
     当審判所において、平成28年5月期の法人税に係る重加算税の額を計算すると、別表9の「審判所認定額」欄のとおり、原処分の額を上回ることから、平成28年5月期の法人税に係る重加算税の賦課決定処分は適法である。
     また、平成28年5月課税事業年度の地方法人税及び本件各課税期間の消費税等に係る重加算税の額を計算すると、いずれも原処分の額と同額となることから、平成28年5月課税事業年度の地方法人税及び本件各課税期間の消費税等に係る重加算税の各賦課決定処分はいずれも適法である。

(7) 結論

よって、審査請求には理由があるから、原処分の一部を取り消すこととする。

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