(平成30年9月3日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、平成28年中に賃貸用の不動産を取得した審査請求人(以下「請求人」という。)が、当該不動産の販売を代理した法人の従業員により作成された平成27年分の所得税等の確定申告書等を提出したところ、原処分庁が、請求人が平成27年中に当該不動産を取得したかのように装った確定申告書等を当該従業員らに作成させ、それらを提出したとして、所得税等の重加算税の賦課決定処分を行ったのに対し、請求人が、当該確定申告書等は当該従業員らが独断で作成したものであり、請求人に仮装行為はないなどとして、当該賦課決定処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令の要旨

国税通則法(平成28年法律第15号による改正前のもの。以下「通則法」という。)第68条《重加算税》第1項は、通則法第65条《過少申告加算税》第1項の規定に該当する場合において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に100分の35の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する旨規定している。

(3) 基礎事実

当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

  • イ 請求人の職業
     請求人は、○○に勤務する会社員である。
  • ロ 不動産の売主等の概要
    • (イ) F社は、不動産の売買等を目的とする法人である。
    • (ロ) G社は、宅地建物取引業等を目的とする法人であり、平成27年及び平成28年において、F社から、同社が行うマンションの分譲販売の代理人として、顧客の勧誘から契約の締結に至るまでの手続の一切を受任していた。
    • (ハ) G社の営業担当者であったHは、F社のマンションの分譲販売について、顧客の勧誘等を行っていた。
  • ハ 不動産の取得に至る経緯
    • (イ) かねてからマンションの購入による不動産投資に興味を持っていた請求人は、勤務先の先輩からHを紹介され、平成27年12月頃に同人と面談し、同人から、マンションに関するパンフレット、不動産投資による予想収支表等を示された上で、おおむね次のような説明を受けた。
      • A 請求人は、自己資金を準備する必要はなく、全て銀行からの融資によりマンションを購入することができる。
         また、マンションの購入、賃貸に必要な登記費用等は全てG社が負担するため、請求人は、これらの資金を準備する必要がなく、銀行から多額の融資を受ける必要はあるが、購入したマンションをG社が借り上げて毎月一定額の賃料を請求人に支払うため、融資に伴う毎月の返済資金を心配する必要もない。
         さらに、マンションの購入から10年後にG社が当該マンションを買い取るため、請求人は、これにより銀行からの融資を完済することができる。
      • B 請求人は、購入したマンションの賃貸に係る必要経費を控除することで不動産所得が赤字になれば、給与から徴収された税金の還付を受けることができ、税金の還付申告のための書類一式の作成もG社が代行するため、申告手続の手間や金銭的な負担はない。
    • (ロ) 請求人は、上記(イ)のHの説明を信用し、d市e町○−○に所在する「Jマンション」の○号室、○号室、○号室及び○号室(以下、これらを併せて「本件各不動産」という。)を投資目的で購入することを決意した。
  • ニ 本件各不動産に係る売買契約の締結等
    • (イ) 請求人は、平成28年1月28日、G社の従業員であったK及びL銀行○○支店の融資担当者と面談し、請求人を買主、F社を売主、G社を売主代理人として、売買代金の全額の支払を所有権の移転及び物件の引渡しの条件とする旨の本件各不動産に係る売買契約(以下「本件各売買契約」という。)を締結するとともに、請求人を貸主、G社を借主として、賃貸借開始日を同日とし、毎月の賃料の支払を翌月25日とする旨の本件各不動産に係る建物賃貸借契約(本件各売買契約と併せて、以下「本件各売買契約等」という。)を締結した。
    • (ロ) また、請求人は、本件各売買契約等の締結に併せて、請求人を借主、L銀行を貸主、融資の実行希望日を平成28年1月29日とする金銭消費貸借契約を締結し、本件各不動産を購入するための資金の借入れの手続を行った。
  • ホ 本件各売買契約に基づく売買代金の支払等
    • (イ) 請求人は、平成28年1月29日、F社に対し、上記ニの(ロ)の借入れの手続によって融資を受けた借入金を原資に、本件各売買契約に基づく売買代金の全額を支払い、F社から本件各不動産の引渡しを受けた。
    • (ロ) 請求人は、平成28年1月29日、本件各不動産について、同日の売買を登記原因とする所有権移転登記の手続をした。
  • ヘ 請求人の確定申告書等の作成等
    • (イ) Hは、G社の経理課長であったMに対し、請求人の本件各不動産の取得時期及び賃貸開始時期を平成27年に前倒しして、請求人の平成27年分の所得税及び復興特別所得税(以下、これらを併せて「所得税等」という。)の確定申告書並びに不動産所得に係る収支内訳書を作成するよう指示又は依頼した。
       Mは、請求人が本件各不動産を取得したのは平成28年1月であることを知りつつも、Hからの上記指示又は依頼に従い、別表1の「確定申告」欄及び別表2−1から別表2−4までのとおり、本件各不動産の取得時期及び賃貸開始時期をいずれも平成27年12月とする請求人の平成27年分の所得税等の確定申告書及び不動産所得に係る収支内訳書(当該確定申告書と併せて、以下「本件申告書等」という。)を作成し、これらをHに交付した。
    • (ロ) Hは、平成28年4月頃、請求人に対し、請求人の勤務先を宛所として、本件申告書等のほか、本件申告書等に押印の上、原処分庁へ提出するよう教示する旨の書面等を同封した封書を郵送した。

(4) 審査請求に至る経緯

  • イ 請求人は、本件申告書等にそれぞれ押印した上で、平成28年5月20日、これらを原処分庁に提出した。
  • ロ 原処分庁は、平成29年7月3日付で、別表1の「更正処分等」欄のとおり、請求人の平成27年分の所得税等に係る更正処分及び重加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」という。)をした。
  • ハ 請求人は、本件賦課決定処分を不服として、平成29年9月29日に審査請求をした。

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2 争点

G社の従業員が本件申告書等を作成し、請求人が本件申告書等に押印して原処分庁に提出したこと(以下、これら一連の行為を併せて「本件各行為」という。)は、通則法第68条第1項の賦課要件を満たすか否か。

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3 争点についての主張

原処分庁 請求人
(1) 請求人は、Hに対し、本件各不動産の取得時期を平成27年に前倒しして確定申告を行うことを本件各売買契約の条件として提示を行い、その要請を受けた同人がMに指示し、同人が本件申告書等を作成した。
 そして、請求人は、本件申告書等に自ら押印し、原処分庁へ提出しているところ、請求人がG社の従業員らに虚偽の内容の本件申告書等を作成させたことは、通則法第68条第1項に規定する仮装に該当する。
(1) 本件申告書等の作成は、G社の従業員らが請求人に説明することなく独断で行ったものである。
 なお、請求人は、Hに対して、本件各売買契約の条件として、本件各不動産の取得時期を平成27年に前倒しして確定申告を行うことを要請などしていない。
(2) 仮に上記(1)の事実が認められないとしても、本件各売買契約等は、平成28年1月に締結されたのであるから、請求人、H及びMは、請求人が平成27年に本件各不動産を取得等した事実がないにもかかわらず、意思を通じた上、Mは、本件各不動産の取得時期等を平成27年12月と偽った内容の本件申告書等を作成し、請求人は、こうして作成された虚偽の内容の本件申告書等に押印し、原処分庁に提出して所得税等の還付申告に及んだのであるから、本件各行為は、一連のものとして、通則法第68条第1項に規定する「仮装し、その仮装したところに基づき納税申告書を提出した」場合に該当する。 (2) 上記(1)のとおり、本件申告書等の作成は、G社の従業員らが請求人に説明することなく独断で行ったものであり、また、後記(3)のとおり、G社の従業員らによる行為は請求人の行為と同視することができるものではないから、請求人に「仮装」の行為はない。
(3) 請求人は、G社に対し、本件申告書等の作成を包括的に委任したのであるから、G社は、請求人の本件申告書等の作成の履行補助者又は受任者である。
 そして、請求人は、以下のとおり、履行補助者又は受任者であるG社について、選任・監督上の注意義務を尽くさず、隠ぺい、仮装行為を防止する義務を怠ったのであるから、G社(M)による虚偽の内容の本件申告書等の作成行為を請求人の行為と同視し得るものとし、請求人に対し、重加算税が賦課される。
  • イ 請求人は、G社がどのようにして本件申告書等を作成し、どのような理由で所得税等が還付されるかという肝心な点について確認せず、還付口座の指定等を行うのみで、本件申告書等の作成を包括的に一任した。
  • ロ 請求人は、給与所得者であるが、○○という役職に就いていたことからすれば、確定申告に関する知識は十分にあるし、また、契約書等の作成にも精通している立場にあるといえることから、請求人が、何も確認することなく、本件各売買契約等に係る契約書や本件申告書等に押印するはずがなく、平成27年に本件各不動産を購入していないことを認識し、平成27年分の所得税等の確定申告書の提出義務がないにもかかわらず、還付を受ける税額まで記載された本件申告書等に押印し、提出したことからすれば、本件申告書等の内容が虚偽であることを認識し、又は、容易に認識し得たはずであるが必要な確認を怠り、さらに、過少申告を防止する措置も講じなかった。
(3) 受任者が不正をした場合に、納税者自身が重加算税の制裁を受けるのは、納税者自身が受任者に不正を指示した場合に限られるべきであるところ、請求人は、G社が作成した本件申告書等について、事情を把握せず、Hに促されるまま、本件申告書等に真実が記載されていると思い込み、本件申告書等に押印し、提出したにすぎない。
 虚偽の内容の本件申告書等が作成されたことについて、請求人に落ち度はなく、受任者により不正がなされた場合であっても、請求人が受任者に対して不正を指示した事実はないのであるから、不正な申告に対する制裁を受けるべきではない。
 したがって、G社の従業員らによる行為は請求人の行為と同視することができるものではない。

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4 当審判所の判断

(1) 法令解釈

通則法第68条第1項に規定する重加算税の制度は、納税者が過少申告をするにつき隠ぺい又は仮装という不正手段を用いていた場合に、過少申告加算税よりも重い行政上の制裁を課すことによって、悪質な納税義務違反の発生を防止し、もって申告納税制度による適正な徴税の実現を確保しようとするものである。
 そして、通則法第68条第1項は、「納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し」と規定し、隠ぺいし、又は仮装する行為(以下、これらを併せて「隠ぺい仮装行為」という。)の主体を納税者としているのであって、本来的には、納税者自身による隠ぺい仮装行為の防止を企図したものと解される。
 しかし、納税者以外の者が隠ぺい仮装行為を行った場合であっても、それが納税者本人の行為と同視することができるときには、形式的にそれが納税者自身の行為でないというだけで重加算税の賦課が許されないとすると、重加算税制度の趣旨及び目的を没却することになる。
 したがって、納税者以外の者が隠ぺい仮装行為を行った場合であっても、それが納税者本人の行為と同視することができる場合には、納税者本人に対して重加算税を賦課することができると解するのが相当である。

(2) 認定事実

請求人提出資料、原処分関係資料並びに請求人の当審判所に対する答述その他当審判所の調査及び審理の結果によれば、次の事実が認められる。

  • イ 本件各売買契約等締結前の請求人とHの応答内容等について
    • (イ) Hは、上記1の(3)のハの(イ)の面談の際、請求人に対し、本件各不動産の取得時期が平成28年1月であっても、平成27年分の所得税等の還付申告が可能である旨、所得税法上の取扱いに反する説明をしたが、請求人は、Hの当該説明に全く疑問を抱くこともなく、そのようなものかと理解した。
       なお、Hは、請求人に対し、G社が本件各不動産の取得時期や賃貸開始時期を偽って本件申告書等を作成することや、還付される所得税等の具体的な時期や金額等については、一切説明しなかった。
    • (ロ) また、請求人は、上記(イ)の還付申告によって還付される金額や時期に興味を抱くこともなく、申告書類を作成する手間や時間を省くため、上記1の(3)のハの(イ)のBのHの説明に従い、還付申告のための書類一式の作成をG社に委ねることとした。
  • ロ 本件申告書等の提出に至る経緯等について
    • (イ) 請求人は、平成28年4月頃、Hから勤務先に郵送された上記1の(3)のヘの(ロ)の封書を受領した。
       請求人が受領した封書には、本件申告書等のほかに、原処分庁へ本件申告書等を郵送するための封筒と、本件申告書等に押印の上、原処分庁へ提出するよう教示する旨の書面が同封されていた。
       しかし、請求人は、平成28年4月に○○となり、繁忙な時期であったため、本件申告書等の内容を確認することもなく、受領した封書を勤務先に放置していた。
    • (ロ) その後、請求人は、Hから本件申告書等の提出を促され、平成28年5月20日頃、本件申告書等の記載内容を確認しないまま、上記(イ)の教示に従って、本件申告書等の各初葉に既に記載されていた氏名の横に自ら押印し、Hから受領した封筒を使用して、これらを原処分庁に提出した。
  • ハ 調査時の状況について
     請求人は、平成27年分の所得税等について、原処分庁所属の調査担当職員(以下「本件調査担当者」という。)の調査を受け、その調査の際、本件調査担当者から指摘されたことにより、平成28年中に本件各不動産を取得したにもかかわらず、平成27年分の所得税等の還付を受けるために本件申告書等を提出したことが違法であることを初めて理解した。

(3) 当てはめ

  • イ 請求人は、上記1の(3)のハの(イ)及び上記(2)のイのとおり、Hとの間の本件各不動産に係る売買交渉において、本件各不動産の取得時期が平成28年1月であっても平成27年分の所得税等の還付申告が可能である旨の説明を受け、還付申告のための書類一式の作成をG社に委任し、その後、上記1の(3)のヘ及び上記(2)のロのとおり、事実と異なる本件各不動産の取得時期及び賃貸開始時期等が記載された本件申告書等を同人から受領し、これらに自ら押印して原処分庁へ提出することにより、虚偽の内容の還付請求申告書を提出したものと認められる。
     しかしながら、請求人は、上記(2)のイの(イ)のとおり、Hから、平成27年分の所得税等の還付申告が可能である旨の説明を受け、これに対して全く疑問を抱くこともなく、そのようなものかと理解したというのであるから、単に所得税法の知識が不足していたというほかなく、Hに対して虚偽の内容の申告書等の作成を持ち掛けたなどと認められないことはもとより、当該説明を受けたことをもって、同人との間で不正な申告をすることを共謀したものと認めることもできない。
  • ロ もっとも、請求人が、本件申告書等において、本件各不動産の取得時期等につき事実と異なる記載があることを認識し、又はそれを予想することができ、これを事前に防止ないし是正する措置を講ずる余地があったにもかかわらず、何らの措置を講ずることもなくこれらを提出していたような場合には、G社の従業員による本件申告書等の作成行為を請求人の行為と同視することができると認めるのが相当である。
     しかしながら、請求人は、上記(2)のロのとおり、本件申告書等に自ら押印して原処分庁へ提出した事実は認められるものの、本件申告書等の受領から提出に至るまでの間に、本件申告書等の記載内容を確認した事実を認めることはできない上、上記イのとおり、還付申告が可能である旨のHの説明に疑問を抱くこともなかったのであるから、請求人をして、G社の従業員が虚偽の内容の本件申告書等を作成した行為を追認したと認められないことはもとより、本件申告書等に事実と異なる内容が記載されていることを認識していたとか、それを予想することができたと認めることもできない。
     むしろ、請求人が、上記(2)のハのとおり、本件調査担当者の指摘を受けて初めて、本件申告書等を提出した行為が違法であると理解したことも併せ鑑みると、請求人は、Hから受領した本件申告書等に何ら疑問を差し挟むこともなく、これらを適正なものと誤認し、同人から促されるまま、本件申告書等を提出したにすぎないと認められる。
  • ハ 以上のことからすれば、G社の従業員が本件申告書等を作成した行為は、請求人の行為と同視することはできないから、本件各行為は、通則法第68条第1項の賦課要件を満たさないといわざるを得ない。

(4) 原処分庁の主張について

  • イ 原処分庁は、上記3の「原処分庁」欄の(1)のとおり、請求人がHに対し、本件各不動産の取得時期を平成27年に前倒しした申告書の作成を本件各売買契約の条件として提示し、G社の従業員らに虚偽の内容の本件申告書等を作成させた旨主張し、本件においては、Hが、本件調査担当者に対して原処分庁の上記主張に沿う申述をした事実が認められる。
     しかしながら、Hは、上記申述をした後、本件調査担当者に対し、請求人は本件申告書等について何も知らず、G社が勝手に手続を行った旨申述した事実も認められ、当審判所に対しては、G社の従業員が勝手に気を利かせて本件申告書等を作成したようである旨の答述を行っているなど、Hの上記各申述及び答述は、一貫性に欠ける上、これら申述等が変遷したことにつき合理的な説明をするわけでもなく、その信用性を認めることはできない。
     そして、請求人が、Hに対して虚偽の内容の申告書等の作成を持ち掛けた事実が認められないことは、上記(3)のイのとおりであるから、この点に関する原処分庁の主張には理由がない。
  • ロ 原処分庁は、上記3の「原処分庁」欄の(2)のとおり、請求人、H及びMは、請求人が平成27年に本件各不動産を取得等した事実がないにもかかわらず、意思を通じた上、Mが本件申告書等を作成し、請求人はこれらに押印して原処分庁に提出した旨主張するところ、かかる主張は、要するに、本件申告書等は上記三者の共謀に基づき提出されたものである旨述べるものである。
     しかしながら、請求人がHとの間で不正な申告を共謀したと認められないことは、上記(3)のイのとおりであり、請求人、H及びMの間における共謀の事実を認めるに足りる証拠もないから、原処分庁の主張は理由がないといわざるを得ない。
  • ハ 原処分庁は、上記3の「原処分庁」欄の(3)のとおり、請求人が本件申告書等の作成の履行補助者又は受任者であるG社に対し、どのような理由で所得税等が還付されるかという肝心な点について確認せず、また、本件申告書等の内容が虚偽であることを認識し、又は容易に認識し得たはずであるにもかかわらず、本件申告書等の確認を怠って過少申告を防止する措置を講じなかったのであって、G社に対する選任・監督上の注意義務を尽くさず、隠ぺい仮装行為を防止する義務を怠ったのであるから、G社の従業員らによる本件申告書等の作成行為は、請求人の行為と同視し得る旨主張する。
     しかしながら、G社の従業員による本件申告書等の作成行為を請求人の行為と同視することができないことは、上記(3)のとおりであり、請求人がG社に対して還付理由を確認しなかったこと及び本件申告書等の確認を怠ったことのみをもって、当該従業員の行為を請求人の行為と同視し得ると評価することは困難といわざるを得ない。
     したがって、この点に関する原処分庁の主張にも理由がない。

(5) 本件賦課決定処分の適法性について

上記(3)のとおり、G社の従業員による本件申告書等の作成行為を請求人の行為と同視することはできないから、請求人につき、通則法第68条第1項所定の重加算税の賦課要件を満たさない。
 他方、請求人につき、通則法第65条第1項所定の要件を充足するところ、請求人の平成27年分の所得税等の更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が、更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」があるとは認められない。
 そして、本件賦課決定処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められず、当審判所において、請求人が納付すべき過少申告加算税相当額を計算すると、別紙「取消額等計算書」の「4 課税標準等及び税額等の計算」の「裁決後の額」欄の44欄のとおりであると認められる。
 したがって、本件賦課決定処分のうち、上記過少申告加算税相当額を超える部分は違法である。

(6) 結論

よって、審査請求には理由があるから、原処分の一部を取り消すこととする。

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