(平成31年3月26日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、原処分庁が、審査請求人(以下「請求人」という。)は一般乗用旅客自動車運送事業を営んでいた納税者E社から事業を譲り受けた特殊関係者に当たるなどとして、請求人に対し第二次納税義務の納付告知処分を行ったところ、請求人が、請求人は当該納税者の特殊関係者には当たらず、また、同一とみられる場所において事業を営んでいないとして、原処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令等

  • イ 国税徴収法(平成28年法律第15号による改正前のもの。以下「徴収法」という。)第38条《事業を譲り受けた特殊関係者の第二次納税義務》は、納税者がその親族その他納税者と特殊な関係のある個人又は同族会社で政令で定めるもの(以下「特殊関係者」という。)に事業を譲渡し、かつ、その譲受人が同一とみられる場所において同一又は類似の事業を営んでいる場合において、その納税者が当該事業に係る国税を滞納し、その国税につき滞納処分を執行してもなおその徴収すべき額に不足する(以下「徴収不足」という。)と認められるときは、その譲渡が滞納に係る国税の法定納期限より1年以上前にされている場合を除き、その譲受人は、譲受財産を限度として、その滞納に係る国税の第二次納税義務を負う旨規定している。
  • ロ 国税徴収法施行令(平成28年政令第157号による改正前のもの。以下「徴収法施行令」という。)第13条《納税者の特殊関係者の範囲》第1項は、次の者は、徴収法第38条に規定する特殊関係者に当たる旨規定している。
    • (イ) 納税者を判定の基礎として法人税法第2条《定義》第10号に規定する会社に該当する会社(以下「同族会社」という。)に該当する会社(第6号)
    • (ロ) 納税者が同族会社である場合において、その判定の基礎となった株主等(これらの者を判定の基礎として同族会社に該当する他の会社を含む。)の全部又は一部を判定の基礎として同族会社に該当する他の会社(第7号)
  • ハ 徴収法施行令第13条第2項は、徴収法第38条の規定を適用する場合において、特殊関係者であるかどうかの判定は、納税者がその事業を譲渡した時の現況による旨規定している。
  • ニ 法人税法第2条第10号は、同族会社とは、会社の株主等の3人以下がその会社の発行済株式の総数の100分の50を超える数の株式を有する場合等におけるその会社をいう旨規定している。
  • ホ 国税徴収法基本通達(平成29年3月3日付徴徴6−6ほか1課共同「『国税徴収法基本通達』の一部改正について(法令解釈通達)」による改正前のもの。以下「徴収法基本通達」という。)第38条関係10《同一とみられる場所》は、徴収法第38条の「同一とみられる場所」とは、同一の場所のほか、社会通念上同一の場所と認められる場所をいう旨定めている。
  • ヘ 徴収法基本通達第38条関係12《同一とみられる場所等の判定の時期》は、徴収法第38条の「同一とみられる場所において同一又は類似の事業を営んでいる」かどうかの判定は、納付通知書を発する時の現況による旨定めている。

(3) 基礎事実

当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

  • イ E社(以下「本件滞納法人」という。)は、本店所在地をa市b町○−○1として、一般乗用旅客自動車運送事業(以下「タクシー事業」という。)を営んでいた。
  • ロ 本件滞納法人は、平成28年7月○日、タクシー事業を○○しているF社との間で、本件滞納法人が子会社を設立し、本件滞納法人が保有するタクシー事業の営業権を当該子会社に譲渡した後、当該子会社の発行済株式の全部をF社又は同社が指定する者に譲渡することについて合意し、基本合意書を作成した。
  • ハ 上記ロの基本合意書に基づき、本件滞納法人が発起人となり、平成28年7月○日、商号をG社、本店所在地をb町○−○1として請求人が設立された。
     なお、設立に当たって、本件滞納法人は、請求人の発行済株式の全部を引き受け、請求人の代表取締役には、本件滞納法人の代表取締役であったHが就任した。
  • ニ 本件滞納法人と請求人は、平成28年7月20日、監督官庁の認可を得ることを条件として、本件滞納法人が保有するタクシー事業の営業権を同年9月1日に請求人に譲渡する旨の契約を締結した。
  • ホ 本件滞納法人と請求人は、平成28年8月3日、「一般乗用旅客自動車運送事業譲渡譲受認可申請書」をJ運輸局長に提出し、当該申請は、同月30日付の○○○○号「認可書」により、認可された。
  • ヘ 本件滞納法人は、平成28年9月1日、上記ニの契約及び上記ホの認可に基づき、タクシー事業を請求人に譲渡した(以下、この譲渡を「本件事業譲渡」という。)。なお、本件滞納法人は、同日において、請求人の発行済株式の全部を保有していた。
  • ト 平成28年10月3日に開催された請求人の臨時株主総会において、請求人の株式について本件滞納法人からF社の関係会社であるK社に譲渡することが承認されたことを受け、本件滞納法人は、同月4日、請求人の発行済株式の全部をK社に譲渡した(以下、この譲渡を「本件株式譲渡」という。)。
  • チ 請求人は、平成28年10月4日、商号をA社に変更するとともに、代表取締役には、K社の代表取締役であったBが就任し、Hは辞任した。
  • リ 本件滞納法人は、平成29年5月31日、同日を法定納期限とする平成28年4月1日から平成29年3月31日までの課税期間に係る消費税及び地方消費税について、納付税額を○○○○円とする確定申告書を原処分庁に提出した。
  • ヌ 請求人は、平成29年9月10日、本店所在地をa市b町○−○2に変更した。
  • ル 本件滞納法人は、平成29年12月○日、株主総会の決議により解散した。

(4) 審査請求に至る経緯

  • イ 原処分庁は、平成30年2月23日付で、請求人に対し、徴収法第38条の規定に基づき、本件滞納法人に係る別表1の滞納国税(以下「本件滞納国税」という。)について別表2の車両等を限度とする第二次納税義務を請求人が負うものとして、同法第32条《第二次納税義務の通則》第1項の規定に基づき、第二次納税義務の納付告知処分(以下「本件納付告知処分」という。)をした。
  • ロ 請求人は、平成30年4月2日、本件納付告知処分を不服として、再調査の請求をしたところ、再調査審理庁は、同月19日付で棄却の再調査決定をした。
  • ハ 請求人は、平成30年5月18日、再調査決定を経た後の本件納付告知処分に不服があるとして、審査請求をした。

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2 争点

(1) 請求人は、徴収法第38条に規定する本件滞納法人の事業を譲り受けた特殊関係者に該当するか否か(争点1)。

(2) 請求人は、徴収法第38条に規定する「同一とみられる場所」で事業を営んでいるか否か(争点2)。

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3 争点についての主張

(1) 争点1(請求人は、徴収法第38条に規定する本件滞納法人の事業を譲り受けた特殊関係者に該当するか否か。)について

原処分庁 請求人
  請求人は、以下の理由により、徴収法第38条に規定する本件滞納法人の事業を譲り受けた特殊関係者に該当する。   請求人は、以下の理由により、徴収法第38条に規定する本件滞納法人の事業を譲り受けた特殊関係者には該当しない。
  • イ 請求人は、本件滞納法人から平成28年9月1日にタクシー事業を譲り受けており、同時点において、請求人の発行済株式の全部を保有していた本件滞納法人を判定の基礎とする同族会社であった。
     なお、請求人は、平成28年10月4日にG社から商号を変更登記した法人であるところ、別の法人を設立するなど新たに異なる法人格を取得した事実はないことからすると、請求人とG社は同一の法人である。
  • イ 本件滞納法人の事業を譲り受けた本件株式譲渡前のG社(以下「本件株式譲渡前G社」という。)は、平成28年10月4日に本件株式譲渡により本件滞納法人との特殊関係が消滅した。そうすると、本件株式譲渡後のG社である請求人と、本件株式譲渡前G社とは、株主が全く異なり、別法人ということとなる。
     したがって、請求人は、本件滞納法人の事業を譲り受けていない。
  • ロ 徴収法第38条及び徴収法施行令第13条第2項の各規定からすると、請求人が本件滞納法人の特殊関係者に該当するか否かの判定は、本件事業譲渡時の現況によることとなり、請求人は、上記イのとおり、本件事業譲渡時において、徴収法施行令第13条第1項第6号の同族会社であると認められることから、徴収法第38条に規定する特殊関係者に該当する。
     なお、本件納付告知処分時において、請求人が本件滞納法人の特殊関係者に該当するか否かは、徴収法第38条の適用要件ではない。
  • ロ 仮に、請求人が事業を譲り受けたと考えたとしても、徴収法第38条及び徴収法基本通達第38条関係12の文言からすると、「事業を譲り受けた特殊関係者」と「同一の事業を営んでいる」者は、本件納付告知処分時において同一の者でなければならない。そして、徴収法施行令第13条第1項第7号には、納税者が同族会社の場合はその株主を判定の基礎とする旨、及び同条第2項には、同条第1項各号に該当するか否かの判定の時点は、納税者が事業を譲渡した時である旨規定されていることからすると、徴収法第38条の特殊関係者に該当するか否かは、請求人の本件納付告知処分時の株主構成を前提として、請求人が、本件事業譲渡時において、本件滞納法人の株主を判定の基礎として同族会社に該当したか否かにより判定すべきである。
     そうすると、本件納付告知処分時における請求人の株主はK社であるから、請求人は、本件事業譲渡時において、本件滞納法人の株主を判定の基礎とする同族会社ではなく、徴収法第38条に規定する特殊関係者には該当しない。

(2) 争点2(請求人は、徴収法第38条に規定する「同一とみられる場所」で事業を営んでいるか否か。)について

原処分庁 請求人
  以下のとおり、請求人は、同一とみられる場所で事業を営んでいる。   以下のとおり、請求人は、同一とみられる場所で事業を営んでいない。
  • イ 徴収法第38条の「同一とみられる場所」とは、同一の場所をいうほか、地理的には異なっている場合においても、社会通念上、事業の場所につき同一性が認められる場所が含まれると解されるところ、営業所及び車庫は、タクシー事業のために有機的一体として機能する財産を構成することから、事業を営んでいる一体の場所と解され、同一とみられる場所かどうかについては、これらを一体として判断すべきである。
  • イ 徴収法第38条に規定する「事業を営んでいる場所」とは、タクシー事業においては、道路運送法第5条《許可申請》第1項第3号に規定する営業所を指すと解するべきであり、車庫は営業所には含まれないから事業を営んでいる場所には当たらない。
     そうすると、請求人の営業所の所在地はb町○−○2であるのに対し、本件滞納法人の営業所の所在地はb町○−○1であるから、請求人は同一の場所で事業を営んでいるとはいえない。
  • ロ また、請求人は、本件滞納法人が車庫として使用していたb町○−○2に営業所を移転し、現在までタクシー事業を営んでおり、請求人の営業所は、本件滞納法人の営業所の所在地であるb町○−○1と道路を隔てて僅か42メートルの距離に位置することからすると、社会通念上、同一とみられる場所で事業を営んでいると認められる。
  • ロ また、b町○−○2とb町○−○1は、距離が僅か50メートル程度であったとしても、道路を隔てており、地理的にも状況的にも別の場所であるから、社会通念上同一の場所とも認められない。
  • ハ 仮に、車庫が事業を営んでいる場所に含まれるとしても、本件滞納法人がb町○−○2を営業所や車庫として使用していた実態はなく、同所では事業を営んでいないから、請求人は、同一の場所で事業を営んでいるとはいえない。

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4 当審判所の判断

(1) 認定事実

請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

  • イ 本件滞納法人は、本件事業譲渡時まで、b町○−○1を営業所、b町○−○2を車庫としてタクシー事業を営んでいた。
  • ロ 請求人は、本件事業譲渡後、本件滞納法人と同様にb町○−○1を営業所、b町○−○2を車庫としてタクシー事業を営んでいたが、平成29年8月頃、事業計画の変更により、b町○−○2を営業所及び車庫とした。また、本件納付告知処分時においても、b町○−○2を営業所及び車庫としてタクシー事業を営んでいた。
  • ハ b町○−○2とb町○−○1は、別図のとおり、県道d号線を挟んで斜め向かいに位置しており、これらは直線距離で42メートル離れている。
  • ニ 本件滞納法人は、本件納付告知処分時において、本件滞納国税につき徴収不足の状態であった
  • ホ 原処分庁が本件納付告知処分において請求人が負うべき第二次納税義務の限度とした別表2の車両等は、本件事業譲渡における本件滞納法人からの譲受財産である。
  • ヘ 道路運送法第5条第1項及び道路運送法施行規則第4条《事業計画》第8項は、タクシー事業の許可を受けようとする者は、営業区域、主たる事務所及び営業所の名称及び位置、自動車車庫の位置及び収容能力等を記載した事業計画等を国土交通大臣に提出しなければならない旨規定している。
  • ト J運輸局長が公示した平成○年○月○日付○○は、タクシー事業の許可申請事案等の審査の処理方針として、自動車車庫は、原則として営業所に併設するものとし、併設できない場合には、営業所から直線で2キロメートル以内の営業区域内にあって運行管理をはじめとする管理が十分可能であることを基準とする旨定めている。

(2) 争点1(請求人は、徴収法第38条に規定する本件滞納法人の事業を譲り受けた特殊関係者に該当するか否か。)について

  • イ 法令解釈
     徴収法第38条は、納税者が、滞納国税の法定納期限の1年前の日後に特殊関係者に事業を譲渡し、かつ、その譲受人が同一とみられる場所において同一又は類似の事業を営んでいる場合において、その納税者が当該事業に係る国税を滞納し、その国税につき徴収不足と認められるときは、その譲受人は、譲受財産を限度として、その滞納国税の第二次納税義務を負う旨規定している。
     同条の趣旨は、事業の譲渡が行われる時は、通常、その事業用資産だけでなくその事業に係る債務も事業の譲受人に移転されるので、譲渡人の債権者が当該事業譲渡によって不利益を受けることはないが、租税債務については私人間の合意によって譲受人に移転させることができないので、譲渡人の租税債権を譲受人から強制的に徴収することができなくなり、租税債権の確保に支障が生じることとなる一方、事業の譲渡に際しては、通常、譲受人から譲渡人に対して相応の対価が支払われるので、譲受人に対して譲渡人の国税についての第二次納税義務を負わせることが酷に過ぎることも考慮し、事業の譲受人が譲渡人の特殊関係者であり、その事業形態が譲渡前と同様である場合すなわち譲渡人と譲受人との間に親近性が強く、かつ、外形的に事業の同一性を有する場合に限り、その譲受人に二次的に譲渡人の国税についての納税義務を負わせ、租税債権の確保を図ることとしたものと解される。
  • ロ 検討
    • (イ) 徴収法施行令第13条第2項は、徴収法第38条の規定を適用する場合において、特殊関係者に該当するかどうかの判定は、納税者が事業を譲渡した時の現況による旨規定しているところ、請求人が特殊関係者に該当するかどうか、すなわち、徴収法施行令第13条第1項各号に掲げる者に該当するか否かの判定は、上記1の(3)のヘの本件事業譲渡の日である平成28年9月1日の現況によることとなる。
    • (ロ) そして、上記1の(3)のヘのとおり、平成28年9月1日において、本件滞納法人は、請求人の発行済株式の全部を保有する株主であるから、請求人は同族会社に該当し、徴収法施行令第13条第1項第6号に規定する「納税者を判定の基礎として同族会社に該当する会社」に該当する。
    • (ハ) したがって、上記(イ)及び(ロ)のとおり、請求人は、本件滞納法人から事業を譲り受け、かつ、本件事業譲渡時の現況において、本件滞納法人を判定の基礎として同族会社に該当する会社(徴収法施行令第13条第1項第6号)に該当するから、徴収法第38条に規定する事業を譲り受けた特殊関係者に該当する。
  • ハ 請求人の主張について
     請求人は、本件株式譲渡後のG社である請求人と本件株式譲渡前G社とは、株主が異なり別法人であるから、請求人は本件滞納法人の事業を譲り受けていない旨主張するが、徴収法及び徴収法施行令において、法人が株主変更の前後で各々別法人として取り扱われる旨の規定はなく、請求人が本件滞納法人から事業を譲り受けたことは明らかである。
     また、請求人は、特殊関係者に該当するか否かについては、本件納付告知処分時の株主構成を前提とし、本件滞納法人の株主を判定の基礎とすべきである旨を主張するが、徴収法第38条は、徴収法施行令第13条第1項各号のいずれかに該当すれば特殊関係者に該当する旨規定しているところ、本件において、請求人が同項第6号に規定する同族会社に該当することは上記ロのとおりであり、本件滞納法人の株主を判定の基礎とするか否かにかかわらず、請求人は特殊関係者に該当する。そして、上記イのとおり、徴収法第38条が第二次納税義務の対象を特殊関係者である場合に限ることとした趣旨は、事業の譲渡という事実に着目して、当該事業の譲渡により徴収に支障が生じうる租税債権を確保することと、事業の譲受人が当該事業の譲渡につき相応の対価を負担していることとの調和を図ったものであることからすれば、事業の譲受人が納税者の特殊関係者に該当するか否かは、徴収法施行令第13条第2項に規定するとおり、事業の譲渡時の現況、すなわち事業の譲渡時における株主構成を基準として判定すべきであるから、本件納付告知処分時の現況は特殊関係者の判定に影響を及ぼさない。
     その他、請求人が徴収法第38条に規定する事業を譲り受けた特殊関係者に該当することは、上記ロで説示したとおりであるから、請求人の主張はいずれも理由がない。

(3) 争点2(請求人は、徴収法第38条に規定する「同一とみられる場所」で事業を営んでいるか否か。)について

  • イ 法令解釈
     徴収法基本通達第38条関係10は、徴収法第38条の同一とみられる場所とは、同一の場所のほか、社会通念上同一の場所と認められる場所をいう旨定めているところ、上記(2)のイのとおり、同条の趣旨は、事業の譲受人の事業形態が譲渡前の譲渡人のそれと同様である場合、すなわち譲渡人と譲受人との間に外形的に事業の同一性を有する場合に限定して、事業の譲受人に、二次的に譲渡人の国税についての納税義務を負わせ、租税債権の確保を図ることとしたことに鑑みれば、当審判所においても、同通達の取扱いは相当であると認められる。
  • ロ 当てはめ
     上記(1)のイないしハのとおり、請求人は、本件納付告知処分時において、本件滞納法人が車庫として使用していたb町○−○2を営業所としてタクシー事業を営んでおり、同営業所は本件滞納法人の営業所とは地理的に異なった場所である。しかしながら、上記(1)のヘ及びトのとおり、タクシー事業における車庫は、その確保が事業許可の要件となっているだけでなく、その場所についても営業所と近接していなければならないという制限があるなど、営業所と相互に密接に関連付けて利用・管理され、有機的一体として機能する財産の一部であり、また、車庫に保管されている営業用車両が収益を生み出す基礎となるというタクシー事業の特質に鑑みると、車庫は、タクシー事業を営む者が事業活動を行っていくために、運行管理業務等を行う営業所と同視できる程度に重要かつ必要不可欠な場所であると認められる。
     加えて、別図のとおり、請求人の営業所は、本件滞納法人の営業所と、物理的に異なる場所とはいえ県道d号線を挟んだ斜め向かいに位置し、いずれも当該県道に面しているほか、直線距離で42メートルしか離れていないことも踏まえると、請求人の事業と本件滞納法人の事業は外形的に同一性を有するということができるから、請求人の事業は社会通念上同一の場所と認められる場所で営まれているものと認められる。
     以上によれば、請求人は、本件納付告知処分時において、徴収法第38条に規定する「同一とみられる場所」において事業を営んでいると認めるのが相当である。
  • ハ 請求人の主張について
     請求人は、事業を営んでいる場所とは道路運送法第5条第1項第3号に規定する営業所を指すものであり、車庫は営業所に含まれない旨主張するが、徴収法第38条の「同一とみられる場所」とは、外形的に事業の同一性を有するか否かという観点から、社会通念上同一の場所と認められる場所に当たるか否かを判断するのが相当であり、本件納付告知処分時において、請求人が同条の「同一とみられる場所」において事業を営んでいると認められることは、上記ロで説示したとおりである。
     また、請求人は、本件滞納法人がb町○−○2を営業所や車庫として使用していた実態はない旨主張するが、上記(1)のイのとおり、本件滞納法人はb町○−○2を車庫として使用していたことが認められる。
     したがって、請求人の主張はいずれも理由がない。

(4) 本件納付告知処分の適法性について

上記(2)のとおり、請求人は、本件事業譲渡時の現況において、徴収法第38条に規定する本件滞納法人の事業を譲り受けた特殊関係者に該当し、かつ、上記(3)のとおり、本件納付告知処分時において、本件滞納法人と同一とみられる場所において同一の事業を営んでいたものである。また、上記(1)のニのとおり、本件納付告知処分時において、本件滞納法人は本件滞納国税について徴収不足の状態であったと認められ、上記(1)のホのとおり、本件納付告知処分により請求人が負うべき第二次納税義務は譲受財産を限度とするものである。さらに、本件事業譲渡は、別表1の本件滞納国税の法定納期限より1年以上前にされたものではない。
 また、本件納付告知処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
 したがって、本件納付告知処分は適法である。

(5) 結論

よって、審査請求には理由がないから、これを棄却することとする。

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