(令和2年5月19日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、取引先から取得した軽種馬の代金を、課税仕入れに係る支払対価の額に計上して消費税等の確定申告をしたところ、原処分庁が、当該軽種馬の各取引に係る売買契約は通謀虚偽表示により無効であり、当該代金の一部は課税仕入れに係る支払対価の額とは認められないとして更正処分等をしたのに対し、請求人が、原処分庁の認定した事実には誤りがあるなどとして、原処分の一部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令等

  • イ 国税通則法(平成29年1月1日前に法定申告期限が到来した国税については、平成28年法律第15号による改正前のもの。以下「通則法」という。)第68条《重加算税》第1項は、同法第65条《過少申告加算税》第1項の規定に該当する場合において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に100分の35の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する旨規定している。
  • ロ 消費税法第2条《定義》第1項第12号は、課税仕入れとは、事業者が、事業として他の者から資産を譲り受け、若しくは借り受け、又は役務の提供を受けること(当該他の者が事業として当該資産を譲り渡し、若しくは貸し付け、又は当該役務の提供をしたとした場合に課税資産の譲渡等に該当することとなるものに限る。)をいう旨規定している。
  • ハ 消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第1項(平成27年9月30日以前に行う課税仕入れに係るものは、平成27年法律第9号による改正前のもの。平成27年10月1日以後に行う課税仕入れに係るものは、平成28年法律第15号による改正前のもの。)は、事業者が、国内において行う課税仕入れについては、当該課税仕入れを行った日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額から、当該課税期間中に国内において行った課税仕入れに係る消費税額を控除する旨規定している(以下、この規定に基づく控除を「仕入税額控除」という。)。

(3) 基礎事実

当審判所の調査及び審理の結果によれば、次の事実が認められる。

  • イ 請求人及び取引関係者について
    • (イ) 請求人は、日本中央競馬会に個人馬主として登録し、所有する競走馬を、平成〇年頃から競馬に出走させて賞金等を得る事業を継続的に行っている。
       なお、請求人は、平成24年12月31日、a国に住所を移し、非居住者となった。
    • (ロ) H社(以下「本件法人」という。)は、平成〇年〇月○日に設立された、化粧品、健康食品の企画、開発及び販売業務等を目的とする法人であり、その代表者は設立時からJ(以下「本件代表者」という。)が務めている。
       なお、本件代表者は本件法人の全株式を所有しており、本件法人には本件代表者以外に役員はいない。
  • ロ 本件法人のK農業協同組合及びL農業協同組合を通じた取引について
     本件法人は、K農業協同組合(以下「K農協」という。)及びL農業協同組合(以下、K農協と併せて「S農協等」という。)が年に数回開催する〇〇のオークションを通じて軽種馬を落札し、別表1及び別表2の「本件軽種馬取引」欄のとおり、軽種馬を購入した(以下、本件法人のS農協等を通じた軽種馬に係る取引を「本件軽種馬取引」といい、このうち、本件法人のK農協を通じた軽種馬に係る取引を「本件K軽種馬取引」という。)。
     なお、本件K軽種馬取引に係る売買契約では、本件法人は、K農協に対し、遅くとも当該オークションの全日程終了日の翌日から10日以内に売買代金を支払う旨、当該軽種馬の引渡しは、売買代金の全額決済後、軽種馬の売主と本件法人が協議などして決定した日時及び場所において行う旨定めていた。
  • ハ 請求人と本件法人との間の取引について
     請求人は、本件法人から、別表1及び別表2の「本件各取引」欄のとおり、軽種馬を購入した(以下、請求人と本件法人との間の当該軽種馬の各取引を「本件各取引」という。)。
     なお、本件各取引に係る売買契約では、請求人は、本件法人に対し、売買契約日から10日以内に売買代金を支払う旨、当該軽種馬の引渡しは、請求人と本件法人が協議して決定した日時及び場所において行う旨定めていた。

(4) 審査請求に至る経緯

  • イ 請求人は、M税務署長に対し、平成27年1月1日から平成27年12月31日まで及び平成29年1月1日から平成29年12月31日までの各課税期間(以下、それぞれ「平成27年課税期間」及び「平成29年課税期間」といい、これらを併せて「本件各課税期間」という。)の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)について、別表1及び別表2に記載の軽種馬(以下「本件軽種馬」という。)に係る同各表の「本件各取引」欄中の「契約金額(税込金額)」欄の各金額を、本件軽種馬の取得価額として課税仕入れに係る支払対価の額に計上し、仕入税額控除の額を算出した上で、消費税等の確定申告書に、別表3の「確定申告」欄のとおり記載して、いずれも法定申告期限までに申告をした。
  • ロ M税務署長は、N国税局所属の調査担当職員の調査(以下「本件調査」という。)に基づき、請求人の本件各課税期間の消費税等について、請求人は本件法人から本件軽種馬を取得したとしているが、実体は本件法人の名義を利用し、S農協等を通じて直接取得したものと認められるから、別表1及び別表2の「本件軽種馬取引」欄中の「購入金額(税込金額)」欄の各金額が、請求人の本件軽種馬に係る取得価額であるとして、仕入税額控除の額を計算し、平成31年2月28日付で、別表3の「更正処分等」欄のとおり、消費税等の各更正処分(以下「本件各更正処分」という。)をした。
     また、M税務署長は、本件調査に基づき、本件各取引に係る売買代金と本件軽種馬取引に係る売買代金との差額分に相当する別表1及び別表2の「本件各差額(税込金額)」欄の各金額(以下「本件各差額」という。)を課税仕入れに係る支払対価の額に含めて過大に仕入税額控除の額を計算して本件各課税期間の消費税等の確定申告書を提出したことは、隠蔽又は仮装の行為に該当するとして、平成31年2月28日付で、別表3の「更正処分等」欄のとおり、過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分(以下、本件各課税期間における重加算税の各賦課決定処分を「本件各賦課決定処分」という。)をした。
  • ハ 請求人は、上記ロの処分のうち、本件各更正処分の一部及び本件各賦課決定処分に不服があるとして、令和元年5月28日に審査請求をした。
  • ニ 請求人は、令和2年2月17日、P税務署長に対して、納税地がg市h町○−○からe市f町○−○へ異動した旨の「消費税の納税地の異動に関する届出書」を提出した。これにより、原処分庁はN国税局長からG国税局長となった。

2 争点

(1) 本件各差額は、請求人の課税仕入れに係る支払対価の額に該当するか否か(争点1)。

(2) 請求人が本件各差額を課税仕入れに係る支払対価の額に該当するとして仕入税額控除をしたことについて、通則法第68条第1項に規定する隠蔽又は仮装の行為に該当する事実があるか否か(争点2)。

3 争点についての主張

(1) 争点1(本件各差額は、請求人の課税仕入れに係る支払対価の額に該当するか否か。)について

原処分庁 請求人
  次のことから、本件各取引に係る売買契約は、通謀虚偽表示により無効であり、実体は、請求人が本件法人の名義を借用して、S農協等を通じて直接本件軽種馬を購入したものである。
 したがって、本件各差額は、請求人の課税仕入れに係る支払対価の額に該当しない。
  • イ 本件各取引について
     請求人が本件法人に対して、落札候補馬を調査・推薦する業務を依頼していたとの請求人の主張は、本件各取引が実質は売買契約ではないことを請求人自ら認めたものである(以下、請求人に対して落札候補馬を調査・推薦する業務を「本件業務」という。)。
  • ロ 請求人及び本件法人には、本件各取引について通謀虚偽表示を行う動機があったこと
    • (イ) 請求人と本件代表者は、ホテルの同室で宿泊する親密な関係にあり、請求人には本件法人に利益を供与する動機があった。
    • (ロ) 請求人は、本件法人を介在させることで自己の消費税等の税負担を減らすことができた。他方、本件法人は、本件各取引を行ったとしても、法人税に関して繰越欠損金があり、また、消費税等に関して免税事業者であったため、いずれも税負担は生じていなかった。
  • ハ 本件各取引は不自然不合理であること
    • (イ) 請求人と本件法人との間の取引には、一つの取引において、契約金額のみが異なる2通の売買契約書が存在することから、本件各取引に係る売買契約書の内容は、信用性に欠ける。
    • (ロ) 本件各取引の契約金額は、本件軽種馬取引に係る購入金額に、本件業務に係る対価とされる額を上乗せしたものであるところ、本件法人が落札した日から最短で1日という短期間で対価とされる額を決定し、しかも、当該対価とされる額の計算根拠がない。
    • (ハ) S農協等及び牧場関係者などへの調査の結果からも、本件各取引に本件法人が介在しているとは認められない。
  次のことから、本件各取引は、実体を伴う正当な取引であり、本件各取引を否定する理由はない。
 したがって、本件各差額は、請求人の課税仕入れに係る支払対価の額に該当する。
  • イ 本件各取引について
     請求人は、本件法人に対し、本件業務を依頼していた。そして、本件各取引は、本件業務に係る対価を本件軽種馬取引に上乗せして請求人が購入するという形式(売買契約)を採っただけであり、本件各取引が実際に行われていたことに変わりはない。
  • ロ 請求人及び本件法人には、本件各取引について通謀虚偽表示を行う動機がなかったこと
    • (イ) 請求人と本件代表者がホテルの同室で宿泊したのは事実であるが親密な関係にはなく、請求人は、本件法人の株主又は役員のいずれでもないことから、請求人が本件法人に利益を供与する動機はなかった。
    • (ロ) 本件法人は、法人税の確定申告書において所得金額を計上しており、本件各取引によって税負担は増加していた。そして、本件法人が繰越欠損金を全て控除し終えた後も本件各取引を続けていた。
  • ハ 本件各取引は不自然不合理ではないこと
    • (イ) 契約金額が変更された場合に新たに別の売買契約書を作成することは、実社会において頻繁に行われていることであり、いずれの売買契約書が有効であるかは当事者が認識していれば問題ない。
    • (ロ) 本件各取引の契約金額は、当事者間で柔軟に決定したため、計算根拠がないとしても不自然ではない。
    • (ハ) 本件法人は、S農協等を通じて本件軽種馬を購入し、請求人も本件法人から本件軽種馬を購入しており、それぞれ購入に当たって代金決済も行っている。また、落札した軽種馬の転売を頻繁に行っている者及び情報提供をビジネスとしている者も存在している。

(2) 争点2(請求人が本件各差額を課税仕入れに係る支払対価の額に該当するとして仕入税額控除をしたことについて、通則法第68条第1項に規定する隠蔽又は仮装の行為に該当する事実があるか否か。)について

原処分庁 請求人
  上記(1)の「原処分庁」欄のとおり、請求人は、本件法人の名義を借用して、S農協等を通じて直接本件軽種馬を購入したにもかかわらず、本件各取引が実体を伴うかのように装って、本件各差額を課税仕入れに係る支払対価の額に該当するとして仕入税額控除をしていたことから、請求人には隠蔽又は仮装の行為に該当する事実がある。   上記(1)の「請求人」欄のとおり、本件各取引を否定する理由はなく、請求人が本件各差額を課税仕入れに係る支払対価の額に該当するとして仕入税額控除をしていたことについて、隠蔽又は仮装の行為に該当する事実は一切ない。

4 当審判所の判断

(1) 争点1(本件各差額は、請求人の課税仕入れに係る支払対価の額に該当するか否か。)について

  • イ 認定事実
     請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、次の事実が認められる。
    • (イ) 本件各取引において請求人は、本件法人に対し、別表1及び別表2の「本件各取引」欄中の「契約金額(税込金額)」欄の金額を支払い、本件軽種馬取引において本件法人は、S農協等に対し、同各表の「本件軽種馬取引」欄中の「購入金額(税込金額)」欄の金額を支払った。
       なお、本件法人は、本件軽種馬取引に係る売買代金の支払前後に、請求人から本件各取引に係る売買代金を受領していた。そして、本件各取引及び本件K軽種馬取引に係る売買代金は、各売買契約に基づく支払期限内に支払われていた。
    • (ロ) 本件法人は、上記1の(3)のロ及びハのとおり、本件軽種馬取引に係る売買契約を軽種馬の売主と締結し、その契約後には、本件各取引に係る売買契約をその売買の対象となる軽種馬1頭ごとに締結した。また、当該軽種馬は、S農協等を通じて購入した軽種馬とそれぞれ一致していた。
    • (ハ) 本件各取引に係る各売買契約書の契約金額は、いずれも本件軽種馬取引に係る購入金額を上回っており、その差額(本件各差額)は、平成27年課税期間は1頭当たり596,000円から948,000円(平均約781,300円)、平成29年課税期間は1頭当たり220,000円から380,000円(平均約284,800円)と、その金額は課税期間ごとにばらつきはあるものの、本件軽種馬取引に係る購入金額の多寡にかかわらず、各課税期間中はおおむね同程度の金額で推移していた。
  • ロ 検討
     本件において、原処分庁は、本件各取引に係る売買契約は、通謀虚偽表示により無効であり本件各取引は実体を伴わないから、本件各差額は課税仕入れに係る支払対価の額に該当しない旨主張するので、本件各取引に係る売買契約に関して通謀虚偽表示の成否について検討した上で、本件の争点を判断する。
    • (イ) 本件各取引に係る売買契約について
       本件各取引に係る売買契約については、請求人及び本件法人の双方が合意したことを示す売買契約書が存在し、原処分庁及び請求人においてその成立の真正に争いはない。
       したがって、本件各取引に係る売買契約は有効に成立していると認められる以上、当該売買契約は、本件各取引が実体を伴わない取引であって通謀虚偽表示であるなど特別の事情があると認められない限り、無効とはならない。
    • (ロ) 本件各取引及び本件軽種馬取引に係る売買契約の履行について
       上記イの(イ)及び(ロ)のとおり、本件各取引及び本件軽種馬取引に係る売買契約に符合した売買代金の支払があったと認められることから、当該売買契約がその契約内容のとおり履行され、本件各取引が実際に行われていたことが推認される。
    • (ハ) 本件各取引について通謀虚偽表示を行う動機について
       原処分庁は、請求人及び本件法人が、本件各取引について通謀虚偽表示を行う動機として、請求人と本件代表者は親密な関係にあり請求人から本件法人に対して利益を供与する動機があったこと、請求人は本件法人を介在させることで消費税等の税負担を減らすことができたこと、本件法人においても法人税の繰越欠損金を有し、消費税等の免税事業者であったため、本件各取引によって、法人税及び消費税等の税負担が生じていなかったことを主張する。
       確かに、原処分庁が主張するように、請求人の消費税等の税負担は減少している。しかしながら、上記1の(3)のイの(ロ)のとおり、請求人は、本件法人の株主や役員ではなく、また、当審判所に提出された全証拠からしても本件法人に対して利益を供与するような特別な関係があったとまでは認められず、請求人及び本件法人には、本件各取引について通謀虚偽表示を行う十分な動機があったとまではいえない。
    • (ニ) 通謀虚偽表示を基礎付ける証拠の有無について
       本件各取引に係る売買契約について、原処分庁からは、通謀虚偽表示であることを具体的に示す証拠の提出はなく、当審判所の調査の結果によっても、通謀虚偽表示であることを基礎付ける証拠は見当たらない。
    • (ホ) 小括
       以上のとおり、本件各取引及び本件軽種馬取引に係る売買契約については、それぞれ契約内容のとおり履行されており、また、請求人と本件法人との間に通謀虚偽表示を行う十分な動機があったとまではいえない上、通謀虚偽表示であることを基礎付ける証拠もないから、本件各取引に係る売買契約が通謀虚偽表示により無効であり、本件各取引が実体を伴わない取引であると認めることはできない。
       したがって、本件各差額は、請求人の課税仕入れに係る支払対価の額に該当する。
  • ハ 原処分庁の主張について
    • (イ) 原処分庁は、請求人が本件法人に対し本件業務を依頼していたことは、本件各取引には売買契約としての実体がないことを認めたものである旨主張する。
       しかしながら、上記イの(ハ)のとおり、本件軽種馬取引に係る購入金額の多寡にかかわらず、各課税期間中は軽種馬1頭当たりおおむね同程度の金額が加算されていたことからすると、本件各差額は、本件軽種馬取引に係る購入金額に何らかの基準により上乗せされた金額であるとみることができる。そして、請求人が本件法人に依頼した本件業務の内容が、落札候補馬を調査・推薦するものであることからすれば、本件各取引に係る売買契約は、本件軽種馬取引に係る購入金額に、本件業務に係る対価に相当する金額を上乗せしたものであると解しても不自然とはいえない。そうすると、請求人が本件法人に対し、本件業務を、売買契約の形式により依頼したことをもって、本件各取引に売買契約としての実体がないことを認めたことにはならない。
    • (ロ) 原処分庁は、請求人と本件法人との間の取引には、一つの取引において金額のみが異なる売買契約書が存在することから、本件各取引に係る売買契約書は信用性に欠ける旨主張する。
       しかしながら、原処分庁が指摘する当該売買契約書は、平成28年中の取引に係る売買契約であって、本件各課税期間の取引に係る売買契約書ではないから、本件各取引に係る売買契約書の信用性に直接影響を与えるものではない。
    • (ハ) 原処分庁は、本件各取引の契約金額は、本件軽種馬取引に係る購入金額に、本件業務に係る対価とされる額を上乗せしたものであるところ、本件法人が軽種馬を落札した日から最短で1日という短期間で決定しており、また、本件業務の対価とされる額の計算根拠がないため、本件各取引は不自然不合理である旨主張する。
       しかしながら、本件業務の内容からすると、本件法人は、請求人が購入する落札候補馬を調査及び推薦し、落札するのであるから、本件軽種馬取引によって軽種馬を落札する前に本件業務の履行を終えていたことになる。そうすると、本件法人が軽種馬を落札した日から最短で1日という短期間で対価とされる額を決定したことをもって、本件各取引が不自然不合理であるとまではいえない。また、上記(イ)のとおり、本件各差額が本件軽種馬取引に係る軽種馬の購入金額に何らかの基準により上乗せされた金額とみることができ、その金額は課税期間ごとにおおむね同程度の金額が加算されていたことからすると、本件業務の対価とされる額についても計算根拠がないとまではいえない。
    • (ニ) したがって、原処分庁の主張は、いずれもその主張を認めるに足りる証拠がなく採用できない。

(2) 争点2(請求人が本件各差額を課税仕入れに係る支払対価の額に該当するとして仕入税額控除をしたことについて、通則法第68条第1項に規定する隠蔽又は仮装の行為に該当する事実があるか否か。)について

本件各取引に係る売買契約は、上記(1)のロの(ホ)のとおり、通謀虚偽表示により無効であるとは認められず、本件各差額は、課税仕入れに係る支払対価の額に該当するから、争点2について判断するまでもなく、原処分庁の主張は採用できない。

(3) 原処分の適法性について

  • イ 本件各更正処分
     本件各更正処分については、上記(1)のロの(ホ)のとおり、本件各取引に係る売買契約は通謀虚偽表示により無効であるとは認められないから、本件各差額は課税仕入れに係る支払対価の額に該当し、仕入税額控除の額は、別表3の「確定申告」欄の額と同額になる。
     なお、平成27年課税期間に係る更正処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
     したがって、本件各更正処分は一部が違法であり、平成27年課税期間はその一部を別紙「取消額等計算書」のとおり取り消すべきであり、平成29年課税期間はその全部を取り消すべきである。
  • ロ 本件各賦課決定処分
     上記イのとおり、本件各更正処分は違法であり、その一部が取り消されることに伴い、これを前提としてされた本件各賦課決定処分も違法となることから、いずれもその全部を取り消すべきである。

(4) 結論

よって、審査請求には理由があるから、原処分の一部を取り消すこととする。

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