(平成30年11月14日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、原処分庁が、審査請求人(以下「請求人」という。)に売上計上漏れがあったなどとして、法人税等の各更正処分等をしたのに対し、請求人が、売上計上漏れとした金額には誤りがあること、また、従業員らの横領行為による損失の額を当該行為の日の属する事業年度の損金の額に算入すべきであるなどとして、当該各更正処分等の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令

  • イ 法人税法(平成30年法律第7号による改正前のもの。以下同じ。)第22条《各事業年度の所得の金額の計算》第2項は、内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とすると規定している。
  • ロ 法人税法第22条第3項は、内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、1当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額(第1号)、2上記1に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額(第2号)及び3当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの(第3号)とする旨規定している。
  • ハ 法人税法第22条第4項は、同条第2項に規定する当該事業年度の収益の額及び同条第3項各号に掲げる額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとすると規定している。
  • ニ 国税通則法(平成28年法律第15号による改正前のもの。以下「通則法」という。)第68条《重加算税》第1項は、通則法第65条《過少申告加算税》第1項の規定に該当する場合において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に100分の35の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する旨規定している。

(3) 基礎事実

当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

  • イ 請求人は、平成○年○月○日に設立され、F弁護士を唯一の社員とする○○であり、消費者金融業者等に対するいわゆる過払金の返還請求及び債務整理等に関する事業(以下「債務整理事業」という。)並びに債務整理事業以外の事件に係る弁護士業務(以下「一般事件業務」という。)を行っている。
  • ロ Hは、平成15年4月頃から請求人の事務局長として勤務し、平成27年3月頃に退職した。
  • ハ Jは、平成20年頃から請求人の債務整理事業に関与することになった。
  • ニ 請求人の平成23年1月1日から平成23年12月31日まで、平成24年1月1日から平成24年12月31日まで及び平成25年1月1日から平成25年12月31日までの各事業年度(以下、順次「平成23年12月期」、「平成24年12月期」及び「平成25年12月期」といい、これらを併せて「本件各事業年度」という。)の間、請求人においてH及びJは同一グループ内で債務整理事業を行っていた。
  • ホ 上記ニのH及びJのグループは、本件各事業年度において、主にK銀行e支店の請求人名義の普通預金口座(口座番号○○○○。以下「本件e口座」という。)及び同行f支店の請求人名義の普通預金口座(口座番号○○○○。以下「本件f口座」という。)等を使用して債務整理事業に係る依頼者からの報酬や、消費者金融業者等に対する過払金の返還金等(以下「過払返還金等」という。)の管理を行っていた。
  • ヘ 請求人は、本件e口座及び本件f口座を、請求人の確定決算の基礎となった帳簿に計上していなかった。
  • ト H及びJは、平成23年12月期において、F弁護士に無断で又は虚偽の説明をすることにより、本件e口座及び本件f口座から金員を出金し詐取した(以下、当該詐取を「横領」といい、当該横領による損失を「横領損失」という。)。

(4) 審査請求に至る経緯

  • イ 請求人は、本件各事業年度の法人税について、青色の確定申告書に別表1の「確定申告」欄のとおりそれぞれ記載して、いずれも法定申告期限までに申告した。
  • ロ 請求人は、平成23年1月1日から平成23年12月31日まで、平成24年1月1日から平成24年12月31日まで及び平成25年1月1日から平成25年12月31日までの各課税期間(以下、順次「平成23年12月課税期間」、「平成24年12月課税期間」及び「平成25年12月課税期間」といい、これらを併せて「本件各課税期間」という。)の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)について、消費税等の確定申告書に別表2の「確定申告」欄のとおりそれぞれ記載して、いずれも法定申告期限までに申告した。
  • ハ 請求人は、平成26年4月23日、平成25年12月期の法人税について、別表1の「修正申告」欄のとおりとする修正申告書を提出した。
  • ニ ○○は、平成27年3月5日から、請求人に対する○○を行った。
  • ホ 原処分庁は、○○により収集された資料に基づいて調査を行った。また、原処分庁は、当該調査の結果に基づき、請求人に対し、平成29年7月31日付で、別表1及び別表2の各「更正処分等」欄のとおりの本件各事業年度の法人税の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分並びに本件各課税期間の消費税等の各更正処分並びに平成23年12月課税期間及び平成24年12月課税期間の消費税等に係る過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分をした。
  • ヘ 請求人は、平成29年8月7日、上記ホの各処分並びに平成25年12月課税期間の消費税等の過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分を不服として、再調査請求をした。
  • ト 再調査審理庁は、平成29年11月27日付で、平成25年12月課税期間の消費税等の更正処分に対する再調査請求については、納付すべき税額を減少させる処分であることを理由とし、また、過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分に対する再調査請求については処分が行われていないことを理由としていずれも却下し、その他の処分に対する再調査の請求をいずれも棄却する再調査決定をした。
  • チ 請求人は、平成29年12月4日、再調査決定を経た上記ホの各処分に不服があるとして審査請求をした。
     請求人は、審査請求において、平成23年12月期については、Mの一般事件業務に係る報酬金額7,290,000円(以下「本件報酬1」という。)は過大である旨、平成25年12月期については、1N社の一般事件業務に係る報酬金額500,000円(以下「本件報酬2」という。)及びPの一般事件業務に係る報酬金額1,040,000円(以下「本件報酬3」といい、本件報酬1及び本件報酬2と併せて、以下「本件各報酬」という。)は過大である旨、2Q弁護士に対して有する債権56,000,000円(以下「本件債権」という。)について貸倒損失が計上漏れである旨及び3請求人がHから借り入れた10,000,000円(以下「本件借入金」という。)に係る支払利息が計上漏れである旨などを主張している。
  • リ 原処分庁は、平成30年2月15日付で、平成29年7月31日付の平成24年12月期の法人税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分を、更正の理由の不備を理由に、取り消した。
  • ヌ 原処分庁は、平成30年2月15日付で、改めて更正の理由を付記した上で、別表1の「再更正処分等」欄のとおりの平成24年12月期の法人税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分をした。
  • ル 請求人は、平成30年2月22日、上記ヌの平成24年12月期の法人税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分に不服があるとして、審査請求をした。
  • ヲ 請求人は、平成30年4月23日、上記リのとおり、平成29年7月31日付の平成24年12月期の法人税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分が取り消されたことから、上記チの審査請求のうち、これらの処分に係る部分の審査請求を取り下げた。
  • ワ 上記チ及びルのとおり、複数の審査請求書による審査請求がされたので、これらの審査請求について併合審理をする(以下、上記ホのうち平成23年12月期及び平成25年12月期の法人税の各更正処分と上記ヌの平成24年12月期の法人税の更正処分を併せて「本件法人税各更正処分」といい、上記ホのうち平成23年12月期及び平成25年12月期の法人税に係る重加算税の各賦課決定処分と上記ヌの平成24年12月期の法人税に係る重加算税の賦課決定処分を併せて「本件法人税各賦課決定処分」といい、上記ホのうち平成23年12月課税期間及び平成24年12月課税期間の消費税等の各更正処分を「本件消費税等各更正処分」といい、上記ホの平成23年12月課税期間及び平成24年12月課税期間の消費税等に係る過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分を「本件消費税等各賦課決定処分」という。)。

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2 平成25年12月課税期間の消費税等の更正処分について

 審査請求の対象となる処分は、請求人の権利又は利益を侵害するものでなければならず、したがって、例えば、納付すべき税額を減額する更正処分は、請求人に利益な処分であって審査請求の利益が認められないから不適法となるところ、請求人は、平成25年12月課税期間の消費税等の更正処分について、その全部の取消しを求めているが、当該更正処分は、別表2のとおり、平成25年12月課税期間の納付すべき税額を減額させるものであり、請求人の権利又は利益を侵害するものとはいえず、その取消しを求める利益はない。
 以上のことから、平成25年12月課税期間の消費税等の更正処分に対する審査請求は、請求の利益を欠く不適法なものである。
 そこで、以下においては、原処分のうち、本件法人税各更正処分、本件法人税各賦課決定処分、本件消費税等各更正処分及び本件消費税等各賦課決定処分に係る審査請求について審理する。

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3 争点

  • (1) 本件各報酬は、平成23年12月期及び平成25年12月期の益金の額並びに平成23年12月課税期間の課税資産の譲渡等の対価の額に過大に算入されているか否か(争点1)。
  • (2) 横領損失の金額及びこれに対応する損害賠償請求権の取扱い(争点2)。
  • (3) 本件債権の額は、貸倒損失として平成25年12月期の損金の額に算入されるか否か(争点3)。
  • (4) 本件借入金に係る支払利息の額は、平成25年12月期の損金の額に算入されるか否か(争点4)。
  • (5) 通則法第68条第1項に規定する事実の隠ぺい又は仮装の有無(争点5)。

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4 争点についての主張

(1) 争点1(本件各報酬は、平成23年12月期及び平成25年12月期の益金の額並びに平成23年12月課税期間の課税資産の譲渡等の対価の額に過大に算入されているか否か。)について

原処分庁 請求人
  原処分庁が認定した平成23年12月期及び平成25年12月期の一般事件業務の売上高は、請求人が保管していた顧客との委任契約書及び請求書を基に算出したものであるところ、請求人は、請求人が主張する一般事件業務の収入の計算等が正しいとされる具体的な証拠を提出するものではなく、原処分に係る調査においても、本件各報酬について、発生していない又は契約が解除された等の事実は認められない。
  • イ 本件報酬1は、○○の平成24年2月9日付調停により決定した3,150,000円である。
  • ロ 本件報酬2は、着手金の支払がなく、N社との委任契約が途中解約されたことから零円である。
  • ハ 本件報酬3のうち、1上告審に係る着手金200,000円は、その支払がなく、平成25年10月頃に委任契約を解除し、裁判所に対しても辞任届を提出していることから零円であり、2婚姻費用請求事件に係る報酬金300,000円は、その支払がなかったことから零円であり、3S家庭裁判所○○支部への出張に係る日当旅費540,000円は、委任契約上、当該日当旅費を免除する旨合意しており、その支払もなかったことから零円である。

(2) 争点2(横領損失の金額及びこれに対応する損害賠償請求権の取扱い。)について

原処分庁 請求人
  • イ Jが管理していた請求人名義の預金口座からの現金出金の状況、当該出金された資金の一部がH及びJ名義の各個人口座に入金されていること並びにH及びJが平成23年中にHが出金した合計70,700,000円についていずれも横領した事実を認める旨の申述をしていることからすると、H及びJが横領した金額は70,700,000円である。
     また、請求人が横領損失と主張する金額のうち471,014,499円は、Jが請求人の債務整理事業に従事する際に合意したJの取り分を、請求人がJに支払ったものであり、横領損失には当たらない。
     したがって、横領損失の金額は70,700,000円である。
  • ロ 横領に係る出金をしたのが請求人の事務局長であったHであり、H及びJは、F弁護士の下、請求人の業務として債務整理事業に従事していたことから、請求人は、当該横領により損失を被ると同時に、H及びJに対する損害賠償請求権を有することとなる。
     したがって、H及びJが横領した金額70,700,000円は、平成23年12月期の損金の額に算入されると同時に、同額の損害賠償請求権が益金の額に算入される。
     仮に、H及びJによって横領された金額が請求人の主張する金額であったとしても、横領損失が損金の額に算入されるのと同時に、同額の損害賠償請求権が益金の額に算入されることから、結果として原処分後の所得金額及び税額に誤りはない。
  • イ H及びJは、原処分庁が横領損失と認定する金額70,700,000円以外に、本件e口座から、キャッシュカード、通帳、本件e口座の届出印及び偽造した普通預金払戻請求書を冒用して、平成23年12月期に152,620,000円及び平成24年12月期に59,320,000円の出金又は他行送金を行い、合計211,940,000円を横領した。
     また、請求人は、請求人の債務整理事業の売上金額の約44%にもなる471,014,499円をJに対し支払手数料として支払うことに合意したことはなく、Jから源泉税の控除や領収書の交付も受けていないところ、H及びJは、本件f口座から、通帳及び偽造した普通預金払戻請求書を冒用して、平成23年12月期に210,700,516円、平成24年12月期に124,722,247円及び平成25年12月期に135,591,736円の出金を行い、合計471,014,499円を横領した。
     したがって、横領損失の金額は753,654,499円である。
  • ロ 債務整理事業に係る依頼者への返還金等が不足することになったことから、H及びJが、上記横領の発覚を防ぐために、自ら不正出金した金員の一部を本件f口座に戻していることから明らかなとおり、H及びJが横領した金額の原資は、請求人の債務整理事業の売上げだけではなく、依頼者からの預り金(約2億円)を含むものであるから、上記横領損失に対応する損害賠償請求権は、本件各事業年度の益金の額に算入されない。

(3) 争点3(本件債権の額は、貸倒損失として平成25年12月期の損金の額に算入されるか否か。)について

請求人 原処分庁
  請求人とQ弁護士は、平成17年頃、請求人がQ弁護士から、債務整理事件を引き継ぐとともに、当該債務整理事件に係る依頼者からの預り金及び消費者金融業者等からの過払返還金等を月額1,000,000円で5年間(合計60,000,000円)の分割払を受けることで合意した。しかし、Q弁護士は、当初4回分(合計4,000,000円)を支払って以降、残額56,000,000円の支払を怠っており、また、平成25年10月頃にQ弁護士から当該残額については支払不能である旨の回答があったことから、平成25年11月1日に56,000,000円の貸倒れが発生した。
 したがって、本件債権の額は、貸倒損失として平成25年12月期の損金の額に算入される。
  本件債権は、請求人の総勘定元帳に資産として計上されていたかは明らかではない。また、本件債権は、平成25年12月期において損金経理されていないことから、法人税基本通達9−6−2《回収不能の金銭債権の貸倒れ》及び同通達9−6−3《一定期間取引停止後弁済がない場合等の貸倒れ》の適用はない。さらに、本件債権について、法人税基本通達9−6−1《金銭債権の全部又は一部の切捨てをした場合の貸倒れ》、同通達9−6−2及び同通達9−6−3に該当する事実も認められない。
 したがって、本件債権の額は、貸倒損失として平成25年12月期の損金の額に算入されない。

(4) 争点4(本件借入金に係る支払利息の額は、平成25年12月期の損金の額に算入されるか否か。)について

請求人 原処分庁
  請求人は、平成24年12月頃、Hから本件借入金を月利○%との約定で借り入れ、本件借入金に係る利息として、平成25年12月期に6,000,000円を支払った。
 したがって、本件借入金に係る支払利息6,000,000円は、平成25年12月期の損金の額に算入される。
  請求人は、本件借入金及び利息の支払義務が発生していることを証する具体的な証拠を提出せず、また、Hが請求人に金銭を貸し付けたことはない旨申述していることからすると、本件借入金及び本件借入金に係る支払利息が発生した事実は認められない。
 したがって、本件借入金に係る支払利息の額は、平成25年12月期の損金の額に算入されない。

(5) 争点5(通則法第68条第1項に規定する事実の隠ぺい又は仮装の有無。)について

原処分庁 請求人
  請求人は、計上すべき収入金額を除外し、又は、帳簿への虚偽記載及び帳簿書類の改ざんを行い、本件各事業年度の法人税及び本件各課税期間の消費税等の確定申告書を提出した。
 したがって、通則法第68条第1項に規定する事実の隠ぺい又は仮装があったと認められる。
  請求人において、その収入を隠すとか、不正に申告をした事実はない。
 したがって、通則法第68条第1項に規定する事実の隠ぺい又は仮装があったと認められない。

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5 当審判所の判断

(1) 争点1(本件各報酬は、平成23年12月期及び平成25年12月期の益金の額並びに平成23年12月課税期間の課税資産の譲渡等の対価の額に過大に算入されているか否か。)について

  • イ 法令解釈
     法人税法上、内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資本等取引以外の取引に係る収益の額とするものとされ(法人税法第22条第2項)、当該事業年度の収益の額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算すべきものとされている(同条第4項)。したがって、ある収益をどの事業年度に計上すべきかは、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従うべきであり、これによれば、収益は、その実現があった時、すなわち、その収入すべき権利が確定したときの属する年度の益金に計上すべきものと解される(最高裁平成5年11月25日第一小法廷判決・民集47巻9号5278頁参照)。また、消費税法上も、同様に、その収入すべき権利が確定したときの属する課税期間に課税資産の譲渡等があったとすべきものと解される。
  • ロ 認定事実
     請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
    • (イ) 本件報酬1に係る契約関係等
      • A 請求人は、平成23年8月10日、Mに対して、同年2月16日付委任契約書に係る委任契約(以下「本件M委任契約」という。)に基づく事務が終了したとして本件M委任契約に基づく報酬金7,290,000円を請求した。
      • B 上記Aについて、請求人及びMは、平成24年2月9日、○○において、本件M委任契約に基づく報酬金の額を3,150,000円とする旨の紛議調停を成立させた。
    • (ロ) 本件報酬2に係る契約関係等
       請求人は、N社との間で、平成25年8月9日、着手金(以下「本件N社着手金」という。)の額を500,000円として、事件等の処理に関する委任契約を締結した。
    • (ハ) 本件報酬3に係る契約関係等
      • A 請求人は、Pとの間で、平成22年11月23日に、PのTに対する離婚等請求訴訟等に係る委任契約を締結しており、当該委任契約に係る委任契約書には要旨次の記載がある。
        • (A) 報酬金は事件等の処理が終了したときに成功の程度に応じて支払う。
        • (B) 日当は免除する。
      • B 請求人は、平成25年9月19日、Pに対して、離婚等請求訴訟等について、次のとおり、合計1,040,000円を請求する旨の請求書を送付した。
        • (A) 着手金 200,000円(上告審について)
        • (B) 報酬金 300,000円(婚姻費用請求事件について)
        • (C) 日 当 540,000円(U地方裁判所について)
      • C Pは、平成25年9月24日、被上告人をTとして、上告状兼上告受理申立書をV高等裁判所に提出しており、当該申立書には、Pの代理人としてF弁護士の記載がある。
      • D F弁護士は、平成25年11月19日、V高等裁判所に対して、上記Cの事件について、Pの代理人を辞任する旨の記載がある辞任届を提出した。
  • ハ 当てはめ及び請求人の主張について
    • (イ) 本件報酬1について
      • A 請求人は、上記ロの(イ)のAのとおり、平成23年8月10日、Mに対し、委任事務処理が終了したとして本件M委任契約に基づく報酬金7,290,000円を請求していることから、平成23年12月期にMに対する報酬金の支払請求権が確定したものと認められる。上記イのとおり、収益はその収入すべき権利が確定したときの属する事業年度の益金に計上されることから、Mに係る報酬金7,290,000円については、平成23年12月期の益金の額及び平成23年12月課税期間の課税資産の譲渡等の対価の額に算入される。
         その一方で、上記ロの(イ)のBのとおり、本件M委任契約では弁護士報酬は7,290,000円とされていたが3,150,000円であることで平成24年2月9日に紛議調停が成立したことから、その差額4,140,000円については、調停が成立し減額されることが確定した平成24年12月期の損金の額及び平成24年12月課税期間の売上げに係る対価の返還等の額に算入されることになる。
      • B 請求人の主張について
         請求人は、上記4の(1)の「請求人」欄のイのとおり、Mに係る弁護士報酬金は、平成24年2月9日に○○により3,150,000円に減額されたため、平成23年12月期の売上高は3,150,000円である旨主張する。
         しかしながら、上記イのとおり、収益はその収入すべき権利が確定したときの属する事業年度の益金の額に算入すべきであり、一度確定したとして計上した売上げについて翌事業年度に契約変更等により減額があったとしても、当該契約変更等は、翌事業年度に売上げの減額が発生した原因となるもので、収入すべき権利が確定した事業年度に遡って収益の額が変わるものではない。また、消費税に関しても同様に課税期間の課税資産の譲渡等の額が変わるものではない。したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
    • (ロ) 本件報酬2について
      • A 弁護士報酬のうち着手金については、委任事務処理の結果に成功不成功があるものについて、その結果のいかんにかかわらず受任時に受けるべき委任事務処理の対価であることから、委任契約締結時に報酬支払請求権が確定しているものと認められる。請求人は、上記ロの(ロ)のとおり、平成25年8月9日、本件N社着手金の額を500,000円と定めた委任契約を締結していることから、同日において本件N社着手金の支払請求権が確定している。したがって、本件N社着手金は、その収入すべき権利が確定した平成25年12月期の益金の額に算入される。
      • B 請求人の主張について
         請求人は、上記4の(1)の「請求人」欄のロのとおり、N社との委任契約は解除された旨主張する。しかしながら、上記Aのとおり、本件N社着手金については、委任契約を締結した平成25年8月9日において、その支払請求権が確定していることから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
    • (ハ) 本件報酬3について
      • A 請求人は、上記ロの(ハ)のBのとおり、平成25年9月19日、Pに対し上告審についての着手金200,000円に係る請求書を送付していることから、同日までに、Pに対して着手金200,000円の支払を請求する権利が確定しているものと認められる。したがって、Pとの間の着手金は、収入すべき権利が確定した平成25年12月期の益金の額に算入される。
      • B 請求人は、上記ロの(ハ)のBのとおり、平成25年9月19日、婚姻費用請求事件に係る委任事務処理が終了したとして、Pに対し報酬金300,000円に係る請求書を送付していることから、同日までに当該報酬金の支払請求権が確定したものと認められる。したがって、当該報酬金についても、その収入すべき権利が確定した平成25年12月期の益金の額に算入される。
      • C 請求人は、上記ロの(ハ)のBのとおり、平成25年9月19日、Pに対し日当540,000円に係る請求書を送付している。しかしながら、同(ハ)のAの(B)のとおり、請求人とPとの間で取り交わされた平成22年11月23日付委任契約書において、日当は免除する旨定められていることから、請求人は、Pに対して日当を請求する権利を有していたとは認められない。したがって、平成25年9月19日付の請求書に記載されている日当540,000円については、平成25年12月期の益金の額に算入されない。
      • D 請求人の主張について
         請求人は、上記4の(1)の「請求人」欄のハのとおり、上記Aの着手金については、その支払がなく、平成25年10月頃に委任契約を解除し、裁判所に対しても辞任届を提出していることから零円である旨主張し、上記Bの報酬金については、Pから実際に支払われていないことから、平成25年12月期の益金の額に算入されない旨主張する。
         しかしながら、上記A及びBのとおり、当該着手金及び報酬金については、その収入すべき権利が確定していることから、請求人の主張には理由がない。

(2) 争点2(横領損失の金額及びこれに対応する損害賠償請求権の取扱い。)について

  • イ 法令解釈
    • (イ) 上記(1)のイのとおり、収益は、その実現があった時、すなわち、その収入すべき権利が確定したときの属する事業年度の益金に計上すべきものと解される。
       そして、横領行為によって損害を被った法人は、横領者に対して法人がその被った損害に相当する金額の不法行為による損害賠償請求権を取得することになるところ、不法行為による損害賠償請求権については、通常、不法行為による損失が発生した時には同額の損害賠償請求権も発生、確定しているから、これらを同時に損金及び益金に計上するのが原則であると考えられる。
    • (ロ) もっとも、不法行為による損害賠償請求権については、例えば加害者を知ることが困難であるとか、権利内容を把握することが困難であるなどのため、直ちには権利行使(権利の実現)を期待することができないような場合があり得るところである。このような場合には、損害賠償請求権が法的には発生しているといえるが、いまだ権利実現の可能性を客観的に認識することができるとは必ずしもいえないから、損害賠償請求権の額を損失が発生した事業年度の益金の額に算入しないとする例外的な取扱いをすることも許されると解され、当該事業年度に、損失については損金計上するが、損害賠償請求権は益金に計上しない取扱いをすることが許されることになる。
       ただし、その判断は、税負担の公平や法的安定性の観点からして客観的にされるべきであり、通常人を基準として、権利の存在、内容等を把握し得ず、権利行使が期待できないといえるような客観的状況にあったかどうかという観点から判断すべきであると解される。
  • ロ 認定事実
     請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
    • (イ) F弁護士は、請求人の債務整理事業において、債務者と委任契約を締結する時の面談を行うほか、消費者金融業者等との和解契約締結における和解の了承及び最終的な判断を行っていた。
    • (ロ) 請求人と消費者金融業者等との間で作成された各和解契約書(以下「本件各和解契約書」という。)には、全てF弁護士自ら押印していた。
    • (ハ) 本件各和解契約書には、過払返還金等の振込先となる請求人の銀行口座(銀行名、支店名及び口座番号)が記載されており、その中には本件e口座又は本件f口座が記載されているものもあった。
    • (二) F弁護士は、本件各事業年度において、本件e口座及び本件f口座の預金通帳の管理をHに任せており、これらの口座の取引内容を確認したことはなかった。
  • ハ 検討
    • (イ) 上記イの(イ)によれば、請求人は、本件各事業年度の法人税の所得金額の計算上、横領損失の額を損金の額に算入すると同時に、当該損失額と同額の損害賠償請求権の額を本件各事業年度において益金の額に算入すべきである。
    • (ロ) もっとも、上記イの(ロ)のとおり、通常人を基準として、権利の存在、内容等を把握し得ず、権利行使が期待できないといえるような客観的状況にあった場合には、例外的に損害賠償請求権の額を損失が発生した事業年度の益金の額に算入しない取扱いをすることが許容される場合がある。
       本件についてみると、上記ロの(イ)のとおり、請求人の社員であるF弁護士は、本件各和解契約書の作成に係る和解の了承に関する判断を行い、同ロの(ロ)のとおり、本件各和解契約書には、全てF弁護士自ら押印しており、同ロの(ハ)のとおり、本件各和解契約書には、過払返還金等の振込先口座として利用されていた本件e口座及び本件f口座が記載されていた。そうすると、F弁護士が、本件各和解契約書に記載されていた本件e口座及び本件f口座の入出金内容を確認すれば、当該各口座に債務整理事業に係る消費者金融業者等からの多額の過払返還金等が入金されていたこと及び当該各口座から多額の出金があることを容易に把握することができ、さらに、当該各口座の管理を任せていたHにその入出金等の理由を確認すれば、H及びJによって行われていた横領を把握することは可能であった。結局、請求人がこれらの事実を把握することができなかったのは、上記ロの(二)のとおり、F弁護士が本件e口座及び本件f口座の預金通帳の管理をHに任せきりにし、請求人が自らの事業で使用している預金口座等の状況の確認を怠っていたことに起因するものといわざるを得ない。したがって、H及びJによる横領による損害賠償請求権については、通常人を基準として、権利の存在や内容等を把握し得ず、権利行使が期待できないような客観的状況があったということはできない。
    • (ハ) 以上のとおり、H及びJによる横領によって被った請求人の損失額と同額の損害賠償請求権については、原則どおり、損失が発生した事業年度の益金の額に算入される。
       また、横領損失の額についてみると、仮に、本件各事業年度において、請求人が主張する金額の横領損失が発生していたとしても、上記のとおり、当該各事業年度において、同時にこれに対応する同額の損害賠償請求権が益金の額に算入されることになることから、本件各事業年度の所得金額は変動しないことになる。
  • ニ 請求人の主張について
     請求人は、上記4の(2)の「請求人」欄のとおり、本件各事業年度における横領損失の金額は合計753,654,499円である旨、H及びJが横領した金額の原資は、請求人の債務整理事業の売上げだけではなく、依頼者からの預り金を含むものであるから、H及びJに対する損害賠償請求権は本件各事業年度の益金の額に算入されるものではない旨主張する。
     しかしながら、仮に、横領損失の金額が請求人の主張する金額であったとしても、上記ハの(ハ)のとおり、本件各事業年度の所得金額や法人税の額は変動するものではなく、原処分の適法性に影響を与えるものではない。
     また、仮に、H及びJが横領した金額の原資に依頼者からの預り金が含まれていたとしても、H及びJに対する損害賠償請求権が発生し確定して、当該損害賠償請求権は請求人に帰属することになり、当該損害賠償請求権は本件各事業年度の益金の額に算入されるのであるから、請求人の主張には理由がない。

(3) 争点3(本件債権の額は、貸倒損失として平成25年12月期の損金の額に算入されるか否か。)について

  • イ 認定事実
     請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
    • (イ) 請求人の平成25年12月期の総勘定元帳には、本件債権の額は資産として計上されていない。
    • (ロ) 請求人の平成25年12月期の総勘定元帳には、本件債権の額を貸倒損失として損金経理した旨の記載はない。
  • ロ 検討及び請求人の主張について
     上記イのとおり、請求人が主張する本件債権の額については、請求人の平成25年12月期の総勘定元帳において資産として計上されておらず、かつ、本件債権の額を貸倒損失として損金経理した旨の記載はなく、請求人がこの点について合理的な説明をしないことからすると、本件債権の存在を認めることはできないから、本件債権の額は貸倒損失として平成25年12月期の損金の額に算入することはできない。
     この点について、請求人は、上記4の(3)の「請求人」欄のとおり、平成25年10月頃にQ弁護士から当該残額については支払不能である旨の回答があった旨主張するが、請求人は、それを裏付ける証拠を何ら提出せず、当審判所の調査によってもそれを認めることはできなかった。したがって、請求人の主張には理由がない。

(4) 争点4(本件借入金に係る支払利息の額は、平成25年12月期の損金の額に算入されるか否か。)について

  • イ 認定事実
     請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
    • (イ) 本件借入金について、請求人とHとの間で作成された金銭消費貸借契約書等の書面は存在しない。
    • (ロ) 請求人の総勘定元帳等には、本件借入金及び本件借入金に係る支払利息の計上はない。
  • ロ 検討及び請求人の主張について
     上記イのとおり、請求人が主張する本件借入金については、金銭消費貸借契約書等の書面は存在せず、かつ、請求人の総勘定元帳等に本件借入金及び本件借入金に係る支払利息の計上がないことからすると、請求人とHとの間で本件借入金及び本件借入金に係る支払利息が発生していたとは認められないため、本件借入金に係る支払利息の額は、平成25年12月期の損金の額に算入することはできない。
     この点について、請求人は、上記4の(4)の「請求人」欄のとおり、Hから本件借入金を借り入れ、本件借入金に係る利息として6,000,000円をHに支払った旨主張するが、本件借入金及び本件借入金に係る支払利息に関する客観的な証拠を提出していないことから、請求人の主張には理由がない。

(5) 争点5(通則法第68条第1項に規定する事実の隠ぺい又は仮装の有無。)について

  • イ 法令解釈
     通則法第68条第1項に規定する重加算税は、通則法第65条に規定する過少申告加算税を課すべき納税義務違反が事実の隠ぺい又は仮装という不正な方法に基づいて行われた場合に、違反者に対して課せられる行政上の措置であって、ここでいう事実の隠ぺいとは、売上除外、証拠書類の廃棄等、課税要件に該当する事実の全部又は一部を隠すことをいい、事実の仮装とは、架空仕入れ、架空請求書(契約書)の作成、他人名義の利用等、存在しない課税要件事実が存在するように見せかけることをいうと解するのが相当である。
  • ロ 認定事実
     請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
    • (イ) F弁護士は、債務整理事業に係る売上げについて、その大半を、確定申告書に記載されているK銀行○○支店の普通預金口座(口座番号○○○○)及びX銀行○○支店の普通預金口座(口座番号○○○○。以下、これらの口座を併せて「本件公表口座」という。)以外の本件e口座及び本件f口座を含む4つの請求人名義の預金口座に入金させていた。
    • (ロ) F弁護士は、本件各事業年度における請求人の関与税理士であるY(以下「Y税理士」という。)に、確定申告書の作成に当たって、本件公表口座以外に請求人で使用している預金口座がないか確認されたにもかかわらず、Y税理士に対して本件公表口座以外の4つの請求人名義の預金口座が存在することを秘匿していた。
    • (ハ) F弁護士は、本件各事業年度の請求人の決算の際に、請求人の債務整理事業に係る売上げとして、正しい金額でないと認識した上で、実際の売上げよりも過少な金額を記載した収入明細書を作成して、Y税理士へ報告していた。
  • ハ 当てはめ及び請求人の主張について
     請求人の唯一の社員であるF弁護士は、上記ロのとおり、債務整理事業に係る売上げの回収に当たって請求人の確定決算の基礎となった帳簿に計上されていない請求人名義の預金口座を使用し、Y税理士に対して本件公表口座以外の請求人名義の預金口座の存在を秘匿し、債務整理事業に係る売上げについて、正しい金額でないと認識した上で、実際の売上げよりも過少な金額のみを報告することにより売上除外を行っていたのであるから、これらの行為は通則法第68条第1項に規定する隠ぺい行為に該当する。
     この点について、請求人は、上記4の(5)の「請求人」欄のとおり、請求人には収入を隠すとか、不正に申告をした事実はない旨主張する。しかしながら、売上げを除外し申告を行った事実が認められる点については上記のとおりであり、請求人の主張には理由がない。

(6) 本件法人税各更正処分の適法性について

上記(1)のハの(イ)のAのとおり、本件各報酬については、本件報酬1のうち平成24年2月9日に減額された4,140,000円については平成24年12月期の損金の額に算入されることとなり、同ハの(ハ)のCのとおり、本件報酬3のうち日当540,000円については平成25年12月期の益金の額に算入されないこととなる。また、上記(2)のハの(ハ)のとおり、横領損失については、横領損失の額を損金の額に算入すると同時に、横領損失の額と同額の損害賠償請求権の額が益金の額に算入されることから、横領損失の額にかかわらず所得金額は変動しないこととなる。さらに、上記(3)のロ及び上記(4)のロのとおり、本件債権の額及び本件借入金に係る支払利息の額については、平成25年12月期の損金の額に算入されない。
 なお、本件法人税各更正処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
 以上に基づいて、請求人の本件各事業年度の法人税の所得金額及び納付すべき税額を計算すると、平成23年12月期は別表1の「更正処分等」欄の額と同額となり、平成24年12月期及び平成25年12月期の所得金額及び納付すべき税額は、別表3記載のとおり、いずれも原処分の額を下回る。
 したがって、平成23年12月期の法人税の更正処分は適法であるが、平成24年12月期及び平成25年12月期については、当該各事業年度の法人税の更正処分の一部を別紙1及び別紙2の「取消額等計算書」のとおり、いずれも取り消すべきである。

(7) 本件消費税等各更正処分の適法性について

上記(1)のハの(イ)のAのとおり、本件報酬1のうち平成24年2月9日に減額された4,140,000円(税込金額)については平成24年12月課税期間に売上げに係る対価の返還等があったものとして当該減額分に係る消費税額を控除するのが相当である。
 なお、本件消費税等各更正処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
 以上に基づいて、請求人の平成23年12月課税期間及び平成24年12月課税期間の消費税等の課税標準額及び納付すべき税額を計算すると、平成23年12月課税期間は別表2の「更正処分等」欄の額と同額となり、平成24年12月課税期間の課税標準額及び納付すべき税額は、別表4記載のとおり、原処分の額を下回る。
 したがって、平成23年12月課税期間の消費税等の更正処分は適法であるが、平成24年12月課税期間については、当該課税期間の消費税等の更正処分の一部を別紙3の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。

(8) 本件法人税各賦課決定処分及び本件消費税等各賦課決定処分の適法性について

上記(5)のハのとおり、請求人につき通則法第68条第1項に規定する事実の隠ぺい又は仮装はあったと認められ、重加算税の賦課要件を満たしている。
 当審判所において加算税の額を計算すると、平成23年12月期及び平成25年12月期の法人税並びに平成23年課税期間の消費税等に係る重加算税については、別表1及び別表2の各「更正処分等」欄の額と同額となり、平成23年12月期及び平成25年12月期の法人税並びに平成23年課税期間の消費税等に係る重加算税の各賦課決定処分はいずれも適法である。
 しかしながら、上記(6)及び(7)のとおり、平成24年12月期の法人税に係る重加算税の額及び平成24年12月課税期間の消費税等に係る過少申告加算税の額は、別表3及び別表4の各「審判所認定額」欄のとおり、いずれも原処分の額を下回る。
 したがって、平成24年12月期の法人税及び平成24年12月課税期間の消費税等に係る加算税についての各賦課決定処分は、別紙1及び別紙3の「取消額等計算書」のとおり、その一部を取り消すべきである。

(9) 結論

よって、原処分の6に対する審査請求は不適法であるから却下することとし、原処分の2、3及び5に対する審査請求は理由があるからその一部をいずれも取り消すこととする。

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