(平成30年6月19日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、太陽光発電設備等を取得した事業年度において当該設備等に係る償却費の額を損金の額に算入して法人税等の確定申告をしたところ、原処分庁が、当該設備等は当該事業年度において事業の用に供していないから当該設備等に係る償却費の額を損金の額に算入することはできないなどとして、法人税等の更正処分等をしたのに対し、請求人が、原処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令等の要旨

  • イ 法人税法等
    • (イ) 法人税法第2条《定義》第23号は、減価償却資産とは、建物、構築物、機械及び装置、船舶、車両及び運搬具、工具、器具及び備品、鉱業権その他の資産で償却をすべきものとして政令で定めるものをいう旨規定している。
    • (ロ) 法人税法第2条第24号は、繰延資産とは、法人が支出する費用のうち支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶもので政令で定めるものをいう旨規定している。
    • (ハ) 法人税法第2条第25号は、損金経理とは、法人がその確定した決算において費用又は損失として経理することをいう旨規定している。
    • (ニ) 法人税法第31条《減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法》第1項は、内国法人の各事業年度終了の時において有する減価償却資産につきその償却費として当該事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入する金額は、その内国法人が当該事業年度においてその償却費として損金経理をした金額(以下「損金経理額」という。)のうち、その取得をした日及びその種類の区分に応じ、政令で定める償却の方法の中からその内国法人が当該資産について選定した償却の方法に基づき政令で定めるところにより計算した金額(以下「普通償却限度額」という。)に達するまでの金額とする旨規定している。
    • (ホ) 法人税法施行令第13条《減価償却資産の範囲》は、法人税法第2条第23号に規定する政令で定める資産は、棚卸資産、有価証券及び繰延資産以外の資産のうち一定のもの(事業の用に供していないもの及び時の経過によりその価値の減少しないものを除く。)とする旨規定している。
    • (ヘ) 法人税法施行令第14条《繰延資産の範囲》第1項は、法人税法第2条第24号に規定する政令で定める費用は、法人が支出する費用(資産の取得に要した金額とされるべき費用及び前払費用を除く。)のうち、同項各号に掲げるものとする旨、同項第6号は、同項第1号から第5号に掲げるもののほか、同項第6号イからホに掲げる費用で支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶものを掲げ、同号ホにおいて、同号イからニまでに掲げる費用のほか、自己が便益を受けるために支出する費用とする旨規定している。
  • ロ 租税特別措置法(平成28年法律第15号による改正前のもの。以下「旧措置法」という。)
     旧措置法第42条の12の5《生産性向上設備等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除》第1項は、青色申告書を提出する法人が、産業競争力強化法の施行の日(平成26年1月20日。以下同じ。)から平成29年3月31日までの期間内に、生産等設備を構成する機械及び装置、工具、器具及び備品、建物、建物附属設備、構築物並びに政令で定めるソフトウエアで、同法第2条《定義》第13項に規定する生産性向上設備等に該当するもの(以下「生産性向上設備等」という。)のうち政令で定める規模のもの(以下「特定生産性向上設備等」という。)の取得等(取得(その製作又は建設の後事業の用に供されたことのないものの取得に限る。)又は製作若しくは建設をいう。)をして、これを国内にある当該法人の事業の用に供した場合には、その事業の用に供した日を含む事業年度の当該特定生産性向上設備等の償却限度額は、法人税法第31条第1項又は第2項の規定にかかわらず、当該特定生産性向上設備等の普通償却限度額と特別償却限度額との合計額とする旨規定し、同条第2項は、青色申告書を提出する法人が、産業競争力強化法の施行の日から平成28年3月31日までの期間(以下「特定期間」という。)内に、特定生産性向上設備等の取得等をして、これを国内にある当該法人の事業の用に供した場合における旧措置法第42条の12の5第1項に規定する特別償却限度額は、同項の規定にかかわらず、当該特定生産性向上設備等の取得価額から普通償却限度額を控除した金額に相当する金額とする旨規定している。
  • ハ 法人税基本通達(昭和44年5月1日付直審(法)25国税庁長官通達)
     法人税基本通達7−1−3《稼動休止資産》は、稼働を休止している資産であっても、その休止期間中必要な維持補修が行われており、いつでも稼働し得る状態にあるものについては、減価償却資産に該当するものとする旨定めている。
  • ニ 租税特別措置法(法人税関係)通達(平成29年6月30日付課法2−17他1課共同による改正前のもの。以下「措置法通達」という。)
     措置法通達42の12の5−1《生産等設備の範囲》は、旧措置法第42条の12の5第1項に規定する生産等設備とは、法人が行う生産活動、販売活動、役務提供活動その他収益を稼得するために行う活動の用に直接供される減価償却資産で構成されているものをいう旨定めている。

(3) 基礎事実

当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

  • イ 請求人は、一般区域貨物自動車運送事業並びに太陽光発電及び売電(電力を電力会社に供給することをいう。以下同じ。)に関する事業を目的とする法人である。
  • ロ 請求人が取得した太陽光発電所(以下「本件発電所」という。)について
    • (イ) 請求人は、平成27年8月5日、G社との間で、本件発電所に設置予定の太陽光発電設備(電力会社の電力系統に接続する系統連系のための設備等を含む。以下「本件発電設備」という。)に関する事業譲渡契約を締結し、当該権利を譲り受けた。
       なお、G社は、平成26年3月○日付で、本件発電設備について、電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(平成28年法律第59号による改正前のもの。)第6条《再生可能エネルギー発電設備を用いた発電の認定等》第2項の規定に基づく再生可能エネルギー発電設備の認定通知を経済産業大臣から受けていた。
    • (ロ) 請求人は、平成27年8月5日、H社(以下「本件請負会社」という。)との間で、本件発電所の建設工事について、請負代金を○○○○円(税込金額、以下「本件請負代金」という。)、工期を平成27年8月6日着手、平成28年3月引渡しとする請負契約を締結した。
       本件請負代金の内訳は、本体価額○○○○円並びにこれに対する消費税及び地方消費税○○○○円であり、当該本体価額の内訳は、本件発電設備に係る太陽光電池モジュール群、パワーコンディショナー及びキュービクル受変電設備を電線ケーブルで連結した発電システム本体(以下「本件発電システム本体」という。)の設置工事に係る請負代金○○○○円、本件発電所を囲むフェンス及び門扉(以下「本件フェンス等」という。)の設置工事に係る請負代金○○○○円並びに本件発電システム本体をJ社(以下「本件電力会社」という。)の電力系統に接続する系統連系のための工事負担金1,800,000円(以下「本件負担金」という。)であった。
    • (ハ) 請求人は、平成27年9月30日、本件電力会社に対し、本件発電設備に係る電力受給契約申込書(以下「本件申込書」という。)を提出した。本件申込書の連系サービス開始希望日欄及び受給開始希望日欄には、いずれも平成28年3月31日と記載されていた。
    • (ニ) 請求人は、平成27年12月15日、産業競争力強化法第2条第13項及び経済産業省関係産業競争力強化法施行規則第5条《生産性向上設備等の定義》第2号に基づき、本件発電所における太陽光発電事業に係る設備投資計画の確認を申請した。当該申請に係る申請書の設備投資の内容の金額欄には、本件請負代金の本体価額である○○○○円が記載されていた。
       そして、経済産業大臣は、同月22日付で、請求人に対し、上記申請に係る投資計画に記載された設備について生産性の向上に特に資する設備であることを確認した旨の通知をした。
    • (ホ) 本件発電システム本体及び本件フェンス等の設置工事は、平成28年3月28日までに完了し、請求人は、同日、その引渡しを受けた(以下、平成28年3月28日を「本件引渡日」という。)。
    • (ヘ) 請求人は、本件請負会社に対し、本件請負代金の全額を平成28年3月31日までに支払った。
    • (ト) 請求人は、平成28年6月15日付で、本件電力会社から小売電気事業を承継したK社(以下「本件電気事業者」という。)から、「電力受給契約のご案内」と題する書面を受領した。当該書面には、本件発電設備について、電力の受給開始予定日を平成28年9月30日とする旨及び系統連系のための工事負担金は当該工事完了後、過不足を精算する旨が記載されていた。
    • (チ) 請求人は、平成28年6月15日、本件電気事業者との間で、再生可能エネルギー電気の調達及び供給並びに接続等に関する契約(以下「本件受給契約」という。)を締結した。本件受給契約は、1本件電気事業者は、請求人が本件発電設備を用いて発電する電力のうち、請求人から供給される電力の全てを調達すること、2請求人は、本件電気事業者に対し系統連系のための工事負担金を支払うこと、3本件電気事業者は、系統連系のための工事を同年9月26日までに完了すること、4請求人は、系統連系のための工事(本件電気事業者が行うべき工事を除く。)を同月27日までに完了すること、5当該電力の受給開始日は同月28日とすることなどを合意するものであった。
    • (リ) 本件発電設備に係る系統連系のための工事が完了し、平成28年9月28日、系統連系が行われた。
    • (ヌ) 請求人は、本件発電設備について系統連系が行われた後、本件発電システム本体により発電した全電力(発電及び売電のために消費される微量の電力を除く。)を本件電力会社から送配電事業を承継したL社(以下「本件送配電事業者」という。)の電力系統に供給し、本件電気事業者に売電している。
    • (ル) 本件発電システム本体及び本件フェンス等は、いずれも、特定生産性向上設備等に該当し、その取得の後、本件引渡日までの間に、事業の用に供されたことがなかった。

(4) 審査請求に至る経緯

  • イ 請求人は、平成27年4月1日から平成28年3月31日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)の法人税及び平成27年4月1日から平成28年3月31日までの課税事業年度(以下「本件課税事業年度」という。)の地方法人税について、それぞれ別表1−1及び別表1−2の各「確定申告」欄のとおり記載した青色の各確定申告書に、旧措置法第42条の12の5第11項に規定する特定生産性向上設備等の償却限度額の計算に関する明細書を添付して、いずれも法定申告期限までに申告した。
     なお、請求人は、上記法人税の申告に当たり、1本件発電システム本体及び本件フェンス等の取得価額につき、旧措置法第42条の12の5第2項を適用し、普通償却限度額に相当する○○○○円及び特別償却限度額に相当する○○○○円のうち○○○○円の合計額○○○○円(以下「本件減価償却費」という。)を、2本件負担金を繰延資産とし、その償却額10,000円(以下「本件繰延資産償却費」という。)を、それぞれ損金経理の上、本件事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入した。
  • ロ 請求人は、原処分庁所属の調査担当職員の調査を受け、当該調査の結果に基づく指摘事項のうち、本件減価償却費及び本件繰延資産償却費に係る指摘事項を除いて、本件事業年度の法人税及び本件課税事業年度の地方法人税について、それぞれ別表1−1及び別表1−2の各「修正申告」欄のとおり記載した各修正申告書をいずれも平成29年4月26日に提出した。
  • ハ 原処分庁は、平成29年5月31日付で、本件発電設備は本件事業年度において事業の用に供されていないから、本件減価償却費及び本件繰延資産償却費は損金の額に算入できないなどとして、それぞれ別表1−1及び別表1−2の各「更正処分等」欄のとおり、本件事業年度の法人税及び本件課税事業年度の地方法人税の各更正処分(以下「本件各更正処分」という。)並びに過少申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」という。)をした。
  • ニ 請求人は、上記ハの各処分を不服として、平成29年7月21日に審査請求をした。

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2 争点

  • (1) 本件発電システム本体は、本件事業年度内に事業の用に供したと認められるか否か(争点1)。
  • (2) 本件フェンス等は、本件事業年度内に事業の用に供したと認められるか否か(争点2)。
  • (3) 本件負担金は、本件事業年度における繰延資産に該当するか否か(争点3)。

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3 争点についての主張

(1) 争点1(本件発電システム本体は、本件事業年度内に事業の用に供したと認められるか否か。)について

原処分庁 請求人
  • イ 本件電気事業者による電力の買取りは、本件送配電事業者の電力系統に供給された電力について行われることからすると、請求人が本件発電システム本体の属性に従ってその使用を開始したのは、本件発電システム本体により発電した全電力を売電するための系統連系が完了し、本件電気事業者に対して電力の供給を開始した平成28年9月28日であると認められる。よって、同日が本件発電システム本体を事業の用に供した日に当たる。
     請求人は、法人税基本通達7−1−3の定め及びその趣旨に照らせば、本件発電システム本体が稼動し得る状況であり、減価償却資産に該当する旨主張するが、同通達は、一旦事業の用に供していた資産のうち稼動を休止している資産で、その休止期間中も必要な維持補修が行われ、いつでも稼動し得る状態にあるものを対象とするのが相当であり、本件事業年度において本件発電システム本体を事業の用に供したとは認められない。
  • ロ なお、週刊M第○号及び同第○号の記事内容について、国税庁はホームページ等においてそのような取扱いを公表しておらず、本件記事の内容をもって国税庁が事実上の見解を示したということはできない。
     仮に請求人の主張するような考え方が一般に公正妥当なものと認められたとしても、請求人が、当初予定されていた系統連系のための工事実施日であると主張する平成28年3月31日は、請求人が本件申込書に記載した希望日にすぎず、本件送配電事業者が、平成28年6月15日付で、本件電気事業者に対して行った、本件発電設備の接続供給申込みの承諾に係る「託送供給の承諾のお知らせ」に記載された接続供給開始日、及び、上記1(3)ロ(ト)の「電力受給契約のご案内」に記載された電力の受給開始予定日がいずれも同年9月30日であることからすると、当初予定されていた系統連系のための工事実施日は同日である。
  • ハ したがって、本件発電システム本体は本件事業年度内に事業の用に供したとは認められない。
  • イ 本件発電システム本体は、次のことから、本件引渡日に事業の用に供したと認められる。
    • (イ) 国税庁のホームページには、「賃貸マンションの場合には、建物が完成し、現実の入居者がなかった場合でも、入居募集を始めていれば事業の用に供したものと考えられます。」との例示が掲載されているところ、太陽光発電設備は第三者との売電契約により売電の対価をもって収益を上げるものであるから賃貸不動産と同様の収益構造であり、かつ、太陽光発電設備は具体的な売電契約の締結が未了でも、発電を開始し、売電の申込みをしていれば第三者に売電が可能な状態となることからすると、本件発電システム本体は、本件引渡日において、上記賃貸マンションの例示と同様の状況にあると認められる。
    • (ロ) 法人税基本通達7−1−3の定め及びその趣旨に照らせば現実に稼動していなくても、必要な維持管理が行われ、いつでも稼動し得る状況である資産は減価償却資産に該当するところ、本件発電システム本体は、本件引渡日以後、必要な維持管理が行われ、売電契約の申込みに対する承諾を待っている状態であったのであるから、本件引渡日において、いつでも稼動し得る状況にあったと認められる。
    • (ハ) 租税特別措置法第38条の6《事業用資産の買換えの場合の譲渡所得の金額の計算》(昭和40年法律第32号による改正前のもの。以下同じ。)第1項規定の譲渡資産の要件である「事業の用に供しているもの」に関し、広島高裁昭和63年5月30日判決は、「譲渡の当時、現に事業の用に供している資産だけでなく、たまたま現に事業の用に供していなくとも、事業の用に供する意図の下に所有している資産も含むが、その意図は近い将来において実現されることが客観的に明白なものでなければならない」と判旨しているところ、本件発電システム本体は、本件引渡日において、試運転を完了し、売電契約の申込みに対する承諾を待っていた状態にあり、相当の対価を得て売電行為を継続的に行うことを意図し、その意図が、近い将来において実現することが客観的に明白であったと認められる。
  • ロ 仮に上記イの主張が認められなかったとしても、週刊M第○号及び同第○号の記事には、太陽光発電設備に係るグリーン投資減税に関し、太陽光発電設備の設置や検査が完了し、電力会社との間で系統連系のための工事の実施日が決まっていたにもかかわらず、電力会社の都合で一方的に工事実施日が延期された場合には当初予定されていた系統連系のための工事実施日を事業供用日と整理することも認められる旨の記載があるところ、請求人は、受給開始希望日及び連系サービス開始希望日をそれぞれ平成28年3月31日とする本件申込書を提出しており、上記希望日は事前に本件電力会社と相談して取り決めたものであることから、本件発電設備に係る当初予定された系統連系のための工事実施日は同日である。よって、本件発電システム本体は同日には事業の用に供したと認められる。
     原処分庁の主張は、国税庁が同種の法令について事実上示した見解に反するものであり、理由がない。
  • ハ したがって、本件発電システム本体は本件事業年度内に事業の用に供したと認められる。

(2) 争点2(本件フェンス等は、本件事業年度内に事業の用に供したと認められるか否か。)について

原処分庁 請求人
法人税法第31条第1項は、減価償却資産の償却費について当該資産を取得した日及びその種類の区分に応じて計算した金額と規定していることから、本件発電システム本体と本件フェンス等のそれぞれについて取得した日及び事業の用に供した日を判断すべきである。
 そして、本件フェンス等は、上記1(3)ロ(ホ)のとおり、平成28年3月28日までに工事を完了し、請求人に引き渡されていると認められるものの、1請求人は、本件フェンス等を含む本件発電所が生産性の向上に資する設備であることの確認を受けていること、2本件フェンス等は、単独では旧措置法通達42の12の5−1が定める生産活動等の用に直接供される減価償却資産とは認められないことから、請求人は、本件フェンス等を生産活動等の用に直接供される本件発電システム本体と一体として取得し、一体として事業の用に供したものとみるのが相当である。
 したがって、本件フェンス等は、本件発電システム本体の事業供用日である平成28年9月28日に事業の用に供したものであるから、本件事業年度内に事業の用に供したとは認められない。
本件フェンス等は、隣地との境界を画するとともに、本件発電所に対する不法侵入又は動物などによる侵害を防いで本件発電設備の財産的価値を維持するために設置されたものであるから、本件引渡日から、その属性に従って本来の目的のために使用を開始したと認められる。
 よって、本件フェンス等は本件事業年度内に事業の用に供したと認められる。

(3) 争点3(本件負担金は、本件事業年度における繰延資産に該当するか否か。)について

原処分庁 請求人
本件負担金が本件事業年度における繰延資産に該当するためには、本件事業年度における費用に該当する必要があるところ、請求人が本件事業年度内に支払った本件負担金は、概算金額の支出であり、上記1(3)ロ(ト)、(チ)及び(リ)のとおり、実際の負担金額は本件事業年度の末日より後に確定し、本件負担金の対象となる系統連系のための工事も平成28年9月28日に行われたことからすると、本件負担金の支出は仮払金に該当する。
 したがって、本件負担金は、本件事業年度における繰延資産には該当しない。
請求人は、本件請負会社との間で、本件請負会社が、本件電気事業者に対する系統連系のための工事負担金の支払及び系統連系のための工事完了までに必要な一連の事務を行う対価として本件負担金を支払う旨合意し、本件事業年度内に本件負担金を含む本件請負代金全額を支払った。また、本件負担金について、本件請負会社から精算を受けた事実もない。
 以上のとおり、請求人と本件請負会社との間では、本件負担金に係る請負内容及び金額が合意されており、本件負担金の支払債務は本件事業年度の末日において確定していたと認められる。
 したがって、本件負担金は、本件事業年度における繰延資産に該当する。

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4 当審判所の判断

(1) 争点1(本件発電システム本体は、本件事業年度内に事業の用に供したと認められるか否か。)について

  • イ 法令解釈
     減価償却資産(法人税法第2条第23号、法人税法施行令第13条)とは、事業の経営に継続的に利用する目的をもって取得される固定資産で、その用途に従って利用され、時の経過によって価値が減少するものをいい、その取得に要した価額(取得価額)は、将来の収益に対する費用の前払の性格を有し、資産の価値の減少に応じて減価償却費として徐々に費用として計上されるものである。
     また、租税特別措置法が規定する特別償却は、一定の政策目的を達するために、法人税法上認められる普通償却限度額を超えて減価償却を認めるものであり、特定の資産を取得し、それを事業の用に供した場合に、その事業の用に供した日を含む事業年度において、普通償却限度額に加えて取得価額の一定割合を償却することを認める制度である。
     そして、法人税法第2条第23号の委任を受けた法人税法施行令第13条は、事業の用に供していないものを減価償却資産から除く旨規定しており、旧措置法第42条の12の5第2項は、同項に規定する特別償却が認められるための要件として、特定期間内に特定生産性向上設備等の取得等をして、これを事業の用に供したことを要求しているところ、上記の減価償却資産の意義等に照らせば、当該資産を事業の用に供したと認められるか否かは、業種、業態、その資産の構成及び使用の状況を総合的に勘案し、その資産をその属性に従って本来の目的のために使用を開始したといえるか否かによって判定するのが相当である。
  • ロ 認定事実
     請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
    • (イ) 本件発電システム本体は、太陽光電池モジュール群によって発電された直流電力を、パワーコンディショナーにより交流電力に変換し、受変電設備により高電圧に昇圧した上、当該電力を本件送配電事業者の電力系統に供給することによって本件電気事業者に売電を行う構造である。本件発電システム本体には、発電した電力を自家消費する設備や蓄電設備は接続されておらず、本件発電システム本体により発電した電力は、発電及び売電のために消費される微量の電力を除き、全てが売電に充てられる配線構造である。
    • (ロ) 請求人は、本件発電システム本体の引渡しを受けた本件引渡日から系統連系が行われるまでの間に、本件発電システム本体により発電した電力を使用していなかった。
    • (ハ) 本件発電システム本体に係る系統連系のための工事は、本件送配電事業者の送配電設備から本件発電所内の受給地点までの高圧架空引込線の新設並びに受電用計量器及び高圧変成器の取付けなどをその内容とするものであった。そして、本件発電システム本体は、上記の工事を完了しなければ、本件発電システム本体により発電された電力を本件送配電事業者の電力系統に供給することができないものであった。
    • (ニ) 本件申込書の連系サービス開始希望日欄及び受給開始希望日欄は、本件請負会社が請求人の希望するそれぞれの日を記載したものであり、本件電力会社との間で、上記各希望日を系統連系のための工事の予定日とすることについて、事前に取り決められていたものではなかった。
  • ハ 検討
     上記ロ(イ)及び1(3)ロ(ヌ)のとおり、本件発電システム本体により発電された電力は、発電及び売電のための微量以外に自己消費に使用することなく、全て売電に充てる配線構造であり、実際に、請求人は、系統連系が行われた後、本件電気事業者に対して本件発電システム本体により発電した全電力を売電していること、及び、上記ロ(ロ)のとおり、請求人が、系統連系が行われるまでに本件発電システム本体により発電した電力を使用した事実も認められないことからすると、本件発電システム本体は発電した電力を売電することにより収益を稼得することをその本来の目的とする設備であると認められる。
     そして、上記ロ(ハ)のとおり、本件発電システム本体は、系統連系のための工事が完了しなければ、物理的に発電した電力を本件送配電事業者の電力系統に供給することができず、本件電気事業者への売電による収益を上げることができない状態であったと認められるところ、上記1(3)ロ(リ)のとおり、本件発電システム本体に係る系統連系のための工事が完了して系統連系が行われたのは平成28年9月28日であり、本件事業年度の末日において、本件電気事業者へ売電していなかったのであるから、本件発電システム本体は、本件事業年度内にその属性に従ってその本来の目的のために使用を開始したとは認められない。
     したがって、請求人が、本件発電システム本体を本件事業年度内に事業の用に供したとは認められない。
  • ニ 請求人の主張について
    • (イ) 請求人は、国税庁ホームページに掲載されている賃貸用マンションの場合の例示を引用し、本件発電システム本体は売電の対価をもって収益を上げる点において賃貸不動産と同様の収益構造であり、かつ、本件発電システム本体は本件引渡日には完了し、売電の申込みも完了していたのであるから、上記賃貸マンションの例示と同様に、本件引渡日において事業の用に供していたと認められる旨主張する。
       しかしながら、賃貸用マンションは、当該不動産を賃貸に供することにより賃料収入を稼得することをその目的とするものであるところ、建物が完成し入居者を募集した段階で物理的にその本来の目的に沿った使用が可能な状態であるのに対し、本件発電システム本体は、設備本体の工事が完了し、売電の申込みを行っていたとしても、系統連系のための工事が完了していなければ本件送配電事業者の電力系統に発電した電力を供給できず、その本来の目的である売電の用に物理的に供し得ない状態にある点において、その状況が異なるものである。
       したがって、請求人の主張は採用することができない。
    • (ロ) 請求人は、法人税基本通達7−1−3の定めを引用し、本件発電システム本体は、その引渡しを受けた本件引渡日以後、必要な維持管理が行われ、いつでも稼動し得る状況であったから、同通達の趣旨に照らせば、同日において事業の用に供していたと認められる旨主張する。
       しかしながら、上記通達は、その文理からすると、一旦事業の用に供された減価償却資産につき、その後に稼動を休止した場合の取扱いを定めたものであると解するのが相当であるところ、本件発電システム本体のように、資産を取得したものの、一度も事業の用に供した事実はなく、当該資産が物理的に事業の用に供し得る状態に至っていない場合について定めたものではない。
       したがって、請求人の主張は採用することができない。
    • (ハ) 請求人は、広島高裁昭和63年5月30日判決を引用し、本件発電システム本体は、本件引渡日において、事業の用に供する意図が近い将来において実現されることが客観的に明白であったといえるから、同日において事業の用に供していたと認められる旨を主張する。
       しかしながら、上記判決は、譲渡所得の金額の算定に当たり、対象譲渡資産が、租税特別措置法第38条の6第1項に規定する「事業の用に供しているもの」に該当するか、すなわち事業用資産であると認められるかについてその法令解釈を示したものであり、法人税法第2条第23号及び法人税法施行令第13条が規定する減価償却資産に該当するための事業供用要件に係る法令解釈を示したものではない。
       したがって、請求人の主張は採用することができない。
    • (ニ) 請求人は、仮に上記(イ)から(ハ)までの各主張が認められなかったとしても、週刊Mの各記事を引用し、本件申込書に記載された受給開始希望日及び連系サービス開始希望日は本件電力会社と相談して取り決めたものであるから、上記希望日である平成28年3月31日が当初予定されていた系統連系のための工事実施日に当たり、その後、本件電力会社側の都合により一方的に工事実施日が延期されたものであるから、本件事業年度の末日には本件発電システム本体を事業の用に供したと認められる旨を主張する。
       しかしながら、上記ロ(ニ)のとおり、本件申込書に記載された平成28年3月31日は請求人が希望する工事の予定日であって、本件電力会社との間で合意された予定日ではない。また、上記1(3)ロ(チ)のとおり、同年6月15日に、請求人と本件電気事業者は、本件電気事業者が同年9月26日までに系統連系のための工事を完了させる旨合意しているところ、当審判所の審理及び調査の結果によっても、それ以前に、請求人と、本件電力会社又は本件電気事業者との間で、具体的な受給開始日及び系統連系のための工事実施日が合意されていた事実は認められない。
       したがって、本件発電設備について、平成28年3月31日が当初予定されていた系統連系のための工事実施日であるとは認められず、請求人の主張はその前提を欠くものであるから採用することができない。

(2) 争点2(本件フェンス等は、本件事業年度内に事業の用に供したと認められるか否か。)について

  • イ 認定事実
     請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
    • (イ) 本件フェンス等は、最上部に有刺鉄線を有する高さ約2メートルの金属製の構築物であり、本件発電設備が設置されている敷地部分を囲む形で、本件発電所とその隣地及び道路との境界に沿って敷設されている。
       なお、本件フェンス等は、本件発電システム本体と2メートルから3メートル程度離れた位置に独立して設置されている。
    • (ロ) 本件発電所は、田畑、雑木林及び道路に囲まれて周辺に民家等はなく、本件フェンス等以外に本件発電所内への立入りを遮蔽する構築物はない。
    • (ハ) 電気事業法第39条《事業用電気工作物の維持》第1項及び同項の委任を受けた電気設備に関する技術基準を定める省令(平成9年通商産業省令第52号)第23条《発電所等への取扱者以外の者の立入の防止》は、高圧又は特別高圧の電気機械器具、母線等を施設する発電所等には、取扱者以外の者が容易に構内に立ち入るおそれがないように適切な措置を講じなければならない旨規定している。そして、本件発電システム本体の標準電圧は6,000ボルトであり、上記省令が規定する高圧に該当する。
       なお、平成29年3月に資源エネルギー庁が策定した「太陽光発電に関する事業計画策定ガイドライン」には、発電設備が地絡(電流が絶縁不良のために大地に流れてしまう状況をいう。)などの異常状態にある場合には発電設備によって第三者が感電等により被害を受けるおそれがあることなどから、これらの危険を防止するために発電設備の周辺に柵や塀などを設置し、容易に第三者が発電設備に近づくことができないよう適切な措置を講ずる必要があり、柵塀等は発電設備の設置後速やかに設けることが望ましい旨、太陽光発電所においてケーブルやその他の発電設備の一部が盗難に遭うなどの被害が報告されている旨が記載されている。
  • ロ 検討
     旧措置法第42条の12の5が規定する特別償却制度は、特定生産性向上設備等に該当する減価償却資産について、法人税法第31条の規定による普通償却限度額を超えて特別償却等を認める制度であって、当該資産が特定生産性向上設備等に該当するか否かによって、法人税法第2条第23号及び法人税法施行令第13条が規定する減価償却資産に係る法令解釈が異なるものではない。したがって、生産等設備が複数の減価償却資産によって構成され、それらの資産がそれぞれ特定生産性向上設備等に該当する場合においても、それぞれの減価償却資産ごとに、上記(1)イのとおり、事業の用に供した日を判断すべきである。
     これを本件についてみるに、本件発電システム本体と本件フェンス等は、それぞれが本件発電所を構成する減価償却資産であるところ、本件発電システム本体は、上記(1)ロ(イ)のとおり、太陽光電池モジュール群、パワーコンディショナー、受変電設備の各機械装置が電線ケーブルによって物理的に連結され、それらが一体となって、発電、変電及び送電といった売電のために必要な機能を発揮するのに対し、本件フェンス等は、本件発電システム本体から物理的に独立した構築物であり、発電、変電及び送電といった機能はなく、本件発電システム本体と一体となって売電のための機能を果たすものでもない。そして、上記イ(ハ)のとおり、本件発電システム本体が高圧の機械装置であって、法令により安全上適切な措置を講ずることが義務付けられ、第三者による感電等の事故、本件発電システム本体の盗難や毀損を避ける必要性がある機械装置であることからすると、本件フェンス等は、外部からの侵入等を防止することにより本件発電システム本体を保護することをその属性に従ってその目的のために設置され、使用されたと認められる。そうすると、本件発電システム本体と本件フェンス等は、物理的にも機能的にも一体とはいえないから、別個の減価償却資産であると認められる。
     そこで、本件フェンス等が事業の用に供された日を検討するに、請求人は、上記1(3)ロ(ホ)のとおり、本件引渡日に本件発電システム本体及び本件フェンス等の引渡しを受けているところ、本件引渡日から平成28年9月28日に系統連系が行われて売電を開始するまでの間も、本件発電システム本体への接触による感電等の事故、本件発電システム本体の盗難や毀損を避ける必要性があり、実際に本件フェンス等はその目的に沿った機能を発揮していたと認められる。
     以上によれば、本件フェンス等は、本件引渡日から、その属性に従ってその本来の目的のために使用を開始されたと認めるのが相当である。
     したがって、請求人は、本件フェンス等を本件事業年度内に事業の用に供したと認められる。
  • ハ 原処分庁の主張について
     原処分庁は、請求人が、本件フェンス等を本件発電システム本体と一体として取得し、一体として事業の用に供したものとみるのが相当であり、本件フェンス等を事業の用に供した日は本件発電システム本体を事業の用に供した平成28年9月28日とすべきである旨を主張する。
     しかしながら、請求人が本件フェンス等を含む本件発電所について生産性の向上に資する設備であることの確認を受けていたとしても、本件発電所を構成するそれぞれの減価償却資産ごとに、事業の用に供したか否かを判断すべきことは上記ロのとおりである。また、本件フェンス等は、上記イ(ハ)のとおり、本件発電所において売電事業を開始するに当たって、法令上設置が義務付けられているものであって、本件発電所に必要不可欠な資産であることから、本件発電システム本体とともに生産等設備を構成する減価償却資産に該当するものではあるが、本件フェンス等の資産としての属性やその本来の目的は上記ロのとおりであって、本件発電システム本体のそれとは異なるものであるとともに、系統連系が行われておらず本件発電システム本体がその本来の目的に従った使用を開始していない状況にあったとしても、本件フェンス等は独立してその資産としての属性に従った機能を発揮し、その本来の目的に従って使用されていたものであるから、本件フェンス等について、本件発電システム本体と一体のものとして事業の用に供したとは評価できない。
     したがって、原処分庁の主張は採用することができない。

(3) 争点3(本件負担金は、本件事業年度における繰延資産に該当するか否か。)について

  • イ 検討
     法人税法第2条第24号は、繰延資産の定義として、法人が支出する費用のうち支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶもので政令で定めるものをいう旨規定し、これを受けて法人税法施行令第14条第1項が、上記政令で定める費用を規定しているところ、繰延資産は、ある支出が行われ、また、それによって相手方から役務の提供を受けたにもかかわらず、その支出若しくは役務の有する効果が、当事業年度のみならず、翌事業年度以降にわたるものと予想される場合、その効果の発現という事実を重視して、支出時の費用とせずに繰り延べて、その効果の及ぶ期間にわたる費用として、これを配分するものであるから、本件負担金が、本件事業年度における繰延資産に該当するためには、本件事業年度に計上すべき費用に該当する必要がある。
     上記1(3)ロ(チ)のとおり、本件負担金は、本件電気事業者が系統連系のために行う工事について、請求人が当該工事費用を負担するものである。そうすると、請求人が支出した本件負担金は、本件電気事業者による系統連系のための工事の対価としての性質を有するものであると認められるところ、上記1(3)ロ(リ)のとおり、本件発電システム本体に係る系統連系のための工事が完了したのは本件事業年度の末日よりも後であるから、請求人は、本件事業年度内に本件負担金に対応する役務の提供を受けておらず、本件負担金は本件事業年度に計上すべき費用には該当しない。
     したがって、本件負担金は本件事業年度における繰延資産に該当しない。
  • ロ 請求人の主張について
     請求人は、本件請負会社との間で、本件請負会社が、本件電気事業者に対する系統連系のための工事に係る負担金の支払及び本件電気事業者による系統連系のための工事完了までに必要な一連の事務を行う対価として、本件負担金を支払うことに合意したものであるから、当該合意により債務は確定しており、本件負担金は本件事業年度における繰延資産に該当する旨を主張する。
     しかしながら、請求人の主張する合意内容を前提としても、上記1(3)ロ(チ)及び(リ)のとおり、本件事業年度の末日までに、本件電気事業者に対する系統連系のための工事負担金の支払及び系統連系のための工事完了までの一連の事務手続は完了していなかったのであるから、請求人が、本件事業年度内に、本件請負会社から本件負担金に対応する役務の提供を受けたとは認められない。
     したがって、請求人の主張は採用することができない。

(4) 本件各更正処分の適法性について

以上のとおり、本件各更正処分には、争点1及び争点3についてこれを取り消すべき事由は見当たらない。
 一方、争点2については、上記(2)のとおり、本件フェンス等は本件事業年度内に事業の用に供したと認められる。そして、上記1(3)ロ(ル)のとおり、本件フェンス等は特定生産性向上設備等に該当するところ、請求人は、上記1(4)イのとおり、本件発電システム本体及び本件フェンス等の取得価額につき、本件減価償却費の損金経理を行ったと認められるから、別表2の「審判所認定額」欄記載のとおり、本件フェンス等の取得価額○○○○円全額について、本件事業年度の所得金額の計算上損金の額に算入するのが相当である。
 以上を前提に、当審判所において、請求人の本件事業年度の法人税及び本件課税事業年度の地方法人税の納付すべき税額を計算すると、それぞれ別表3−1及び別表3−2の各「審判所認定額」欄記載のとおりとなり、本件各更正処分の金額を下回ることが認められる。
 なお、本件各更正処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを取り消すべき事由は見当たらない。
 したがって、本件各更正処分は、いずれもその一部が違法であり、その一部を取り消すべきである。

(5) 本件各賦課決定処分の適法性について

上記(4)のとおり、本件各更正処分はいずれもその一部が違法であり取り消すべきであるが、本件各更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が本件各更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、請求人に国税通則法(平成28年法律第15号による改正前のもの。)第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められない。そして、本件各更正処分に係る過少申告加算税の額については、計算の基礎となる金額及び計算方法につき請求人は争わず、当審判所において、請求人の本件事業年度の法人税及び本件課税事業年度の地方法人税の過少申告加算税の額を計算すると、それぞれ本件各賦課決定処分の金額に満たない。
 したがって、本件各賦課決定処分は、いずれもその一部が違法であり、その一部を取り消すべきである。

(6) 結論

以上によれば、本件各更正処分及び本件各賦課決定処分は、いずれもその一部を別紙1及び別紙2の「取消額等計算書」のとおり、それぞれ取り消すこととする。

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