(令和元年6月4日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、原処分庁が、相続により亡F4が納付すべき国税の納税義務を承継した亡F4相続財産の滞納国税を徴収するため、亡F4からその生前に不動産の贈与を受けていた審査請求人らに対し、それぞれ、国税徴収法に基づく第二次納税義務の納付告知処分を行ったところ、審査請求人らが、第二次納税義務者として納付すべき限度額の算定に誤りがあるとして、原処分の一部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令等

  • イ 国税徴収法(以下「徴収法」という。)第39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》は、滞納者の国税につき滞納処分を執行してもなおその徴収すべき額に不足すると認められる場合において、その不足すると認められることが、当該国税の法定納期限の1年前の日以後に、滞納者がその財産につき行った政令で定める無償又は著しく低い額の対価による譲渡、債務の免除その他第三者に利益を与える処分(以下「無償譲渡等の処分」という。)に基因すると認められるときは、これらの処分により権利を取得し、又は義務を免かれた者は、これらの処分により受けた利益が現に存する限度(これらの者がその処分の時にその滞納者の親族その他滞納者と特殊な関係のある個人又は同族会社で政令で定めるもの(以下「親族その他の特殊関係者」という。)であるときは、これらの処分により受けた利益の限度)において、その滞納に係る国税の第二次納税義務を負う旨規定している。
  • ロ 国税徴収法基本通達(昭和41年8月22日付徴徴4−13ほか国税庁長官通達。以下「徴収法基本通達」という。)第39条関係12《受けた利益が金銭以外のものである場合》(1)及び(6)は、無償譲渡等の処分により、滞納者から受けた利益が金銭以外のものである場合について、徴収法第39条の「利益が現に存する限度」の額は、受けたものがそのまま現存する場合には、納付通知書を発する時の現況による受けたものの価額を算定した額から、同(6)イ、ロ及びハに掲げる額を控除する旨定めており、当該控除をする額につき、同ロは、そのものの譲受けのために支払った費用及びこれに類するもののうち、そのものの譲受けと直接関係のあるものの額とする旨定めている。
  • ハ 徴収法基本通達第39条関係16《特殊関係者の場合の納税義務の範囲》(1)は、親族その他の特殊関係者の場合の徴収法第39条の「受けた利益」の額は、無償譲渡等の処分により滞納者から受けた利益が金銭以外のものであるときは、無償譲渡等の処分がされた時の現況によるそのものの価額から、徴収法基本通達第39条関係12(6)ロに掲げる額を控除した額を算定する旨定めている。

(3) 基礎事実及び審査請求に至る経緯

当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

  • イ 当事者等について
    • (イ) 審査請求人(以下「請求人」という。)F3は、亡F4(以下「本件贈与者」という。)の配偶者であり、請求人F1及び請求人F7は、請求人F3と本件贈与者との間の子である。また、請求人F2は、請求人F1の配偶者であり、請求人F5及び請求人F6は、請求人F1と請求人F2との間の子である(以下、請求人F3、請求人F1、請求人F7、請求人F2、請求人F5及び請求人F6を併せて「請求人ら」という。)。
    • (ロ) 本件贈与者は、国税の滞納者であったところ、原処分庁は、平成3年5月27日付で、その滞納国税について、国税通則法第43条《国税の徴収の所轄庁》○○の規定に基づき、H税務署長から徴収の引継ぎを受けた。
  • ロ 本件贈与者による贈与等について
    • (イ) 本件贈与者は、平成26年5月16日、別表1の順号1の土地(以下「本件土地1」といい、同表順号2から7までの各土地についても同様に表記する。)を請求人F3に贈与した。本件土地1については、平成26年5月20日付で当該贈与を原因とする所有権移転登記がされており、当該登記に係る登録免許税の額は○○○○円、本件土地1の取得に係る不動産取得税の額は○○○○円であった。
    • (ロ) 本件贈与者は、平成26年5月29日、本件土地2から5まで及び別表2の順号1の建物(以下「本件建物1」といい、同表順号2及び3の各建物についても同様に表記する。また、本件土地1から7まで及び本件建物1から3までを併せて「本件各不動産」という。)を請求人F7に贈与した。本件土地2から5まで及び本件建物1については、平成26年6月2日付で当該贈与を原因とする所有権移転登記がされており、当該登記に係る登録免許税の額は○○○○円、本件土地2から5までの取得に係る不動産取得税の額は○○○○円、本件建物1の取得に係る不動産取得税の額は○○○○円であった。
    • (ハ) 本件贈与者は、平成26年7月1日、本件建物2を請求人F7に贈与した。本件建物2については、平成26年7月2日付で当該贈与を原因とする所有権移転登記がされており、当該登記に係る登録免許税の額は○○○○円、本件建物2の取得に係る不動産取得税の額は○○○○円であった。
    • (ニ) 本件贈与者は、平成26年7月1日、本件建物3を請求人F1に贈与した。本件建物3については、平成26年8月8日付で当該贈与を原因とする所有権移転登記がされており、当該登記に係る登録免許税の額は○○○○円、本件建物3の取得に係る不動産取得税の額は○○○○円であった。
    • (ホ) 本件贈与者は、平成26年7月20日、本件土地6について、持分8分の1を請求人F1に、持分8分の1を請求人F2に、持分8分の6を請求人F3にそれぞれ贈与した。本件土地6については、平成26年7月23日付で当該贈与を原因とする所有権移転登記がされており、当該登記に係る登録免許税の額は○○○○円、本件土地6の取得に係る不動産取得税の額は○○○○円であった。
    • (へ) 本件贈与者は、平成26年7月20日、本件土地7について、持分8分の3を請求人F1に、持分8分の3を請求人F2に、持分8分の1を請求人F5に、持分8分の1を請求人F6にそれぞれ贈与した(以下、上記(イ)から(へ)までの各贈与を併せて「本件各贈与」という。)。本件土地7については、平成26年7月23日付で当該贈与を原因とする所有権移転がされており、当該登記に係る登録免許税の額は○○○○円、本件土地7の取得に係る不動産取得税の額は○○○○円であった。
    • (ト) 請求人F3は、上記(イ)及び(ホ)の各贈与を受けたとして、H税務署長に対し、納付すべき税額を○○○○円と記載した平成26年分贈与税の申告書を、法定申告期限までに提出した。
    • (チ) 請求人F2は、上記(ホ)及び(へ)の各贈与を受けたとして、H税務署長に対し、納付すべき税額を○○○○円と記載した平成26年分贈与税の申告書を、法定申告期限までに提出した。
  • ハ 滞納国税の承継について
     本件贈与者が平成26年8月○日に死亡し、請求人F3、請求人F1及び請求人F7並びに他に相続人となるべき者がいずれも相続放棄したことにより、相続人のあることが明らかでないときになったため、本件贈与者の滞納国税の納税義務は、国税通則法第5条《相続による国税の納付義務の承継》第1項の規定に基づき、民法第951条《相続財産法人の成立》に規定する相続財産法人である亡F4相続財産に承継された(以下、亡F4相続財産が承継した当該滞納国税のうち別表3に係るものを「本件滞納国税」という。)。
  • ニ 原処分等について
    • (イ) 亡F4相続財産には、本件滞納国税の金額を全て納付するに足りる財産がなかったため、原処分庁は、本件滞納国税を徴収するために、本件各贈与が徴収法第39条に規定する無償譲渡等の処分に該当するとして、請求人F1、請求人F2及び請求人F3に対しては平成30年1月31日付で、請求人F5、請求人F6及び請求人F7に対しては同年3月12日付で、それぞれ、同法第32条《第二次納税義務の通則》第1項の規定に基づき、別表4の事項等を記載した各納付通知書により、本件滞納国税に係る第二次納税義務の各納付告知処分をした(以下「本件各納付告知処分」という。)。
       原処分庁は、本件各納付告知処分において請求人らの納付すべき限度の額を算定するに当たり、本件各不動産の価額を財産評価基本通達(昭和39年4月25日付直資56ほか国税庁長官通達。以下「評価通達」という。)に定める方法により算定した上で、親族その他の特殊関係人である請求人F1、請求人F3、請求人F5、請求人F6及び請求人F7については、本件各贈与により「受けた利益の限度」の額を、また、請求人F2については、本件各贈与により「受けた利益が現に存する限度」の額を、それぞれ別表5−1から5−6までの「原処分庁主張額」欄のとおり算定した。
    • (ロ) 請求人F1、請求人F2及び請求人F3は平成30年2月26日に、請求人F7は同年3月20日に、請求人F5及び請求人F6は同年4月10日に、それぞれ、本件各納付告知処分を不服として再調査の請求をしたところ、再調査審理庁は、いずれも同年5月25日付で棄却の再調査決定をした。
    • (ハ) 請求人F1、請求人F2、請求人F3、請求人F5及び請求人F6は平成30年6月13日に、請求人F7は同月20日に、それぞれ、上記(ロ)の再調査決定を経た後の本件各納付告知処分に不服があるとして審査請求をした。
       なお、請求人らは、請求人F1を総代として選任し、その旨を平成30年7月27日に届け出た。

2 争点

請求人らが本件各贈与により「受けた利益の限度」又は「受けた利益が現に存する限度」の額はいくらか。

3 争点についての主張

原処分庁 請求人ら
以下のとおり、請求人らが本件各贈与により「受けた利益の限度」又は「受けた利益が現に存する限度」の額は、別表5−1から5−6までの「原処分庁主張額」欄のとおりになる。 以下のとおり、本件土地1から7まで及び本件建物1(以下、これらを併せて「本件各係争不動産」という。)の各価額は、別表5−1から5−6までの「請求人ら主張額」欄のとおりにすべきであるから、請求人らが本件各贈与により「受けた利益の限度」又は「受けた利益が現に存する限度」の額は、同欄のとおりになる。
(1) 滞納者から譲り受けた財産(以下「譲受財産」という。)の価額の算定方法については、徴収法及びその他の法令に規定はなく、徴収法基本通達にも定めはない。一方で、相続税法第22条《評価の原則》は、贈与により取得した財産の価額は、その取得の時における時価による旨規定しているところ、この時価とは、財産取得の時における客観的交換価値をいうものと解されており、課税実務上は、財産評価の一般的な基準が評価通達に定められ、そこに定められた画一的な評価方式によって財産を評価することとされている。このような取扱いは、納税者間の公平、納税者の便宜、徴税費用の節減という見地からみて合理的であり、この評価通達に定められた評価方式が合理的なものである限り、これを形式的に全ての納税者に適用して財産の評価を行うことは、税負担の実質的な公平を実現することができるものと解されている。
 以上によれば、譲受財産の価額について、評価通達により算定することは特段不合理ではない。
(1) 譲受財産の価額は、土地等の時価(一般的に土地等の時価とは、一般の自由市場において、土地等の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われている場合に成立すると認められる適正な価格)によるべきであり、その時価の算定方法は、近隣地域における取引事例や収益事例等を参考にして評価する不動産鑑定評価基準が重視されるべきである。
 なお、原処分庁は、評価通達に定められた画一的な評価方式によって譲受財産を評価する取扱いが合理的であると主張するが、その理由は、贈与税を課税する場合に妥当することはあっても、本件のように徴収法第39条の規定に基づく第二次納税義務の納付告知処分をする場合にまで妥当するものではないから、当該主張は理由がない。
(2) 評価通達に定める評価方法に基づいて、本件各不動産の評価額を算定し、譲受けのために支払った費用のうち、そのものの譲受けと直接関係のあるものの額を控除すると、「受けた利益の限度」又は「受けた利益が現に存する限度」の額は、別表5−1から5−6までの「原処分庁主張額」欄のとおりになる。
 なお、請求人らは、共有の場合につき2割程度の減額を考慮すべきと主張するが、評価通達2《共有財産》が持分に応じてあん分した価額によって評価するものと定めていること及び譲受財産を単独で所有する場合との間で不均衡が生じることからすれば、当該主張は妥当ではない。
 また、本件建物1は、その贈与当時、賃貸に供されていたのであるから、評価通達93《貸家の評価》により評価すべきであるし、評価通達には、建物の取壊費用相当額を考慮すべきとする定めはない。本件建物1は、賃貸に供されていた以上、貸家としての利用が最有効使用と考えられるから、その点でも、本件建物1の価額の算定に際し、更地価格から建物の取壊費用相当額を減額することは相当でない。
(2) 本件各係争不動産は、徴収法第94条《公売》(平成30年法律第7号による改正前のもの。)第1項の規定に基づき公売に付されて平成29年11月14日付で売却決定がされた別表1の順号8から11までの各土地並びに別表2の順号4及び5の各建物(以下、これらを併せて「別件各公売不動産」という。)の近隣に所在する上、いずれも元々は本件贈与者が所有するものであったため、仮に本件各贈与がなければ、本件各係争不動産と別件各公売不動産とは一緒に公売に付されていたと想定されるものである。そして、別件各公売不動産については、上記公売の見積価額等の事情からすれば、上記公売に当たり、広大地評価の適用による減価が考慮されていたと考えられるから、本件各係争不動産についても、広大地評価の適用による減価を考慮すべきである。
 また、共有の場合には土地の利用などに制約が生じるため、不動産鑑定評価では、取引価格から2割程度減少させた金額で算定(共有補正)するのが通常であるから、本件土地6及び7についても同様に2割程度の減額を考慮すべきである。
 さらに、本件建物1は、その贈与当時、賃貸に供されていたが、耐用年数が経過し、全く価値がなかったところ、このような場合には、老朽化した建物を取り壊して更地にして取引の対象とするのが通常であるから、その価額の算定に際し、更地価格から建物の取壊費用相当額を減額すべきである。
 以上を前提に算定すると、「受けた利益の限度」又は「受けた利益が現に存する限度」の額は、別表5−1から5−6までの「請求人ら主張額」欄のとおりになる。

4 当審判所の判断

(1) 争点について

  • イ 法令解釈
     徴収法第39条は、上記1(2)イのとおり規定し、徴収法基本通達は、同ロ及びハのとおり定めているところ、当該通達の取扱いは、当審判所においても相当と認められる。また、徴収法第39条の「受けた利益の限度」又は「受けた利益が現に存する限度」の額の算定における受けたものの価額については、無償譲渡等の処分がされた時又は納付通知書を発した時の現況によるその譲受財産の価額を基礎として算定すべきものであるから、譲受財産が不動産である場合には、その現況に応じて、無償譲渡等の処分がされた時又は納付通知書を発した時における客観的な交換価値である通常の取引価額により算定するものと解するのが相当である。
  • ロ 本件各係争不動産の価額以外について
     請求人らは、「受けた利益の限度」又は「受けた利益が現に存する限度」の額の算定に当たり、原処分庁が算定した本件建物2及び3の価額については争わず、これらは当審判所の調査の結果及び審理の全趣旨によっても相当と認められる上、本件各不動産につき本件各贈与を受けるために請求人らが支払った登録免許税の額、不動産取得税の額及び贈与税の額については、上記1(3)ロのとおりである。
  • ハ 本件各係争不動産の価額について
    • (イ) 認定事実
       原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
      • A 本件各係争不動産は、いずれも同一の近隣地域に所在しており、J社運営の鉄道路線「f線」のg駅からは、南西方に直線距離で約2.5kmの位置にある。また、本件各係争不動産は、いずれも市街化区域内にあり、その用途地域は、第一種住居地域(建ぺい率60%、容積率200%)である。
         本件各係争不動産が所在する近隣地域は、国道h号バイパスの東側に自然発生的に広がった一般住宅地域であり、街路がやや雑然としている。また、当該地域は、第一種住居地域と第二種低層住居専用地域とにまたがっているが、いずれにおいても、低層の一般住宅、共同住宅等が混在している。
      • B 本件土地1は、別表1の順号12の土地(以下「別件公衆用道路1」という。)と一体で使用されることが想定される土地であるところ、本件土地1及び別件公衆用道路1は、その西側で幅員4.0mの舗装市道に、その北側で幅員1.8mの舗装道路に接する角地で、間口が25.5m、奥行きが18.5m、地積が324.83uの不整形画地である。なお、本件土地1の地目は「畑」であるが、転用の届出がされており、また、本件土地1及び別件公衆用道路1の土地上には、建物、工作物等は存在せず、その使用収益を制限する権利の設定等もされていない。本件土地1及び別件公衆用道路1の現況は、駐車場として利用されている。
      • C 本件土地2から5までは、別表1の順号13の土地(以下「別件公衆用道路2」という。)と一体で使用されることが想定される土地であるところ、本件土地2から5まで及び別件公衆用道路2は、その北東側で幅員1.8mの舗装市道に接し、間口が10m、奥行きが21m、地積が217.25uのほぼ整形画地であり、本件建物1の敷地として使用されている。
         本件建物1は、昭和55年4月7日に新築された建物であり、その外壁等に多少の亀裂等があるものの、その管理状況は、おおむね通常どおりであり、賃貸に供されている。本件建物1は、その敷地と南東側の隣地との境界を越えて建っている。
      • D 本件土地6及び7の土地上には、平成26年7月20日時点で、請求人F3所有の別表2の順号6の建物(以下「別件建物1」という。)並びに本件贈与者所有の同表順号7の建物(以下「別件建物2」という。)及び同表順号8の建物(以下「別件建物3」という。)が存在し、それぞれの敷地として利用されていた(以下、本件土地6及び7のうち、別件建物1の敷地として利用されている部分を「別件建物1敷地部分」といい、別件建物2及び3の各敷地についても同様に表記する。)。本件土地6及び7と別件建物1から3までの位置関係等は、別紙2のとおりである。なお、上記1(3)ロ(ホ)及び(へ)の本件土地6及び7の各贈与後に、請求人F3が別件建物1敷地部分に係る地代を支払ったことはなく、また、本件贈与者も別件建物2敷地部分又は別件建物3敷地部分に係る地代を支払ったことはなかった。
         別件建物1敷地部分は、その東側で幅員1.8mの舗装市道に、その南側で幅員1.8mの未舗装市道に、その西側で幅員4.0mの舗装市道にそれぞれ接する3方路画地で、間口が23m、奥行きが34m、地積が684.48uの整形画地である。また、その土地上には、別件建物1以外にも未登記の附属建物等が存在する。
         別件建物2敷地部分は、その東側で幅員1.8mの舗装市道に接する一方路画地で、間口が17m、奥行きが20m、地積が309.84uの整形画地である。
         別件建物3敷地部分は、その西側で幅員4.0mの舗装市道に接する一方路画地で、間口が23m、奥行きが20m、地積が331.96uのやや不整形画地である。
      • E 本件各納付告知処分に際し、原処分庁は、上記Dの利用状況を踏まえて、別件建物1敷地部分、別件建物2敷地部分及び別件建物3敷地部分(以下、これらを併せて「各別件建物敷地部分」という。)の3区分のそれぞれの価額を評価通達に定められた評価方法によって算定し、その価額を本件土地6及び7の各地積でそれぞれあん分した上、あん分後の各価額を合算することで、本件土地6及び7の価額を算定した。
    • (ロ) 当審判所における鑑定評価
       当審判所において、不動産鑑定評価の専門家である不動産鑑定士に対し、本件各係争不動産に係る鑑定評価を依頼したところ、その鑑定評価(以下「審判所鑑定評価」という。)は、別紙3のとおりである。
    • (ハ) 検討
      • A 本件土地1の価額について
         本件土地1及び別件公衆用道路1の審判所鑑定評価の内容は、別紙3の2(2)ニ及び(6)のとおりであり、これらの土地の上には建物等が存在せず、使用収益を制限する権利の設定も存在しないことから、更地として評価し、比準価格を重視し、収益価格を参考として、本件土地1及び別件公衆用道路1の価額を8,900,000円と算定したものであり、その評価の手法及び過程に特に不合理な点は認められない。また、上記(ロ)の不動産鑑定士は、別件公衆用道路1の価額を零円と算定しているところ、その評価についても特に不合理な点は認められない。これらの審判所鑑定評価を前提にすると、本件土地1の価額は8,900,000円になるが、他方で、不動産の客観的な交換価値は必ずしも一義的に確定されるものではないところ、原処分庁が算定した本件土地1の価額は○○○○円であり、上記価額と大きな乖離はなく、直ちに不合理といえる点も認められないし、原処分庁からも原処分庁の算定を超える価額の主張立証はされておらず、これらの事情を合わせて考慮すれば、本件土地1の価額は、少なくとも○○○○円であると認めるのが相当である。
         なお、審判所鑑定評価の評価時点は平成26年5月29日であるのに対し、本件土地1が贈与されたのは同月16日であるが、両時点は近接している上、他に両時点でその価額が変動したことをうかがわせる事情も存しないから、この点が上記結論を左右することはない。
      • B 本件土地2から5まで及び本件建物1の価額について
         本件建物1及びその敷地(本件土地2から5まで及び別件公衆用道路2)の審判所鑑定評価の内容は、別紙3の2(2)ホ及び(7)のとおりであり、本件土地2から5まで及び別件公衆用道路2が本件建物1の敷地に供されていること、本件建物1がその敷地と南東側の隣地との境界を越えて建っていることなどを考慮し、比準価格は適切な取引事例がないために適用できず、収益価格は実際実質賃料が南東側の隣地の使用に係るものも含まれているために妥当とはいえないとして、積算価格を中心とし、上記のとおり境界を越えて建っていることによる減価も考慮して、市場性修正率を30%と査定して評価額を算定しているところ、上記の事情を勘案すると、その市場性修正率を査定したことに特に不合理な点はない上、その評価の手法及び過程に特に不合理な点も認められない。また、上記(ロ)の不動産鑑定士は、別件公衆用道路2の価額を零円と算定しているところ、その評価についても特に不合理な点は認められない。これらの審判所鑑定評価によれば、本件土地2から5までの価額は○○○○円、本件建物1の価額は○○○○円と認められる。
      • C 本件土地6及び7の各別件建物敷地部分の価額について
        • (A) 本件土地6及び7の価額につき、原処分庁は、上記(イ)Eのとおり、各別件建物敷地部分の3区分につき、それぞれその価額を算定し、その価額を本件土地6及び7の各地積にあん分した上、あん分後の各価額を合算して本件土地6及び7の価額を算定しているところ、上記(イ)Dの利用状況等によれば、その点については合理性が認められる。そこで、まず、各別件建物敷地部分の価額をそれぞれ検討するが、審判所鑑定評価では、その価格時点である平成26年5月29日時点の価額を算定した上で、同年7月20日時点の価額及び平成30年1月31日時点の価額を検討しているため、以下、その順序で審判所鑑定評価の内容を検討することにする。
        • (B) 平成26年5月29日時点の価額について
          • a 別件建物1敷地部分の審判所鑑定評価の内容は、別紙3の2(2)イ及び(3)のとおりであり、別件建物1の敷地に供されていることから建付地として評価を行うこととして、比準価格を重視し、収益価格を参考にして、更地としての価格を○○○○円と算定するものである。そして、別件建物1が新築後30年以上を経過しており、新築後30年以上の木造建物の市場における取引状況を考慮して、建付減価率を更地価格の15%と査定し、平成26年5月29日時点における別件建物1敷地部分の価額を○○○○円と算定しているところ、その評価の手法及び過程並びに建付減価率の査定に特に不合理な点は認められない。
          • b 別件建物2敷地部分の審判所鑑定評価の内容は、別紙3の2(2)ロ及び(4)のとおりであり、貸家である別件建物2の敷地に供されていることから、いわゆる貸家建付地として評価を行うこととし、実際実質賃料を基礎とした収益価格の試算では、収益価格を求めることができず、経済的合理性に反すると判断し、更地としての比準価格○○○○円を基礎とするものである。そして、収益面からみて経済的合理性のない別件建物2が存在することによる建付減価率を更地価格の20%と査定し、賃借人がおり、最有効使用の実現のためには一定の費用と期間を要する可能性があることによる減価率を10%と査定して、平成26年5月29日時点における別件建物2敷地部分の価額を○○○○円と算定しているところ、その評価の手法及び過程並びに建付減価率の査定に特に不合理な点は認められない。
          • c 別件建物3敷地部分の審判所鑑定評価の内容は、別紙3の2(2)ハ及び(5)のとおりであり、別件建物2敷地部分と同様に、貸家である別件建物3の敷地に供されていることから、貸家建付地として評価を行うこととし、実際実質賃料を基礎とした収益価格の試算では、収益価格を求めることができず、経済的合理性に反すると判断し、更地としての比準価格○○○○円を基礎とするものである。そして、収益面からみて経済的合理性のない別件建物3が存在することによる建付減価率を更地価格の20%と査定し、賃借人がおり、最有効使用の実現のためには一定の費用と期間を要する可能性があることによる減価率を10%と査定して、平成26年5月29日時点における別件建物3敷地部分の価額を○○○○円と算定しているところ、その評価の手法及び過程並びに建付減価率の査定に特に不合理な点は認められない。
        • (C) 平成26年7月20日時点の価額について
           平成26年7月20日時点における各別件建物敷地部分の審判所鑑定評価の内容は、別紙3の2(3)ヘ、(4)ヘ及び(5)ヘのとおりであり、平成26年7月20日時点ではそれぞれ使用借権が存するため、買受人による最有効使用の実現には一定の期間と費用を要する可能性があることから減価をすることが妥当であるとして、その減価率を10%とするものである。そして、上記1(3)イ(イ)のとおり、本件土地6及び7の各共有持分権者と平成26年7月20日時点の別件建物1の所有者(請求人F3)並びに別件建物2及び3の所有者(本件贈与者)とは親族関係にある上、上記(イ)Dのとおり、その敷地の利用につき地代も支払われていなかったことからすれば、各別件建物敷地部分を無償で使用する旨の使用貸借の合意があったと合理的に推認できるから、更地価格から10%の減価をすることは相当であり、その評価の手法及び過程に特に不合理な点も認められない。これらの審判所鑑定評価によれば、平成26年7月20日時点における別件建物1敷地部分の価額は○○○○円、別件建物2敷地部分の価額は○○○○円、別件建物3敷地部分の価額は○○○○円と認められる。
           なお、上記(イ)Dのとおり、別件建物1の所有者は、請求人F3であるにもかかわらず、審判所鑑定評価は、本件贈与者をその所有者であるとしているが、その所有者が異なっても、別件建物1とその敷地部分の所有者が同一ではなく、使用借権に係る減価をする必要があることに変わりはないから、この点が上記結論を左右することはない。
        • (D) 平成30年1月31日時点の価額について
           平成30年1月31日時点における各別件建物敷地部分の審判所鑑定評価の内容は、別紙3の2(3)ト、(4)ト及び(5)トのとおりであり、時間経過に伴う建物の老朽化による取壊しの時期及び取壊し等に係る環境の変化等に加え、別件建物2敷地部分及び別件建物3敷地部分については貸家としての収益環境の悪化も考慮して、平成26年7月20日時点の建付減価率を修正して、平成30年1月31日時点の価額を算定するものであるところ、その評価の手法及び過程に特に不合理な点は認められない。そして、この審判所鑑定評価によれば、平成30年1月31日時点における別件建物1敷地部分の価額は○○○○円、別件建物2敷地部分の価額は○○○○円、別件建物3敷地部分の価額は○○○○円と認められる。
      • D 本件土地6及び7の価額について
        • (A) 平成26年7月20日時点における各別件建物敷地部分の価額は、上記C(C)のとおりであり、別表6−1のとおり、それらの価額を本件土地6及び7の各地積であん分した上、あん分後の各価額を合算すると、平成26年7月20日時点における本件土地6の価額は○○○○円、本件土地7の価額は○○○○円と認められる。
        • (B) 平成30年1月31日時点における各別件建物敷地部分の価額は、上記C(D)のとおりであり、別表6−2のとおり、それらの価額を本件土地6及び7の各地積であん分した上、あん分後の各価額を合算すると、平成30年1月31日時点における本件土地6の価額は○○○○円、本件土地7の価額は○○○○円と認められる。
      • E 本件土地6及び7の各持分の価額について
         本件土地6及び7は、上記1(3)ロ(ホ)及び(へ)の各贈与により共有関係にあるところ、不動産の共有持分については、その維持管理に共有者の同意が必要となるなど単独所有に比べ制約が非常に大きく、また、分割の可能性や用途、買受人が他の共有持分を取得できる可能性及び取得した共有持分の売却の可能性等の要因が存するため、市場性に変化があり、その評価に当たっては、共有持分であることによる減価(以下「共有減価」という。)をすることは妥当である。したがって、審判所鑑定評価の別紙3の2(8)のとおり、本件土地6及び7の各持分の価額を算定する際に30%の共有減価をすることは相当と認められる。以上によれば、上記各贈与により請求人F1、請求人F3、請求人F5、請求人F6及び請求人F2が受けた各持分の価額は、以下のとおりと認められる。
        • (A) 平成26年7月20日時点において、請求人F1が贈与を受けた各持分の価額は、本件土地6については、上記D(A)の価額の8分の1(持分割合)に、30%の共有減価をした額である○○○○円(小数点以下第1位未満を切り捨て。以下も同様に算定する。)、本件土地7については、上記D(A)の価額の8分の3(持分割合)に、30%の共有減価をした額である○○○○円になる。
        • (B) 平成26年7月20日時点において、請求人F3が贈与を受けた持分の価額は、上記D(A)の本件土地6の価額の8分の6(持分割合)に、30%の共有減価をした額である○○○○円になる。
        • (C) 平成26年7月20日時点において、請求人F5が贈与を受けた持分の価額は、上記D(A)の本件土地7の価額の8分の1(持分割合)に、30%の共有減価をした額である○○○○円になる。
        • (D) 平成26年7月20日時点において、請求人F6が贈与を受けた持分の価額は、上記D(A)の本件土地7の価額の8分の1(持分割合)に、30%の共有減価をした額である○○○○円になる。
        • (E) 平成30年1月31日時点において、請求人F2が贈与を受けた各持分の価額は、本件土地6については、上記D(B)の価額の8分の1(持分割合)に、30%の共有減価をした額である○○○○円、本件土地7については、上記D(B)の価額の8分の3(持分割合)に、30%の共有減価をした額である○○○○円になる。
  • ニ 当てはめ
     以上を前提に算定すると、請求人F1、請求人F3、請求人F5、請求人F6及び請求人F7が本件各贈与により「受けた利益の限度」の額は、別表5−1及び別表5−3から5−6までの「審判所認定額」欄のとおりであり、請求人F1については○○○○円、請求人F3については○○○○円、請求人F5については○○○○円、請求人F6については○○○○円、請求人F7については○○○○円になる。また、請求人F2が本件各贈与により「受けた利益の現に存する限度」の額は、別表5−2の「審判所認定額」欄のとおりであり、○○○○円になる。
  • ホ 請求人らの主張について
    • (イ) 請求人らは、仮に本件各贈与が行われなかったならば、本件各係争不動産は別件各公売不動産と一緒に公売に付されていたと想定されるから、本件各係争不動産についても、広大地評価の適用による減価を考慮してその価額を算定すべきである旨主張するが、本件各贈与が行われなかったという仮定に基づくものにすぎず、実際には本件各贈与が行われており、その前提を欠くから、当該主張は理由がない。
    • (ロ) また、請求人らは、本件建物1は、その贈与当時、賃貸に供されていたが、耐用年数が経過し、全く価値がなかったところ、このような場合には、老朽化した建物を取り壊して更地にして取引の対象とすることが通常であるから、その価額の算定に際し、更地価額から建物の取壊費用相当額を減額すべきである旨主張する。
       しかしながら、当審判所の調査及び審理の結果によれば、別紙3の2(2)ホ(ロ)及び(ニ)並びに(7)ハ(ロ)Bのとおり、本件建物1の経済的残存耐用年数は6年であったこと、おおむね通常の保守管理状態にあったこと、賃貸としての利用が最有効使用であることが認められるから、本件土地2から5までの価額の算定に際し、更地価額から建物の取壊費用相当額を減額するのは合理的ではない。
       したがって、請求人らの上記主張は理由がない。
  • へ 原処分庁の主張について
     原処分庁は、譲受財産の価額について、評価通達により算定することは特段不合理ではない旨主張する。
     しかしながら、評価通達は、相続税及び贈与税の課税価格計算の基礎となる財産の評価に関する基本的な取扱いを定めたものであり、譲受財産の価額の算定について、評価通達を適用又は準用すべきとする法令の規定や通達等の定めは存在しない。そして、譲受財産の価額の算定に際して評価通達が参考になる場合があるとしても、本件では、当審判所が原処分庁とは異なる算定をした本件土地2から5まで及び本件建物1の価額については、本件建物1が隣接地との境界を越えて建っていることを考慮して算定する必要があり、また、本件土地6及び7の価額については、その土地上に経済的合理性を有しない賃貸用建物が存在すること、建物の所有者に使用借権があること、本件土地6及び7が共有関係にあることなどを考慮して算定する必要があるにもかかわらず、原処分庁が算定した価額では、これらの事情が適切に考慮されていないから、少なくとも、これらの価額の算定に際して評価通達を参考にするのは妥当とはいえない。
     したがって、原処分庁の上記主張は理由がない。

(2) 本件各納付告知処分の適法性について

  • イ 請求人F1に対する第二次納税義務の納付告知処分
     上記(1)ニのとおり、請求人F1が「受けた利益の限度」の額は○○○○円であり、請求人F1は、その限度において本件滞納国税の第二次納税義務を負うのが相当であるところ、原処分のその他の部分については、請求人F1は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
     したがって、原処分のうち請求人F1に対する第二次納税義務の納付告知処分は、納付すべき限度の額につき○○○○円を超える部分は違法となる。
  • ロ 請求人F2に対する第二次納税義務の納付告知処分
     上記(1)ニのとおり、請求人F2が「受けた利益が現に存する限度」の額は○○○○円であり、請求人F2は、その限度において本件滞納国税の第二次納税義務を負うのが相当であるところ、原処分のその他の部分については、請求人F2は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
     したがって、原処分のうち請求人F2に対する第二次納税義務の納付告知処分は、納付すべき限度の額につき○○○○円を超える部分は違法となる。
  • ハ 請求人F3に対する第二次納税義務の納付告知処分
     上記(1)ニのとおり、請求人F3が「受けた利益の限度」の額は○○○○円であり、請求人F3は、その限度において本件滞納国税の第二次納税義務を負うのが相当であるところ、原処分のその他の部分については、請求人F3は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
     したがって、原処分のうち請求人F3に対してされた第二次納税義務の納付告知処分は、納付すべき限度の額につき○○○○円を超える部分は違法となる。
  • ニ 請求人F5に対する第二次納税義務の納付告知処分
     上記(1)ニのとおり、請求人F5が「受けた利益の限度」の額は○○○○円であり、請求人F5は、その限度において本件滞納国税の第二次納税義務を負うのが相当であるところ、原処分のその他の部分については、請求人F5は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
     したがって、原処分のうち請求人F5に対してされた第二次納税義務の納付告知処分は、納付すべき限度の額につき○○○○円を超える部分は違法となる。
  • ホ 請求人F6に対する第二次納税義務の納付告知処分
     上記(1)ニのとおり、請求人F6が「受けた利益の限度」の額は○○○○円であり、請求人F6は、その限度において本件滞納国税の第二次納税義務を負うのが相当であるところ、原処分のその他の部分については、請求人F6は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
     したがって、原処分のうち請求人F6に対してされた第二次納税義務の納付告知処分は、納付すべき限度の額につき○○○○円を超える部分は違法となる。
  • へ 請求人F7に対する第二次納税義務の納付告知処分
     上記(1)ニのとおり、請求人F7が「受けた利益の限度」の額は○○○○円であり、請求人F7は、その限度において本件滞納国税の第二次納税義務を負うのが相当であるところ、原処分のその他の部分については、請求人F7は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
     したがって、原処分のうち請求人F7に対してされた第二次納税義務の納付告知処分は、納付すべき限度の額につき○○○○円を超える部分は違法となる。

(3) 結論

よって、審査請求には理由があるから、原処分は、いずれもその一部を取り消すこととする。

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