(平成30年6月14日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、固定資産課税台帳に価格が登録されていない土地を取得した審査請求人(以下「請求人」という。)が、当該土地の所有権の移転の登記の際に納付した登録免許税の額が過大であるとして還付通知をすべき旨の請求をしたところ、原処分庁から、過誤納の事実は認められないとして還付通知をすべき理由がない旨の通知処分を受けたため、同処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令等の要旨

  • イ 登録免許税法第10条《不動産等の価額》第1項は、同法別表第一の第1号に掲げる不動産の登記(所有権の移転の登記もこれに含まれる。)の場合における課税標準たる不動産の価額は、当該登記の時における不動産の価額による旨規定している。
  • ロ 登録免許税法附則第7条《不動産登記に係る不動産価額の特例》は、登録免許税法別表第一の第1号に掲げる不動産の登記の場合における同法第10条第1項の課税標準たる不動産の価額は、当分の間、当該登記の申請の日の属する年の前年12月31日現在又は当該申請の日の属する年の1月1日現在において地方税法第341条《固定資産税に関する用語の意義》第9号に掲げる固定資産課税台帳に登録された当該不動産の価格(以下「台帳価格」という。)を基礎として政令で定める価額によることができる旨規定している。
  • ハ 登録免許税法施行令附則第3項は、登録免許税法附則第7条に規定する政令で定める価額は、台帳価格のある不動産については、次の(イ)又は(ロ)に掲げる当該不動産の登記の申請の日の属する日の区分に応じ次の(イ)又は(ロ)に掲げる金額に相当する価額とし、台帳価格のない不動産については、当該不動産の登記の申請の日において当該不動産に類似する不動産で台帳価格のあるものの次の(イ)又は(ロ)に掲げる当該申請の日の区分に応じ次の(イ)又は(ロ)に掲げる金額を基礎として当該登記に係る登記機関が認定した価額とする旨規定している。
    • (イ) 登記の申請の日がその年の1月1日から3月31日までの期間内であるものは、その年の前年12月31日現在における当該不動産の台帳価格に100分の100を乗じて計算した金額(第1号)
    • (ロ) 登記の申請の日がその年の4月1日から12月31日までの期間内であるものは、その年の1月1日現在における当該不動産の台帳価格に100分の100を乗じて計算した金額(第2号)
  • ニ 登録免許税法第31条《過誤納金の還付等》第1項柱書及び同項第3号は、登記機関は、登記を受けた者が過大に登録免許税を納付して登記を受けた事実があるときは、遅滞なく、当該過大に納付した登録免許税の額その他政令で定める事項を登記を受けた者の当該登録免許税に係る同法第8条《納税地》第2項の規定による納税地の所轄税務署長に通知しなければならない旨規定し、また、同法第31条第2項は、登記を受けた者は、当該登記の申請書(当該登記が官庁又は公署の嘱託による場合にあっては当該登記の嘱託書とする。)に記載した登録免許税の課税標準又は税額の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったことにより、登録免許税の過誤納があるときは、当該登記を受けた日から5年を経過する日までに、政令で定めるところにより、その旨を登記機関に申し出て、同条第1項の通知をすべき旨の請求をすることができる旨規定している。
  • ホ 固定資産評価基準(昭和38年12月25日付自治省告示第158号)第1章《土地》第1節《通則》一《土地の評価の基本》は、1土地の評価は、田、畑、宅地、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野及び雑種地の地目の別に、それぞれ定める評価の方法によって行うものとする旨、2この場合における土地の地目の認定に当たっては、当該土地の現況及び利用目的に重点を置き、部分的に僅少の差異の存するときであっても、土地全体としての状況を観察して認定するものとする旨定めている。

(3) 基礎事実及び審査請求に至る経緯

当審判所の調査及び審理の結果によれば、次の事実が認められる。

  • イ 別表1の順号1ないし6の各土地(以下、併せて「本件各土地」という。)及び別表2の土地(以下「別件土地」という。)は、いずれも都市計画法第7条《区域区分》に規定する市街化調整区域に所在する土地である。
     本件各土地及び別件土地の形状、位置関係等は別図のとおりである。
  • ロ 請求人は、平成28年3月○日に、一般競争入札により、○○から本件各土地を買い受け、同月○日に、売買を原因とする所有権の移転の登記を受けた(以下、当該登記を「本件登記」という。)。
  • ハ 本件登記をしたF法務局○○支局登記官H(以下「本件登記官」という。)は、本件登記に係る登録免許税の額を算出するに当たり、本件各土地には、登録免許税法施行令附則第3項第1号に規定する基準日である平成27年12月31日現在(本件登記の申請(嘱託)の日は平成28年3月○日)において台帳価格がなかったため、本件登記の嘱託書に添付されていた本件各土地に係る「平成27年度仮の固定資産評価額」と題する各書面(いずれも平成27年7月17日付、d市e町長作成。以下「本件仮証明書」という。)の「対象財産の評価額」欄に記載された1平方メートル当たりの評価額15,559円(本件各土地の近傍類似不動産として選定された標準地(以下「本件標準地」という。)の1平方メートル当たりの価格16,500円に、奥行き、形状及び角地などの補正を加えて算出された額)を採用し、別表1のとおり、当該評価額に本件各土地の地積(合計○○平方メートル)を乗じた価額○○○○円(1,000円未満切捨て)をもって、課税標準たる不動産の価額と認定し(以下、当該価額を「本件登記官認定額」という。)、登録免許税の額を○○○○円(100円未満切捨て)と算出した。
  • ニ 請求人は、平成28年6月○日に、d市e町から別件土地を買い受け、同月○日に、売買を原因とする所有権の移転の登記を受けた(以下、当該登記を「別件登記」という。)。
     なお、別件土地は、別図のとおり、本件各土地を二分する位置にある。
  • ホ 別件登記をした本件登記官は、別件登記に係る登録免許税の額を算出するに当たり、別件土地には、登録免許税法施行令附則第3項第2号に規定する基準日である平成28年1月1日現在(別件登記の申請(嘱託)の日は平成28年6月○日)において台帳価格がなかったため、別件登記の嘱託書に添付されていた別件土地に係る「平成28年度固定資産価格通知書」(平成28年6月13日付、d市e町長作成)の「備考」欄に記載された近傍類似雑種地の1平方メートル当たりの評価額○○○○円を採用し、別表2のとおり、当該評価額に別件土地の地積(159.00平方メートル)を乗じた価額○○○○円(1,000円未満切捨て)をもって、課税標準たる不動産の価額と認定し、登録免許税法第19条《定率課税の場合の最低税額》の規定に基づき、登録免許税の額を○○○○円と算出した。
  • ヘ 本件各土地及び別件土地に係る「平成29年度固定資産評価証明書」(平成29年5月2日付、d市e町長作成)には、平成29年1月1日を基準日とする、本件各土地に係る平成29年度の台帳価格として、それぞれ別表1の「平成29年度台帳価格」欄の価格が記載されている。この「平成29年度台帳価格」は、いずれも1平方メートル当たり○○○○円として算出されたものである。
  • ト 請求人は、別表1の「平成29年度台帳価格」欄の「合計」欄の○○○○円が本件登記の時における本件各土地の正当な価額であるから、本件登記に係る登録免許税の課税標準の額は○○○○円(1,000円未満切捨て)、税額は○○○○円(100円未満切捨て)であり、上記ハの税額○○○○円との差額○○○○円は過誤納であるとして、平成29年5月24日に、登録免許税法第31条第2項の規定に基づき、同条第1項に規定する還付通知をすべき旨の請求をした。
  • チ 上記トの請求を受けた原処分庁(F法務局○○支局登記官J)は、平成29年6月14日付で、請求人に対し、還付通知をすべき理由がない旨の通知処分(以下「本件通知処分」という。)をした。
  • リ 請求人は、平成29年9月13日に、本件通知処分の全部の取消しを求めて、審査請求をした。
  • ヌ なお、原処分庁は、平成30年4月1日付の人事異動により、F法務局○○支局登記官JからF法務局○○支局登記官Gとなった。

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2 争点

本件登記官認定額は、本件登記の時における本件各土地の価額として過大であるか否か。

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3 争点についての主張

請求人 原処分庁
本件各土地には台帳価格がなかったのであるから、本件登記に係る登録免許税の課税標準たる不動産の価額は、近傍類似の土地の固定資産評価額を参考にして定める額とすべきであり、具体的には、次の(1)ないし(4)などの事情によれば1平方メートル当たり○○○○円として算出した○○○○円(1,000円未満切捨て)を本件各土地の価額とすべきであるし、(5)の事情からしても、本件登記官認定額は本件各土地の価額として過大である。
  • (1) 別件登記に係る登録免許税の課税標準たる不動産の価額は、1平方メートル当たり○○○○円で算出されている。
     そして、別件土地は、本件各土地と一体となった一団の土地の一部である。
  • (2) 本件各土地及び別件土地の平成29年度の台帳価格は、いずれも1平方メートル当たり○○○○円である。
     なお、一般的に固定資産評価額は3年に1度見直されるところ、本件各土地の平成29年度の台帳価格が1平方メートル当たり○○○○円であるならば、平成27年度の固定資産評価額についても、1平方メートル当たり○○○○円となる。
  • (3) 本件各土地は、昭和56年3月20日に本件各土地の上にあった建物が取り壊された後、本件登記の時まで一貫して放置されており、実際の現況地目は雑種地であった。
  • (4) 本件各土地は、市街化調整区域内の土地であり、建物を建築することができない。
  • (5) なお、請求人が本件各土地を取得した際の取得価額(時価とみることができる。)は○○○○円(1平方メートル当たり3,033円)であるが、この金額を前提としても、本件登記官認定額は、当該取得価額を大きく超えている。
本件登記官は、本件登記の時において本件各土地に台帳価格がないことを確認した上で、本件仮証明書により、本件登記官認定額を認定した。
 本件仮証明書に記載された金額は、d市e町長によって、本件各土地に類似する不動産の台帳価格を基に算出した1平方メートル当たりの価格に、奥行き、形状及び角地などの補正を加えて算出されたものである。これを基に本件各土地の地積を乗じて認定した本件登記官認定額は、台帳価格のない不動産に類似する不動産の台帳価格を基礎として合理的に算出されたものであり、本件登記に係る登録免許税の課税標準たる不動産の価額として過大とはいえない。
 本件登記は、平成28年3月○日に嘱託されたものであり、登録免許税の額は登記の時に確定するのであるから、登記完了後の台帳価格により課税標準たる価額を認定すべきではない。

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4 当審判所の判断

(1) 認定事実

請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、次の事実が認められる。

  • イ 本件各土地は、昭和56年3月20日に建物が取り壊されてから本件登記に至るまでの間、建物が建築されたことはなく、また、構築物、工作物及び樹木などもなく、その大部分の箇所に雑草が茂っている状況であり、本件登記の時から平成29年3月に請求人が本件各土地に太陽光発電設備を設置するための造成工事を開始するまでの間も、その状況に特段の変化はなかった。
  • ロ 本件各土地に係る「平成29年度固定資産評価証明書」には、平成29年1月1日現在の本件各土地の現況地目はいずれも雑種地である旨記載されている。
  • ハ 一般競争入札に当たり、財務省K財務局が作成した「○○」と題する書面の「○○」には、本件各土地の現況地目はいずれも雑種地である旨記載されている。
  • ニ 本件標準地は、現況が宅地、地積が162.87平方メートル、間口が約12m、奥行きが約14mの土地であった。本件各土地と本件標準地との位置関係、本件標準地の形状等は、別図のとおりである。
     これに対し、本件各土地は、上記イないしハのとおり現況がいずれも雑種地であり、また別表1の順号1ないし3の各土地の地積の合計が○○平方メートル、順号4ないし6の各土地の地積の合計が○○平方メートルであり、順号1ないし3の各土地、順号4ないし6の各土地をそれぞれ一体としてみた場合、いずれも間口が約35m、最長の奥行きが約92mである。
  • ホ 本件仮証明書は、本件登記の嘱託に当たりK財務局長からd市e町長宛にされた、本件各土地の「仮の固定資産台帳登録価格の設定依頼について」に基づき、d市e町長が回答したものであるところ、当該設定依頼に添付された「平成27年度仮の固定資産評価額」と題する各書面の「参考事項」欄には、最初から本件各土地の現況がいずれも宅地である旨記載されており、d市e町長は、当該「参考事項」欄の記載に基づき、本件各土地の現況がいずれも宅地であるものとし、本件標準地の1平方メートル当たりの価格に奥行き、形状及び角地などの補正を加えて、仮の固定資産評価額(1平方メートル当たり15,559円)を回答した。
  • ヘ 「e町土地評価事務取扱要領(改訂 平成27年度)」(以下「本件要領」という。)は、市街化調整区域内の雑種地について、その現況により1鉄軌道、2私道、3ゴルフ場・遊園地、4サーキット場、5構築物のある土地、資材置場、駐車場等(私道を除く。)、6上記1ないし5に含まれない雑種地に区分し、上記6の雑種地の評価方法については、その地積や形状にかかわらず、当該雑種地の存する地区ごとに定められた単価により評価する旨定めている。
     なお、本件要領の「標準地単価一覧表」によれば、上記6の雑種地の単価として2種類があるところ、ほ場整備地区で農地が荒廃した雑種地が1平方メートル当たり○○○○円、それ以外の雑種地が1平方メートル当たり○○○○円である。

(2) 検討

  • イ 法令解釈
    • (イ) 登録免許税法第10条第1項に規定する不動産の価額
       登録免許税法第10条第1項は、不動産の登記の場合における課税標準たる不動産の価額について、当該登記の時における不動産の価額による旨規定しているところ、当該登記の時における不動産の価額とは、当該登記の時における不動産の客観的交換価値、すなわち時価であると解される。
    • (ロ) 登録免許税法附則第7条に規定する台帳価格
       登録免許税法第10条第1項の課税標準たる不動産の価額について、同法附則第7条は、当分の間、台帳価格を基礎として政令で定める価額によることができる旨規定しているが、これは、登録免許税が、登記の時に特別の手続を要せずに納付すべき税額が確定するいわゆる自動確定の租税であることに鑑み、不動産の登記に係る登録免許税の課税標準の額も、登記の時における当該不動産の価額に基づいて算出することとしたものであるが、他方で、登記の時における不動産の客観的な価額を評価することは容易でなく、登記の都度、登記官において個々の不動産の価額を評価することは実際的でないばかりか、不動産の価額に関する評価が関係者によって多岐に分かれるおそれがあることから、課税の公平・納税者の便宜等を考慮して、台帳価格のある不動産の場合には、専らその台帳価格によって登録免許税の課税標準の額を算出することとしたものである。
    • (ハ) 登録免許税法施行令附則第3項に規定する台帳価格のない不動産の価額
      • A 台帳価格のない不動産について、当該不動産に類似する不動産で台帳価格のあるものの当該台帳価格に100分の100を乗じて計算した金額を基礎として、当該不動産の価額を算出することとした趣旨は、台帳価格のない不動産についても、飽くまで台帳価格に依拠してその価額を求めることにより、台帳価格のある場合とない場合とで、課税の公平や価額の均衡を図ることにあると解される。そして、このような同項の趣旨に照らすと、同項所定の「当該不動産に類似する不動産」とは、当該不動産と価額の均衡が図られる近傍類似の不動産を意味するものというべきであり、当該類似性の有無は、価額の均衡が図られる場合の諸事情である、不動産の形状、地積、間口、奥行き、利用状況及び接道状況、土地利用に係る行政上の規制等の内容等を比較して判断すべきであると解される。
      • B 一方、台帳価格のない不動産について類似する不動産が存在しない場合又は類似する不動産が把握できない場合には、他の方法により求めた登記の時の価額を課税標準たる不動産の価額(時価)とするものと解するのが相当と認められる。ただし、登録免許税における不動産の課税標準の額は、登録免許税法附則第7条及びこれを受けた登録免許税法施行令附則第3項に規定するとおり、不動産の台帳価格を基礎としているのであり、固定資産課税台帳には、固定資産評価基準によって決定された価格を登録するものとされていることからすると、台帳価格のない不動産について、固定資産評価基準によってその価額を算出し、その算出した価額が不動産の時価を表さないといえるような特段の事情がない限り、当該価額をもって登録免許税の課税標準たる不動産の価額と解するのも、上記(ロ)で述べた、登録免許税の課税標準たる不動産の価額を台帳価格に基づいて求めることとしている理由にかなうものとして相当であると認められる。
  • ロ 本件登記官認定額について
    • (イ) 本件各土地には、前記1の(3)のハのとおり、登録免許税法施行令附則第3項第1号に規定する基準日である平成27年12月31日現在において、台帳価格がなかったことから、本件各土地の課税標準たる不動産の価額は、同附則第3項の規定により、本件登記の嘱託の日において本件各土地に類似する不動産の台帳価格を基礎として登記機関が認定した価額によることができる。
    • (ロ) d市e町長は、上記(1)のホのとおり、本件各土地の現況がいずれも宅地であるものとし、本件標準地の価格を本件各土地に類似する不動産の台帳価格とした上で、本件各土地の奥行き等の補正をして1平方メートル当たりの価格(本件仮証明書の評価額)を算出し、これを受けて、本件登記官は、当該価格に本件各土地の地積を乗じて、本件登記官認定額を算出したものと認められる。
       しかしながら、本件各土地の本件登記の時における現況は、前記1の(3)のイ及び上記(1)のイないしハの各事実並びに前記1の(2)のホの定めに照らせば、いずれも市街化調整区域内の雑種地であると認めるのが相当である。
       これに対し、上記(1)のニのとおり、本件標準地の現況は宅地であり、本件各土地とは現況が異なることに加えて、前記1の(3)のイ及び上記(1)のニの各事実によれば、本件各土地を別件土地によって区分された区画ごとにみても、本件各土地を個別にみても、本件標準地と本件各土地とでは、地積、間口、奥行き及び形状が大きく異なると認められることも併せ考慮すると、本件標準地が、本件各土地に類似する不動産であるとは認められない。
    • (ハ) そうすると、本件各土地と類似性が認められない本件標準地の台帳価格が、本件各土地に類似する不動産の台帳価格であるとはいえないから、d市e町長が当該台帳価格に一定の補正を加えて算出した本件仮証明書の1平方メートル当たりの評価額に本件各土地の地積を乗じて算出された本件登記官認定額についても、登録免許税法施行令附則第3項に規定する登記機関認定額として適正なものとはいえない。
  • ハ 請求人の主張する課税標準たる本件各土地の価額について
     請求人は、本件登記に係る登録免許税の課税標準とすべき価額は、本件各土地に係る平成29年度の台帳価格や、別件登記に係る別件土地の価額を基礎として算出した価額とすべきである旨主張する。
     しかしながら、本件登記における基準日は平成27年12月31日であるから、これと評価時点が異なる本件各土地の平成29年度の台帳価格や、評価時点及び評価対象が異なる別件登記の際に算出された別件土地の価額を基礎として算出すべきとする請求人の主張はいずれも採用できない。
  • ニ 当審判所が認定する本件各土地の価額について
    • (イ) 上記ロ及びハのとおり、本件各土地の価額について、本件登記官認定額及び請求人の主張する価額は、いずれも採用することができない。また、当審判所において調査した結果によれば、本件各土地の周辺には、本件各土地と形状、地積、間口、奥行き、利用状況及び接道状況等が類似する土地は存在しない。このような場合、上記イの(ハ)のBのとおり、固定資産評価基準によってその価額を算出することも、その価額が不動産の時価を表さないなどの特段の事情がない限りにおいて相当と認められることから、当審判所において本件各土地の価額を算出すると、次のとおりとなる。
    • (ロ) 固定資産評価基準では、土地の評価上の地目は現況によるものとし(固定資産評価基準第1章第1節一)、雑種地の評価については、その雑種地の利用状況が、ゴルフ場等用地及び鉄軌道用地であるものを除き、売買実例方式(売買実例地の売買価額から求めた正常価格に比凖して、評価対象地の価額を求める方法)又は近傍地比凖方式により求めることとしている(固定資産評価基準第1章第10節《雑種地》一《雑種地の評価》)ところ、d市e町が定めた本件要領はこれを具体化したものと認められ、当審判所においても相当であると認められる。
    • (ハ) 本件要領は、上記(1)のヘのとおり、市街化調整区域内の雑種地について、その現況により、1ないし6の雑種地に区分し、6の雑種地はその雑種地の存する地区ごとに1平方メートル当たりの単価を定めている。そして、本件各土地の現況は、前記1の(3)のイ及び上記(1)のイないしハのとおり、市街化調整区域内の特定の用途に供されていない未利用の雑種地であり、本件要領の区分に基づけば、本件要領に定める6の雑種地に該当し、本件各土地は、ほ場整備地区に該当しないことから、その単価は1平方メートル当たり○○○○円となる。
    • (ニ) そうすると、本件要領に定める本件各土地の存する地区の平成27年12月31日現在の1平方メートル当たりの単価○○○○円に、本件各土地の地積(合計○○平方メートル)を乗じて算出した○○○○円を、登録免許税の課税標準たる不動産の価額とすることが相当といえる。
       以上によれば、本件登記に係る登録免許税の課税標準の額は、本件各土地の登記の時の価額(○○○○円)から1,000円未満を切り捨てた○○○○円と認めるのが相当である。
    • (ホ) したがって、本件登記官認定額のうち、○○○○円を超える部分については、本件各土地の価額として過大であると認められる。

(3) 本件通知処分の適法性について

上記(2)のニの(ニ)のとおり、本件登記に係る登録免許税の課税標準の額は○○○○円となる。そして、これを基に、租税特別措置法第72条《土地の売買による所有権の移転登記等の税率の軽減》の規定により本件登記に係る登録免許税の額を算出すると、○○○○円(100円未満切捨て)となり、これと請求人が既に納付した○○○○円との差額である○○○○円については、登録免許税の課税標準又は税額の計算が国税に関する法令の規定に従っていなかったものに当たり、過誤納と認められる。
 したがって、本件通知処分は違法である。

(4) 結論

よって、審査請求には理由があるから、本件通知処分の全部を取り消すこととする。

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